レベル:12
耐久力:27406
持久力:34025
魔力 :51943
筋力 :36859
敏捷 :58416
器用さ:83890
精神力:36528
経験値:21120
金貨 :72枚
<77>
手元には盾に使わなかった鱗が1枚残っている。
金色の鱗はとんでもなく高価なんではないだろうか。金貨の代わりになるかもしれない。
だが、その防御能力を僕は買う!
つまり胸当ても強化だ!
ヘルメットには湾曲してないから無理だけどね。
そうして胸の中心、心臓を守る位置に光り輝く鱗をつけたカッコイイ胸当てが!
ゴメン嘘です。
怪しさが増したよ。
「よーし水を操るぜぇ――――!」
川原にやってきました。
そよそよと流れる川ですが、水深は5メートル、川幅は10メートルほどあります。
これから僕は、水中で素早く動くために「水操作」を鍛え、心肺機能を鍛えるために水に潜るのだ!
あわよくば泳ぎに関するスキルもゲットしてしまおうという今回の企画!
泳ぐんだから、服は脱ぐ!
トーウ!
かっこよく脱いだら脱衣系のスキルとか出ないかな。
ちなみに、胸当て手甲は攻撃を受けそうな部分以外はゴム製です。
脱ぐのも簡単!
こんなにゴム皮あったのかよって思うくらい、いろんな部分にゴム皮使ってます。
「布加工術」様々だね!
全身ラバースーツも脱ぎ捨てて、下着も全部「収納袋」の中に、イン!
外見に比例しない重さの袋はこの樹の根の辺りに埋めておこう。目印は棒で良いかな。
ただし盾だけは出しておく。
何故なら、これを持ってガノトトスと戦うからだ――――!
じゃあ、このやたら重い盾を持って、と。
おふっ。ズシッと来る。
盾と言うか、端がちょっと丸くなった四角い板にしか見えないし、かなり取り回しづらいけど、我慢だ。
片手で持たないといけない事が地味に辛い。
両手で持ったら何にもできないからこれも我慢だ。
シールドバッシュとかしたかったんだけど、今のままだと無理そうだ。
ていうか走ったらこける。体から離したら地面に擦っちゃうよ。岩剣よりは確実に重い。
今朝投げ転ばしたゲリョスと同じくらい重いんだけど。
これは「土操作」「魔力圧縮」が上達したお陰かな。
とにかく重たい。腰に来る。
でも水中だったら――――――!
ドボーン!
『ふんむぐ―――――!』
当然浮かない。
凄い勢いで沈んだ。
(今気付いたけどこれを持って泳ぐって、凄く難しくないかな!)
川底にめり込む盾を引っ張りつつハルマサは今さらのように思う。
仕方ない、ここは「剛力旋風」だ!
(説明しよう! 剛力旋風とは、「剛力術」を発動して旋風のように舞い、川底に沈んでいる盾を川原に蹴り出す技なのだ―――!)
対象を限定し過ぎなことを考えつつ、ハルマサは「剛力術」を発動。
筋肉が肥大し、体中に力が漲るが、同時に酷い疲労が体を襲う。
(あれ?)
と思い、ステータスを見ると、持久力の減りが半端じゃない。
一秒で百は減っている。
水中だからということか!
速くしなきゃ!
そう思い、手で持って投げれば良いのにハルマサは剛力旋風を使う。
ガイン!
(痛い!)
当然足の指が痛いですよね。
しかし今は足を抑えて蹲っている時間も惜しいハルマサ。
彼は盾を両手で掴むとジャイアントスイングを始める。
(ふん、なぁあぁぁぁぁぁぁあああッ! とんでけ―――!)
ブオッ! とジャイアントスイングで生じた渦巻きを切り裂きつつ、盾は川を飛び出していく。
投げた瞬間何かの特技が発動したのか、とても良い手ごたえだった。
川底でなければキラキラと爽やかに汗が舞い散っているだろう。
大変気持ちよく投げれたハルマサだったが、直後とてつもない危機感に襲われた。
(よく分からないけど何かマズい! み、水操作ぁッ!)
グワ、と手のひらを上に向け、水をかきあげる。
魔力に導かれて川の水は水龍のごとく暴れ、氾濫する。
(水の中なら、水流を激しくすればだいたいの事は防げるはず!)
そう思ったハルマサに迫る危機は、「だいたい」の範疇に収まっていなかった。
(た、盾が戻って来たー!?)
