第十話 体が勝手に……前回覗きに失敗したラクレットです。あの後蘭花は僕に謝りに来ました。「いきなり物を投げて悪かったわね。でも、だからといって女子更衣室にいきなり飛び込むのはありえないわよ」だそうです。罰として僕は、ボランティアで艦内の掃除です。エンジェル隊の隊員達の部屋の前を重点的に掃除だそうです。ここは、何かおごれとかのほうが一緒に食事とかできたり、デートイベントフラグになってよかったのですが、まあ僕は狙ってやったので、これくらいは甘んじて受けなければいけないと思います。タクトはなにもお咎めなしみたいです。これが、主人公とその他の差なのだと僕は思いました。現在クロノドライブに入っているので、シミュレーターで訓練をしてシャワーを浴びた僕は、現在食堂にいる。最近クルーの人達から物資が不足気味だとの不満が来てる。実際結構危ないものもあるので、早めに補給して欲しいところだ。「梅さん、定食ありますか?」「ごめんね。今日はもう売り切れちゃっててね。食べ物で残ってるのはこのゼリーしかないのよ」「ああ、やっぱりそうですか」「さっき、司令さん達もここに来ててね。ちょっとぎすぎすした雰囲気になってたみたいだけど、司令さん自ら物資の確認に行くそうだよ」「そうなんですか」ああ……確かにそんなイベントがあった気がする。タクトが、ミントにゼリーをあーんで食べさせられて、(ゼリーの)甘さにもだえたり、ミルフィーがランチの最後の一皿を食べてしまって蘭花と喧嘩になる。みたいな感じのイベントだ。その後、コンビニ行ったりして、食べ物探すけど無くて、最終的にミントの駄菓子を食べるみたいな感じだったはず。「じゃあ、ゼリーをお願いします」「はいよ。ラクレット君は甘いの大丈夫なのかい?」「ありがとうございます。ええ、それなりには」ゼリーを受け取って席に着く。今頃タクトは、女の子4人と一緒駄菓子を食べてる頃だ。その後も艦内を練り歩いて各部署で必要なものの確認をするはずだ。よし、これも人助けだ。一応僕のところできているのも送っておくか。仕事で頼まれてすでにだいぶ要望をまとめてるからね。小型端末を取り出して、タクトにファイルを添付して送る。……よし、これで送信完了。この深刻さに気づいたタクトと、ミントでブラマンシュ商会に連絡を取るはずだ。一仕事終えた僕は、ゼリーを口に運ぶ……うん甘い、だけど食べれないことも無い。リリカルな世界にトリップしてもいいように、リンディ茶対策をしといた結果だ。おいしくは無いけどね。男性としては平均より有意に当分許容量だ高い僕だけど、ジャンクフードマニアでバカ舌の人が美味しくだべられる甘さはだめだね。「ドライブアウトしました」「よし、直ちに周辺をスキャンしろ」結局、正史の通りにミントの実家であるブラマンシュ商会に連絡をして、現在ランデブーポイントについたところだ。エンジェル隊と僕は、自分の機体に乗って待機している。今僕が懸念しているのは、正史よりも分厚い警戒網のせいで、ブラマンシュ商会の商船団が壊滅している可能性だ。今までも、結構な頻度でちまちま戦闘をしているし。沈めてきた艦は原作にあった戦闘よりも多かったのだ。要するに、無事につくかどうかは、完全に運任せだ。僕のせいじゃないから、反省の仕様も無いしね。仮に僕のせいだとしても臭がわからないなら問題ない。まあ、僕は戦闘に介入する以外してないので、そのせいで警戒度が上がったくらいしか思い浮かばないし。「あ!! 船団を確認しましたが、無人艦隊との戦闘中の模様。救援要請が出てます!! 」「エンジェル隊および戦闘機部隊出撃しろ! 直ちに商船団の援護に入れ!!」────了解!!「了解!! 」どうやら、大丈夫みたいだね。