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No.20336の一覧
[0] 【習作】がくえんもくしろく あなざー(オリ主・ちーと) 更新停止のお知らせ[磯狸](2010/08/19 12:29)
[1] ぷろろーぐ[磯狸](2010/07/24 10:28)
[2] 第一話[磯狸](2010/08/05 10:06)
[3] 第二話[磯狸](2010/07/16 04:28)
[4] 第三話[磯狸](2010/07/20 10:13)
[5] 第四話[磯狸](2010/08/12 16:04)
[8] 第五話・改訂[磯狸](2010/07/20 00:33)
[9] 六話[磯狸](2010/07/18 19:52)
[10] 七話[磯狸](2010/08/12 16:30)
[11] 八話[磯狸](2010/07/20 10:04)
[12] 第九話・微改訂[磯狸](2010/07/22 09:42)
[13] 第十話[磯狸](2010/07/22 19:28)
[14] 第十一話[磯狸](2010/07/23 10:36)
[15] 第十二話[磯狸](2010/07/24 22:50)
[16] 第十三話[磯狸](2010/07/27 18:02)
[17] 第十四話[磯狸](2010/08/03 09:00)
[18] 第十五話[磯狸](2010/08/04 12:35)
[19] 第十六話[磯狸](2010/08/10 21:26)
[20] 第十七話[磯狸](2010/08/12 23:43)
[21] 4話分岐…生存ルートぷろろーぐ。別名おふざけルート 注意書き追加[磯狸](2010/08/05 22:47)
[22] 一話[磯狸](2010/07/20 22:12)
[23] 第二話・あとがき少し追加[磯狸](2010/08/05 22:45)
[24] 第三話[磯狸](2010/08/08 04:44)
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[20336] 第三話
Name: 磯狸◆b7a20b15 ID:9ed37a25 前を表示する
Date: 2010/08/08 04:44
 霧香と行動を共にし出してすぐ、飛鳥達の会話に引き付けられて向かって来ていたのだろう、奴等の集団と顔を合わせる事になった。
2、3体なら霧香の実力を確かめる為に任せる事もできたのだが、10体以上いてはそれもできない。
すぐにフォローできるよう気にかけていないとな、と思う飛鳥であったが結果としてそれは良い意味で裏切られた。

「はっ!」

霧香の先頭の奴等に向かって振るった鉄棒が頭部を粉砕し、その勢いを殺さず振り上げ、返す勢いで更にもう一体の頭を叩き割る。
実に流麗で美しい型であり、何か武術を収めているのは明白の動きだった。それも、かなり高度なレベルで。当然飛鳥も黙ってそれを見ていたりしない。


その動きに関心しながらも、迫り来る奴等に向かって柄を一閃し、迫っていた4体の奴等の頭を一振りで薙ぎ取る。
脳髄や血潮がびしゃっと壁に飛び散り赤い花を咲かすが、飛鳥の動きはそれだけで終わらない。
柄を振るった勢いそのままに、いや、その勢いに乗る様に身体を旋回させ、その力を利用して柄を振るい、更に二体。
同時に遠心力を効かせた回し蹴りを放ち、首を飛ばした奴等を蹴り飛ばし、正面からやって来る奴等達へとふっ飛ばす。凄まじい勢いで吹っ飛んだ奴等は、怪力となった奴等達でも支え切る事ができずに一緒に吹っ飛び、倒れ伏した所に音も無く追撃に動いた飛鳥が奴等の頭を踏み砕き、柄で頭を粉砕する。


僅かの間に、飛鳥は12体の奴等を葬ったのだ。
当然それに呆気に取られるのは、飛鳥の動きを目の当たりにした霧香である。霧香は幼い頃から格闘技などに興味を持ち、護身術や剣道などを収めて来た。
14年間ずっと続けて来たのと本人の才能もあり、かなり高いレベルの武術を体現していた。今までの積み重ねと、冷静な判断力を持ち合わせていたからこそ、ニュースを見て事態を把握し、妹を助ける為に行動に移す事ができたのだ。


彼女の住む学校から少々離れた場所にあるマンションの近くも、既に奴等が現れていて、初見の時は霧香も当然うろたえた。
ニュースでも見たが、改めて現実のものとして間の辺りにすれば、やはり信じられない光景だった。しかし、何時までも呆けていられない。唯一の肉親である可愛い妹に、助けを求められたのだから。


