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No.19683の一覧
[0] 【完結】僕と兄貴と銀河天使と (現実→ギャラクシーエンジェル)[HIGU](2014/05/16 01:27)
[1] 第一話 『第1章日常世界』から『第7章現代ファンタジー』の構成でした。[HIGU](2014/05/16 00:58)
[2] 第二話 しかしながらピーマンは好物です[HIGU](2014/05/17 12:33)
[3] 第三話 ハーレム野郎?誰だ、それは?  byカマンベール[HIGU](2014/05/17 13:25)
[4] 第四話 前世のバーゲンセール[HIGU](2014/05/17 14:55)
[5] 閑話 長男エメンタール・ヴァルターの野望[HIGU](2014/05/17 15:51)
[6] 閑話 白き月[HIGU](2014/05/17 16:52)
[7] 第五話 オリ主らしい……?[HIGU](2014/05/17 19:41)
[8] 第六話 エンジェルに成りたいのですが……男ですけど[HIGU](2014/06/02 14:49)
[9] 第七話 ミルフィーは絶叫マシンでも髪飾り外さなかったよね………[HIGU](2014/05/21 00:04)
[10] 第八話 ラッキースターの性能はミッションによる差が激しすぎる[HIGU](2014/06/02 14:50)
[11] 第九話  因果応報で毎日がアドベンチャー[HIGU](2014/06/02 14:51)
[12] 閑話   ラクレットの一日[HIGU](2014/06/02 14:52)
[13] 第十話  体が勝手に……[HIGU](2014/06/02 14:53)
[14] 第十一話 これが僕らの全力全開 前半[HIGU](2014/05/26 12:42)
[15] 第十二話 これが僕らの全力全開 後編[HIGU](2014/06/02 14:54)
[16] 第十三話 Dr.ケーラに聞いてみて 前編[HIGU](2014/05/26 14:46)
[17] 第十四話 Dr.ケーラに聞いてみて 後編[HIGU](2014/05/26 16:29)
[18] 第十五話 ダンシングクレイジーズ 1[HIGU](2014/05/29 17:06)
[19] 第十六話 ダンシングクレイジーズ 2[HIGU](2014/05/29 17:05)
[20] 第十七話 ダンシングクレイジーズ 3[HIGU](2014/05/31 01:31)
[21] 第十八話 光の天使達と永遠の剣士 前編[HIGU](2014/06/01 00:24)
[22] 第十九話 光の天使達と永遠の剣士 後編[HIGU](2014/06/02 14:46)
[23] 第二十話 現状分析と現実認識[HIGU](2014/06/03 01:09)
[24] 第二十一話 主人公が初めてヒロインに迫られる話[HIGU](2014/06/03 01:51)
[25] 第二十二話 みんなの恋路事情[HIGU](2014/06/05 00:31)
[26] 第二十三話 白き月へ 前編[HIGU](2014/06/05 02:15)
[27] 第二十四話 白き月へ 中篇[HIGU](2014/06/07 13:54)
[28] IF ランファEND?[HIGU](2014/06/26 14:36)
[29] 第二十五話 白き月 後編[HIGU](2014/06/09 15:01)
[30] 第二十六話 決戦────開戦まで[HIGU](2014/06/26 14:38)
[31] 第二十七話 決戦────因縁の決着[HIGU](2014/06/10 00:46)
[32] 第二十八話 決戦────クロノブレイクキャノン[HIGU](2014/06/10 01:12)
[33] 第二十九話 決戦────幸運の女神[HIGU](2014/06/26 14:43)
[34] 最終話 全部終わって[HIGU](2014/06/26 14:44)
[35] 閑話 長兄と末弟[HIGU](2014/06/26 14:45)
[36] 第2部 第1話 準備は念入りにね!![HIGU](2014/06/24 01:49)
[37] 第2話 物語序盤のデートは事件が起こる法則[HIGU](2014/06/25 01:27)
[38] 第3話 逆に考えるんだ!ちとせはアニメでもゲームでも2度おいしいと!![HIGU](2014/06/26 13:29)
[39] 第4話 体重は70超えました。[HIGU](2014/06/27 02:29)
[40] 第5話 彼の方針、彼等の方針[HIGU](2014/06/28 14:37)
[41] 第6話 天使は女神で恋人で[HIGU](2014/06/28 16:11)
[42] 第7話 謎のスポーツ スペースボール[HIGU](2014/06/30 09:57)
[43] 第8話 君等のためなら死ねる[HIGU](2014/07/01 13:59)
[44] 第9話 そろそろタイトル考えるのが大変になってきた[HIGU](2014/07/02 14:51)
[45] 閑話 ラクレットの一日 MLver[HIGU](2014/07/03 15:12)
[46] 第10話 遭遇[HIGU](2014/07/03 17:08)
[47] 第11話 敗走[HIGU](2014/07/03 18:00)
[48] 第12話 解説による相互理解[HIGU](2014/07/04 00:36)
[49] 第13話 再び月へ[HIGU](2014/07/07 14:26)
