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No.19819の一覧
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[19819] 10人目
Name: 狂戦士◆377472df ID:fd7977e5 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/07/26 21:27
 サルドバルト軍は予想していた以上に多く、そして積極的だった。

 けれど。



「ユート様」

「おう、エスペリアか。どうした?」

「戦術について、お聞きしたい事があるのですが」



 守るだけなら余裕。

 そして。

 守りきった時点で俺たちの勝ちは確定している。



「何か気になることでもあったかな?」

「……いつも通りの専守防衛戦術はお見事です。ですが、こんな戦い方は戦術教本になかったのが気になりました」



 確かに、俺が以前借りた教本にもなかったな。



「この戦術は、一体どこで学ばれたのですか?」

「自分で考えた」

「ユート様がご自分で、ですか?」



 話を少しだけ変えよう。

 スピリットの館には風呂がある。



「その理由をお答え下さい、緑コーナーのエスペリアさん」

「ええと、私たちの体は人間のそれよりも疲れが溜まり易いのです。それを癒すために、ですよね?」



 そう。

 エスペリアに背中を流して貰えないのは残念……いや、そうじゃなくて。

 碌に戦わない俺には微妙に分からないのだが、その疲れは野宿では取れないほど深刻なものらしい。


 ここで質問。

 スピリットを駒としか思っていない人間が、「疲れたから」なんて理由でスピリットが撤退することを許すのか?



「つまりこっちが守りを固めてれば、向こうは勝手に疲れ果てて行動すらできなくなる」

「……そう、なりますね」

「なら敵が元気な時に攻めるより、弱ってからタコ殴りにすればいいんじゃね? 俺も現場で指揮を取る以上、街からあんまり動きたくないし」

「……」

「あれ、どうしたのエスペリア?」

「……ユート様は、本当に発想が自由と言いますか、容赦がないと言いますか……」



 褒められてる気がしないのは、気のせいだろうか。

 あとエスペリアさん、素直にえげつないと言ってくれていいのよ?

 光陰で慣れている俺のハートは挫けない。

 あいつら、元気にしてるかなあ。











「よくやった、エトランジェ・『求め』のユートよ。今儂はとても気分が良い」

「……は」



 今日の晩飯何かなあ。

 リクェムが出てくることは確定してるんだよな……

 模擬戦で勝てなくなってきたからって、久々にお茶クイズで挑んでくるエスペリアさんマジ鬼畜。


 え、王様の話? あんまり聞いてないよ?

 それなりに付き合いも長い。

 中身のある話をする相手じゃないのは分かってきたし、適当に跪いて「……は」って言ってあげれば終わるし。

 そう思うと、このヘタレ王に対しての敵意も湧いてこない。

 何だろう、この慈愛にも似た生暖かい気持ちは。



「ふふふ、これで聖ヨトの血は正当な我々だけになった。正しき血筋によって、龍の魂同盟はあるべき姿に戻ったのだ」



 正当な血筋って、マナ消失引き起こしたり同盟相手を吸収したりを平気でするのな。

 戦争がこの世界の人間にとってゲーム感覚だとすれば、ゲームやってる時の俺とやること変わんないじゃん。



「……エトランジェよ」

「は」

「今回の働きは値千金と言えよう、何か褒美を取らせようではないか」



 むう。

 俺、アンタの家来じゃないんだけど。

 褒美って言われても、今欲しいのは自由……流石にそれはまだ早い。

 向こうだって、貴重な戦力を手放したりはしないだろう。

 同じ理由で佳織も解放しては貰えない、人質だからな。

 なら、選択肢は一つ。



「わたくしは何も要りませぬ。褒美が頂けるのでしたら、いずれそれに相応しき戦功を挙げてから頂きとうございます」



 従順さをアピールするしかない。

 不利な交渉なのは分かっているが、これも将来への布石だ、うん。

 あの姫が王になった時に、温情をかけてもらうとしよう。



「父様、この者の義妹を解放するのは如何ですか?」



 ……え?



「何を言っているのだ、レスティーナ。それはできぬぞ」



 ここは王の方が正しい。

 この姫は賢そうだと思ったが、読み違えたか?

 いや、それともそうする理由があるのか?



「この者はエトランジェ、この国で戦う以外に帰る道はありません。それにどの道、我が王族には逆らえないのですから」

「やけに入れ込むな、レスティーナ……そう言えば、昔からエトランジェに興味があるようだったな」

「私は聖ヨトの血を継ぐ者、異邦人に魂を奪われるなど有り得ません」



 エトランジェですが、玉座の空気が最悪です。

 王は姫を疑ってるように見えるし、姫は「アンタ異邦人の力に魅了されてるじゃん、馬鹿なの?」とでも言いそうな視線を王に向ける。


 あと、聖ヨトの血にエトランジェって逆らえないのか。初めて聞いた。

 でもそれ、死亡フラグだと思うの。

 インド神話にいたよね、殺されない条件を付けまくった挙句、屁理屈で殺された奴。

 シェイクスピアにもあった気がするし。











 とりあえず、佳織は解放されることになったらしい。

 今後の忠誠を誓わされたけど、まあ別に逃げる気はない。

 だってここにいれば、最低限の頭脳労働してるだけでパーフェクトメイドにお世話してもらえるんだぜ?


 あと、マジであの姫が何を考えてるのか分からない。

 このくらいで俺が感激して忠誠を誓うと思ったか、あるいはどうせ逃げないと読みきったのか。

 本当に、佳織と話すのに飽きたから解放しただけなのか。

 一度でいい、1対1でお話したいところである。








最初の謁見で無駄に逆らわなかったせいで、エトランジェの設定を知らなかったようです。

そして第2章クリア。この章だけボスがいないんですよね。

次は日常編でしょうか?


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