霧香はまず、相手がどういった相手なのか情報を集める事にした。相手は得体の知れないもので、自分の常識が通用するとは思っていなかったからだ。
早く妹を助けに行きたいと思ったが、相手を把握しなければ、妹を連れて逃げるなどとてもじゃ無いができないだろう。
そして奴等を観察し…逃げ惑うサラリーマンの男が中学生くらいの少女の姿をした奴等に捕まり、振りほどけずに組み敷かれてしまうところなどを目撃し、奴等の力は普通では無い事をすぐに悟る。そして、自分が立っているだけなのに、近場にいる奴等が襲って来ない事にも不可解に思い、近くの石を拾って手近な車へと投げ付けた。


すると奴等は、その車に群がるように向かっていったのである。自分のすぐ横を横切って。
そして彼女はある仮説を思いついた。ひょっとしてこいつ等には視覚などは無く、音だけで獲物を判断しているのではないか、と。


試しにちょっと大きな声を上げて見た所、奴等はすぐに霧香の方へと向かって来た。
そして霧香は冷静に音を立てずに最小限の動きでその場を離れ、成り行きを見守れば、奴等は霧香が先程までいた場所をうろうろと彷徨うだけで、少し離れた場所にいる霧香には気づきもしない。これはいける、と霧香はほっと息をついたものだった。


次に目に入ったのは、心臓に鉄パイプが刺さったまま歩いて来るものや、明らかに致命傷を負っているのに普通に歩いている奴等。
どうやら急所への攻撃などは意味が無いようだ、と悟る。これって倒せるのかしら、と思案にくれていると丁度目の前を車が通過し、奴等を引き倒してその内の一体の頭を踏み潰して行ったのである。その頭を潰された奴以外は、轢かれたと言うのに平然と立ち上がり、足が折れたりしているのもいたが動きだしたのだ。


まさか、と思い霧香は周囲を見回して、近くに工事現場があるのを発見し、そこから鉄パイプを一本拝借。
深呼吸し、あれはもはや人間じゃない、ただの化け物。妹の命を脅かしているもの、と言い聞かせながらふらふらと近づいて来る奴等の一体に向かって肉薄し、鉄パイプを叩き付けた。見事に頭部は粉砕され、そいつは倒れ伏してぴくりとも動かなくなる。


霧香は倒せた事に深く安堵して、こいつ等は頭を潰せば倒せるようだと認識する。これだけ奴等に付いて分かれば十分だった。
駐車場に向かい、高校の頃より愛用していたバイクを駆って、彼女は妹の通っている学校へと向かったのである。


どうでも良い事だが、鉄パイプ片手に単車を乗り回している美女と言うのは絵的にどうなのだろうか…。
霧香のアパートから妹の学園まではバイクを飛ばして15分程で付いた。妹からも聞いていたが、やはり閉じられた校門の向こうには奴等と化した多数の生徒が闊歩していた。

霧香は校門から少し離れた所でバイクを止め、エンジンをこれでもかと言うくらい音を立てて奴等を引き寄せた。
奴等は学校からでも無く、後ろの方からもやって来ていて、あまり長く引き付けてもいられない。後ろの連中があとちょっとと言う所まで迫った所で、霧香はバイクを放置して音を立てないように注意して動く。グラウンドや見える範囲にいた奴等は、バイクの音に引き付けられて移動しており、霧香はその隙に身軽な動作で校門を乗り越えて学校内に侵入。

そこからも音を立てないように注意して行動し、奴等をやりすごしたり、移動にどうしても邪魔な奴は始末しながら被服室を探したのである。
そして階段に入った所で……血濡れの熊さんに遭遇したと言う訳だ。


一人で此処まで辿り着く事のできる実力があるからこそ、今の飛鳥の動きには戦慄する。
自分では飛鳥に逆立ちしても勝てない、別次元の動き。それが今の一連の動きをみる事で理解できてしまった。一体どれ程の鍛練を積めばこれだけの実力を持つ事ができるのか、想像さえできない。しかも飛鳥は、自分よりも年下なのだ。

「橘さんっ、危ない!」

佳代が振り絞るように上げた警告の声。はっと正気に戻れば、飛鳥の攻撃範囲を逃れたのだろう、女生徒の奴等が此方に手を伸ばして来る所だった。
何年も鍛練を積んで来た身体が、危機に対して勝手に反応し、その腕を掻い潜るように避けて懐に潜り込み、奴等の顎を下から突き上げる。その攻撃で浮き上がった奴等が地に落ちるよりも早く、鉄パイプを返して今度は振り下ろす。振り下ろした一撃で頭部を完全に破壊した。