[50] 第14話 協力と孤立と結束[HIGU](2014/07/08 14:40)
[51] 第15話 疑念[HIGU](2014/07/09 14:41)
[52] 第16話 倒錯、結束[HIGU](2014/07/10 13:12)
[53] 第17話 先遣隊[HIGU](2014/07/11 02:07)
[54] 第18話 決戦 彼の答え[HIGU](2014/07/12 10:35)
[55] 第19話 覚醒、確信、決着[HIGU](2014/07/13 01:49)
[56] 第2部 エピローグ[HIGU](2014/07/14 10:22)
[57] ML編までの人物紹介[HIGU](2014/07/14 21:31)
[58] IFEND2  ミント編 前編[HIGU](2014/07/17 15:21)
[59] IFEND2  ミント編 後編[HIGU](2014/07/17 22:56)
[60] 第3部 第1話 過去と未来[HIGU](2014/07/18 17:38)
[61] 第2話 中間管理職の悩み[HIGU](2014/07/18 19:32)
[62] 第3話 結構乗り気な三男[HIGU](2014/07/21 14:47)
[63] 閑話 三男と次男の生態[HIGU](2014/07/21 21:48)
[64] IFEND3 ヴァレンタインちとせ編[HIGU](2014/07/26 13:59)
[65] 第4話 羞恥プレイがご褒美なれば無敵[HIGU](2014/07/23 14:50)
[66] 第5話 美しいって罪ね[HIGU](2014/07/24 14:55)
[67] 第6話 考えと感情と勘違い[HIGU](2014/07/25 12:40)
[68] 第7話 勘違い乙[HIGU](2014/07/26 14:46)
[69] 第8話 GAGABD出ます[HIGU](2014/07/26 15:48)
[70] 第9話 不完全な強さ[HIGU](2014/07/28 14:53)
[71] 第10話 日常回 増量編[HIGU](2014/07/29 14:35)
[72] 第11話 頭の隅に置いておいてほしい話[HIGU](2014/07/30 12:08)
[73] 第12話 カースマルツゥの実力[HIGU](2014/07/31 14:12)
[74] 第13話 男たちの思惑 前編[HIGU](2014/08/01 14:19)
[75] 第14話 男たちの思惑 後編[HIGU](2014/08/03 14:17)
[76] 機体設定[HIGU](2014/08/03 14:38)
[77] 第15話 Is this Misattribution of arousal?[HIGU](2014/08/04 15:06)
[78] 第16話 急転[HIGU](2014/08/07 15:06)
[79] 第17話 撃ったら戻る[HIGU](2014/08/08 14:34)
[80] 【舌を】天使の飯がまずいスレpart18【バーンとやっちゃう】[HIGU](2014/08/09 14:57)
[81] 第19話 二人だからできる事[HIGU](2014/08/10 14:34)
[82] 第20話 外れる思惑[HIGU](2014/08/11 14:54)
[83] 第21話 自分の気持ちに気付く時[HIGU](2016/01/29 02:23)
[88] 第22話 ヴァインと言う男 ルシャーティと言う女[HIGU](2014/08/12 22:12)
[89] 第23話 男三人集まれば[HIGU](2014/08/12 22:35)
[90] 第24話 成長[HIGU](2014/08/12 23:20)
[91] 第25話 けれども[HIGU](2014/08/13 01:32)
[92] 第26話 成長と慢心[HIGU](2014/08/17 14:30)
[93] 第27話 倍の倍で無限[HIGU](2014/08/19 14:46)
[94] 第28話 解禁、楔、解放[HIGU](2014/08/20 14:48)
[95] 第29話 Now chrono driving……[HIGU](2014/08/21 02:12)
[96] 第30話 ギャラクシーエンジェル~光の天使たち~ 前編[HIGU](2014/08/22 14:45)
[97] 第31話 ギャラクシーエンジェル~光の天使たち~ 後編[HIGU](2014/08/23 01:26)
[98] 第3部 エピローグ[HIGU](2014/08/24 01:25)
[99] 舞台裏+あとがき (ラクレットの能力答え合わせ)[HIGU](2014/08/24 23:30)
[100] 俺と皇子と嫁の幼女と[HIGU](2014/09/30 22:28)
[101] 俺と皇子と嫁の幼女と ML[HIGU](2014/09/30 22:58)
[102] 俺と皇子と嫁の幼女と EL[HIGU](2014/10/01 00:29)
[103] 続 IFEND2  ミント編[HIGU](2014/10/01 00:44)
[104] 劇場版ギャラクシーエンジェル特典映像+外伝[HIGU](2014/10/14 13:41)
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[19683] 第16話 急転
Name: HIGU◆36fc980e ID:cb2b03dc 前を表示する / 次を表示する
Date: 2014/08/07 15:06



