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No.19470の一覧
[0] 【習作・ネタ】ダンジョンに挑戦するいじめられっこの話[大豆](2010/08/04 23:09)
[1] 5~8[大豆](2010/08/04 23:10)
[2] 9~12[大豆](2010/08/04 23:10)
[3] 13~16[大豆](2010/08/04 23:11)
[4] 17~20[大豆](2010/08/04 23:12)
[5] 21~24[大豆](2010/08/04 23:13)
[6] 25~28[大豆](2010/08/04 23:14)
[7] 29~32[大豆](2010/08/04 23:15)
[8] 33~36(第一部終わり)[大豆](2010/09/14 08:14)
[37] 37・改定(修正)[大豆](2010/07/19 16:25)
[38] 38・改定なし[大豆](2010/07/08 19:44)
[39] 39・改定[大豆](2010/07/08 19:44)
[40] 40・改定・修正[大豆](2010/07/11 18:55)
[41] 41・改定・修正[大豆](2010/07/11 18:54)
[42] 42・改定[大豆](2010/07/08 19:46)
[43] 43・改定[大豆](2010/07/08 19:47)
[44] 44・改定[大豆](2010/07/08 19:48)
[45] 45・改定[大豆](2010/07/08 19:48)
[46] 46・改定・修正[大豆](2010/07/23 22:59)
[47] 47・改定・修正[大豆](2010/07/11 18:56)
[48] 48・改定・修正2[大豆](2010/07/23 23:00)
[49] 49・改定[大豆](2010/07/08 19:51)
[50] 50・(第二部開始)[大豆](2010/07/28 18:10)
[51] 51・改定なし[大豆](2010/07/08 19:52)
[52] 52・新投稿分はここ![大豆](2010/07/08 19:59)
[53] 53[大豆](2010/07/09 19:20)
[54] 54[大豆](2010/07/09 19:21)
[56] 55[大豆](2010/07/09 19:22)
[57] 56・誤字修正[大豆](2010/07/10 19:02)
[58] ステータスとか(56話時点)[大豆](2010/07/09 19:32)
[59] 57[大豆](2010/07/10 19:05)
[60] 58[大豆](2010/07/10 19:06)
[61] 59[大豆](2010/07/10 19:06)
[62] 60(誤字修正)[大豆](2010/09/14 08:10)
[63] 61[大豆](2010/07/11 18:57)
[64] 62[大豆](2010/07/11 18:58)
[65] 63[大豆](2010/07/11 18:58)
[66] 64・誤字修正[大豆](2010/07/23 23:01)
[67] 65[大豆](2010/07/12 19:56)
[68] 66(修正)[大豆](2010/07/18 16:23)
[69] 67[大豆](2010/07/12 19:57)
[70] 68[大豆](2010/07/12 20:11)
[71] 69[大豆](2010/07/13 17:15)
[72] 70[大豆](2010/07/13 17:16)
[73] 71・修正[大豆](2010/07/23 23:02)
[74] 72[大豆](2010/07/13 17:28)
[76] 73[大豆](2010/07/14 18:46)
[77] 74[大豆](2010/07/14 18:46)
[78] 75[大豆](2010/07/14 18:47)
[79] 76[大豆](2010/07/14 19:05)
[80] 77[大豆](2010/07/15 17:31)
[81] 78[大豆](2010/07/15 17:32)
[82] 79(誤字修正)[大豆](2010/07/16 13:02)
[83] 80[大豆](2010/07/15 17:48)
[84] 81(修正)[大豆](2010/07/17 17:53)
[85] 82(修正)[大豆](2010/07/17 17:56)
[86] 83[大豆](2010/07/17 17:56)
[87] 84(修正)[大豆](2010/07/28 18:11)
[88] 85[大豆](2010/07/17 17:57)
[89] 86(改定)[大豆](2010/07/28 18:13)
[90] 87[大豆](2010/07/17 17:58)
[91] 88[大豆](2010/07/17 18:31)
[92] 89[大豆](2010/07/18 16:26)
[93] 90(修正)[大豆](2010/07/19 16:26)
[94] 91[大豆](2010/07/18 16:28)
[95] 92[大豆](2010/07/18 16:50)
[96] 93・修正[大豆](2010/07/23 23:03)
[97] 94・修正[大豆](2010/07/23 23:03)
[98] 95[大豆](2010/07/19 16:28)
[99] 96・修正[大豆](2010/07/23 23:04)
[100] 97(改定)[大豆](2010/07/28 18:13)
[101] 98・修正[大豆](2010/07/23 23:05)
[102] 99・修正[大豆](2010/07/23 23:06)
[103] 100・修正[大豆](2010/07/23 23:07)
[104] 101・修正[大豆](2010/08/04 22:29)
[105] 102・修正[大豆](2010/07/23 23:08)
[106] 103・修正[大豆](2010/07/23 23:09)
[107] 104(第2部終了)[大豆](2010/07/28 18:11)
[108] 105[大豆](2010/07/23 23:10)
[109] 106[大豆](2010/07/23 23:11)
[110] 107[大豆](2010/07/23 23:11)
[111] 108(訂正誤字修正)[大豆](2010/10/03 19:48)
[112] 山神ハチエのステとか → 没になりました[大豆](2010/07/26 21:31)
[113] そしてハルマサのステとか。[大豆](2010/08/04 22:29)
[114] 真・山神ハチエのステータス(もう私はこれで行く)[大豆](2010/07/27 19:02)
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[19470] 29~32
Name: 大豆◆c7e5d6e9 ID:9d835427 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/08/04 23:15