「おー…やりますね。助けは必要無かったようで。でも戦闘中に余計な事考えない方が良いですよ」

その声に飛鳥の方に眼をやれば、飛鳥が奴等を相手にしながら、霧香を見て苦笑していた。
恐らく…と言うか、間違い無く飛鳥はこの辺りの敵の動きも、仲間の動きも全て把握しているのだろう。きっと今、霧香がゾンビの攻撃に反応できずにいたら、霧香がやられるよりも早く飛鳥が倒していたに違い無い。

「わ、分かってるわ! 貴方も周りに気を配りすぎて足元掬われないようにしなさい」

元はと言えば飛鳥の人外めいた動きのせいだっ! 盛大に文句を言ってやりたい霧香であったが、命のかかった戦闘中に余計な事に意識をやった自分が悪いのも明らか。
そして年下…しかも男に心配されていると言うのは、霧香には屈辱だった。今まで男や恋愛など、興味も無かったし、何より皆、軟弱な男ばかりだ。態度もそうだが、中身も無い者ばかりで、男何て皆そんな物だと思っていたのだ。なのに、年下の少年に、命をかけた戦いの最中だと言うのに、気をかけられている。飛鳥が圧倒的に自分よりも力量があるのは認めるが、気を配られていると言うのは納得できなかった。自分の身は自分で守れる。誰かに気をかけて貰う程、弱く無い。


そんな霧香の心情を余所に、飛鳥は相変わらず流麗な柄捌きと体術で、流れるように奴等を打倒し続けている。
負けていられないっ! 湧き上がる闘士を感じながらも、先程のようなミスはしない、闘士とは裏腹に、心は冷徹に落ち着かせ、霧香も鉄パイプを振るうのだった。

「貴方達がどうして無事だったのか、良く分かったわ」
「それはこっちも同じですよ。見事な動きでした」

程無くしてやって来た奴等を仕留め、飛鳥と霧香はそれぞれの獲物を同時に振って血を払い、互いに視線を交わし合った。
累々と横たわる屍の中、軽く口元に笑みを刻みながら言う飛鳥に、霧香は苦笑を浮かべる。
実力差からして嫌味とも受け取れたが、飛鳥の顔にも声にもそういった不快な感情は一切含まれていない。言葉通り、称賛しているのが分かったからこそ出た笑みだった。

「なんつーか、何処となくこの二人似てないか?」
「うーん、橘さんは真面目そうな感じがしますから、飛鳥君とは合いそうに無いように思いますけど、何か良いコンビですね」

そんな二人を見て健二と佳代が、初対面でありながら何だか良い感じの二人を見て笑いあう。
そして猛と言えば…

(来た、来た、来た、きたぁあああ! 飛鳥君と相性が良さそうな女性が! それも美人さん! あぁぁああ!? 飛鳥君、お願いだから佳代ちゃんを女として見るのはやめてぇぇぇぇえええ!)

未だ、飛鳥の見せた佳代への表情で悶々としていた所に、飛鳥が初対面時から好意的な対応をしている女性の出現に歓喜していた。
男三人の中で一番まともそうな猛も、この状況でそんな事を考えている時点で、飛鳥達と大差無かった。






少女の精神は既に限界に来ていた。
こみ上げるものを必死に堪え、自分の中に押しとどめる。
少し前まで頻繁に聞こえていた身の竦むような悲鳴や断末魔は、何時しか途絶え、外へと視線を向ければ溢れかえる動く死体達。


恐らく皆、あの動く死体にやられてしまったのだろう。
彼女が今まで生き残っていられたのは、姉の言いつけを守ったからだった。
放送により、絶叫が起こり、パニックになった校舎内。


放送が起こる直前、彼女は被服室にて授業を受けていた。
放送によりクラスメート達がパニックに陥り、自身も自分を失いそうになったのだが、昔姉に言われたパニックになった時こそ落ち着いた行動を取らないといけないという言葉が甦り、彼女だけは教室に残った。


そして外から聞こえる悲鳴に気づいて、外を覗き見て見れば、どうみても死体にしか見えない人間が次々と人を襲う光景だった。
愕然としたが、少女はすぐさま教室の扉に鍵を閉めて、閉じこもっていた。