第16話 急転




彼女はただ、平和に暮らしたかった。●のような少年がたまに会いに来る、それだけが日々における大きな刺激だった。そんな生活。それでも別段大きな不満はなかったのだ。
出来れば邪魔もなく、自由に少年と会えるような、そんな場所だったら嬉しいな。そう思っていたのだから。


「ねえ、ルシャーティ」

「なーに、ヴァイン?」


それは彼女の遠い記憶、『自分より背の高い男の子』が自分の名前を呼んでいる。いつも見ている、代わり気の無い表情なのに、彼は何か困っているような、そんな風に彼女は思った。






「僕は、君の事とどう接すればいいのだろうね? 」

「せっする? 」

「会うってことだよ」

「そうなの? 」


昔の彼は今よりも、自分の前で曖昧な態度をとることが多かったな。そんなことを彼女は思い出した。靄がかかっている記憶達の多くで、彼が戸惑いを見せている物が多いのを、彼女は思い返しているのだ。


「君は、どんな僕を望んでいるんだい? 」

「……わからないよ」

「……そう」

「でも、ヴァインといっしょにいたい」

「そうか」

「ヴァインみたいなおとうとがほしいの。わたし、お姉さんになる」

「僕の方が、上なのに? 」

「でも、ヴァイン、大人じゃない 大人はなやまないんだよ」

「それは難しい事なんだよ……姉さん」


そう、確かその日、私より背の高いあの人は、私の頭をなでながらそう言ったのだ。
あの人は、悲しい様な、嬉しい様な、いつもの戸惑ったような顔で私の事を姉と呼んだ。
それが私たち姉弟のはじまりだった。

彼女がそんなことを夢幻の合間で思い返していると、声が聞こえた。


「姉さん、行こう……貴方は僕が守るから……」

(守る? 何からなの? ヴァイン? ) 


そんな風に思いながら、僅かばかり残っていた意識は、また何時もの頭痛でかき消された。





ラクレット・ヴァルターは一晩考えた結果、自分がどうやら、ルシャーティの事を好きになりかけている事に気が付いた。昨日の戦闘の後、昂ぶってしまった自分を、冷たいシャワーを浴びることで沈め、何とか落ち着かせた頭で情報を整理したのだ。
結果、どうにもルシャーティの事が気になってしまっていることが分かった。大きな原因は、自分の事を怖がっているはずなのに、必死にこちらに接しようとしている所と、この前名前を呼ばれた時のギャップではないかと推察している。

しかし、しかしだ。ルシャーティはギャラクシーエンジェルに出てくる女性陣の中で上位3人に入る手を出してはいけない人物である。陰謀の道具であり、ずっと利用されてきた哀れな少女であり、しかもそんな中でも自分を操ってきたヴァインを憎み切れなかった。そんな少女である。ちなみに年は不明。

とりあえず、いつものようになるべく意識しないで行くことにしよう。そう心に決め、今夜にでもクロミエに相談するつもりのラクレットであった。


「でもなー、そろそろだしなー」


現在『エルシオール』は白き月と合流し、格納作業に入っている。もしことが起こるとしたらこの直後だ。エルシオールが白き月に入ったタイミングで、白き月のシステムに何者かが侵入し、混乱させたタイミングで、7号機&クロノブレイクキャノンを奪取されてしまうのだ。

