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No.20336の一覧
[0] 【習作】がくえんもくしろく あなざー(オリ主・ちーと) 更新停止のお知らせ[磯狸](2010/08/19 12:29)
[1] ぷろろーぐ[磯狸](2010/07/24 10:28)
[2] 第一話[磯狸](2010/08/05 10:06)
[3] 第二話[磯狸](2010/07/16 04:28)
[4] 第三話[磯狸](2010/07/20 10:13)
[5] 第四話[磯狸](2010/08/12 16:04)
[8] 第五話・改訂[磯狸](2010/07/20 00:33)
[9] 六話[磯狸](2010/07/18 19:52)
[10] 七話[磯狸](2010/08/12 16:30)
[11] 八話[磯狸](2010/07/20 10:04)
[12] 第九話・微改訂[磯狸](2010/07/22 09:42)
[13] 第十話[磯狸](2010/07/22 19:28)
[14] 第十一話[磯狸](2010/07/23 10:36)
[15] 第十二話[磯狸](2010/07/24 22:50)
[16] 第十三話[磯狸](2010/07/27 18:02)
[17] 第十四話[磯狸](2010/08/03 09:00)
[18] 第十五話[磯狸](2010/08/04 12:35)
[19] 第十六話[磯狸](2010/08/10 21:26)
[20] 第十七話[磯狸](2010/08/12 23:43)
[21] 4話分岐…生存ルートぷろろーぐ。別名おふざけルート 注意書き追加[磯狸](2010/08/05 22:47)
[22] 一話[磯狸](2010/07/20 22:12)
[23] 第二話・あとがき少し追加[磯狸](2010/08/05 22:45)
[24] 第三話[磯狸](2010/08/08 04:44)
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[20336] 第一話
Name: 磯狸◆b7a20b15 ID:9ed37a25 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/08/05 10:06



 朝風呂で汗を流し、制服に着替えた飛鳥が居間へと向かうと既に朝食が食卓に並んでいた。
あさりの味噌汁、たくわ、卵、あじの開き、ほうれん草のおひたし、ほかほか白米と言う定番のものであるが、非常に美味しそうである。
宗十郎も既に座って飛鳥を待っていたらしく、茶を啜っている。

「あれ、あさり何かあったか? 昨日夕飯作った時には無かった筈だけど」
「これは昨日お前が部屋に籠った後、足立さんが持って来てくれたんじゃよ。潮干狩りに行って来たらしくての。お裾分けじゃそうじゃ」
「潮干狩りぃ? ……あぁ、潮干狩りの時期って今頃だったか」
「ちょっと早い気もするがの。じゃが美味しそうで大きなあさりじゃ。冷めないうちに頂こう」
「あぁ」

ちなみに夕飯は当番制で、日によって食事を作る係りは違うのだが、朝食は朝の稽古でより相手にダメージを与えた方が作らなくてすむ。
今まではほとんど飛鳥が作って来ていたが、一年前辺りからはだいたい五分五分の確立…最近は宗十郎が作る事の方がちょっと多い。今日は飛鳥の方が宗十郎の身体に攻撃をいれた数は多かったので、宗十郎が作る事になったのだ。

頂きますと、一声かけて食べ始める。
まずは先程話題に上がった味噌汁を軽く啜った。あさりの出汁のよく出ていて、非常に美味しい。

「お、美味いな。あさり何か久しぶりだし」
「うむ、良い味じゃ。足立さんに感謝するのじゃぞ。そうえば飛鳥、もう高校に上がって一週間くらい立つが学校の方は慣れたか?」
「ん? まぁ慣れたと言えば慣れたが」
「何じゃはっきりせんの。いい加減、好きな女子の一人や二人出来んのか。お前さんは湊さんに似て顔だけは良いんじゃからそれは活かさんでどーするのじゃ」
「顔だけって何だ顔だけって。別にいらねーよ。付き合っても面倒な事ばっかだし」

朝から妙な話題を振って来る宗十郎に、飛鳥は露骨に顔を顰めて白米をかっ込んだ。
飛鳥とて、年頃ではあるし、男だ。当然美人や可愛い子は好きだし、街何か歩いていて好みの子がいたら何時の間にか眼が追っている時もある。
だが付き合うとなると話は別だ。飛鳥は宗十郎が言うように、かなりの美形と言える容貌をしている。

