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「キュォオオオオオオオオオオオ!」
雷撃が飛び交い、
「エ゛ァォオオオオオオオオオ!」
電光を纏った巨体が襲い来る。
「ハキシュ!」
間を縫うように首を伸ばしてきたりする。
だが、ハルマサは意外と余裕だった。
動けばついてこれない。
ヌルヌルするだけで防御もそんなに堅くない。
そいて雷撃を出すまでのタイムラグ。
(これは……勝てる!)
速さが相手を上回るということは絶対的なアドバンテージを得ることであった。
レベルアップによってさらにスピードが増したハルマサは、踊るように戦場を舞い、骨で叩いたり突いたりしていた。
とは言え、敵も体格が大きい分だけ体力も高い。
適当な攻撃では、そうそう沈んではくれないのだ。
(主にフルフルヘッドが)入り乱れる戦闘において、「突き」を口の中に食らわせることは思った以上に難易度が高い。
どうするか、と考えて、ハルマサは重さで潰すことにした。
フルフルを全て叩き落した天井に骨を伸ばして突き刺して、魔力を通す。
「セレーンの大腿骨」はとても魔力伝導率が高く、骨の周囲では精度の高い「操作」が出来る。
ズゴォ、と天井から抜けた骨には、圧縮された岩がこんもりついていた。
決して折れない骨がしなるほどの重さだった。
とても支えきれない。
だが、ハルマサはそれを振り下ろすだけで良い。
「どっせい!」
メキャァ!
それを飛び掛ってくるフルフルに向けて振り下ろす。
距離の調節は骨の伸縮で。
ハルマサが片手で保持するのが難しいほどの岩塊は、重力加速度+振り下ろしの速度でフルフルを圧壊させる。
「ギォオオオオオ!」
翼の骨をへし折られてうめくフルフルを見つつハルマサは思う。
(この骨最高――――!)
なんか凄い使えるんですけど!
突いて良し! 叩いて良し! 魔力伝導率が良いから……炎の剣だってできるんだぜ―――――――!
正しくは燃える骨。
岩の塊から骨を分離させ、その周囲に炎を纏わせる。
たいまつのようなものだったが、ハルマサのテンションは上がりまくった。
ハルマサは身を屈めて左から跳んできた赤いフルフルヘッドを避けると、神速の踏み込みで、右斜め前のフルフルの懐へと入り込む。
(食らえ! ピカデラパーンチ!)
パァン! と盾を打ち付けフルフルの腹を波打たせる。
その一撃はフルフルを棒立ちにさせ、続く炎の「突き」で防御を破られる。
体の中に抉りこまれた骨から魔力が漏れて、風となり、体の内部を掻き回す。
まさしく致命傷。
フルフルは口から血液と汚物を撒き散らしながら、前に倒れる。
びちゃあ、とハルマサにかかる血と汚物。
その汚物とは、唾。フルフルが逆さまになった時ポタポタ落ちてくる……強力な溶解液だった。
多分胃酸。
(ほギャ―――――――!)
ジュゥ、と毒に耐性を持つゲリョスの服すら溶かす酸は、ハルマサのヘルメットなんて何のその。
瞬く間に溶かされ、ハルマサは燃え上がるような痛みを訴える頭皮に涙目になる。
ハゲる! ハゲるよ!
だが泣いていてもだめなのだ。
ここは敵地なのだから。
フルフルが咆哮する。
「ほぁあああああああああああああああああ!」
やっぱり(鼓膜が)パーン!
「ぅあ――――――!」
ヘルメットが壊れた途端にこれだよ!
ハルマサは蹲りそうになる体を強靭な精神力で抑えつけ、もうこんなのいらんとヘルメットを脱ぎ捨てる。
顔には眼と鼻と口の部位に穴があいた強盗マスクだけが残る。
上半身の服は溶け、頭頂部が円形に溶けたマスクを被る、ピッタリパンツの男。手には骨。
もう変態すぎて絵にしたくない姿である。
もうヤケクソだぜぇ――――! とばかりにハルマサは敵の集団へと突っ込んだ。
「うぃー……。」
勝ったぜー!