<29>

どうも、ハルマサです。
目が覚めてステータスを確認してみたら、驚いてしまいました。
4ケタいっとる――――――!

敏捷もついに常人100人分!
100倍の速度で動けるとして、100メートルを何と0.15秒(くらい)で走れるのだ――――――!(秒速600m以上、マッハ2くらい?)
って流石に無理っぽいですけどね。そんな単純な話じゃないだろうし。
とにかくもう刃牙レベルは越えてしまったかも知れんね……。現在はH×Hレベルくらいか?

あと、魔力がフィーバーしてます。なんと1400!「天罰」使いまくったからなァ……。
これ、一回の使用で熟練度が20上がるとして………50回近く雷を使ったことになる。
それでも大して効いていなかったドドブランゴって一体、耐久力いくらなのか。よく生き残ったなァ……。
あ、ドドブランゴはもう近くにいません。
真っ先に確認しましたとも。

死闘を生き抜いたハルマサ。
目が覚めて、ある程度体のダメージが抜けていることを確認した後は石を拾い集めていた。
まずは戦いの最中に最高のフォローをしてくれた、女神様(仮)なる精霊少女を奉る祠を作ろうと思い立ったのだ。
この辺りハルマサは律儀であった。

(どんな祠がいいんだろ? 小さな洞窟型? ストーンサークル?)
【そんなもの要らんわッ!】

なんか反応返ってきた――――――!

≪神または精霊からの干渉により、「祈り」スキルが発動しました。≫

ちょ、この子フリーダム。

≪「祈り」の熟練度が320.0を越えました。スキルのレベルが上がりました。「祈り」が規定のレベルに達したことにより、スキル「祈り」はスキル「神卸し」に昇華します。熟練に伴い、精神力にボーナスが付きます。≫

しかも昇華した!

■「神卸し」
 「祈り」の上位スキル。魔力を用いることで、精霊や神を自分の体に憑依させる事が出来る。恩恵を願うこととは別に、時間当たりで魔力を消費する。熟練に伴い、精神力にプラスの修正。[魔力/(30-(スキルレベル))]秒、スキルは持続する。※発動していた時間に応じた魔力が消費される。※発動継続時間は(魔力の数値)秒以上にはならない。

ほほぅ。
スキルに対する情報が少なすぎる現状では、意見をもらえる精霊と会話できるのはすごく助かるかも。
今僕の魔力1272/1400で、スキルはレベル6だから、1272÷24でえーと……53秒しか話せないけど。

早速行くよ! お礼も言いたいしね。

「えーと……神卸し!」

心に女神様(仮)の声を思い浮かべながら呼んでみたが、違う人が来る可能性もあるんだろうか。
空から、緑色の光が流星のように落ちてきて、ズギャーンと僕に直撃した。

【よくぞ我を呼んだ! 褒めてやる!】

頭の中で声が響く。ああ、女神様だ。良かった良かった。相変わらず綺麗な声ですね。

【き、綺麗などと……言うでないッ!】

僕の体を包む緑色の光が強くなる。照れ屋さんだなァ……。
あれ? 何か傷が治っているような。

【ふッ、我を憑依させれば、それくらい当たり前なのじゃッ!】

へ、へえぇ……。凄いんですね。まわりの木とか悲惨なことになってるけど。
もののけ姫のあのなんちゃら神状態だよ。歩くだけで通り道の草が枯れていく……!
常時周囲からライフドレインとか流石ですね……そういえば名前教えてもらえませんか? 何時までも女神様じゃなんなので。