色々かき回しているので、起きるかどうかは不明だが、それでも外部の敵の警戒は必要であろう。なにせ、ロウィルという敵はいないが、カースマルツゥがいる為、まだ敵の前線指揮官は健在である。このタイミングで何かを仕掛けてきてもおかしくはない。


「まーエメンタールの兄貴の事だから、何か仕込んでいるだろうし、僕にも、カマンベール兄さんにも」


カマンベールはラクレットの正体がばらされた後一悶着あったが、それはまた今度語るとしよう。具体的にはEL編の後の外伝シリーズで。一つ言えるのは、ノア・ヴァルターが戦後にトランスバールのソーシャルセキュリティーナンバーを取得するという事か。


ラクレットに送られてきている指令書は、すでに8割以上読めるようになっている。そして、白き月と合流して二日ほどで、補給部隊として、エメンタール本人も合流する予定になっている。自分の頭で動く分と、兄の思惑で動く部分、微妙に異なっているが、ラクレットが頑張るのは、いつもの仕事『エルシオールとエンジェル隊を守る』だ。


昨日の事もあって、周囲にまた微妙に距離を取られているっぽいが、気にしないままラクレットは食堂に向かうのであった。











タクトはミルフィーのベッドに気が付いたら顔を突っ伏する形で眠っていたようだ。固まった体をほぐすように伸びをしてから、安らかな表情で眠っているミルフィーを見つめた後、彼は一端自室でシャワーを浴びて着替えて来ようと、医務室を後にした。

何時もならレスターにドヤされるどころか、直接来て襟首を掴んで引きずられるような時間なのだが、今日は大目に見てもらえるようで、タクトは比較的のんびり自室に向かっている。


その時だった、『エルシオール』と白き月に突然警報が鳴り響いたのは。













「よし、陽動用はこんなもんでいいだろう……」

ヴァインは、夢遊病患者のようなルシャーティの手を引きながら、白き月の中を駆け足で進んでいた。すでに白き月のシステムに介入して、トラブルを起こしている。具体的には、聖母の部屋近辺に侵入者があるようにしたのだ。当然それが誤報であり、すぐに外部から不正にアクセスされたものだとばれるであろうが、今必要なのは時間と注意を逸らすデコイだ。


「姉さっ……いくぞ、人間」


誰も見ていないところであり、もう演技の必要が一切ないのに、無意識に姉さんと呼んでしまったヴァイン。ヴァル・ファスクらしくないミスだ。しかしそんなことを気にするよりも今は足が必要だ。



「ついた……これが、7号機、決戦兵器」


事前に読み込んでおいた地図は完全に頭に入っている為、全く淀みなくたどり着いた場所は、白き月に奥にある格納庫。彼が奪取するつもりのモノは、ここに鎮座されている。7号機。通称決戦兵器だ。


「武装が外されているか……できれば破壊してから行きたいところだが……」


クロノブレイクキャノンは純粋な物質的武装であるために、物理的な破壊が必要だ。そんなことをしている時間はさすがにない。もうそろそろ、此処の警備システムが自分たちに気付くであろうから。

ルシャーティの手を優しくとり、そのまま自分の方に引き寄せる。横にがっしり抱きしめてから、タラップから7号機へ乗り移る。其の後彼女を後部座席に座らせてから、外部から操作すればよかったことに気付く。また、¥らしくないミスだ。焦っているのかもしれない。そう自分に言い聞かせながら、ハッチやセーフティーを解放。格納庫から外に出られるように進路を確保する。このタイミングでけたたましくアラートが鳴り響くが、もうこちらの方が早い。
ヴァインは歯を食いしばっている事に気が付かないまま、機体を発進させる。


「姉さん……」








「レスター!! 状況は!? 」

「不明だ……白き月に侵入者がいるみたいだが、場所が場所だけに俺達は何もできん」


ブリッジに駆け込んだタクト、しかし状況は混迷としており、いまいち何が起きているかを把握することができないといった所であった。シャトヤーン様の私室近くに侵入者反応があったらしいが、その場に駆けつけても、カメラの映像を見ても何も異常はないのだ。


「でもまあ、何かありそうだね」

「そうだな……」


二人がそう言った途端、白き月から通信が入る。即つなげると、画面に表示されたのは、珍しく焦った様子のノアとカマンベールだった。


「エルシオール!! 7号機が何者かに奪われた!! 」

「急いでそっちでも確認して頂戴!! 」

「了解!! レスター!! 」

「ああ、ココ、アルモ」


即座に対応を開始するブリッジクルーたち。すると即座に7号機がクロノドライブ可能位置に向かっていることが分かった。すぐさま停止命令を出しつつ、通信を繋ぐ。するとすぐさま、反応が返ってきた。


