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No.19477の一覧
[0] 【習作】バイオハザードjpn【完結】[da](2010/09/20 09:35)
[1] 【17時30分】[da](2010/06/21 23:11)
[2] 【18時】[da](2010/06/23 10:04)
[3] 【18時30分】[da](2010/06/24 22:10)
[4] 【19時】[da](2010/06/27 15:25)
[5] 【19時30分】[da](2010/07/01 20:07)
[6] 【20時】[da](2010/07/06 19:36)
[7] 【20時30分】[da](2010/07/19 05:20)
[8] 【21時】[da](2010/07/21 10:27)
[9] 【21時30分】[da](2010/08/28 07:42)
[10] 【21時30分〔2〕】[da](2010/09/20 09:36)
[11] 【21時50分】[da](2011/01/21 18:51)
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[19477] 【習作】バイオハザードjpn【完結】
Name: da◆3db75450 ID:72179912 次を表示する
Date: 2010/09/20 09:35
※この小説は、バイオハザードが日本で発生した場合を妄想したものです。

【17時】

布団から気だるい身体を起こす。
壁にかかった時計を見ると、寝込んでから四日経っていた。

「四日も寝てたのかよ…」

四畳半のぼろいマンションの一室で呟く。
最後の記憶は四日前に大学から帰った時だった。
その日の午後から身体が熱っぽかった。授業を途中で抜け出して部屋に戻ると、激しいめまいに襲われてそのまま布団に倒れこんだ。
そして――たった今、起きた。
大学を休んでいる間に重要な講義がなかったことが不幸中の幸いだった。
携帯を見ると、バイト先や友人からの履歴がずらりと並んでいる。
めんどくさい事になりそうで、俺は盛大に溜息をついた。

とりあえず面倒ごとは後回しにして、トイレで四日分の排泄物を出し、備え付けの小さな冷蔵庫からカロリーメイトとウィダーインゼリーを取り出した。
四日もまともに食事をしていなかったから、ひどく腹が減っていた。
布団に胡坐をかいて座るとウィダーインゼリーを一気に流し込んだ。
それからカロリーメイトを齧りながら携帯を操作してメールボックスを開く。

未読【102件】

「は?」

あまりの数に、思わず声が出た。
俺は彼女もいないし、友人もそう多くはいない。
平均するとせいぜい一日一件程度しかメールは来ない。
四日で102件は、ありえない。

そして、不審に思いながら最新のメールを開けようとした瞬間――何の前触れもなく激しい爆発音が轟いた。
強い地震が起こったみたいに部屋が震え、窓ガラスが甲高い悲鳴を上げて割れた。

「―――ッ!」

咄嗟に、傍らにあった布団を掴んで身体を守る。
その直後、布団に窓ガラスが降ってきた。
俺は必死になって布団に包まる。
ガラスが布団を叩き、爆風が室内を荒らし回る。
僅か数秒で、あたりは元の静けさを取り戻した。

危なかった――。
心臓が早鐘を打っていた。
激しい運動を終えた後のように呼吸が荒い。
恐る恐る、布団から顔を上げると、ガラスの破片が室内に散らばっていた。
割れた窓から吹き込んだ風がカーテンを揺らし、その隙間から差し込んだ夕焼けが部屋を茜色に染めている。

風が、室内に微かな異臭を運んでくる。
不快な臭いが鼻の奥を刺激する。
この臭いは――腐臭?
なぜこんな臭いが?
震える足で立ち上がり、カーテンを開けて外を見ると、そこはいつもの見慣れた街ではなかった。
いたるところに瓦礫が散乱し、車が道路上で燃え上がっている。
一台や二台ではなく、何十台も。
先ほどの爆発は、恐らくその中の一台が爆発したのだろう。
部屋を染めていたのは、夕焼だけではなく、炎だった。
三階のこの部屋から見渡せる限り、街は全て荒れ果てていた。
所々に車や廃材を集めた簡素なバリケードのようなものも見える。

いったいどうしてこんなことになったのか俺にはわからない。
戦争が始まったのだろうか?
クーデター?
自然災害?
何が起こっているのか全く理解できなくて、俺は荒れ果てた町を呆然と見ていた。

…………。

あまりに非現実的な出来事に、現実逃避をはじめた頭を振る。

冷静になれ。

深く息を吸って、十秒数える。
そしてゆっくりと吐き出す。
落ち着くための儀式みたいなもので、自分を失いそうになったときはいつもこうするようにしている。
習慣にすることで、脳が正常な状態を記憶し、すぐに正常に戻れるようになる。
精神状態をセーブ・ロードするみたいに。

俺はまず警察に通報することにした。
もう誰かが通報しているだろうが(この状況ではしていない方がおかしいだろうが)とにかくどうすればいいか訊かなくてはならない。
一人で勝手に行動するより、ずっとマシなはずだ。