どうも母の血を色濃く継いだらしく、母譲りの黒髪に、母と同じ黒曜石の瞳。細い柳眉に、非常に形の良いそれぞれのパーツにその配置。
一見すると細面の、優男に見えるが、怜悧で挑発的な眼差しと、強い意志を宿した瞳、そして何処か飄々とした雰囲気が、弱々しさを微塵も感じさせなかった。
確かに顔だけなら非常に優良物件。滅多に見れないくらい美形。街で退屈そうに突っ立っていれば、その容姿に釣られてくれるだろう。
飛鳥の場合、口を開かなければ、と言う条件が付くが。



 飛鳥の言動は、歯に衣を着せない上に、正直に顔に出すのである。加えてかなりの面倒くさがり。腹芸や感情を隠したりもできるが、態々相手に気を使ってそんな事をするような性格では無い。
今まで飛鳥が付き合った少女は4人。どれも相手から告白して来た物で、飛鳥は断る理由も無かったのと言うのと、相手が自分好みであった事、男女交際に興味もあったと言うのと、どの娘も、飛鳥が相手を何とも思って無くても、「今は好きじゃ無くてもこれから好きになってくれるかもしれないから」などと言うので承諾した。


同級生一人。年上二人。後輩一人と付き合ったが、長く続いて二カ月である。どの娘も飛鳥からすれば面倒この上無かった。登下校を共にするやら、学校帰りの寄り道やら、
休日のデートなど。返さなくともうざい程やって来る電話やメール。



付き合い始めて最初こそ、それなりに付き合ってやっていた。手を繋がれたり、腕を組まされるなど、くっつかれたりされたりするのも…いや、これは柔らかいし気持ちいいしで悪くは無かった。が、それ以外に良い所は何も無かった。
相手の要求はどれもこれも面倒だし、相手に対する良い感情があればそういのも別だったのかもしれないが、あいにく飛鳥が付き合った子達には、飛鳥の気持ちをそう言った方に持っていく者はいなかった。



そして飛鳥は面倒とか、相手の事を何とも思っていないと言う事を全く隠そうとしなかった。言葉にも態度にもそれは出た。
少女達は、付き合っていれば、自分の事を知ってくれれば飛鳥も自分を好いてくれると甘い幻想を抱いていたのだろうが、そうはいかなかった。

露骨に顔を顰め、”面倒”、”友達と行けば””用事がある”などと何か誘うたびにそう言われ、何時まで経ってもそれが変わる事は無かった。
なまじ顔が整っているだけに、飛鳥の嫌そうな顔や、顔を顰めたりするのは言動と相まって非常に相手にダメージを与える。



何度となく飛鳥の言動と表情で心を痛め続けた少女が、女の子最大の武器、涙を流して「私の事、まだ何とも思ってくれて無いの!? もう付き合って○日(個人により多少の差あり)も立つんだよ!?」と言われても微塵の躊躇いも無く、即座に且つめんどくさい女だな、とばかりに顔を顰め、”何とも”、と返す程。飛鳥、最低である。

若干差異はあれど、四人共こんな感じで泣きながらもう別れるーっと去り、少女達の心に深い傷を残しただけであった。
それに飛鳥らしいけど酷く無い? と苦笑する友人達に、対する飛鳥のコメント。

「好きでも無くて良いって言ったのはあいつ等だし。付き合ってもそれが変わらなかっただけさね」

とまぁそんな感じで、飛鳥はもう付き合うとか面倒だから良いやと言い、以後その言葉通り告白はされても付き合う事は無かった。
それに対して友人達は苦笑しながらそれが良いね、と心に傷を負った少女達の傷が癒えるのを祈るのであった。

