1.一人でも冴子を助けに行く
→2.井豪たちと一緒に屋上に行く
冴子のことは気が気でならないが、辿り着けずに死んでしまっては意味がない。あたしは冴子を信じて井豪たちに同行することにした。
どのみちあたし一人では、保健室に行くのは無謀すぎる。途中で<奴ら>に出遭ってメインディッシュになるのが関の山だろう。
いくら冴子が心配でも、関係無いところであたしが死んで、冴子に余計な心労をかけるわけにはいかない。
「分かったわ。意地を張っている場合でもないし、焦ってもいいことは無いものね」
一度大きく息を吐いて気持ちを切り替える。
気付けば階下から、あたしたちが通ってきた道の向こうから、<奴ら>の不気味な唸り声が近付いてきている。
「あたしを追いかけてきた<奴ら>もじきにここに来る。早く屋上に向かいましょ」
「麗、孝、行くぞ!」
「分かったわ!」
「……ああ」
井豪の呼びかけに麗は快活な返事を返したが、小室少年の返事はどこかぎこちない。
でも構っている暇はなく、あたしたちは<奴ら>から逃れて屋上への道を進んだ。
扉を開けて屋上に出たあたしたちは、一望できる風景の惨状に愕然とした。
火事がそこかしこで起こっているのか、幾条もの黒い煙が狼煙のようにたなびき、パトカーのサイレンと人の悲鳴が風に乗って流れてくる。
「……まるで終末ね。映画の中にいるみたい」
ぽつりと呟くあたしの横では、井豪たちが呆然として立ち竦んでいる。
「一体何が起こってるんだ……」
小室は自失した面持ちで屋上から見える風景を凝視している。
「こんな状況じゃ、警察が電話に出ないはずだ……」
歯を食い縛り、眉をきつく寄せた苦々しい表情で井豪が呟く。
「なんなのこれ!? 一体何が起こってるのよ!」
麗が泣きそうな潤んだ眼で、井豪と小室に詰め寄っている。
遠くからプロペラの音が聞こえた。
風で舞い上がる髪を押さえ、あたしは空を見上げる。
「ねえ、教えてよ! 朝までは……ううん、ついさっきまではいつも通りだったのに──ヘリ?」
遅れて気付いた麗が空を見上げた。
迷彩服姿の人員が見えるくらい近くを、編隊を組んだヘリが通過していく。
「きゃあっ!」
「麗!」
手を伸ばそうとした小室より先に、傍にいた井豪が強風でよろめいた麗を支えた。
小室が辛そうな顔で手を下ろすのを見て、あたしは理解した。
きっと小室は麗のことが好きなのだ。麗に片思いしている。しかもその彼氏が親友で、怒ることもできないのだろう。
あたしも冴子がもし彼氏を作ったら、どういう行動を取るのか自分でも予想がつかない。考えただけでも胸がぎゅっと締め付けられたようになって、寂しく居たたまれない気持ちになるのだ。
「自衛隊のヘリみたいね」
気持ちを切り替え、空を見上げて、機体に書かれた陸上自衛隊という文字を確認する。
「どこから来たんだ? 近くに駐屯地なんかないのに……」
小室の呆気に取られた声がした。
ヘリはまるで戦争に行くかのような様子で、あたしたちの近くを通過していく。
「助けてーっ!」
「無駄だ」
遠ざかっていくヘリに向けて手を振る麗を、井豪が制する。
「何でよ! 校舎の中にだってまだ生き残りはいるでしょう!? あたしたちを助けに来たんじゃないの!?」
「孝がどこから来たんだって言ったろう? 確かにその通りなんだ。きっと俺たちを助けるのとは別の特別な任務を与えられてる。わざわざ寄り道する余裕なんかない。……そうだよな?」
どうしてそこで部外者のあたしに振る。
でもまあ、蚊帳の外に置かれるよりかはいい。話を振ってもらったことだし、頑張って会話に参加しよう。
……冴子を放って何やってんだろ、あたし。
虚しい気持ちを抱えながらあたしは校庭を見下ろす。
