<72>
顔の横に生える艶やかな青い草、その向こうに見える青葉を着けた無数の樹。
鬱蒼と茂る森丘一番の森林帯にハルマサは落下したのだった。
これは……!
しかし彼に考える時間は与えられない。
ぐい、と足に刺さった棘を支点に金色の竜はハルマサを持ち上げる。
その痛さ、筆舌に尽くしがたい!
ハルマサは、再度地面に叩きつけられようとする瞬間、金色の竜を見つつ叫ぶ。
ここは森林!
ならば呼ぶのは。
「―――――――――――カロンちゃんッ!」
カロンちゃんの声は逼迫した状況でも、のんびりと。
【また、えらく大変そうじゃのぅ。】
「助けてぇ――――!」
【ふむ。】
「ギャァアオオオオオッ!」
ドゴォ! と金色の竜が自らの顎ごと叩き付けたハルマサは、しかし緑の膜によりダメージを受けていなかった。
ぐりぐりと足を抉っていた顎の棘が緑の光に押し出されるように抜ける。
金のリオレイアは驚き、巨大な顎を広げて噛み付いてくる。
ハルマサは受けて立った。
がっきと上下の牙を量の腕で受け止める。
ギリギリと筋肉が軋むが、バリアーに助けられているこの状況、僕の筋力でも対抗できる!
緑の光が体を覆い、温かさに包まれ、この状況にも関わらずハルマサは安らぎを感じていた。
痛い。治り始めて体の痛さが弾けて疼く。
だが、彼は「不死」とも言われる体躯を備えた化け物である。
そこに生命力を周囲から吸い取る技が加わって、ギュルリと時を巻き戻すように骨折が直り、傷がふさがり、鼓膜が治る。
「ふっかぁああああああああああああああああつッ!」
復活! 復活! ハルマサ復活ッ!
「どりゃあッ!」
治ったばかりの左足で竜の顎を蹴り上げたハルマサは、緑の膜に包まれたまま飛び上がり、金色の竜を張り飛ばす。
「ギャァオアアアアアアアアアアア!」
「―――――ハハッ!」
なんだこのバリアーは。
全力で動いても、「風操作」が必要ない。
「魔力放出」に集中できる!
――――――最高だッ!
ドォン!
地面を蹴り、金色の火竜へと襲い掛かる。上から他の火竜が炎を降らせるが、そんな物は、軽く避ける!
「つち、操作ぁあああああああああ!」
ざり、と地面を抉るように突き刺した指の先、流した魔力に比例して、強固な岩石が顔を出す。
それが形作るは無骨な柄。
掴んでズルリと引き出せば、現れたのは、無骨で巨大な岩の剣ッ!
【ほぅ、中々の強度じゃの。】
(「なかなか」出ましたぁ――――!)
「――――よっしゃぁああああああああああッ!」
地面を抉り、縮地のように金色の竜に接近したハルマサは、岩の剣を振り上げる。
――――――ゴキン!
竜の顎の棘を砕きつつ、頭を跳ね上げ、
――――――ズガン!
地面に叩き落す。
砕けた鱗がキラキラ散って、その一瞬を彩りあげる。
【呆けるな。尻尾がくるぞ。】
「うん!」
カロンちゃんの絶妙なサポートに従い飛びのいた瞬間、金色の尾が周囲の樹と共に地面を抉り、土を巻き上げる。
「――――――行くよ。」
濛々と舞う砂塵の中、ハルマサは数百キロはあるような剣を、振り上げ跳躍。
迷わずリオレイアに叩きつける。
その重さ、速度、金色の竜の鱗を抜くには十分だった。
堅い鱗で盛大に刃こぼれしつつもその重量でもって肉を裂く。
ズグッ!
首を半ばまで断ち切られた竜は血を吐きつつ――――――咆哮しようとした。
ハルマサはそれを許さない。
空中でありながら、竜の首に足をかけてもう一度剣を振り上げ、同じ箇所に叩きつける。
ガツン! と首の下の鱗を弾き飛ばして、剣が竜の首を断ち切った。
勝負の最後はあっけない。
あれ、爆発は? と首を傾げるハルマサ。
だが、直ぐに顔を引き締めその場を飛びのく。
直後降り注ぐ炎の雨。
しかし今のハルマサには他愛ない。
簡単に避けれるし、当たっても多分大丈夫。
(カロンちゃんッ! 君はやっぱり最高だ!)
