<80>
クエスト開始の影響を受け、ガノトトスのステータスは2倍になる。
もともと精神力に特化していたガノトトスは、精神力が164238となるという変貌を遂げる。
さらにこの魔物が特技「水放射」を使う時は精神力が二倍。
口から吐き出される水流は、火竜希少種の鱗を貫通するほどの威力となった。
と言うことを全く知らないハルマサだったが、海に入ると急に深くなる水辺の地形、その深くなった底で尻尾を揺らすガノトトスを「観察」して、レベルが12から13に上昇していることには気付いた。
ガンガン、と引っ切り無しに頭の中で警報が鳴る。
でも、ここまで来てしまっては、逃げれるものも逃げられない。
というか背を見せればよい的となる。
ハルマサに残された選択肢は、盾を握りつつ、ただ吶喊するのみである。
(うぉおおおおおお!)
昨日の訓練で分かったが、水の中は、持久力の減りが常時の2倍。
速くケリをつける必要があった。
グボン、と足の裏から魔力を噴き出し、ハルマサはガノトドスへと飛び掛る。
それを迎えるガノトトスは、辺りに溢れる水をエラから吸い込み、喉で圧縮。
狭めた出口から、ビームのように噴き出した。
見える!……わけないだろ!
「心眼」が危険をがなりたて、「回避眼」が攻撃ラインを浮かばせる。
水中という領域で、ハルマサが出来たのは、水を固めて、盾をかざす事だけであった。
認識する間もなく固めた水を貫き、盾を抉る水の光線。
だが、斜めに翳した事が有利に働いた。
水の中、水流が直撃しガオン! と盾が跳ね上げられた。
その表面の鱗が無惨に抉られているのをハルマサは「空間把握」で知る。
垂直に受ければ貫通していたかもしれない。
だが、斜め受けも多用できない!
盾の限界の方が速く来る!
それなら……!
ハルマサは、弾かれた勢いを利用してクルリと回り、魚竜を相手取る時のために考えていた戦法を実行する!
その1ぃ!
(口周りの水を圧縮して固定! 顎は、噛む力は強いけど開く力は弱いのだ―――――!)
あっけなくパリーン!
そして撃ってきた水を防いで、盾から鱗が一気に二枚剥がれて飛んだ。
(ちきしょう、その2だ!)
辺りの水を巻き上げて、水中なのに、陸の上状態!
魚竜大きすぎだし、結構速くて無理!
そのさぁん!
エラと口周りの水を巻き上げてその間に吶喊!
(こ、れ、だぁああああああああああああああ!)
一時的にエラ呼吸か肺呼吸かを迷わせる作戦は、エラから水を吸い込んでいた魚竜に意外と有効だった。
ハルマサは、戸惑う魚竜へと一気に接近する。
だが、ガノトトスは地上で水を吐く事が出来るよう、水袋なるものも持っている。
ギュゴォ! と水を掻き分け水が飛ぶ。
不用意に飛び込んだハルマサは上手く防御できず、衝撃をモロに受け止めた盾に大きくヒビが入り、真っ二つに割れる。
下半分は折れて底に沈んでいった。
(ピカデラが――――ッ!)
ハルマサは嘆いているが、受け止めた鱗が「天鱗」でなければ彼の腹に穴が開いているところだ。
だが、盾が割れたことはハルマサにとっても幸運だった。
何せ馬鹿みたいに重かった盾が一気に軽くなったのだ。
ハルマサの動きは速くなる。
そしてチェンジオブペースは相手を惑わせるのにとても有効なのだ。
(だぁあああああああ!)
それでも直ぐに狙いを定めて水を撃ってくる魚竜に、必死に盾を翳しつつ、ハルマサはジグザグに近づいていく。
あと20メートル!
巨大な魚竜と戦っていればホンの目と鼻の先だ!
