先生、事件です。
イタチ兄さんが、気持ち悪いぐらい俺に優しいです。
は、これはきっと孔明の――――
うちはに転生したけど、死亡フラグが折れません
第一話
俺の運がいいとき=フラグ
まあ、イタチ兄さんが優しい理由なんてわかってるんですけどねー。と縁側で足をぶらぶらさせながら思う。
なぜなら、今回俺は養子に出されていないのである。
なぜ養子に出されたかって?答えは簡単、間・引・きである。
この世界じゃ、双子は不吉なものらしく弟や妹は簡単に殺されてしまうらしい。まあそれだけではなく、食料事情などの問題もあるらしいが。
しかし、俺の生まれた家はうちは。血継限界はだれでも発現するわけではないため、血継限界を持つ一族で双子が生まれた場合は後に生まれたほうが分家や親戚に預けられる。(らしい)
さらに俺が以前生まれたとき、イタチ兄さんは任務かなんか知らないが家を空けていた。そして、俺はイタチ兄さんに会う前に間引かれたのである。
父さんも母さんもイタチ兄さんが兄弟を楽しみにしていたのは知っていたらしく、イタチ兄さんに隠すように俺は親戚に預けられた。
つまり兄さんは俺のことをただの分家の子供としか認識していなかったらしい。
だがしかし、今回ばかりはいろいろと事情が違った。
いつも家を空けていた兄さんが、なぜか今回に限っては家に居て、俺たちトリオをどうするかの話し合いに参加したらしい。
さすがイタチ兄さん、弟思いだね!
だが、ぶっちゃけた話俺が、俺たちがここに居られるのはトビ兄さんのおかげだ。
生まれたときから写輪眼が使えるとかいう、なにそのチート的な性能のおかげで、俺たち三つ子はうちは一族期待のルーキーらしい。
まあ、確かに俺は万華鏡まで使えるのは確定だし、サスケ兄さんもきっとびっくりするほどチートなのだろう。まだ、その才能が開花していないだけで。
というか、いくらなんでもトビ兄さんはおかしすぎる。そんなことを、廊下を転がりながら思う。
まるで、自分は転生者かオリ主ですと言わんばかりに誰よりも早くしゃべり、歩き、勉強や訓練をしている。
はっきり言って、あやしさ全開すぎる。まあ、大蛇丸に狙われる都合のいい生贄ができたと内心ほくそ笑みつつ、こっちに注意がいかないよう俺はちょっと発育の遅い(頭が悪い)子供を演じているんだが、これがイタチ兄さんの何かにクリーンヒットしたらしい。
おかげで、アカデミーではナルトやシカマルと一緒にどべ争いをしているんだが、手間のかかるほどかわいいと言わんばかりに兄さんにかわいがられていている。
「ライ」の状態で兄さんがほほ笑むなんて、と俺は愕然としつつ頑張って兄さんの期待にこたえようとして失敗する。
うむ、まさにダメな子である。
まあ、父さんはトビ兄さんを、母さんはサスケ兄さんを、イタチ兄さんは俺をかわいがっていて実にバランスが取れている。
と、思っていたころが私にもありました。
サスケ兄さんも男の子なんだし、やっぱ父さんや兄さんのほうがいいよねー。
でも父さんはトビ兄さんにかかりっきりだし、イタチ兄さんは家を空けていることが多く、たまに帰ってきても俺ばかりをかまう。
まあ、そこはさすがイタチ兄さん。ちゃんとサスケ兄さんの時間も取っているし、訓練も見てくれるんだが。
うむ、実にフラグっぽい。
これは逆恨みから兄弟の仲がぎくしゃくするフラグに違いない。
やはり、やつは生かしておくべきじゃなかったというのか……!
廊下を転がるのにも飽きて、ぼーっとしながら空を眺めつつ、果たして何回ループしたのかを数えようと思ったが自分の不幸の回数なんか数えても鬱になるだけなのでやめた。
まあ、なんだかんだ言ってかなり都合の良い転生になっていると改めて俺は思う。
大抵ループすると記憶が引き継がれるため、少しずつ精神が壊れたり病んだりする。
だが、俺の場合はどうやら違うらしい。まあ、何がどう違うのかは説明がしにくいのだが。
そう、例えば人を殺したとする。大抵この手の物語は人を殺してしまったことからくる罪悪感に長い間責められるものだ。
確かに、任務で初めて人を殺したとき俺も同じような状態に陥り、そのせいで殺された記憶がある。
しかし次の転生では、なんの抵抗もなく人を殺せるようになっているのだ。
俺が何か致命的な壁に当たって死んだ場合、大抵何度目かの転生ののちにすべて例外なく改善されているし、前回の俺が他人に抱いてた感情もすべてリセットされる。
まさしく、強くてニューゲームなのである。相手だけではなく、こちらの感情もリセットされているのだから。
例えば、我愛羅に殺された後、俺は千鳥が使えるようになった。それまで、雷遁なんて使えなかったのに。
例えば、サクラに恋をしていた時期もあった。だが、その次の俺はサクラごと敵を千鳥で貫いた。
はっきり言って、前の俺のことを俺は誰よりもよく知りながら誰よりも理解できていないのである。
そして今回、イレギュラーな新しい兄さんが生まれ、結果的に俺はこの家で生活することができている。
この体と俺がチートなのか、俺が既に壊れているのか、それとも俺を転生させ続けているナニカが俺という存在を都合がいいように作り変えているのか。
まあ、どちらにしても俺がどれだけ強くなったところでそのナニカには届かないだろうし、狂わなくてラッキーだ、ぐらいに考えていたほうがいいのかもしれない。
どうせ答えのない問いなんだし。
体を起こし、空を見上げため息をつく。
空に浮かぶ月は、限りなく、満月に近くて。
時期的に、そろそろなのだ。イタチ兄さんが、うちはの虐殺を始めるのは。