【な、なんじゃい突然……】
このままもう一匹倒せるか?
いや、やめておこう。
魔力もこの辺りの植生も、何時まで持つか分からない。
今日はこの辺が終わり時。
「よし、逃げるッ!」
ハルマサは、これが最後と岩の剣を投擲し、火竜の意識を逸らすと「暗殺術」を発動して素早く移動を開始した。
緑の中なら、この光は目立たないはず。
それで岩山の反対側まで行ったら大丈夫なはずだ。
あまりに潔い逃げっぷりにカロンちゃんは不満そうだったが。
【なんじゃつまらん。】
「まぁまぁ」
ハルマサの今日の冒険はここにてお終い。
で、新しいスキルやらがたくさん出てるんだよね。
カロンちゃんは魔力切れで帰っていき、僕もイノシシを狩ってお腹を満たし、後は寝るだけとなったところである。
日はとっぷりと暮れ、今日も見事な満月である。
一息ついたハルマサは、ステータスの特技、スキル欄に浮かぶNew!の文字を見つめていた。
凡そ12時間くらいで消えるこのNew!だが、最近戦いの最中にスキルのことなんか考えていられない僕としては新スキルをざっとチェックできるため、かなり助かるものである。
今回の新しい特性は
「水耐性」
「土耐性」
「E」←希少特性
「E」はよく分からないけど手に入っていた。
金色の竜に、上空から地面に叩きつけられた時にベートーベンの運命が流れたような気がするのだが、「墜落死」とか?
それとも「圧死」とかだろうか。
とりあえず、これで残りの文字は1つになった。
で、新しいスキルは
「金剛術」
「剛力術」
「魔力圧縮」
そして何故か「ポケモントレーナー」
「金剛術」は体を堅くするけど動けなくなるスキル。ワンピース臭い。どうせなら金剛族になれるとかだったら良いのに。
「剛力術」は力が強くなるけど敏捷が半分になるスキルだね。
「魔力圧縮」はそのまんま。風球とかの威力が上がりそうな予感!
「ポケモントレーナー」はポケモンが言うことを聞くようになるスキルだそうです。
モンスターボールが必要らしいので全く使えない無駄スキル。
このスキルはどうやって熟練度あげるのかも分からないけど、何故か熟練度が6000くらいある。
なんでこんな高いの?
そして、特技も新しいのが。
「炎の陣」っていうらしい。
炎を弾く魔力のバリアーだね。道理でよく耐えれたと思ったんだよ。
以前は普通に丸焼きになったのに、2倍とか3倍の量の炎を防げるんだもん。
特技が無いと無理だよねぇ……。
それと「武器作成」っていう今後活躍しまくるであろう特技が……!
「土操作」「魔力圧縮」によって硬度や切れ味が変わるらしい。要、修行!ッてとこかな。
それにしても弓作ったりとか夢が広がるなァ……!
でも、まぁレベルも上がったし、「金剛術」っていう熟練度アップで耐久力を上げるスキルも手に入ったので、これからの冒険は明るいんじゃないかな。
いや、今でもナルガクルガに勝てる気はしないけど。
とりあえず眠いので寝ようかな。
何となくカロンちゃんに就寝の挨拶をした。
「おやすみカロンちゃん。」
【おやすしゅみ……はるましゃくん……スー……】
なんか寝言っぽいの返ってきた――――――!
しかも「くん」付けとか……!
どうしよう!どうしよう! なんか凄くソワソワソワソワしちゃうよ―――ッ!
この落ち着かない感じはどうすれば!
と、とりあえず腹筋しようかッ!
腕立ての方が良いかなッ!
フーン!フーン!
ダメだ! 全然集中できないよ―――ッ!
カロンちゃ――――ん!
そうしてハルマサの一人寂しい夜は更けていくのだった。
<つづく>
レベル:10 →11 ……今回のレベルアップボーナスは2560
耐久力:6764 →18645
持久力:14061→27661
魔力 :19582→33049
筋力 :10574→24966
敏捷 :25659→51038
器用さ:31688→57336
精神力:14913→29759
経験値:5763 →19840 あと640
戦果:リオレウス無印×1、リオレイア無印×3、リオレイア亜種×1、リオレイア希少種×1
拳闘術Lv10 :2773 →6831 ……Level up!
両手剣術Lv10:2309 →5651 ……Level up!
解体術Lv9 :2330 →3658
身体制御Lv11:12067→19770
暗殺術Lv11 :7438 →15441 ……Level up!