ハルマサがかなり接近して、ガノトトスは戦い方を変更する。
「ギャーオゥ!」
突進してきたのだ。
水の中でも良く響く声を出しつつ、ミサイルのような速度でぶつかって来る魚竜。
「ふぐっ!」
ずしんと来る重さで、前に進む勢いも動きも止まるハルマサを、ギュルリと回転した魚竜の巨大な尾びれが襲う。
(これは……チャンス!)
どぉ! と背中から水を泡立てるような勢いで魔力を噴き出すことで、ハルマサは下へと潜り、横薙ぎの尻尾を回避する。
一瞬の放出で背中の皮膚が吹き飛んだが、構っていられない!
(ようやく隙を作ったな!?)
シュル、と右手に溢れる魔力!
――――――――極・風弾!
ドゥ! と魚竜を下から突上げる風の塊。
だが、これじゃ足りない!
(うぉお!)
ハルマサの足、背中から、無色の魔力が噴出し、魚雷の如く吶喊したハルマサはそのまま魚竜を突上げる。
(ぬぅおりゃぁあああああああああああ!)
ズン、と来る重みを、噴き出す魔力を増やすことで耐え、ハルマサはガノトトスの右足を両手で掴み上げ、水面へと持っていく。
シュゴォオオ! と足の裏から噴き出す魔力は、皮膚が吹き飛んだので血液混じり。
(うぉおお、めっちゃ、いた――――――い!)
魔力放出は、本気で動こうと思うとかなり痛い移動法だという事が良く分かった。
(って、なんか鱗すべる! くそぅ、「剛力」招来ッ!)
ジタバタ暴れる魚竜に対して、「剛力術」を発動。
敏捷は現在関係ないので、デメリットは持久力の減少だけ。
だが、水面が近い今ならそれほど関係ない!
ついに水面を突き抜け、蒼い空へ。
ハルマサは、手を放すと、空中を蹴って尻尾へ移動。
ガッチリと肉に指を食い込ませると、魔力を放出して力を込めた。
「うおらぁあああああああああ!」
ドパァン!
30メートルの巨体を振り回し、砂浜へと叩きつける。
飛び散った砂が舞い上がり、白い砂が付着したガノトトスはまだらに白い。
ガノトトスはすぐに起き上がるが、地上での動きは明らかに鈍かった。
「ギシャァアアアアアアアア!」
シュパァ!
と飛んで来る水流を「心眼」で察知したハルマサは、手と足から魔力を噴出して避ける。
空は移動を邪魔する水が無い。
(とっても動きやすい!)
空中を、魔力噴出による3次元撹乱機動で縦横無尽に駆けつつ、ガノトトスに迫るハルマサ。
方向転換のたびに、背から、足から血が吹いて、その内貧血になりそうな光景だ。
シパァ! こめかみを掠める水流に眼もつぶらずに、ハルマサは最後、と空中を踏み込む。
ドォン! 空を歪ませ、ハルマサは直下に突撃。
貴様の弱点は、あの、ちょっと一言で言い辛いけど、背びれの付け根から30cmくらい前に20センチくらい横に15センチくらいずれていてちょっと凹んでいる鱗と鱗のもう良いや!
「ナァ――――――イフッ!」
――――――手刀斬!
ズバァ! と背ビレの付け根辺りに食い込んだ手刀は、血を噴き出す前にガノトトスの体を両断。
特化型ゆえの体のもろさか、手応えは思った以上に軽かった。
着地して、足の裏の傷に刷り込まれる砂に悲鳴を上げつつハルマサが飛びのいてから、ガノトトスの切断面から血がドバァと噴き出し、ガノトトスはゆっくりと倒れた。
地上に引きずり出せば、ここまで簡単に倒せるのか。
ズゥン、と倒れる巨体を見つつハルマサは、手ごたえを感じたのだった。
ともあれ、5分足らずの戦いだったのに持久力も半分以下になったし、とても疲れた。
「ふぅ。」
と体を横たえて休憩するハルマサに、つい、と果物が差し出された。
「え?」
カニだ。
ヤオザミが果物を渡してくれたのだ。
なんか凄い感動した。
渡されたのはリンゴのような形の白い果実。「観察眼」で見ると……ドドブラリンゴ?
