第三話 ハーレム野郎?誰だ、それは? byカマンベールいきなりだが、俺には前世というものが二つある。一つ目は、ただただ過ごしていた平和な人生。もう一つは、自分の出来ることを最大限にした、戦いの日々。自己紹介が遅れたな。俺の名前は カマンベール。 カマンベール・ヴァルター だ。3回目の人生を送っている、しがない技術者志望の人間さ。俺がまだ、転生というものを信じていなかった頃の話だ。俺は朝起きたらいつも通り会社に行った。その途中のフリ-ウェイで起こしてしまった交通事故であっさり死んだ。俺は留学して最新医療を学べる大学の医学部に入るために渡米した。でもいろいろあって、コンピューターにはまって、必死に勉強しなおして某巨大企業に入った。日本と違って、比較的簡単に学部を変えられたから楽だった記憶がある。まあそんなこんなで、就職してから自分の好きな仕事が出来るという、人生でも有数の幸せな時間を過ごしていた俺だが。さっきも言ったようにあっさり死んでしまった。まあ、短いけど充実した人生だったな って思って目を閉じて気がついたら。もう一回生まれた。名前も姿も生まれた場所も時代も全然違ったけど、前の『俺』の記憶があったのだ。その世界の歴史はどうやら俺の知っているものとは全然違くて、宇宙人?と戦争をしているらしい。しかも人類は圧倒的に劣勢だそうだ。俺が生まれたのはそこそこ由緒正しい家で、両親は二人とも軍人だった。だったというのは、俺が15になる時に、死んでしまったからだ。俺は思った、こんな前世の記憶を持つなんて変なガキでも育ててくれた両親。そんな両親が命をかけた守った国を守りたいと。他の人から見れば、たいした物でもないことかもしれないし、何より世間的には民のために戦う家に生まれたのだ。そんなの当たり前だといわれるかもしれなかったけど、俺は確かにそう思ったのだ。だから俺は、技術廠に入った。先ほども言ったが、俺は頭が良い、だからだと思うが特に何かはいわれなかった。そこで俺は、現在主力として使われている、二足歩行のロボットを、どうにかして強くする研究を始めた。無人操縦の時の効率運用のためのAIを組んだり、無人操縦の時に後方から同時にかつ迅速に指揮を送ることの出来るシステムも作った。他にも、普通にOSの改善をしてみたりとかもかした。結果的にそれがどれだけの人の役に立ったかはわからない。でも俺は精一杯やれたはずだ。人類の運命をかけたある大きな作戦が終わってしばらくした後に、俺の作ったシステムが正式に国の軍で使われるように決まったのを俺が聞いた時にはすでに俺は、持病で余命わずかだったから。俺は二回目も人生を送れたことに感謝して、そのまま死んでいった。なのに!!「だからき~ぷおんすま~いる、てんしのしんふぉ~に~」「うっせーぞ、ラクレット!! 通信つないでいきなり歌いだすな!」さらにもう一度転生してしまったのである。今度生まれたのは、物凄く文明の進んだ世界だ。皇国自体は400年くらいしか歴史は無いけど、地球なんてのはもう地図にすら載ってない(元々無かった可能性もあるが)人類が宇宙に出てからすでに何万年もたっているそうだ。俺は、なんか金持ちの家の次男に生まれた。両親は普通に優しいし、兄貴はすごく普通な人だし、弟は普通におかしい。そんな極平凡な家に生まれたが、俺が5歳の時に我が家の伝統ということで、戦闘機を見せられた。この世界は、結構技術が発展しているけど、旧暦という時代はもっと発展していて、クロノクエイクという災害が起こって、文明が衰退したそうだ。その戦闘機は、どうやらその時代の産物らしい。うんともすんとも動かないから、我が家の所有物になっているけど。それを見たとき俺は強く思った、「素晴しいと」 こんなにも優れた機械があるなら自分も見てみたい!!どういうシステムで動かしているのか気になる!!俺はその時それを強く願った、それ以来俺は、ロストテクノロジーを解析して理解する能力を持っている。頭の中で声がしたのだから、そういうことなのだと思う。まるで決められたことのようにそう思えたのだ。実際に乗ってみたら戦闘機は動かなかったが、当たり前だ。俺は技術者で研究者だ。その後俺は両親に頼んで、本星の博物館に連れて行ってもらったときに、学者先生に頼み込んで本星の大学に進むことが出来た。この辺は運の要素も強かったが、もし出来なかったら、自分で論文を書いて送るつもりだったから結局変わらなかっただろうけど。まあ、ともかく今12歳の俺は、去年占領された白き月のことで今一層盛んな、ロストテクノロジーの研究に力を入れていた。そんな中、確か5歳になった弟から連絡があったのだ。弟はなんか変だ。なんというか、俺と似ている感じがするからすごく変なのだと思う。まあともかく、連絡してきて、いきなり歌い始めるとは、よほどいいことでもあったのか?「で、どうしたんだ?いきなり歌いだしてご機嫌じゃねーか」「うん、実は僕、紋章機のパイロットになったんだ! やべーよ、オリ主的覚醒だよ!! 」「オリ主ってなんだよ………。にしても紋章機って………あああれか。あの戦闘機動かせたのか? 」そっか、あれ紋章機っていうのか、知らなかった。ラクレットは時々良くわからないけど名前を知っていたりするからな………何でかと聞くと「原作知識によるチートだ!」って訳解らないことを言うからスルーしてるけど。でも基本的に後で調べるとあっているから侮れないというか。「おう、それでだけどさ、一応家の物になっているわけだけど、ロストテクノロジーだし一度くらいは白き月に報告とかすべきかなーと思ってさ。ロストテクノロジーなら兄さん詳しいでしょ?」「なるほど、それで俺にか。