マスクは雷光で弾け飛んだけど、眼と鼻と口も付いてるぜー。鼓膜はまだ破れたままだけど。
返り血でベタベタだし……お風呂入りたい。
赤のフルフルが3体。
白のフルフルが8体。
結構な数のフルフルを倒したハルマサの前に、突然大きな宝箱が浮かび上がる。
なんのお知らせも無く、正直どうすれば…と眺めていると勝手に開いた。
バカン、と開いた宝箱に入っていたのは……
≪【ママチャリDX】:どんな衝撃にも耐える神様仕様。パンクしない。切り替えが3つ備わっており、幻の4段階目にギアを入れるにはパスワードが必要である。≫
「意味が分からないッ!」
思わずハルマサは吐き捨てていた。
なんでフルフルの巣にチャリ!?
これからの冒険に、乗って行けと!?
行くかッ!
でももったいない精神を持つハルマサは自転車を「収納袋」の中に押し込み、金貨とやたらかさばる「魅惑色の剛翼」とか食べられないらしい「フルフルの霜降り」とかを拾って、その場を後にした。
森丘の川原に返ってきたハルマサは、まず自分の身を省みる。
ネットネトだった。
もう、お風呂! お風呂入りたい!
フルフルのローションで体中がネッチョネチョだよ!
いでよ……五右衛門風呂ッ!
地面から浮き出る鉄の釜。
そこに敷く木材は適当にそこら辺から。
竈を組み上げ、その上に釜を設置!
水を入れて、と。
着火!
「ふぃー。良い湯だね。」
森丘の川原で五右衛門風呂に入りつつハルマサは考える。
これからどうしようかな、と。
次は……ナルガクルガの居たところに挑む?
でも結構足踏みしちゃってるし……先に進もう!
北へ! ひたすら北へ進むのだ!
風呂から上がったハルマサは、飯を食い、服装(ズボンだけ)を着て先を見る。
視界の先に広がるのは、みっしりと樹が立ち並ぶ。
言うなれば、「樹海」だった。
「ふんッ! 今度は一体何が待ち構えているのかぁ――――!」
戯れに自転車に乗って、チリンチリンとベルを鳴らしつつ、ハルマサはテンションを上げて森丘の北に広がる樹海へと進んでいくのだった。
<つづく>
宝箱に入っているのはまともな装備品とかも考えたけど、そういうssじゃないよね。
満腹度: 55122 → 55889
耐久力: 47785 → 52584
持久力: 54055 → 54822
魔力 : 84225 → 87750
筋力 : 51755 → 55252
敏捷 : 81029 → 83537
器用さ: 111656 → 119018
精神力: 43023 → 44021
経験値: 44060 → 63260
金貨 : 94 → 176
スキル(熟練度上昇値の高い順)
防御術Lv11 : 8207 → 10647 ……Level up!
空間把握Lv12: 33279 → 35490
突撃術Lv11 : 16820 → 18963
心眼Lv10 : 3492 → 5473 ……Level up!
土操作Lv11 : 17282 → 19237
魔力放出Lv13: 52975 → 54875
盾術Lv10 : 7430 → 9304
棒術Lv10 : 3932 → 5739 ……Level up!
身体制御Lv12: 27331 → 29011
魔力圧縮Lv12: 25805 → 27430
炎操作Lv11 : 16723 → 18234
解体術Lv10 : 6398 → 7883
観察眼Lv11 : 17221 → 18344
戦術思考Lv12: 23489 → 24487
風操作Lv12 : 23707 → 24438
撹乱術Lv12 : 20995 → 21664
蹴脚術Lv8 : 1430 → 2049
撤退術Lv11 : 10442 → 11006
回避眼Lv11 : 10873 → 11435