≪【ドドブラリンゴ】:ドドブランゴを下したものだけに食べる機会が訪れるという幻のリンゴ。≫
へぇー。いただきます。
ぱくっとな。
「うまい! こりゃ旨い!」
一口かじると芳醇な香りが口に広がり、たまらなく幸せになった。
ハルマサが食べているとカニはハサミを振り上げギィギィと鳴きだした。
喜んでいるのかな、と何となく分かる。
なんかさっきからポケモントレーナーの熟練度が唸るほど上がっているけど、これはモンスターと友好関係を結べたからだろうか。
「ふふっ。ありがとね。」
とハルマサがヤオザミのハサミを握ってシェイクすると、「ポケモントレーナー」スキルのレベルが13になった。
上がり過ぎ。
<つづく>
満腹度: 40614 → 42839
耐久力: 30462 → 33604
持久力: 39548 → 41772
魔力 : 59314 → 71479
筋力 : 29556 → 34286
敏捷 : 61620 → 67333
器用さ: 91379 → 95619
精神力: 28528 → 30178
経験値: 21120 → 31360 残り 9600 レベル13.5相当のガノトトスだったので経験値は10240
拳闘術Lv10 : 7294 → 8763
盾術Lv10 : 3044 → 5893 ……Level up!
消息術Lv10 : 4803 → 6734 ……Level up!
突撃術Lv11 : 12032 → 15027
撹乱術Lv11 : 16926 → 19736
空中着地Lv12: 22861 → 23973
剛力術Lv10 : 5521 → 7284
水操作Lv11 : 10807 → 14041
風操作Lv12 : 22701 → 23707
魔力放出Lv13: 44882 → 51746
魔力圧縮Lv12: 19227 → 24528 ……Level up!
戦術思考Lv12: 19234 → 20884 ……Level up!
回避眼Lv11 : 8826 → 10873 ……Level up!
観察眼Lv11 : 14699 → 15058
空間把握Lv12: 27980 → 29634
心眼Lv8 : 274 → 2038 ……Level up!
PトレーナーLv13: 10272 → 41201 ……Level up!
<あとがき>
そらをこえろ―――ッ!(アトム――ッ!)
アトムは10万馬力だそうで。
一馬力はフランス式で736ワット。一ワットは一秒間に一ジュールの仕事量をする仕事率。
じゃあジュールは……そこがのっとらんのですよ我が家の国語辞典! シュールがあるならジュールも頑張って欲しかった!
もっと性能の良い国語辞典がないとダメかな。ハルマサ君との性能の比較も出来ないぜ!
そして期待させたであろう、ひまわりはこの程度でした。
明日も更新したいけど、無理だったらすんません。
まだ書けてないんだ。
>材料つかって武具作る
どうせ使い捨てなんだぜ
>リオレイアを人化
それは……やめておこう。一瞬マジで考えたけど。
>桃色系統の使用って重罪
これについては後で。
というか桃色じゃないはず! ドラクエ的な特技だし。
>耳はどうなった
不死体躯で直ったんだぜ
>デモンズソウルの『イカ頭紳士』
どこに行けば見れるか教えてほしいです。
そしてしっかりと作品に反映!したい。
>ほああぁあぁぁ!さえなんとかすればスキル的には余裕
そのとおりなんだ。私が遠回りしていただけ。なんか疲れてて。
>ドラゴンナイトとなって嫁と一緒に下の階層へと
その展開も考えたけど、モンスターボールが必須。というかこれからの戦闘でクソ足手まといになる可能性が。
>仮面ライダーかと
仮面ライダーw
半裸のやつがいたら教えてほしいぜ!