ギュルギュルと回転する巨大な質量の盾はブーメランの軌道を描くように戻ってきたのだ。
それこそが特技「盾ブーメラン」の効果だったが、返ってくる盾を受け止めなければならない方としてはたまった物ではない。
水底を蹴って思わず避けていた。
ズドォ! と川底に刺さる盾。
濛々とあがる川底の砂。
それを見つつ、ハルマサは意識が遠のくのを感じていた。
ああ、持久力切れたんだね……「剛力術」きっておけよ僕のバカ……
気付けば僕はよく分からない場所にいた。
空はクレヨンで白地を適当に塗ったみたいな色をしており、
ぐるぐる巻きの太陽が辺りを照らしており、
小学生が書いたみたいな雲が浮かんでおり、
目を写せば下手糞な絵の様な歪んだ森林があり、
ムニャムニャ聞こえると思って見下ろせば足元のひまわりはひまわりのくせに僕の脛までしかなく、顔が付いていて鼻ちょうちんを出しながら眠っていた。
「僕の顔を……食べなよ……ムニャ……」
寝言を聞き流しつつ顔を前に向けると、目の前数センチにカーネルサンダースがいた。
ケンタッキーフライドチキンの前で常に笑っている人だ。
とりあえず近いと思って身を引きつつ見ていると、太陽の胡散臭い光を浴びてマネキン特有のツヤツヤした光沢を浮かべつつデフォルトの笑顔のまま、口も動かさずにカーネルサンダースは喋り始めた。
「あのね。いい加減にしないとワシ怒るよ?」
怒るらしい。そもそも誰?
「分からんのか!? この姿を見ても!?」
「ふ、フライドチキン屋を全米で繁盛させた人ですか?」
「違うわ――――――!」
笑顔のまま怒られる。
「ワシじゃろうが! ワシ! 子どもに大人気の、盾の精霊じゃろうが!」
「は、はぁ……」
「お前が中々珍しい盾を作ったから見ておったら……水に沈めたり投げたりと……ちゃんと使え!」
徐々にヒートアップしていったカーネルサンダースは、表情を変えないまま、ダンダンと悔しそうに地団太を踏む。
ひまわりがスタンピングに巻き込まれて「ピギャー」と悲痛な声を出していた。
「痛いよぅ!痛いよぅ!」
「もう、ワシ耐えられん! そんな使い方されたら、ワシもう耐えられんのよ! ホント、ワシもう耐えられんよ!?」
(しつこいな……)
「踏まないでおくれよぅ!」
ひまわりを踏みにじっていたカーネルサンダースは唐突に動きを止めると、ハルマサに手に持っていたステッキを差し出してくる。
「だからお前にこれやる。」
「はぁ……」
いらないんですけど。
「その名も超力ステッキ! 食べれば筋肉モリモリじゃ!」
(食べ物なの……?)
「僕の友は、愛と勇気だけ……さ……」
ようやく足をどけられたひまわりが、寂しいことを呟いていた。
このマネキンよりあっちと話したいとハルマサは思った。
「素晴らしいステッキだけど、もうお前に上げちゃうよ! ほれ食え!」
顔面に押し付けられて鬱陶しい。カーネルは引き下がりそうにないので仕方なく食べる。バリバリと。ゲロまずかった。
ハルマサは顔をしかめつつ、気になっていたことを尋ねた。
「なんでそんな格好してるんですか?」
カーネルは雰囲気できょとんとした。しかし顔は1ミリたりとも動かなかった。お客を迎える笑顔のままだった。
「ワシの姿、直にみたら精神の鍛錬が足りんお前は廃人になっちゃうよ?」
真の姿は余程神々しいと言うことか。気を使ってくれていたらしい。
「あとワシ、フライドチキン好きじゃし。」
どっちかと言うとこちらの方が本命の理由らしい。
チキンの素晴らしさを滔々と語りだすカーネルの言葉を聴き流しつつ、ハルマサはさっきからすねを葉っぱでつんつんと突付いてきていたひまわりを見おろした。
ひまわりはハルマサを見ながら根っこでトコトコ歩き、葉っぱを広げた。
「太陽光が、美味しいねッ!」
とても良い笑顔だったので、ハルマサの顔も思わずほころんだ。
(……ハッ!)
「ゴボボバッ!?」
目が覚めると水の中だった。
そ、そうか! 水の中で意識を失ったんだった!