【きさ、ぐぅ……! わ、我は女神じゃ! 女神なのじゃ! 黙って女神と呼べぇ!】

は、はい。すんません。

こんな感じで、お礼を言ったりとか、短い間だけど精霊の女神様と心温まる触れあいをした。
大した情報は得ることは出来なかったが女神様は最後に、

【祠なぞいらん。代わりにこれを体に刻んで置け。我が貴様の体に留まりやすくなるのじゃ。ではさらばじゃ! また呼ぶが良い!】

そう言い、緑の光を操って、僕の左手の甲に刺青のようにマークを残して去っていった。
左手のマークは、黒い鎌がしゃれこうべを脳天から突き刺している構図である。
何かアメリカンチンピラの刺青っぽい。アメリカンチンピラって何だ。
ともかくこの絵から連想する像は、僕としては一つしかない。

「……死神?」

女神と呼ばれることに何か思うことがあるんだろうなァとは思っていたけど、何となく理由が分かるような分からないような……
もしかしてライフドレインの方が本業なの?
というか精霊じゃなくてリアルに神様なのかも。神様っていっぱいいることになっちゃうけど。
まぁ僕にとっての、二人目の女神様であることは間違いない。もちろん一人目は閻魔様ね。
という訳で、これからも女神様と呼ぶことにしよう。

ちなみに女神様憑依中は、結構な速度で熟練度が上がっていた。精神力が1000近くになっている。
やっぱり色々規格外な方だなァ。

さて、魔力が空になったのだが、以前よりも魔力の回復が早くなっているような気がする。
以前は30秒くらいで1回復だったけど、今は10秒くらいで1回復している。
結構すぐに回復しそうだ。
僕は回復するまですることを考えて……そういえば武器が砕け散ったことを思い出した。

あああ……ビーナス!
ビーナスカムバ――――――ックッ!

と嘆いていても始まらない。どうするか考えなければ。
これから武器無しでやっていく?
NON!
ドドブランゴとかに素手で殴りかかれと? 死ぬわッ!
加工技術的なスキルを上げる?
NON!
材料のある位置とか知らないし、奴らに通じるような武器を作るまで何時までかかるか分からない。
雪山で、伝説の武器とかを探す?
NON!
武器を見つける前にドドブランゴに会ったらどうするんだ。
じゃあ……

「アイルーさんたちに頼ってみようか。」

ビーナスみたいな規格外な武器がまだあるとは思わないが、アイルーのところで加工技術を学べば、加速度的にスキルが上がるだろう。
また密林に逆戻りだが、仕方ない。

マッハの速度で駆けつけます!
ビューン!

空気の壁を越えたような、そんな感じがした。
意外と硬かったです空気の壁。耐久力減っちゃったぜ!





そしてたどり着いたココット村。

「グオオ!」
「ガァ!」
「グゥオオオオ!」

どかーん! ぼかーん!

「負けるな! 押し返せッ!」
『にゃぁああああああああああ!』

また攻められとるよこの村。
そして村を攻めるブランゴ50匹くらいとは別に、違う場所で、モンスター同士が争っている音が聞こえます。

「グォオオオオオオオオッ!」
「ピェエエエエエエエエエエッ!」

ドカーン! ズガーン!

密林の一部から上空に木が吹っ飛んだり、炎の塊が噴出したりしているのが見えます。
怪獣決戦がまた勃発しているようです。
今度の怪獣はサルとトリ。イノシシはやられてしまったのか?
どっちにしても巻き込まれたら即死である。

「と、取りあえず……ブランゴ倒しとこうか。」

幸い、怪獣決戦場はかなり遠いようで、今はこのブランゴどもを倒すことにする。

「だぁあああッ!」
『グギャァアアアアア!』

今のハルマサなら、ブランゴは何匹いようと脅威ではない。
短時間でブランゴは42匹全て消えた。





ココット村でハルマサを迎えたココットは暗い顔をしていた。

「……助かった。英雄殿、感謝する。」
「あ、いえ。」
「悪いが、謝礼は後で。」
「いえ、そんな。」

ココットはすぐに踵を返そうとして、しかしこちらに向き直った。

「…………よければ、英雄殿も我らの仲間の最後を看取ってくれないか。」
「……え?」
「一人の戦士だ。貴殿に看取られるとすれば、あれも喜ぶ。頼む。」

こっちだ、とココットは先に歩いて言ってしまう。
その先には大きな丸い岩を重ね、中をくりぬいた建物があった。
赤いペイントで何かの文字が書いてある。
あとで聞いたが、アイルーたちにとってのご神体だということだった。