恐怖に駆られ、がたがたと震える事しかできなかった彼女を救ったのは、姉からの連絡だった。
ニュースを見てこの出来事を知った姉が、気にかけて連絡して来てくれたのだ。


少女は涙ながらに姉に事情を語り、姉はすぐに助けに行くから絶対に部屋から出ずに待っていろと言った。
そしてしばらくしたから姉からメールが入り、あの死体達は音に反応するようだから絶対に音を立てるなと書かれていた。
言われるまでも無く、声などあげる気は起きず、少女は必至に耐えていた。


しかし、少女はもう既に限界だった。
我慢に我慢を重ね、耐えてきたがもう限界だった。いっその事、この部屋を飛び出してしまいたいと言う衝動にさえ駆られた。

―――お願い、お姉ちゃん、早く来てぇええ!

無論、姉の事は心配だった。
こんな所に、姉は本当に来てくれるのだろうか。いや、それ以前に来れるのだろうか。
姉にそんな無茶はして欲しく無いが、止めて聞いてくれるような姉でも無い事も承知している。彼女には、姉を待つ事しかできなかった。


刻一刻と時間は進み、今まで我慢に我慢を重ねた少女は、放心状態に陥っていた。

「も、もう駄目……」

掠れるような小さな声が彼女の唇から洩れた時、扉が小さくノックされた。少女の肩がびくりと震える。そして、扉から聞こえる待ち望んだ姉の声。

「遥、いる!? いるなら扉を開けなさい!」
「だ、駄目ッ! お姉ちゃん来ちゃ駄目ぇえええ!」

我慢の限界を超えた少女は、ついにそれを堪える事ができなくなってしまい、姉に入って来るなと必死に声を上げるのだった。
だがそんなのを、妹を心配して駆け付けた姉が聞く訳が無かった。

「遥!? 何があったの!? く、止むを得ないわね」

その声と共に、被服室の後ろの扉が内側へと吹っ飛び、扉の前には蹴りを放った体勢を戻す姉の姿と、その横に並ぶ少年の姿。
彼等は、乙女の人生最大の危機に――――――

「―――あー君のお姉さんは君が心配だったんだ。まさか、そっち方面でも危機だった何て。俺達は……間に合わなかったんだな」
「―――そ、そうなのよ。遥の事が心配のあまり、つい……そ、その、ごめんなさい」

一瞬の沈黙の後、沈痛そうな表情で視線を逸らしながら、悲しげに呟く少年と、彼と同じように気まずそうに視線を逸らす姉。
少女は、自身の股の間から必死に堪えて来た物が流れ出る感触と、その現場を姉と初対面の少年に見られた事に絶望し、悲痛な声を上げる。

「い…い、い……いやぁあああああああッッ!」

教室の一番後ろの隅っこに膝を抱えて蹲っていた少女の足元に、大きな水たまりができていた。









飛鳥達が被服室に到着し、飛鳥と霧香が少女…橘遥の恥辱を目撃してしまってから小一時間。
飛鳥は迅速に中に顔を逸らしたまま部屋から撤退し、突然の声に戸惑う健二達を『先輩の友達は無事だけど無事じゃない、少し待て』と言って何とも言えない表情で室内を気にする彼等を押し留める。そして霧香は気まずそうに室内へと足を踏み入れ、羞恥心に咽び泣く妹を必死に慰める羽目になった。


何でも彼女はあの地獄の始まりを告げる放送前から尿意を堪えており、後ちょっとで授業が終わると必死に我慢していた所にあの騒ぎ。
奴等が闊歩する中トイレに何か行っていられず、止むなく姉が来るまで我慢していたのだが、ぎりぎりの、本当にぎりぎりの所で飛鳥の言葉通り、耐えきれなくなったのである。まぁ何はともあれ、結果的に無事だったので霧香や佳代は一安心だった。