今の所まだ一隻も沈んではいない。でも急がないと。そう思い僕は自分のスイッチを切り替える。頭の中が戦闘用の思考になる。戦闘用のBGMがかかるみたいな感じだ。「ラクレットと蘭花は先行して敵の前衛を撹乱してくれ。ミルフィーはそれに追随して、中距離から砲撃。ミント、フォルテはこちらに向かってきた敵の殲滅を。ヴァニラは敵が少なくなるまで、ミント達の近くにいてくれ」「司令! 敵艦隊前方の一部が、このままのペースで攻撃を受けた場合、商船団が沈むほうがわずかに速いと、計算でました!」ふぅ、アルモ、それは今のままのペースでだろうに、そんなことを聞けばエンジェル隊の面々が今のままのペースというわけ無いであろうに。「ふざけんじゃないわよ!! 私の化粧品!!」おお、速い速い、負けてられないね。「足りない!! 足りないぞ!! 無人戦艦ども、お前らに足りない物、それは!情熱、思想、理念、頭脳、気品、優雅さ、勤勉さ!そして何よりもー!速さが足りない!!」 「に、二機の速度が急速に上がりました!!」「さすが、紋章機」「もう何も言わん……」よし、ついた。僕は前方の艦に狙いを定める。そしていつものように特攻する。くくく、遅い遅い。僕が張り付いても全く反応できてない。敵の火器管制システムが自動照準で僕をロックする前に、左右に動く。それだけで雑魚になるし。火器管制にCPUを割いてるのか、動きは散漫だ、もっとも、紋章機に比べればもともと遅いがな。「おいおい、しっかり操縦しろよCPU。堕ちちまうぞ、それじゃあ」鼻で笑いながら僕はそう言った。っと、これが機関室かなっと!?「ぐあぁぁぁ!!」僕の目の前に広がる閃光、そして衝撃と轟音。どうやら切りつけようとした瞬間、敵の艦が爆発したようだ。センサーが一定以上の刺激を受けてもカットしてくれるが、さすがに今のは利いた。予想外すぎたからだ「っく!! 機械風情がぁ!!」幸い、若干シールドが削れただけで、問題は無いみたいだ。どうやら、機関室を切る前に切った場所が、出火してそれが引火したらしい。確率としては……0.2パーセントで起こり得るか。とりあえずこのデータはエルシオールに送信して。「ラクレット、大丈夫か!?」「大丈夫です。シールドが削れましたがまだいけます!! ━━限界だと……? まだ……まだいけるだろう! エタニティソード! 」そう、限界なんかあるはずが無い!!この後の温泉イベントのためにも「負けられない!! 負けられないんだよ!!」エンジェル隊全員の水着姿を見る!! 絶対に!!「意地があるんだよ!! 男の子には!!!」その後、僕は敵の艦2隻を沈め、戦闘は終了した。それなりの戦果だったが、相手の数をこちらの数で割ると3.5になる。21隻いたのだ。簡単に言うと撃墜数最下位だ。物が絡むと、女は怖いね。「補給船団から、通信が入った。みんなご苦労様、帰還してくれ」────了解!!「了解!! 」「すごい、混み具合だ。まるで、夏と年末の……いやなんでもない」補給部隊の代表(ヴィンセントというらしい)がエルシオールに来てしばらくした後、艦内はかなりのお祭り状態だった。ティーラウンジではカラオケ大会が開催され(蘭花とミルフィーの歌は聴いてきた。)エレベーターホールでは品物の直売会が行われている。そのためこのホールはものすごい人数が殺到しているのだ。「おい、お前」「はい、何か御用ですか?」商品の棚を適当に見て回っていると、後ろから子供の声で偉そうな文句で話しかけられた。しかしここでの僕は猫かぶり中。クロミエ以外には敬語で話す僕は純度100%の笑顔で振り向く。するとそこに居たのは、金のかかってそうな衣装に包まれた10歳程度のお子様だった。しかも後ろにはフォルテと、タクトが居る。