ココットに次いで入り口をくぐると、日の差し込まない建物の中は、とても暗かった。
その闇に浮かび上がるように、びっしりと白いネコがいるのだった。
中心には体中に包帯を巻かれたネコが横たわっている。
包帯の巻かれた右腕は左腕と比べれば短い。腕が千切れてしまっていた。
血も止まっていないのか、包帯は白いところの方が少なかった。

「……。 はる、まさ、ニャ?」

こっちに気付いた用で横たわっているネコは声を出す。
頭にも包帯が巻かれ片目しか見えなかったが、その目は見たことのある意志の強い瞳だ。
いくらケガを負おうと、陰りのない光が宿っている目だった。

「まさか………ヨシムネなの……?」

僕をここに連れて来たアイルーだ。
思わず近くに寄っていた。
そばで手を握って、目に涙を溜めていた美しい毛並みのネコが、場所を譲ってくれる。
感謝を言う余裕もなく、ハルマサは膝を突く。
両手で包んだネコの手は、とても小さく、熱かった。
まだ、生きていると伝えるように。そして最後に命を燃えあがらせるように。

「来て……くれ、たん……ニャ?」
「うん。あいつらは全部倒したよ。」

アイルーの小さな肉球がハルマサの指を握る。

(……この、このネコを癒して……!)
【…………すまんが、無理じゃ。貴様以外は無理なのじゃ。】

祈りは叶わず、

「最後に、こんな……が、あるニャん、て………………最高、だニャ…………」

ネコの瞳は、一筋涙を流した後、光を失った。ハルマサの指を握っていた肉球から力が抜ける。

(死んだ……)

あっけないと思った。
大きな激情も沸かず、その様を見つめるハルマサ。
「殺害精神」によって、こんな状況でも何の感情も湧かない自分に反吐が出そうだった。

「英雄殿を呼んで来ると言ってな。……無謀なオスだ。だが、我らの中で一番の勇気を持っていた。」

気付けばココットが隣にいる。
ヨシムネは僕を呼びに行くために、死んだ?
やはり、何も浮かばない。僕が早く来ていれば。つまりはそうなのだろうか。
やがてヨシムネの死体は薄れていく。
アイルーも魔物であり、その遺体は残らないのだ。
全てが消え去った後には、赤い球体が残された。「ネコ毛の紅玉」だった。
コロン、と転がったそれを見て、毛並みの綺麗なネコが涙を零す。他のネコに抱きついて毛皮に顔を埋めて体を震わせていた。

ありがとう。
何故か、ココットに感謝の言葉をかけられた。
「ネコ毛の紅玉」は、自分の死に満足したネコの魂が、形を成したものである。そうココットは言うのだった。
ヨシムネは最後に、満足して死んでいったと。
ヨシムネは僕なんかに看取られて、満足できたのだろうか。
こんな僕なんかに。とても、不思議だ。


ココットは「ネコ毛の紅玉」を手に取る。

「この「紅玉」を使って英雄殿の武器を作る。……この者は貴殿を好いていた。どうか貴殿のそばに、この者を置いてやってほしい。」

ココット村の村長は瞳を赤くしつつ、頭を下げた。





ソウルオブキャット。
出来上がった武器は、ネコの魂という名の、黒塗りの大剣だった。
刃には切った相手を麻痺させる紫電が煌く。
ビーナスよりも力を感じる、とてもよい武器。
背中に背負うと、ズシリと、とても重かった。

自分のことで精一杯の僕に、ヨシムネの魂など背負えるのだろうか。
僕はそのことをとても疑問に思う。

外はいつの間にか曇り、空は泣きそうになっていた。

<つづく>



ステータス
レベル:6
耐久力:367 →371
持久力:616 →622
魔力 :1414
筋力 :344 →355
敏捷 :1091→1100
器用さ:1012→1013
精神力:856 →977
経験値:388 →598 あと40

昇華スキル
祈りLv5  :300→神卸しLv6:418 ……New!