一応白き月にいる知り合いに聞いてみるから、明日のこの時間に連絡しろ」「了解したぜ!」そう言って、ラクレットは通信を切った。いいねーすごく人生楽しそうだ。まあ、そういう俺も結構楽しんではいるのだけど………「もう、50年以上生きているのだがな………彼女が欲しいぜ」俺が、仕事というか、好きなものにのめりこみすぎる傾向のためか、今まで彼女が出来たことがない。最初の人生では、魔法使い一歩手前だったし。前の人生でも、兄貴にはいた婚約者も、俺は体が弱くていなかったし。もっとも、俺は付き合っても仕事にのめり込むのは変わらないだろうから、仕事についてこられるくらい頭の良い女が理想だな。欲を言うなら、さらに可愛い感じがいいな。まあ、そんなの早々いないだろうけど。「さてと………………………あ、こちらカマンベール・ヴァルターですが研究員のタルトさんは……」あれからしばらくたったが、どうやらラクレットは白き月の聖母シャトヤーン様に謁見することになったそうだ。まあ、そんなことも関係なく、研究に没頭していた俺は、彼の接近に気付けなかったのは当然といえるだろう。「えーと、この前発見された自身の体を構成する物質を一時的の他のものに変換することができる機械だけど………ふむふむコールドスリープ中に用いられていたのか」その日俺は、いつものように、自分のやりたいように研究をしていた。俺は、ロストテクノロジーがどのように使われていたのかを推測したり、それをどのような形で発展させるかみたいな研究をしている。前世の影響で軍事転用の方向に発想が行きがちになっているから、今の主流とは違うこともあり、やや日陰者な俺は、自分の研究室にずっと篭っているようなものだ。だから、少し前から周りが慌しかったり、上司が自分のデスクや、研究室の清掃に余念がない様子に気付けなかったのである。そういうわけで後から知ったのだが、その日はある人物が査察に来る日だったそうだ。「うーん、運用するためには、実際にコレを使用したであろう物を見てみないと使い方が解らないな」「お前が、カマンベール・ヴァルターか?」俺は、名前が呼ばれたので顔を上げると、軽く180cmを超える、英雄の彫刻のような男が立っていた。着ている服はいかにも高貴なものが着そうなもので、しかも後ろに付き人のような女性と黒服のSPまでいる。貴族か何かだろう。俺はそうあたりをつけた。「はい、そうですが………。えーと、どちらさまで?」「余は、エオニア・トランスバールだ。お前は、ロストテクノロジーの軍事運用について研究しているようだな。しかもなかなか優秀だといわれている」エオニア・トランスバール確か、現皇王の甥っ子で、王位継承権は存在しない人物だった気がする。にしても何で俺なんかのことを知っているのだ?「もったいないお言葉です。皇子」「謙遜せずとも良い。お前の作った、『レーザー銃に対する防弾シールド発生装置の小型化』はコストはかかるが、大変素晴しいものだと思う」ああそれか、最近発掘された、エネルギーを歪曲させる装置を使ってみたやつだ。「さて、いきなりの本題だが、我の下に来ないか? お前のような男こそ、余が理想とする皇国にふさわしい男だ」「はぁ?………失礼。私がですか?」いきなりの言葉に少々無礼な物言いになってしまった。反省反省。「そうだ、カマンベール、余はロストテクノロジーを使えば、皇国の領土拡大などはたやすいと常々思っておる。それは、研究をしているお前が一番わかるであろう?」「ええ、正直規格外なものや良くわからない物も多いですが、概ねその通りかと」そうだ、ロストテクノロジーは正直 最初の人生で見た青い狸の秘密道具と同じレベルだ、ほとんど覚えていないけど。もう、40年以上前だからな。仕方ないけど少し寂しいな。ともかく、そういった物を利用していけば、未だに難航している皇国の版図拡大のための調査船派遣をする船を建造できるであろうし。未だに消えない宇宙海賊の撲滅にも近づくであろう。「しかしながら、白き月を占領しても直轄領にしただけで何も変えないとは。全くもって理解不能だ……それどころか聖母の為とは……呆れて物も言えぬ」そう言うとエオニア皇子は俺の前まで来て俺の顔を見る。座っている俺とは(立っても155cmしかないが)物凄い身長差だ。なんだよ、今まだ13になってないのだ。別にそこまで低いわけでもないだろう。にしても本当に綺麗な人だな、髪も長いし女性のような印象を受ける。「白き月は、現在女性の研究者しか受け入れていない。その理不尽に思うところがないわけでもないであろう? もっとも数年すれば、そこそこの数の男性研究者がいけるように成るであろう。今は、少しでも臣民の人気を取らないと、占領が理由でただでさえ低い支持率が目も当てられないことになってしまう」そうだ、俺だって最高の環境に行きたい、なによりこんな研究所に俺がいるのは年齢のこともあるが、きっと俺が男だからだ。まあ、研究の内容も、あまり受け入れられてはいないが研究者を性別で差別するなと何度思ったことか。「もう一度言う、余と共に来い。正しい形に皇国を戻すのだ」その言葉に俺は、また自分の中で何かが変わったのを感じた。よくある、この人のために、何かをしたいとか、カリスマに飲まれたとか。そういうのじゃなくて、もっと単純にただ自分によくわからない何かが語り掛けてきたような感覚を覚えた。そうこいつについていけば、面白いことが出来そうだ。といった具合の助言が。我ながら打算的すぎるが。ともかく俺は「この非才なる身にかけて」と返し、彼の前に跪いたのであった。忠誠とかそんなの全くなくただ自分の欲望のために。それが、俺の人生のいやもしかしたら銀河の分岐点だったのかもしれない。