ひとまず飛鳥達が入る前に、彼女は手早く粗相の痕跡を消して、それが終わって飛鳥達も室内に入り、落ち着けた訳であるが……

「わ、悪かったわ、遥。まさか貴方があんな事になってる何て…」
「もう、最低っ! お姉ちゃんの馬鹿ッ! その上初対面の人にまで……」

冷や汗を垂らしながら必死に謝る霧香の姿と、顔を真っ赤にさせて、飛鳥から目を逸らしながら怒る遥の構図が出来あがっていた。
遥は姉同様かなりの美少女と言える容姿をしているが、姉妹だけあって似ている所もあったが、要所要所は違っていた。猫のような釣り眼に、肩より少し長い程度の赤みかかった茶髪。興奮からか、息に合わせて弾む小ぶりな胸と、羞恥心から赤く染まった頬。強く抱きしめれば折れてしまいそうな程細い腰はきゅっとくびれていて、美人とも、可愛いとも取れるちょっと小悪魔チックな感じの男性に非常にもてそうな容貌の少女だった。

彼女はぷんすかと怒っていたが、それでも姉が己の身を省みず、助けに来てくれた事に関しては非常に感謝していたし、ちょっと落ち着きを取り戻すと嬉しい気持ちで、その怒りもすぐに流されてしまい霧香に抱きついた。

「助けに来てくれてありがとう、お姉ちゃん」
「良いのよ、貴方が無事でよかったわ」

抱き合ってお互いの無事を喜びあう二人の姿は、思わず目に涙を誘う物で、佳代はぐすんぐすんっと涙ぐみ、猛も嬉しそうに笑っていたが……

「どうしてこう、最初からこういう風に感動の再会にならんもんかね?」
「な。彼女の場合仕方ないのかもしれんけど、何と言うか、ねぇ」

飛鳥と健二の二人は、猛と佳代の再開時の事を思い出し、顔を寄せ合い首を傾げていた。

「…そういや冴子さんは大丈夫かな」
「あーそうえば会って無いな。でもあの人なら心配いらないと思うけど」

二人の姿を見て、飛鳥は自身の姉的存在を思い出し、眉根を寄せて呟く。
健二にとっても飛鳥の上げた名は無関係では無いが、彼女もまた親友程では無いが、とんでも無く強い事は間違いないので心配無いだろうと判断する。
飛鳥もそれに賛成したい所ではあるが、気になってしまうのは仕方が無い。とは言え彼女の強さは知っているので、多分大丈夫だろうとは思う。

「それに見つかったら完璧正座だもんな。俺達が同じ学校にいるのまだ知らない筈だし」
「だよなー、全く先輩は古風と言うか、爺むさいと言うか、もうちょい今風のお仕置きにして欲しいもんだね」

本人を前にすれば絶対に口にできない事も、当人がいないからこそ言える。
彼女が聞けば、恐らく額に青筋浮かべて、説教一時間は間違い無いだろう。特に健二。

「今風のお仕置きってどんなだ? SMか? 嫌だぞ、俺は。それなら正座の方がましってもんだ」
「どうしてお仕置きと聞いてSMが出てくんだよ!? あ、いや…間違っては無いな。そういう嗜好の人もいるし。猛とか間違い無くその素養があるぜ。Mの方で」

二人の脳内に、黒のボンテージ姿で鞭を携えた姉的存在、毒島冴子の姿が浮かび上がる。ぴしゃっ、と鞭を振るう姿は何だか洒落になっていないので、すぐに打ち消す事になったが。
そして二人が心配そうな顔で知り合いの事を心配していると思い気にかけていれば、SMなどと言う単語が出て来た上に自分にあらぬ疑いまでかける健二に、話を聞いていた猛が必死に否定する。

「ちょ!? 難しい顔して話してると思ったら何でそっちに話が飛ぶの!? というか僕そんな趣味ないからね!? 少しでも飛鳥君達を気遣った僕が馬鹿だった! 大体何時も何時もどうして真面目な話や深刻な話がすぐに変な話に行くんだよ!?」
「おいおいあんま大きな声出すなよ」
「そうだぞ、奴等が寄ってきたらどうするんだ。興奮してないで落ち着け」
「僕だって好きで大きな声出してる訳じゃ無いよ!? 何で僕が悪いみたいになってんの!? その困った奴だみたいな目で見て来るの止めてくれる!?」

やれやれとか、しょうが無い奴だ、とでも言いたげな目をする飛鳥と健二に、猛は心の底から突っ込む。
そして三人のやり取りをきょとん、とした顔で聞いていた佳代が、小首を傾げて口を開いた。