おお……ということはこのガキは。「お前はチェスができるのか?」「まあ、嗜む程度には」シヴァ・トランスバールか。この艦の最重要人物で皇族のエオニアを除く唯一の生き残り。「そうか、ならマイヤーズの都合が合わない時にやるのならばお前が相手になれ」「皇子、失礼ながら、司令官殿が忙しいときなど、戦闘中しかありませんよ」「ははは、皇子の為にきちんと時間をとる模範的な司令ですから」ああ、シヴァ皇子が護衛であるフォルテを伴って買い物に来たところに、タクトがチェスを勧めたのか。にしても初めて見るが、小さいな皇子。10歳児だもんな。まあ厳密には皇子じゃなくて皇女か。顔つきも女の子っぽいし。「マイヤーズよ、あまりクールダラスに迷惑をかけてやるな」「皇子、そろそろ」「うむ、ではまた今度」それだけ言うと皇子は去っていった。あ、僕名乗ってないじゃん。まあいいか。タクトもすでにここを後にしている。さて、商品を見る作業に戻るか。「この辺は、音楽関連か……ん?」僕はCDの棚(この時代DLが基本なのに、CDも売れてる。というより、まずCDで出して、それがある程度売れたらDLできるようになるというのがスタンダードなのだ。GAが発売した年とかから察してほしい)に並んでいる商品を見ていたら少し気になる商品を見つけた。レコード会社はここ10年ほどで急激に勢力を増したグループの傘下のものだ、特に感じるものもない。だが曲のタイトルがどこかで見たことがあるようなものばかりなのだ。「いや、なんで……これ全部もとの世界の曲だぞ……歌ってる人は全部違うけど、メロディと歌詞が全く同じだ」作詞・作曲者の部分にはそれぞれ別の名前が書かれているが、これはどう見ても元の世界の関係者しか作れないだろう。特にエターナルラブとか、その辺まであるのだ。「僕ら兄弟以外に誰かいたのか?」僕は小型端末を取り出して全皇国星間ネットにつなぐ……ことはできなかった。そういえば戦時だったっけ。とりあえず、ブラマンシュ社経由で一部のページには繋げたので、そこからレコード会社について調べてみた。「えーと、……え?」このレコード会社はチーズグループ傘下の企業だったので、チーズグループについて調べてみた。するとそのグループは、いくつかの出版社と、レコード会社、果てはアニメやゲーム会社などを傘下においていた。そこから出されているものの多くは、どこかで見たことがあるようなものだった。前世のものを使って商売するのは、数々の二次創作では良くあることだが、あらゆる方向に手を出すというのはどうかと思った。せめてジャンルを絞れよ。「すごい規模だな……。えーと、グループの会長は……知らないオッサンだな」公表されている人員を見ると、会長はどこにでも居る様なオッサンだった。経歴も普通で、ある日突然このグループを作ったらしい。読み進めても特に変なところは見つからない。とりあえず一つページを戻す。すると、一人見覚えのある名前があるのを見つけた。「……ああ、なるほど」そこにあった名前は、エメンタール・ヴァルター。うちの兄の名前だった。どうやら心配は杞憂に終わったらしい。これはおそらく兄貴が自分で全部やると大変だから、他人に任せて自分は適当にアイデアだけ出しているのであろう。おおー、このグループ、ブラマンシュ商会などの超一流企業とため張ってるよ。総収益額が皇国3位とか……新興企業なのに……もしかして既存の企業を買収してサービスを始めたのか? まあどうでもいいか「まあ、深く考えないでおこう。この場でアニメは今売ってないみたいだし。お、このゲームはもしかいして……」僕はそう呟くと、CDを1ダースとゲームを一本ほど、既に半分くらいいろいろ入っている自分のかごに入れて、レジに向かった。