電話は二度のコール音の後に繋がった。

『アンブレラ製薬生物災害対策コールセンター、担当の霧島と申します。どのようなご用件でしょうか』

電話には落ち着いた声の女性が出た。

「あ、すいません間違えました」

俺はそう言って電話を切った。

おかしい。

警察にかけたはずなのに、アンブレラ製薬に繋がった。
110番だ。
こんな簡単な番号を間違えるはずがない。
現に、履歴には110番の記録が残っている。
もう一度、確実に、110とボタンを押す。

今度も二度のコール音の後に繋がる。

『アンブレラ製薬生物災害対策コールセンター、担当の霧島と申します。どのようなご用件でしょうか』

先ほどと同じ女性が、全く同じ言葉を言った。
俺は仕方なく事情を説明する。

「警察に電話したはずが、ここに繋がってしまったんですが」

『この市では現在、生物災害が起こっており、無用な混乱を避けるため市全体が情報統制されています。市内にいる限り、どこにおかけになっても、このコールセンターに繋がります』

生物災害――バイオハザード。
少し前に、アメリカの――確かラクーンシティで事故があった。
そしてその結果、ラクーンシティは地上から消滅した。

心臓の鼓動が徐々に早くなるのを感じる。
俺はその鼓動を抑えるようにゆっくりと呼吸する。
その間に彼女は言葉を続ける。

『現在、当社の私兵で住民の救出を進めています。失礼ですが、お名前と、現在地を教えていただけますか』

俺は名前と現在地を答えた。

『佐藤悠太さんですね。確認致しました。最寄りの避難所は第一小学校です。18時に救助のヘリが到着しますので、それまでに第一小学校にいらしてください。場所はご存知でしょうか』

「はい、よく知ってます」

そこは大学に行くまでの通り道にある。ここからだいたい1kmぐらいだった。

『それでは案内は省略させていただきます。現在、17時15分です。出来るだけ早く準備を済ませて出発してください。それと荷物は最低限のものにしてください。救助ヘリに乗せることができる量は限られていますので、ご協力お願いします』

彼女は落ち着いた美しい声で話すが、彼女の声はどこか作業的で、その声色から感情のようなものは読み取ることができない。

「えっと、霧島さんでしたっけ。質問していいですか」

『はい』

「警察や自衛隊の出動は――」

『問題解決は全て当社が行っています』

彼女は即答する。
あらかじめ決められていたマニュアルを読むみたいに。
俺は彼女の答えに疑問を持つ。
これだけの災害が起これば、普通は警察と自衛隊、それに、消防署や、色々な機関が救助に入るはずだ。
それをアンブレラ製薬の私兵だけで災害対策を行うというのだ。
これは介入して欲しくない問題がある、ということだろうか。

先のラクーンシティの事件で、アンブレラ製薬は世間の信頼を失った。
以前では一笑されたようなアンブレラ製薬の裏側も明るみに出てきている。
もちろん俺も、アンブレラ製薬に対してあまりいい感情は抱いていない。
霧島さんを、アンブレラ製薬を、どこまで信頼していいのか俺にはわからない。
だが現在、俺が頼れるのは霧島さんしかいない。

俺は質問を続ける。

「そうですか、じゃあ――生物災害、というのは具体的にどのようなものなんですか?」

『市全域に感染力の強いウィルスが流出しました。ウィルスは人だけでなくほぼ全ての生物に感染します。
ウィルスに感染した生物は、発熱や痒み、意識レベルの低下等の初期症状を経た後発症します。
発症すると知能が低下し新陳代謝も加速し、そして新陳代謝の加速からくる飢餓のため、食欲を中心とした本能的行動をとるようになります。俗な言葉ですが、わかりやすく言うとゾンビ化します。
ゾンビ化した市民の襲撃と、ゾンビから逃れる混乱した市民によって市は壊滅状態になりました。
現在は市の周囲にバリケードを設置し、ゾンビの市外への進行を阻止しています。地上からの脱出は絶望的な状況ですので、空からの救出活動を続けて――』

「ちょ、ちょっと待ってください!」

俺は淡々と説明する霧島さんの声を遮って言う。

「発熱や意識レベルの低下って――俺、四日前に熱が出て、意識が朦朧として、気がついたら四日経っていました。もしかして、俺は――」

『今もその症状は続いていますか? それと、身体の痒みはありますか?』

「いえ、今は大丈夫です。痒みもありません」

『でしたら問題ありません。佐藤様とお話しする限り知能の低下は感じられませんし、仮にウィルスに感染しているとしたら、佐藤様は知能を維持したままゾンビになっているということです。通常、そのような事はまず起こりません』

「そうですか、よかった……」

俺はほっとして息を吐く。

『ご質問は、以上でよろしいですか』

「はい、えっと――」

俺はふと、重要なことに気づく。
ゾンビがいったいどんなものかはわからないが(ラクーンシティの事件の噂が流れなければゾンビなんてまず信じなかっただろう)ゾンビのいる街を歩いて1km先の小学校に行く事は危険ではないのだろうか。