拳闘術Lv4 :62 →71  ……Level up!
蹴脚術Lv3 :28 →32  ……Level up!
身体制御Lv6:362→363
突進術Lv4 :121→123
撹乱術Lv6 :382→384
走破術Lv4 :77 →79
戦術思考Lv5:275→277
聞き耳Lv5 :299→323 ……Level up!
的中術Lv4 :82 →94
空間把握Lv6:334→336

■「神卸し」
 「祈り」の上位スキル。魔力を用いることで、精霊や神を第二人格として自分の体に憑依させる事が出来る。恩恵を願うこととは別に、時間当たりで魔力を消費する。熟練に伴い、精神力にプラスの修正。[魔力/(30-(スキルレベル))]秒、スキルは持続する。※発動していた時間に応じた魔力が消費される。※発動継続時間は(魔力の数値)秒以上にはならない。



前半と後半のギャ――――――ップ!




<30>

「我が村の守りは堅牢でな。」

もう夜、という時間だった。
外は薄暗い。空模様は崩れ、雨が止め処なく降っている。
ネコのご神体の中で、ゆらゆらと揺れる炎を見ながら、ココットはため息を吐く。

「同属が死ぬのは本当に久しぶりで……ダメだな。いつもどおり振舞うのが、少し辛い。」

座っているハルマサに、槌が鉄を打つ甲高い音が微かに聞こえる。
違う場所にある鍛冶場では、アイルーたちが武器を作っている。
やりきれない気持ちを、ブランゴへの怨嗟を槌に込め、赤熱した金属を叩いているのだろう。
やがて、勇気の塊であったネコの「紅玉」も溶かし込まれ、鉱石の塊は一段階上のモノになる。

ゆらゆらと炉から上る陽炎と、舞い散る火の粉は溶け合って。
荒ぶる息が。振るう槌が。怨嗟に濡れて黒くなる。
悲しみの血涙が炉の中へと流れ込み、上がる蒸気が赤くなる。

やがて出来上がるのは漆黒の大剣。ネコの魂、ソウル・オブ・キャット。

「百匹の弱者でも、一匹の強者には敵わない大陸だ。ひどい世界だここは。」

ココットの瞳には炎が踊る。横に並んで座るハルマサの影も、壁で踊っている。

「だが、百で足りなければ五百でどうだ。千匹でもそろえてやる。既に他に村には同盟の使者を向かわせたよ。」

左手で、右手を握りこむココット。

「我らの種族は、子が多く、増えるのは速い。今を乗り切れば、やがて数の力で安寧を勝ち取れるはずだ。牙獣どもに、屈してたまるか。」

牙をむき出してココットは、言い切った。
ハルマサも炎を見つつ、声を出す。

「あの、アイルーたちが皆避難できるような、安全な場所があるとしたらどうしますか?」

ココットはハルマサを、探るように見て、そして溜息を付いた。

「……。恐らく、誰も行かないだろうな。」
「…………何故か聞いても、いいですか?」

また火に向き直り、ココットは傍らに置いていたボウガンを撫でる。

「……我らは、ここに生を受けた時から苦労しながら生きている。その中で、知力を振り絞り、力をあわせ、生き抜いてきたことに誇りを持つものばかりだ。ここで逃げ出せば、これまでを全て否定することになる。それを良しとする者たちは恐らくおるまい。」
「……そうですか……。」
「そのような場所があれば、私としてはさっさと皆を送ってしまいたいのだがな。皆が行かないのだ。私が行ける筈もない。」

これは閻魔様に、アイルーを諦めてもらわないといけないな、と思った。



村を出る僕への見送りは一匹だけ。毛並みの美しいネコだった。

「君の……夫だったんだよね。ヨシムネって。僕が……こんな僕が連れて行っていいの?」

美しい毛並みのネコは、真っ赤な瞳で僕を見る。

「あの人は、村のために全部を捧げたのニャん。だから、死んだ後くらいは…………好きにさせてあげたいのニャん。」

そして頭を下げられた。地面に涙がほたほた落ちる。

「どうか、どうかあの人をよろしくお願いしますニャん。」


僕に出来ることはないだろうか。この高潔で、誇り高い猫たちに。そして勇気を示した偉大なオスに。






外では、いまだイャンクックとドドブランゴの戦いが続いていた。
呆れるほどに体力の高いモンスター二匹は、どちらが倒れることもなく、一昼夜を戦い続けている。
レベルで勝っているのはドドブランゴであり、純粋な体力ではドドブランゴの圧勝であった。
だが、形成が悪いと見たイャンクックは、空に飛び立ち、炎を吐き落とす作戦に切り替えたのだ。