「あ、ラクレット君」「桜葉少尉、お鍋ですか? その手にあるのは」「うん、安かったから買おうと思って」「そうですか、あ、レジが空いたの行きますね」レジに並んでいると僕のすぐ後ろにミルフィーが並んだ。どうやら料理に使う鍋を買うつもりらしい。なお艦内の部屋の為に購入した物は、ちょっと書類の申請を工夫すればすべて経費で落ちる。やらないけどね。「おめでとうございます!!」「へ?」「そこの君は、ただいま500人目のお客様となりました」僕がレジに近づき商品を置くと突然、店員が叫びだした。後ろに居たミルフィーも驚いたみたいだ。僕も結構驚いた。「お客様には景品として、このブラパンシュ君人形を差し上げます」────おめでとうございまーす!すると今度は、1.5mほどあるぬいぐるみらしきものが僕に渡された。ついそれを受け取ってしまうと、周りの店員もこちらに向かって拍手し始めた。正直こんなものいらない。でも返せるような雰囲気ではない。「……えーと、いります? 桜葉少尉?」「……うーん、いらないかな~」「そうは言わずに、ほら、妹さんにでも」「リコは、ぬいぐるみより私に抱きついてくるから」「……そうですか」今思い出したけど、確かこのイベントはミルフィーがこれを手に入れてタクトに促されて、欲しそうに見ていたミントにあげる。見たいな感じだった。…………もしかして僕が並んだから順番がずれたのか?周りを見るとタクトの姿は発見できない。このイベントを放棄したらしい、今頃別の所にでも居るのであろう。もしかしたら、蘭花と事故でキスしているイベントなのかもしれない。ついでにミントは居た。ホールの入り口あたりで、何か絶望したような目でこちらを見ている……あ、ふらふらとした足取りで立ち去った。「そうですか。じゃあ僕はこれを置いてきますので、また」「うん、今度また一緒にお料理作ろうね」そういって僕はミントの立ち去ったほうに向かうのであった。途中、顔を真っ赤にした蘭花が走っていった。蘭花がタクトとキスしたのは、ミルフィーが入ってきて、いきなり重力制御をきったからなのに、すでに起っているとかは、気にしないことにする。ミルフィーの移動速度とかをね。「ブラマンシュ少尉」「…ああ、なんであのような胡乱な人にブラパンシュ君が……」おおう、これは重症のようだ。とりあえずもう一回呼びかけてみる。「ブラマンシュ少尉!」「はい!?……ああ、何か御用ですか?」僕が話しかけたのにようやく気づいたのか、ミントはこっちに振り向き微笑んだ。僕達の身長差は50cm前後というところだ。そのため、2m離れているのにミントは正直こちらを見上げる形になってる。上目使いは正直反則だと思う。もし彼女がメガネをかけていて、そのメガネの隙間から覗くそれだったらこちらは遭遇15秒で沈んでいただろう。「あの、これなんですけど」「あら、それは……・随分大きいぬいぐるみですね」「はい、正直男の自分がこれを持っていてもあまり意味ありませんよね?」僕はとりあえず小脇に抱えた巨大なぬいぐるみをミントに見せた。正直ミントより大きい。まあ着ぐるみになるのだからそれくらい普通なのであろう。ミントはどうやらしらばっくれる様だ。フフフ、そちらの趣味思考はすでに把握しているのですよ。隠しても無駄無駄ぁ「まあ、確かにそうですわね」「ええ。ですからどうかこれ、引き取ってもらえませんかね?」僕のその言葉に一瞬だけミントの表情に動揺がはしった。本当に一瞬だったけどね。顔と耳がピクッてなったのだ。わかりやすいなぁ。「……はあ、別にかまいませんが」「そうですか。ありがとうございます」良かった、これでミントの夜徘徊イベントが起こる。これはミントのテンションが大きく上がるからね。