「学校にはどうやって行けばいいんですか。道路は車が使える状況じゃないし、ゾンビがいるのに歩いて行くんですか?」

『はい』

彼女は簡潔に答えた。

「はい、って……」

『道路は車はもちろんバイクや自転車の通行も厳しいでしょう。移動手段は歩くしかありません。しかしゾンビは現在、生肉を求めて市を囲んでいるバリケードに集まっています。市内に生存者はほとんど残っていませんから。ですので第一小学校周辺は、比較的安全といってもいいです。移動する際には、動きやすく厚手の服装を心がけてください。ゾンビに噛まれるとウィルスに感染します』

アンブレラ製薬の私兵が小学校まで護衛に着くとか、ヘリがアパートの前に梯子を垂らしてくれるとか、どうやらそういったサービスは行っていないようだった。
でも、これはしょうがない。
きっと多くの住民が救助を求めているはずだから。
だけど、自衛隊が救助に参加していれば、もう少しサービスがよかったに違いない。
そう思わずにはいられなかった。

『ご質問は、以上でよろしいですか』

「はい――ありがとうございました」

俺は電話を切った。
他にも聞きたい事は沢山あったが、今は時間がない。
必要最低限の情報で素早く行動する必要があった。
それにあまり深く訊いても、おそらく彼女は答えてくれないだろう。
彼女はマニュアル以上の事は答えない。
そんな気がする。

時計を見ると17時20分だった。
あと40分で、準備を終え、ゾンビがたむろする街を1km歩き、小学校にたどり着かなければならない。

俺は押入れを開けて服を選ぶ。
霧島さんは動きやすく厚手の服装をしろと言ったが、動きやすい服装は大抵薄手だし、厚手の服装は大抵動きにくい。
悩んだ末、ミリタリー系のブランドの黒のフライトジャケットと、カーキのカーゴパンツを選んだ。
本格的なレプリカではなくファッションブランドのものだったが、厚手で動きやすく機能性はまずまずだ。
インナーは機能性が高く身体にフィットするスポーツインナーにした。
腕にはいつも使っているGショックをはめる。
靴はグレーのニューバランスにした。
これが一番歩きやすい。

次は持っていくものを考える。
大量の荷物は持てない。
ヘリに乗せることが出来ないし、動きが鈍ってしまう。
多分それは危険だし、もしかすると18時に間に合わなくなるかもしれない。
18時に間に合わなかったらどうなるか、俺にはわからない。
次の19時の便があるのだろうか。
それとも翌日まで待たなければならいのか。
どちらにせよ、碌な事にはならないだろう。
実家に帰省するときに使っている、少し大きめのリュックを使うことにした。
アウトドアブランドのリュックだから機能性は問題ない。
これに入る分だけ持っていくことにする。
印鑑と、通帳と、マンションの契約とか、保険とかの書類。
財布と携帯の充電器と、A4サイズのノートパソコン。
もうすぐ暗くなる時間帯だし、懐中電灯も持っていくことにした。
あと余っていたウィダーインゼリー2本も入れておく。

これ以上、とくに持っていきたいものはなかった。
もともと、モノをあまり持たない主義だし、四畳半の小さな部屋における量は限られていた。
着替えも持っていく必要はない。
荷物は帰省するときより、ずっと軽いものになっていた。

最後に、携帯をポケットに入れようとした時、メールが来ていたことを思い出した。
携帯を操作してメールボックスを開く。


送信者:母
件名:大丈夫ですか?
本文:事故があったみたいですが、大丈夫ですか?
   無事なら返信してください。


母からのメールは三十件近くあった。
父からも二十件。
後は学校や、バイト先や、友人達から。
内容はどれも同じで、みんな俺のことを心配してくれていた。
最後のメールは三日前だった。
おそらくその日に情報統制されたんだろう。
全部を見る時間はなかったから、かいつまんで読んだ後、メールボックスを閉じて携帯をポケットにしまった。
身体の緊張がほぐれて、少し軽くなったような気がした。

リュックを背負って、部屋を出ようと扉に手をかけたとき、扉の脇に立てかけてあったそれが目に留まった。
実家から持ってきた金属バット。
小学校、中学校、高校と野球をしていた。
本気で甲子園を目指していた時期もあった。
結局、俺は夢破れたわけだが、このバットは当時から使っていて、大学の野球サークルに参加するために持ってきたものだった。
しかしそのサークルは野球サークルとは名ばかりの飲みサーで、俺は入って早々幽霊部員になったのだが。
以来、一度も触れることなく埃を被っていた。

動きは少し鈍くなるが、武器は持っていったほうがいいかもしれない。
金属バットがゾンビにどれほど効果があるかはわからないが、武器があるかないかで精神的な余裕はずいぶん違う。
何より、十年来付き合った相棒だ。
持っているだけで落ち着くし、こいつをここに置いていくのは薄情な気がした。
片手が塞がるのは痛いが、持って行くことにする。
バットの傍らに置いてあった黒のバッティング手袋をはめ、金属バットを片手に持つ。
バットは長い間放って置いたのに、手に吸い付くように馴染んだ。
時間を確認すると17時30分だった。
あと30分で学校に着かなくてはいけない。

俺は深く息を吐いて扉を開けた。


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