そして「おやすみマン」の効果で、溺死を免れたんだね!
ありがとう「おやすみマン」!
夜の不安をバッチリサポートしてくれる君は、僕の強い味方だよ!
変な夢を見たのは君のせいではないと信じているよ!
ハルマサは川底に沈んでいたらしい。
脱力しても体が全く浮かなかった理由にハルマサは心当たりがあった。
筋組織が密な人は浮きにくいということだ。
現世で計った時、ハルマサは見た目に反し、80キロを越えていた。
今では100キロあるかもしれない。
筋密度は異常の一言だろうし、川底に沈んでもおかしくない。
水泳で黒人選手がメダルを取れないのと同じだね!
それはともかく、さっさと水中から出よう!
体が冷えちゃったし!
ハルマサは沈んでいたお陰で、流されず、盾が刺さっていたところのすぐ傍にいた。
盾を引き抜き、今度は普通に放り投げ川原に送る。
酷く盾の取り扱いが楽になっていたため、何かのスキルを得たのかもと考えるが、今はそれどころではない。
持久力がまた切れそうなのだ。
どうやら眠っていたのは僅かな時間らしい。
それほど回復していない。
そしてどんどん減っている。
残りは……3。
(まずいッ! トゥ!)
慌てて「剛力術」の発動を止めつつ、ジュバァ! と水中から抜け出して川原に落り立つハルマサ。
体が冷え切って少しつらい。
この体は風邪とか引くのだろうか。
(分からないけど……べギラマ!)
なんだか丁度よく目の前に突き立っていた木に火をつけ、暖を取る。
あったけー。
≪ポーン! 火の精霊が狂喜し、木の精霊が激怒し、水の精霊が憤怒で卒倒しました。スキル「神降ろし」の熟練度が1000上昇し、8000減少しました。熟練度変化に伴いレベルが下がりました。精神力に修正がかかります。≫
(……水の精霊って気が短いんだね……。そんな倒れるまで怒らなくても。)
ていうか熟練度減りすぎ。
どうしてこうなった。
川に小便したらスキル消えそうだね。
……そういえばダンジョン入ってからお腹減るばっかりで、排泄物出してないんだけど。
大丈夫なのかな……物凄い便秘とかじゃないよね……?
まぁ考えても仕方ないよね。
なるようになぁーれッ!
そう思い、眠るハルマサだった。
寝て起きたら火が延焼して森林火災が起こっていて、「神降ろし」の熟練度がさらに1000下がっていたのは余談である。
あと、筋力に変化はあるのか、正直よく分からなかった。
<つづく>
短かったので夢を付け足したら2倍くらいになった。ひまわりが家に欲しいと思った。
耐久力:27406 → 28311
持久力:34025 → 36401
魔力 :51943 → 44076
筋力 :36859 → 37017 ……ステッキ効果により追加で100 up
敏捷 :58416 → 60815
器用さ:83890 → 85157
精神力:36528 → 28528
新特技
盾ブーメラン
蹴脚術Lv7 :683 → 741
盾術Lv7 :0 → 893 ……New! Level up!
身体制御Lv12:23281 → 23679
消息術Lv8 :0 → 2036 ……New! Level up!
撤退術Lv10 :9365 → 10021
神降ろしLv10:14740 → 6740 ……Level down!
水操作Lv10 :5102 → 5971 ……Level up!
魔力放出Lv12:37745 → 37878
心眼Lv5 :72 → 274 ……Level up!
遊泳術Lv8 :0 → 2054 ……New! Level up!
◆「盾ブーメラン」
特殊な回転を加えることで、投げた盾を再び手元に戻す技。戻ってきた盾を上手く掴むには盾の重さ、形状に見合った筋力と器用さが必要となる。
■「盾術」
盾を取り扱う技術。盾を上手く使うコツが分かるようになる。熟練に伴い、耐久力にプラスの修正。熟練者は飛ばした盾に飛び乗り空を渡る。
■「消息術」
息を殺す技術。呼吸音がとても小さくなり、さらに少ない吸気で活動できるようになる。熟練に伴い、持久力にプラスの修正。熟練者はまる一日息を止められる。
■「遊泳術」
泳ぐ技術。上手く速く泳げるようになる。熟練に伴い、敏捷にプラスの修正。熟練者は嵐の中でも散歩するように泳ぐ。