まあ、あまりあがりすぎると、ミルフィーが攻略されなくなってしまうから気をつけないといけないけどね。「ところで、何で私に?」「ああ、いえなんか、似合いそうでしたから」僕がその問いに本当のことを言うわけに行かないので適当に答えると、また一瞬表情がピクッとなった。「……それはどうしてですか?」「いえ、アッシュ少尉は実際の動物のほうが好きそうでしたから。これは子供っぽいものですしね」あ、またビクッとなった。しかも今度は耳がずっとぴくぴくしてる。うーん、なんか痙攣しているみたいだね。「それでは、僕はこれで」「……ええ、御機嫌よう」僕はそう言い残してこの場を後にした。良い事した後は気分がいい。さて、この後は温泉イベントだ。僕は今公園に居る。とりあえずさっき買ったCDを外で聴きながらのんびりしている……という設定だ。前回の蘭花を覗いたのは功を焦って失敗してしまった。なので今回は慎重に行きたいと思う。まず作戦はこうだ。タクトが公園に入ると、温泉のほうへ歩き出すから、それを偶然見かけたので付いて行くことにした。という設定で行く。そうすれば、タクトの思考パターンを読んだミントに呼ばれるあたりで接触すれば、違和感なく混ざれるのだ。エンジェル隊の入浴に。これで完璧だね。「あれ? ラクレット? 何やってるのさここで」「いきなり崩れた!!」マジか!! いきなりタクトに会うとかどれだけ運無いのだ僕は。ってあれ、タクトが温泉があるであろう場所に向かってふらふら歩いていく。「あれ、体が勝手に……」おいおいおい、なんだよそれ。どこの隊長さんだよ。あれか?NEUEとEDENを股にかけ12股したり、エンジェル隊を私物化してマイヤーズエンジェル隊という名前に変えたり、ミルフィーが勝利のポーズきめとか言ったり、新作では実は甥の和也君が主人公になったりするのか? なんだよそれ、まあ、付いて行くからいいけど。「わータクトさん。どうかしたのですか。いきなりあるきだすなんて」「いや、何故か体がこっちに吸い寄せられるというか「フォルテさんはどうしてそんなに胸が大きいんですか? あ、ランファも大きいよね!!」」きた!! まだ音だけで、視界は湯気でよく見えないけれど、温泉では良くあるセリフが聞こえてきたじゃないか!!「大きいと言っても、射撃には邪魔になるんだよ?」「ちょっと、じろじろ見ないでよ。親父じゃないんだから」おうおう、お約束だね。「あのー……タクトさん」「しっ!!静かにしろ」この人、真剣なのだけど……。まあいいか、なんかみなぎってきてるのは事実だし。大きいのは正義です。小さいのは希望です。ちょうどいいのは理想です。「え~、でもこんな格好してるとやっぱり気になるし……」(こんな格好って、どんな格好だ!?)と思ってるであろうタクトを尻目に、僕はこの瞬間もじりじりと前に進む。「ミルフィーさん、いいですか、大きければ良いという訳ではありませんよ? 大事なのはバランスです」おお、ミントがいい事を言った。胸に貴賎なし。つまりはそういうことだ。「例えばフォルテさんの胸がヴァニラさんに付いていたら、不自然でしょう?」「……むしろ体格的にありえないと思いますが」いや、ロリ巨乳はありだろ常識的に考えて。あのアンバランスさにそそられない男は居ないはずだ。幼子のようなあどけない表情や仕草が生む保護欲、しかしながらその体は暴れん坊で、わがままで言う事を聞かない大胆ボディ。無自覚に抱きついてきたときに感じるその圧倒的存在感はギャップという太古の昔から我等が同胞を沈めて来た最終兵器を生むのである。そう思いタクトの方を見ると、向こうもこちらを見てうなずいている。「……あら? この思考パターンはタクトさん? それにこの不気味な違和感は……」「あれ、タクトさんが居るんですか?」