「まぁ好きになれなかったんじゃ、しょうがないよね。きっと飛鳥も本当に好きな子ができればそういのも面倒じゃ無くなると思うよ」
「そんなもんかねぇ」

友人の言葉に半信半疑にそう返し、それ以後飛鳥に異性関係の色めいた話が浮上する事は皆無であった。



「嘆かわしいのぉ…。儂、もうお前の孫を見るのが最後の楽しみみたいなもんなんじゃが」
「そうかい…、なら精々長生きするんだな。当分できそうにねぇや」

 呆れたように首を振る宗十郎だったが、続いて出てきた予想外の飛鳥の言葉に、嬉しそうに目元を和ませた。
飛鳥からすれば何の気無しに、自然に出た言葉なのだろうが、孫に長生きするようになどと言われるのは、祖父からすれば非常に嬉しい事である。
それが、無意識…自然と出たような言葉なら尚更だ。ちょっと泣きそうになって目元を潤ませる宗十郎だったが、続く飛鳥の言葉でその感動も吹っ飛んだ。

「あ、作るだけなら訳無いぜ。適当に相手作って結婚すれば良いんだし」
「そういう事は愛情を育んだ相手とせんかっ! たわけ者! 愛の無い相手との子供なぞ、その子が余りにも不憫じゃろうが!」

飛鳥、最低である。
実にあっさりとした口調が、本気で言ってるようにも聞こえて非常に性質が悪い。いや、飛鳥としては正にそれでも構わないのだろう。
激昂した宗十郎が、だぁんっとテーブルを両手で叩いたせいでおかず達が中を舞ったが、飛鳥は慌てず騒がず、味噌汁さえ一滴も残さず見事に回収する。無論、宗十郎も。

「冗談冗談」
「お前の冗談は冗談に聞こえんのじゃ。良いか、くれぐれも愛する者との孫をこさえるんじゃぞ! 絶対じゃからな!」

へらへらと笑う飛鳥に、宗十郎はくわっと眼を見開いて、最早懇願とも言って良い程必死な祖父に、飛鳥はへいへいと味噌汁を啜って生返事を返す。

「ど、何処で育て方を間違ったんじゃろうか…」
「考えるまでも無いと思うがな」

がっくしと俯いて飛鳥の成長ぶりを振り返る宗十郎に、飛鳥は即座に半眼を向けるのであった。
これ以上このやり取りは不毛、という事でテレビへ視線を向けた。美人なニュースキャスターが次々とニュースを読み上げているが、汚職だの何だのとつまらない政治関連の話だけで特に気になるのはやっていない。



「ほれ、飛鳥。テレビなど見てないで早く喰わんと遅刻じゃぞ」
「あ、もう40分になるのか」

 宗十郎の言うとおり、テレビに表示されている時刻は7時40分となっている。何時ものペースで歩くのであれば7時45分に出なければ遅刻してしまう。
朝から走るのは勘弁であるし、この時期は桜並木が非常に綺麗なので、そういった景色を楽しみながら歩きたい飛鳥としては、重要な問題である。
慌てて食べるペースを上げて、食事を口へと運びこむ。それでも良く噛んで、しっかり味を噛みしめながら食べ切る。

「ご馳走様ー」
「うむ」

茶碗を台所の流しへ運び、脱衣所へ行って歯を磨き、顔を洗う。容姿には無頓着であるので、髪のセットとかそういうのは皆無である。元々の髪質か、自然髪が逆立ってしまうのでセットをしなくてもセットしているように見えている。朝のセットに時間をかけている者からすれば、天然美形であるこの男は非常に赦しがたい存在であろう。

「んじゃ、行ってきまー」
「うむ、気を付けて行って来るのじゃ―――待て、飛鳥ぁ!」

鞄を担いで、茶を啜る宗十郎の脇を抜けて行く飛鳥に、宗十郎が笑って送り出そうとしたが、不意に宗十郎は猛烈に不吉な予感に身を襲われて飛鳥を呼びとめた。
その余りに突然の声と、かつて無い程真剣そうな祖父の顔に、飛鳥は二重の驚愕に眼を丸くして突然怒鳴った祖父に話しかけた。