「……通信切断されました」


────明確な拒絶という形によって










その後、7号機を奪取したのが、EDENの二人組だということが判明する。
タクト達は、補給を最低限済ませ、奪還の為に即追いかけるのであった。









「ヴァイン……ルシャーティ……くそ、どういう事なんだ……」

「考えても仕方ないだろう……二人は……いや、少なくとも片方は工作員なり、スパイなり、兎も角敵だったってことさ」

「あら、敵と考えるのは早計ではありませんこと? なかなか解放に来ない私たちに見切りをつけてしまった猪突猛進な方々、実は敵に人質や命を盾に取られているEDENの姉弟。ほら、いくらでも考えられますわ」


場所は司令室。集められたメンバーはタクト、レスター、ラクレット、エンジェル隊だ。いつものメンバーによる作戦会議である。議題はもちろん7号機の奪取という暴挙に出た、二人について。

案外予想外に弱い為、頭を抱えているタクト、議論の余地なしと冷めているレスター、味方によっては屁理屈ともとれる理論を展開するミント。それぞれの立場がよく出ているであろう。

ミルフィーは現在白き月ではなく、『エルシオール』で療養中だ、2,3日で目を覚ますだろうとのことで、白き月に搬送して高度な治療を受ける必要が見られなかったのだ。これはラクレットの腕と言うより、仮にタクトが『エルシオール』の主砲でこうげきしたのであったなら、誘爆する可能性もありより危険であったとう言う事だ。攻撃する踏ん切りがついていたとすれば、ランファでも同じような結果になったであろう。

さて、この場で話し合っているのはもちろん先ほどの事に対する対応を決める為ではない。ただ単純に、どうしてこうなったのかを考える為だ。人は、全く行動の指針を示さない会議でも、ただそれを望むことがある。
余りに信じられないような状況を共有した時がそうだ。今の様に、仲間とはいかなくても、悲しき過去を持った亡命者の姉弟と思っていたのだ。親しみをもって接していたし、戦闘員で軍人である彼等からすれば庇護の対象であった。故にこその彼らは大きくショックを受けているのだ。


「兆候なんてなかった、でも見抜けなかったのは俺の落ち度だ……」

「そんなことはないよ、タクト。実際に彼女ら二人には邪気なんてなかったんだからさ。なんていうか、直感的に安心してたんだよ私も。勘が鈍ったのかねぇ……これじゃ隊長失格かね……」

「アタシも全然疑ったりしなかったからね……」


どんどんテンションが下がって言ってしまう、エンジェル隊の面々。自分がもう少しああしていればと言うのを、全員が感じているのもある。基本的に仲のいい彼女たちは、そうやってよくかばい合いをしてしまうのだ。これは良い方向に回れば最高なのだが、このように悪いスパイラルに入ってしまうこともあるのだ。


「皆さん、今は休みましょう。一人になったら気分が滅入ってしまうかもしれません。ですが今重要なのは何故より、今後どのようにして取り戻し、再発を防ぐかです。ヴァイン達に追いつくことがあったら、何故の部分もおのずとわかるでしょう」


そんな中ラクレットはあいも変わらず正論を口にする。皆も分かっているのだろうから、誰かがこうやって口にしなくてはならない。そしてこういった役目はやはり自分またはレスターが向いている。そんなことを自覚しながら。
エンジェル隊は特性上感情的な判断を優先させることによってテンションが上がるのだ。エンジェル隊の中では、理性派のミントでも、結局は感情的に動いてしまうことは多い。そういった意味でレスターや自分はブレーキ役であり、地図を読む役でもあるべきなのだ。

皇国の命令を受けたタクトが舵を取り、レスターが地図を読み。エンジェル隊が漕ぐ『エルシオール』と言う艦では、ラクレットは臨機応変に雑用をしつつ、周囲へと気を配るポジションだ。

現在エンジェル隊は、ラクレットに対して思うところはある。一寸の躊躇もなくミルフィーを沈めたり、ヴァル・ファスクの血筋だったりと。妙に距離を感じてしまう出来事が頻発しているというのもある。
だが、彼の言うことは事実なので、素直に受け入れ、今は己のできるであろうことをしようと動き出すのであった。





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