「生存者が襲われてるのに、ヘリはそれを無視してる。そうである以上、あたしたちにもしばらく救助は来ないと考えた方がいいでしょうね」
振り返って三人に告げる。
「さっきまでひっきり無しに悲鳴が響いてたのに、間隔が疎らになってる。皆殺されたのよ。そして<奴ら>になった」
井豪がうめく。
「……そうか。だから<奴ら>か」
「どういうこと……?」
理解できなくておろおろする麗に、井豪は言う。
「今の状況は映画やゲームでよくあるゾンビで溢れ返った街と同じだ。まさか現実でフィクションと同じように呼ぶわけにもいかないだろ?」
校舎から一際大きな断末魔の悲鳴が響いてきた。
耐え切れなくなったのか、麗が目を閉じて現実逃避をするように耳を塞いで蹲る。
「もう嫌……何なのよっ!」
「くそっ、壊れて……! これじゃ<奴ら>が入ってくる!」
少しでも<奴ら>の侵入を遅らせようと校舎に続くドアの鍵を閉めようとした小室が、焦燥に満ちた表情で叫んだ。
額に汗を滲ませる井豪に小室が詰め寄る。
「永! どうするんだよ!」
「……天文台に上って、階段を塞ぐのはどうだ?」
「それがいいでしょうね。屋上は広いから逃げ回れるけど、その分一度に多くの<奴ら>を相手にすることになる。囲まれたら危険よ」
「でも、それからどうするの? 救助が来ないんじゃ立て篭もっても意味ないわよ」
俯いていた顔を上げて心配そうな顔をする麗に、あたしは記憶の底を探って答える。
「天文台には消火栓があったはず。屋上に<奴ら>をおびき寄せて、集まったところを消火栓の水圧で薙ぎ倒せばいいわ。いい加減冴子と合流したいし、その隙に校舎内に戻りましょう」
「校舎内に戻るの? 天文部が使ってるんだから、泊まり込みはできるはずよ。救助を待った方が良くない?」
「確かに、屋上に<奴ら>が来た後なら校舎内の方が安全かもしれないな。でも救助を待つ方が現実的か……?」
井豪が顎に手を当てて思案する。
三人の中では井豪がリーダーシップを取ることが多いらしく、彼が音頭を取った。
「よし、とりあえず天文台に上がって階段を塞ぐ作業に入ろう。どちらにしろ、いつ<奴ら>が上がってくるか分からない。どうとでもできるように、準備を早めに済ませるんだ。……君もそれでいいな?」
「ええ。構わないわ」
救助を待たれるのは困るけど、駄々を捏ねて纏まりかけた意見を白紙にしてしまっては、かえって冴子のもとに行くのが遅くなる可能性が高い。
あたしは逸る気持ちを抑え、三人について天文台に駆け上がった。
天文台に着くと、まず抱えていた弓とスクールバッグを置く。
麗と二人で天文台の寝泊り室を探索し、天然水のペットボルとお菓子にライターを見つけた。流しとトイレもあるので、麗の言う通りしばらくなら泊まり込みもできそうだ。
井豪と小室が慌しく階段を塞ぐための机や椅子を運び出しているのを見ながら、消火栓をいつでも使えるように試行錯誤しながら準備をする。
作業が完了して、強張った肩を解した。
「ふう……」
横に立った麗があたしに顔を向けた。
「スクールバッグ持って来れたのね。私たちはろくに何も持って来れなかったのに」
「最初は冴子と一緒にいたから。悪い言い方になるけど、クラスメートが先に逃げ出して襲われた分、準備する時間があったのよ」
寝泊り室の入り口に出たあたしたちの視線の先で、井豪と小室がてきぱきと机と椅子を階段の前に並べ、セロテープで固定している。
セロテープの強度を心配する小室に、井豪がぐるぐる巻きにした場合の強度の強さを説明していた。
仲が良さそうな二人の様子を見ながら、あたしは麗に顔を向けずに言う。