「飛鳥君、SMって何ですか?」

三人がぴたり、と停止する。
飛鳥はちょっと困ったように頬を書いてから、おもむろに口を開いた。

「んー……一人では決して行えない表裏一体とも言える特殊な行為とでも言うべきか。ある種の特殊なせいへ…もとい嗜好を持つ人達が好んで行う行為の事さね。相手の事を思って(鞭や様々な道具と言葉で肉体的にも精神的にも)傷つける事で己を高め(性的な意味で)、される方は傷付けられ、苦しみを与えられる事により、高みへ登る(性的なry)。互いが互いを高め合う行為の事さ、うん。悪いけど俺もあんま詳しく無いんだ」
「成程…切磋琢磨し合うような感じですね! 凄いです! 私もSMできる相手を見つけたいです!」

ぶはっ、と飛鳥と飛鳥の話を聞いてにやにやと笑っていた健二が噴き出し、猛は顔を真っ赤にして怒り飛鳥に飛びかかる。

「あ、飛鳥くぅぅぅぅぅぅんッッ!? 君って奴は、君って奴はぁあああああ!? 佳代ちゃんに何て事言わせてるんだよぉぉぉぉぉお!?」
「やだなぁ猛君。そんな顔真っ赤にして。やーらしい事でも想像しちゃったのかな?」

ひらりと猛をかわしてけらけらと笑う飛鳥の言葉に、猛は更に顔を真っ赤に染める。
まぁ何とも何時ものやりとりを繰り広げる4人であったが、今回この場にいるのは彼等だけでは無かった。

感動の再会できつく抱き合っていた姉妹の片割れ、霧香の方は米神に青筋浮かべつつ我慢していたが、此処に来てついに堪忍袋の尾が切れた。

「好い加減にしなさいっ! こんなに騒いでちゃあの化け物達を引き寄せちゃうだけでしょうッ!」

好い加減にしなさいっ! でぴたりと静まった事により、後半の彼女の言葉が校舎内に響き渡る。
でしょうっ、でしょうっ、でしょうっ、とエコーまでかかったそれは、奴等を引き付けるには十分過ぎる声量だった。

「お姉ちゃん、声大きすぎ」
「ちょっと待ちなさい! 今のは私のせいじゃないわよ!? その子達が大声で騒ぐからでしょ!? 貴方達もやれやれみたいな動作をやめなさい! そして、熊田君、その目は非常に腹立たしいから止めなさい!」

遥の白い眼が霧香に向けられ、必死に弁解する霧香が飛鳥達に視線を向ければ、飛鳥と健二が肩を竦めて苦笑しているのが目に入る。
そして猛はそんな彼女を、いたく同情的な、同士を見るような目で見つめるのであった。





そして同じ頃。
学校からチームを組んで脱出すると言う事に決まり、今まさに職員室を出ようとしていた集団の中にいた黒髪の美少女が、小さく呻いて足を止めた。

「どうかしたんですか? 毒島先輩」
「……いや、何だか今、弟分達を無償に叱りたくなったような気がしてな」

大方またあの二人で馬鹿をやったんだろう、と小さく苦笑して少女は手にした木刀を強く握るのであった。











あとがき
今回はちょっと悪ふざけ多め。やりすぎ感がありますが、おふざけルートなのでちょっと多めに見て欲しいw
流石に毎回こんなんでは無いので! 今回だけです! 
ふざけさせるのもかなり難しいしそうそう案も出てきません^^;

それと今回もおふざけ更新なのは、風の聖痕はかなり有名なようで、結構色んな方が同一視してしまったようなので、先にこっちを進めました。
霧香さんの戦闘能力は、原作の麗以上冴子未満です。それでもかなりの強さですけどね^^: これくらいできないとあの妹を助ける為に学校へ行くと言う発想自体出てこないんじゃないかと。出ても絶対辿り着けるとは……。 

それとちょっと本編の方でクロスボウの発射音とか撃ち方何かが分からず、調べてる最中と言うのもありまして@@;

最後に本編で原作組の方をどの程度書くかも迷っていますね。原作組の高城邸までの展開は基本的に原作と同じような感じにしようと思っているので、原作を知らない方の為にもきちっと描写スベキなのか、ストーリーを進める為に大幅カットで合流した時に彼等からこんな事があったよー、何て感じで纏めて描写しようかなとも思っているのですが……迷います。

それとIFも含めればもう20話を超えましたね。
此処までこれたのは皆様のご感想があってこそだと思います。これからも頑張っていきたいです。

追伸
…友人がやっていたあるゲームを覗き見たせいで危うく本気でロリに目覚めるとこでした。コータの気持ちがよくわかりました、ええ。









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