「何だよ、急にでかい声を出して。別に怒られるような真似はしてないぞ?」

不思議そうな顔をする飛鳥を、酷く真面目な顔で凝視し、宗十郎は難しい顔で首を振った。

「……そうじゃない、そうじゃないんじゃ」
「だったら何さ」

その宗十郎の様子に、飛鳥も只事じゃ無さそうだと表情を引き締め、鋭く眼を光らせて問いかける。
宗十郎もまた厳しい表情で考え込み、少しして口を開いた。

「―――飛鳥、非常に不吉な予感がした。お前の刀を持って行け」
「……分かった」

その言葉に驚きに眼を見開くも、飛鳥は素直に頷いて踵を返した。
直感やそういった物は、飛鳥も優れている。宗十郎の言葉を突っぱねる事もできたが、素直に従った方が良いと本能的に悟ったのだ。でなければ、学校に刀を持って行くなど承諾しない。


宗十郎は飛鳥の力を良く知っている。仮に武器など無くとも、非常に高い戦闘能力を持っている事を誰よりも良く知っている。
例え相手がどんな相手だろうと、飛鳥を殺るどころか手傷を負わせるだけでも非常に困難である事も分かり切っている。だが、そういうのとは別に非常に嫌な予感がしたのだ。何か、大変な事が起きるような。以前、飛鳥の両親が事故で死んだ時にも同じように感じたものだ。


飛鳥に限って、とは思うが冷や汗が流れる程嫌な予感は拭えない。
刀を持たせた所でどうなると言う訳でも無いだろうが、飛鳥の戦闘力を最大限発揮するには刀は必須。
何より、宗十郎自身が、飛鳥が刀を所持していれば安心できる。



 戻って来た飛鳥の手には、宗十郎が飛鳥を一人前の剣士として認めた際に、その証として授けた刀が握られている。
鍔つ柄に、見事な銀の装飾を施されており、鞘は光輝く黒漆。刀身の長さは75cmと通常の刀より少々長めの、反りは控えめの打刀である。飛鳥は柄に手をかけ、ゆっくりとそれを引き抜いた。居間に入り込む朝日に、反射し、鈍く輝く刀身は見る物を引きこむような魔性の輝きを放つ、極めて美しい直刃。その輝きはもはや妖気と言って良い程に人を魅了して止まないそれ程の輝きを秘めたものであった。


見れば見る程、人を惹き付ける魔性の刀。惰弱な精神の者がこの刀を手にすれば、その刃に魅入られ、何かを斬りたくて溜まらなくなる。その衝動に逆らえず、いや逆らう気さえ沸かずに獲物を求め彷徨う血に飢えた獣となる。そうなっても全くおかしく無い、むしろ自然の事とさ思える程、その刀は妖しく輝いていた。
その刀をひとしきり眺めてから、飛鳥は実に慣れた―――ごく自然な動作で鞘に収め、改めて宗十郎を見据えた。

「…素直に頷いて置いて何だが、本当にいるのか? いや、俺も持って行った方が良いと何かが訴えかけるような感じはするが…こいつを使う事になるような事態が?」
「お前はまだ若い。じゃが第六感もかなり優れている。そう言った感じがした時は、自身の直感に従うものじゃ。お前も剣士であるのだからそういう直感がどれだけ大事か身に染みていよう。杞憂であればそれで良い。だが、儂だけでなくお前も感じている以上、杞憂と言う可能性は……」

それ以上は不要だった。飛鳥は黙って模擬刀や刀を持ち運ぶ時に用いている本牛革の黒い刀剣ケースに刀を仕舞い、肩にかけた。

「飛鳥、分かってると思うが……」
「あぁ。俺は命を狙って来るのに対して慈悲をかけてやる程お人好しじゃねぇよ」
「一瞬の判断が何を招くか分からん…。心せよ」

何時に無く真面目に言葉を紡ぎ続ける祖父に、飛鳥は宗十郎が感じた不吉な予感がどれ程の物だったのか想像もつかず、顔を引き締めて頷いた。
宗十郎は重々しく頷き、それを見て歩きだす飛鳥の背中を追って後に続いた。

「じゃあ、今度こそ行って来る」
「うむ―――気を付けるのじゃぞ」

宗十郎を見据え、何時ものように笑う飛鳥に、宗十郎もまた笑みを浮かべ、万感の想いを込めた言葉を送って歩き出す、すっかり大きくなった飛鳥の背中を、見えなくなるまで見送った。

「――――ちゃんと、帰って来るんじゃぞ。馬鹿孫」





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