「ところでさ。いつまで他人の振りするつもり? 去年まで仲の良かった友達にそういう態度取られるのは、ちょっと辛いんだけど」
同じようにしていた麗は一瞬身体を震わせると、居心地悪そうに身動ぎした。
「……ごめん。留年の話題には、あんまり触れられたくないの」
「そっか。それなら仕方ないね」
息を吐く。
麗には麗の事情がある。あまり首を突っ込むのは野暮というものだろう。漫画に描かれていたような気もするけど、実はよく思い出せない。何故か紫藤先生が関係していることだけ覚えてる。
どうしてだろう。もしかして、紫藤先生も何か冴子を危険に晒すような事件でも引き起こすんだろうか。だとしたら要注意だ。
冴子はあたしが守る。……いつも守られてるのはあたしだという事実は置いておく。いつか本当に守れるようになるんだもん。ぐすん。
作業が終わって井豪と小室があたしたちの傍にやってきた。
それを横目に遠くから校舎内へと続くドアを眺めれば、ドアが僅かに開いている。
鍵は閉まらないけどドア自体は小室がちゃんと閉めていたはずなのに、何で空いてるんだろう。
首を傾げながらドアを凝視していると、ドアの隙間の暗がりから血まみれの顔が覗いているのを見つけてしまった。
「……うわぁ」
ホラーじみた光景に思わずぞくりとしてしまう。怖いよ。
「何してるんだ? ……ああ、来たのか。間一髪だったな」
問い掛けてきた井豪があたしの視線を追って、屋上のドアから覗く顔に気がついた。
ドアがゆっくりと開かれ、中からぞろぞろと<奴ら>が屋上に出てくる。
「バリケードはしばらく持つのよね?」
麗の問いに、井豪が落ち着いた表情で頷く。
「ああ、さすがにずっとというわけにはいかないが、これくらいなら問題ないだろう」
原作ではそろそろ彼が死ぬ頃だ。でも、現実での彼は噛まれていないから、今ここで死ぬことはない。冴子のことでもないのに、何故かそれが無性に誇らしい。
あたしは若干上擦った声音で言った。
「じゃあ、<奴ら>が集まるまで休憩しようか。よく考えたら自己紹介もまだだったでしょ?」
何故か、あたしの提案に三人ともきょとんとして顔を見合わせた後、申し合わせたように噴出してくすくす笑っている。
「何よ三人して笑って……」
膨れっ面になるあたしに、まだ笑みの残る顔で井豪が言った。
「いや、別に何でもないんだ。ただ、君が<奴ら>のことを何でもないことみたいに言うから」
「……むう」
まあ、非常時だし、短時間とはいえ<奴ら>から逃げ惑うのはとても濃い時間だったから、あたしの変な発言で緊張の糸が切れて気が抜けたというところか。
そういうことなら仕方ない。
気を取り直した井豪が先に自己紹介をしてきた。
「井豪永。二年B組です。こっちの二人は同じB組の小室孝と宮元麗」
「御澄嬌。三年A組よ」
「先輩だったんですか!」
散々タメ口を叩いていたことに井豪が焦った声を出した。
あたしは脳内フォルダーからお気に入りの冴子の笑顔を再生し、意識して似せて浮かべる。
「こんな状況だし気にしないで。よろしくね、井豪君。小室君。宮本さん」
何故か井豪が目を見開き、視線を彷徨わせて顔を逸らした。
え、何その反応。
「永、どうしたの?」
「いや! 何でもない! 何でもないんだ!」
きょとんとした表情の麗に顔を覗き込まれた井豪は、急いで首を横に振った。
「変なの、永ったらそんなに慌てて」
くすりと笑う麗にも、井豪の反応の意味が分からないようだ。
そんな井豪と麗を怪訝そうな顔で見ていた小室が閃いたかのようにやおらぽんと手を打った。
……意味分かんない。
□ □ □
屋上には着々と<奴ら>が上がってきていた。