「え、いや、決して俺は覗きに来たわけじゃ「タクトさんも来ませんか~?」何、いいの!?」」「はい、いいですよ」「別にかまわないわ」「そんな所に居ないでこっちに来なよ、司令官殿」「別に問題ありません」「皆さんがこうおっしゃってますし、どうぞこちらに」「じゃあお言葉に甘えて」エンジェル隊のメンバーが、許可を出したのでタクトは近づいていく。迷う時間が全く無かった。なぜだか知らないけど、原作タクトよりスケベなようだ。「あ、タクトさん!?」僕はあわててタクトの後を追いかけた、今を逃すとタイミングがなくなってしまう。「あれ、ラクレット君?」「なによ、あんたも居たの?」「やはりあなたでしたか」「おや、こんなところに何のようだい?」「……こんにちは」おおー!! タクトは全裸を予想したが水着だったためにその落差で打ちひしがれている。ふ、馬鹿な人だな。むしろ水着の方が貴重であろうに。僕は、最初から水着だとわかっていたので、落差は全く無い。しかも今回は水着目当てでここまで来たのだ。ミッションをコンプリートしたのでむしろ満足気味だ。うお、ミルフィーは思ったより着やせするんだね。ピンク色の水着が白い肌とよくマッチしている。彼女のパーソナルカラーでもあり、髪の色でもあるのだ。ヴァニラはミントよりあるだと……いいじゃないかそれ。フォルテと、蘭花は正直反則だ。レッドカード2枚くらいで永久追放しなければならないくらいだ。蘭花は何よりも体つきが全体的やばい。すらっとして最低限の肉しか付いてない足、きゅっと引き絞られた腰に、聳え立つ様な存在感を与える胸。全パラメータが最低Aランクみたいなチートだ。フォルテは、胸の時点でやばい。あれは、女の武器どころの話ではない。殺戮兵器だ。圧倒的戦力差があるのにさらにダメ押しで投入されるであろう敵にとっての恐怖の象徴足りえるそれだ。そして、ミント、彼女もまたすごい。あの二十歳になっても身長が六歳児並というもはやチートを超えたそれになるであろう現在の10代の体は、手足につく肉すべてが無地のシルクのようで、素晴らしいであろう触り心地を想像してやまない。ともかく、全員チートだ。「いえ、タクトさんがこちらにいらしたので。何かと思って付いてきただけです」「そうなんだー。あ、タクトさん。どうしたんですかそんな遠い目をして?」「いや、ミルフィー何でも無いんだ。そう、なんでも」そういうとタクトはふふふと笑いながら立ち去っていった。何しに来たんだろうね? 仕方が無いので僕も立ち去ることにした。次の水着イベントは半年後かね……。ちとせって何着てたんだっけ?「やぁ、マイハニー久しぶりだねぇ、元気にしてたかい?」「いやぁああーーーまた出たぁ!!」「うおぉぉぉ!! また会ったな!! 友よ!!」「嫌ぁぁぁーー!! 暑苦しいのが居る!!」現在、ヘルハウンズの五人と交戦中。といっても、こいつらクラスの戦闘機乗りだと、正直倒すのはきつい。ひたすら逃げて逃げて、攻撃が鈍ったらなぶり殺しとか? 相手が、撤退も考えているなら、1対1で無い限り、絶対に倒すのはムリだろう。薔薇を加えた、ロン毛のナルシストのカミュ・O・ラフロイグに、脳筋の熱血野郎ギネス・スタウトこの二人はそれぞれ、ミルフィーとランファに付きまとってる。「ふふ、成り上がりの君とは、初めて会うね、ミント・ブラマンシュ。僕の名前はリセルヴァ・キアンティ」「私を成り上がりと仰るのは、伝統しかない古い貴族か、その伝統すら失ってしまった、没落貴族だけですわよ。貴方はどちらですかね?」「…………レッド・アイ」「おやおや、ずいぶん無口じゃないか?」