突撃術Lv10 :4921 →10032 ……Level up!
撹乱術Lv11 :10543→16249
空中着地Lv12:11265→22385 ……Level up!
撤退術Lv10 :6232 →9246
金剛術Lv7 :0 →877 ……New! Level up!
防御術Lv11 :4082 →11046 ……Level up!
剛力術Lv8 :0 →1877 ……New! Level up!
天罰招来Lv9:2593 →2613
神降ろしLv11:11372→14105
炎操作Lv11 :6543 →12433 ……Level up!
水操作Lv9 :260 →2811 ……Level up!
風操作Lv12 :18430→21081 ……Level up!
土操作Lv10 :2637 →5602 ……Level up!
魔力放出Lv12:22993→31872
魔力圧縮Lv9 :0 →2008 ……New! Level up!
戦術思考Lv11:8445 →17998 ……Level up!
回避眼Lv10 :5794 →8200
観察眼Lv11 :6573 →11109 ……Level up!
鷹の目Lv10 :4462 →7693 ……Level up!
聞き耳Lv10 :3964 →6095 ……Level up!
的中術Lv11 :7833 →13904 ……Level up!
空間把握Lv12:7626 →25188 ……Level up!
ポケモントレーナーLv10:0 →5988 ……New! Level up!
□「水耐性」
水からの刺激を和らげる、皮膚の機能。水属性の攻撃に対して、被ダメージが[30+(プレイヤーのレベル)]% マイナスされる。ダメージ減少率が100%を越えた時、耐性は昇華する。
□「土耐性」
土からの刺激を和らげる、皮膚の機能。地属性の攻撃に対して、被ダメージが[30+(プレイヤーのレベル)]%マイナスされる。ダメージ減少率が100%を越えた時、耐性は昇華する。
□「E」
それは続きの文字。24日以内に文字を全て揃えよ。ではなくば、あなたの気力は尽きる。
◆「炎の陣」
炎を寄せ付けない守りの陣。魔力を用いて炎を弾き返す壁を作成できる。壁の能力は精神力によって変化する。
◆「武器生成」
魔力を用いて鉱石を固め、武器を作成する。武器の能力は使用魔力、またスキル「土操作」「魔力圧縮」のレベルによって変化する。
■「金剛術」
体の皮膚を硬化させる技術。鋼鉄のような皮膚で、敵の攻撃を跳ね返すことが出来る。熟練度に応じて耐久力にプラスの修正。動かない時間に応じて皮膚の硬度が倍加する。[(皮膚硬度)=(留まった秒数)×(スキルレベル)×(元の皮膚硬度)÷10]100倍以上にはならない。スキル発動中は持久力が一秒につき50ポイント減少する。
■「剛力術」
筋肉を行使する技術。筋肉を隆起させ、いつもの3倍の筋力を使用する事が出来る。熟練度に応じて筋力にプラスの修正。スキル発動中は持久力が一秒につき50ポイント減少し、敏捷にマイナス50%の補正がかかる。
■「魔力圧縮」
魔力の密度を上げる技術。圧縮した魔力は様々なことに応用できる。熟練に伴い魔力にプラスの修正。
熟練者は圧縮とは逆の工程すら行えるようになる。
■「ポケモントレーナー」
ポケモンを従える技術。モンスターボールに封じたポケモンの意志を捻じ曲げ服従させる。レベルが[(スキルレベル)÷10]以下のポケモンを服従させる事が可能。上位スキルに「ポケモンテイスター」が存在する。
<あとがき>
いちゴリ!にゴリ――――――!(ゾロが好き)
ポケモントレーナーの説明で、「熟練に伴い、足の爪がチーズ臭くなる(ポケモンにモテモテ)」とか書きたかったけど、そこは我慢した大豆です。
ハルマサ君が急に強くなったように思いますが、今の状態でナルガクルガに挑んだら瞬殺されます。
ナルガの敏捷25万にしちゃったからなァ。初期のハルマサなんて3とかだったのに。
でも戦術次第ならあるいは……。
明日もこうし―――ん!
PVが物凄い事になっていてとてもありがたいです。
それに、感想ありがとうございます!
>jip
???
>一番のヒロインは
呼んだ人の好きなキャラでいいと思う。
作者的にはまだ出てきてないけど77話のひまわりが好きです。
>でろでろさん
今日初めて気づきましたが、それは……ごめんなさい?
でもかわいいといってもらえると嬉しいです。