バリケードの前が少しずつ<奴ら>で埋まっていくのに戦々恐々としながら、小室が井豪に声をかける。
「おーい、まだかー!?」
「まだ<奴ら>が少なすぎる。もう少し引き付けるぞ」
井豪の返事に焦れた様子で同じ場所を行ったり来たりする小室に、天文台の壁際に座り込んでいる麗がため息をつく。
「檻の中の熊みたいにうろうろ歩き回らないでよ。孝は永の言うことに従ってればいいのよ。永はいつも正しいんだから」
「……くそっ、そうかよ!」
どうやら小室少年は荒れているようだ。
気持ちは分かる。好きな相手に冷たくされて、しかも別の男ばかり見られていたらそりゃたまらないだろう。
井豪と麗を見ていると、片思いをしている親近感もあって小室があまりにも哀れに見えてくる。
元々原作では死んでいた井豪を助けたあたしが言える台詞ではないが、あたしは小室と麗がくっつけばいいなー、と何となく思っていた。
というか、このまま行くと冴子と合流してから、傷心を慰められたりした小室がころっと冴子に転がりそうで、とても怖い。
つい井豪のことを助けたけど、改めてよく考えたらあたし自分の首を自分で締めてるじゃないか。
仕方ない。小室と麗をくっつけるためにここはおねーさんが一肌脱ぐことにしよう。
各々が休憩している間、井豪は屋上全体を見ながら麗の機嫌を取り、小室を宥めてさらには一人だけ部外者であるあたしが会話に参加できなくて退屈しないように気を使うという離れ業を、あたしたちが休憩している間中延々とやっていた。
君はどこの超人かと言いたい。
「井豪君、ちょっと休憩した方がいいんじゃない? さっきからずっと気を張り詰めっぱなしでしょ」
「先輩? いえ、これくらい大丈夫です」
「休める時に休んどきなよ。今は平気でも、疲れって糸が切れたみたいに後からどっと来るんだからさ」
さり気なく小室と麗から離れながら、渋る井豪を説き伏せる。
「小室君、あたしたち少し休憩するから見張りよろしくねぇ~」
去り際に小室に向けてウインクすることも忘れない。
気付けばよし、気付かなくてもそれはそれで構わなかった。
「あ、永……」
麗の寂しそうな声が聞こえる。
これも冴子のためだ。麗は今のうちに小室と仲良くなって、小室の冴子フラグを折っておけばいいと思うよ。
「貴重な時間なんだから、宮本さんも休んでなさいな」
小室はあたしのウインクに気付かなかったようで、ちらちらとバリケードの様子を窺いながら麗の隣に座り込んだ。
あたしに連れられていく井豪を見送った麗は、小室にちらりと視線を向けると少し離れた場所に座り直す。
バリケードには着々と<奴ら>が集まりつつあるが、それ以上に屋上全体に散らばる<奴ら>自体が増えてきている。
やっぱり放水の後は強行突破かな、これじゃ。その前にバリケードを破られないようにしないと。
「どんどん階段まで群がってくるぞ。大丈夫なのか?」
「……真面目ね。いつもはやる気ないのに」
不機嫌そうな顔のまま横目で見てくる麗に、小室は親指でバリケードを指し示す。
「この状況でやる気なくしてどうなるよ?」
バリケードの向こう側では相変わらず<奴ら>が無数に蠢き、ガシガシと音を立ててバリケードを破ろうとしている。
「ふふっ」
自分の質問のおかしさに気付いたのか、麗が思わずといった風に表情を崩す。
堪えきれなくなったのか、麗の軽やかな笑い声は鈴の音のように鳴り響き空に吸い込まれていった。
憑き物が落ちたようにさっぱりとした顔になった麗は、立ち上がって小室に手を差し出した。
「私、お父さんに連絡してみる。携帯貸して」
「いくら麗のお父さんが警察官だっていったって、110番も通じないんだろ? 無駄じゃないのか?」