「ヘヘ……ヴァニラ・H、このベルモット・マティンが補給も修理も出来ない内に叩き潰してやるぜ」「……うるさい」中性的で、高いプライドと野心を持つ自称名門貴族のリゼルヴァ・キアンスティはミントに。無口で語らない合理主義者のレッド・アイはフォルテに。チビでぐるぐる眼鏡のメカニックベルモット・マティンはヴァニラにそれぞれ付きまとう。基本的にこの戦闘は、チームワークで勝るエンジェル隊が、各個撃破していくのが、有効で、事実彼女達ならそうすると思う。「エンジェル隊の皆、ここは一機ずつ落としていけばいい。ラクレット、君はエルシオールの護衛を頼む」────了解!!「了解! 」まあ、僕はまだチームワークを駆使して動くことが出来ないからコレは仕方ないかな。戦闘はわずか8分ほどで終わり、ヘル・ハウンズ隊は撤退して行った。エンジェル隊が勝利を分かち合うのを僕は、黙って通信越しに見ていた。戦闘宙域から少し離れた宙域に、一隻の戦艦があった。その艦━━━バレル級戦艦バージン・オーク━━━は、エオニア軍……正統トランスバール皇国軍のものであり、ブリッジには一人の美しい女性が搭乗していた。彼女の頬には傷があるが、その傷でさえも彼女の美しさに入るように見える。そんな彼女の名はシェリー。 シェリー・ブリストル。エオニアが最も信頼している人物であり。名実ともにエオニアの一番の部下である。彼女は現在、エオニアと通信をしていた。「エオニア様、ヘルハンズ隊が撃破され帰還してきました」「ふむ、そうか。所詮は傭兵集団、エンジェル隊と戦闘行動が可能な点は評価すべきだが……それだけだ。気にしなくとも良い。それよりも手筈通りに動けるか?」シェリーは、自分の一応は部下でもある、ヘルハウンズ隊の失敗を報告したが、エオニアは特に気にした様子がない。なぜなら彼には、この後にある作戦を計画しており、それこそが本命であるからだ。最もその本命すらも、計画の一部であるのだが。「はい、こちらの準備は抜かりなく整えております。ヘルハウンズ隊の出撃は出来ませんが、それでも十分以上の戦力を所持しています」「そうか」「はい」ここで二人の会話は途切れた。しかしながら、エオニアは少し観察するようにシェリーを見つめていた。シェリーは自分の主である、彼の行動に少しの疑問を感じつつも、何かあるのかもしれないと思い、エオニアの顔を通信越しに見る。その二人の様子を、エオニアの艦に乗っている、通信士はこう語った。「あの二人、無言で30秒も見つめ合われると、ブリッジの空気が微妙になるのを理解して欲しいですね」と。「シェリー……」「は! なんでしょうか?」「……きちんと睡眠をとっているのか? 少々顔色が優れないように見えるが?」「……エ、エオニア様? 突然いかがなされましたが?」エオニアがしばらくシェリーを見詰めた後に口にした言葉は、少なくともシェリーの冷静な表情を崩すのには十分な内容であった。まさか、主君が自分の顔を見て隊長の心配をしていたなどとは、彼女には全く予想もつかないものであったのだ。そして、先ほどまでの真剣な表情で自分を見つめていたのは、自分を観察するためだったのだとわかると、急になぜだか解らないが、恥ずかしさがこみ上げてきたのである。「いや、ヴァルターがお前は無理する時にはとことんするからたまに気を使ってやらぬと、倒れそうだといっていたのでな」「……そうでしたか」「ああ、それに余としてもお前に倒れられると困るのでな。…それではシェリー、健闘を祈るぞ」それだけ言ってエオニアは通信を切った。ブリッジに一人佇むシェリーは言い逃げはずるいと心中で思いつつ、カマンベールに対して、感謝すべきなのか、怒るきなのかを考えるのであった。彼女の胸の中にあるもやもやについては特に考えようともせずに。