久しぶりに自分に向けられた笑顔にちょっと胸がときめいた小室は、思わず顔を逸らして携帯を手渡す。
麗は携帯を操作して耳に当てた。
「大丈夫。普段絶対にかけちゃいけないっていう秘密の番号、知ってるから」
数コール分の沈黙。
「通じた……」
小室が目を見開いてピクリと反応し、身体を麗に寄せて耳をそばたてる。
「本当か、麗!」
井豪が慌てて駆け寄っていった。
「お父さん? 私たち学校で……! 私の声聞こえないの!? お父さん!?」
麗が身を竦ませた。
「電話……切れちゃった」
呆然とする麗は、すぐに気を取り直しリダイヤルしようとするが、通じないようで段々声がヒステリックになっていく。
「今通じたばかりじゃないの! どうして! どうしてよ!?」
「やめろ、もういい!」
錯乱したかのように何度もリダイヤルする麗を井豪が遮った。
肩を振るわせる麗を抱き寄せる。
「もういいんだ、麗」
小室が二人の後ろで、切ない顔で所在なさげに伸ばしかけていた手を下ろした。
井豪に抱かれる麗の眼からは、涙が伝っている。
本当はこの時、携帯はまだ生きていたのだけれど、神ならぬあたしたちにそれが分かるはずもない。
でも、あたしはそれで良かった。そのために、彼らが脱出しようとするのに便乗して、冴子を助けに行くことができたのだから。
□ □ □
消火栓で<奴ら>を薙ぎ払う役目は、あたしと井豪がすることに決まった。小室と麗はそれぞれ金属バットとモップの柄を武器に校内に突入する際の露払いを担当する。
井豪は空手の有段者で、ある程度の自衛はできるが素手なので危険だ。あたしも激しく動きながらでは矢がどこに飛ぶか分からない。
あたしに限っては、役立たずだったので消火栓担当になったと言い換えてもいい。自覚すると挫けそうになるのであたしは頑として認めないが。
射が外れるんじゃなくて、的の方から逃げていくの。下手なわけじゃないの。ないったらないの。
「あの、先輩?」
「はい! 何!?」
考え事をしている時に突然声をかけられて、驚いて飛び上がる。
声をかけられた方向に顔を向ければ、井豪が少し怪訝そうな顔をして立っていた。
「<奴ら>がバリケード近くに大分集まってきたので、そろそろ始めたいんですが。俺が消火栓のホースを持つから、俺の合図で開けてくれませんか?」
「う、うん! 任せて!」
弓とスクールバッグを持って小走りに消火栓の操作盤に向かう。
あたしが移動して準備するのを確認し、井豪が声を上げた。
「回してください!」
「了解!」
消火栓を開く。
カキリという手応えとともに、ぶるぶると消火栓のホースが震え、井豪が持つホースの先から水が吹き出た。
「くっ……!」
井豪は一瞬水の勢いに振り回されかけたが、上手く押さえ込みホースを保持する。
「いくぞ! 麗、孝、離れろぉ!」
小室と麗がバリケードから機微な動きで飛び退るのと同時に、猛烈な勢いの水が奔流となってバリケードに叩き付けられる。
今まで<奴ら>の侵入を防いでくれた即席のバリケードが、あっさりと水の勢いに負けて決壊し、後ろにいた<奴ら>を巻き込んで押し流されていく。
「このまま放水で<奴ら>を叩いて道を作る! 道が出来たら四人で一気に駆け抜けるぞ!」
「分かったわ!」
「……ああ!」
元々仲が良いこともあり、三人の呼吸は抜群に合っていた。それはもう、あたしが空気になるくらいに。
一応これでも最上級生なんだけどなぁ。何でこんなに影薄いんだろ。
栓を回した後何もしないのもアレなので、あたしも放水してる間弓で<奴ら>を狙撃して援護しようと思うが、さすがに射た後で無事な矢を探している余裕は無いだろうし、勿体無いかもしれない。
どうしよう?
1.井豪を援護する
2.何もせずに待つ