いくらドドブランゴが強かろうと空は飛べない。
岩や木を投げるが、攻撃としては弱い。雪を吐くが、避けられる。
ここに戦いの趨勢は逆転し、ドドブランゴは弱点属性の炎に苦しんだ。
だが、さらにもう一度、事態は転がった。
豪雨が降り始めたのだ。

雨は火の勢いを弱め、飛び続けるイャンクックの羽根を打つ。
イャンクックの持久力は加速度的に減り、やがて下から飛んで来る投擲物を避け損ね始める。
もう、落ちるのも時間の問題だと思えた。



それを遠くから見ていたハルマサは、今が機だと走り出す。
音速を超える速度で、空気の壁を突き破り、自分の体力を減らしながらも一直線に二匹の怪物に近寄っていく。

(暗殺術……)

雨に隠れていたハルマサの体は、スキル発動によって完全に消え、足跡が波紋となって泥を散らすだけである。
走りつつ、ネコの魂が込められた大剣を構えて力を込める。
ハルマサの「両手剣術」スキルは成長し、特技「溜め斬り」を使いこなすことを可能にしていた。
すなわち、走りながらの「溜め」が可能となっていた。
十数秒で二匹の獣に近づいたハルマサは、地面を蹴り、空に飛び上がる。

(空中着地…一歩……)

空を蹴り、瞬く間に上空へと飛翔していくハルマサ。

(三歩……四歩……)

イャンクックまで、あと一歩の距離。「溜め」は……最終段階になった。

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

光が一直線に自分に近づこうとしていることに、イャンクックが気付いた時にはもう遅い。
空を裂いて進む赤い光は、最後の一瞬霞むような速度で振り切られ、イヤンクックに叩きつけられた。

次の瞬間、周りの雨粒が弾け飛ぶような衝撃――――――轟音!

頭に爆発するような斬撃を受けたイヤンクックは急所の耳から血を吹いて、ドドブランゴとの戦いで減っていた耐久力を削りきられた。
すなわち、死んだ。一撃で。

衝撃で逆方向に弾き飛ばされたハルマサは、これまでにない手応えを感じた腕を見て、その先に持つ剣を見る。
イャンクックに思い切り叩きつけたというのに、刃こぼれすらない剣は、何とも頼もしい。

その時脳裏でレベルアップ音。イャンクックを倒せたことを知るハルマサ。
これで、猫たちを脅かすモンスターが一つ減った。
またリポップするかもしれないが、少なくともすぐではあるまい。
猫たちが一秒でも長く、戦いに対して準備を整えられますように。

レベルアップボーナスによって全ステータスにボーナスが160付いたハルマサだったが、まだまだ、正面切ってドドブランゴを相手にするのは厳しい。
万全な状態のイャンクックだって怪しいところだ。
だが、このチャンスを逃せば、体力を回復したドドブランゴへ立ち向かわなければならないだろう。
それなら、今の方が有利じゃないか?

だから――――――ここで倒す!




「暗殺術」を解除したハルマサの目の先には、獲物を掻っ攫われて、怒りの咆哮を上げるドドブランゴがいた。



<つづく>


ステータス
Level up!
レベル:7  ……レベルアップボーナスは160
耐久力:371 →541
持久力:622 →838
魔力 :1414→1574
筋力 :355 →463
敏捷 :1100→1379
器用さ:1013→1211
精神力:977 →1181
経験値:598 →1238 あと40


両手剣術Lv5:94 →152  ……Level up!
身体制御Lv6:363→401
暗殺術Lv6 :389→435
突進術Lv5 :123→177  ……Level up!
撹乱術Lv6 :384→402
空中着地Lv6:377→441
戦術思考Lv5:277→294
観察眼Lv6 :302→329  ……Level up!
鷹の目Lv3 :32 →54
聞き耳Lv6 :323→342
的中術Lv4 :94 →132
空間把握Lv6:336→366





<31>

30mほど先にいるドドブランゴを見つつ、ハルマサは感慨を覚えていた。

不思議なものである。
数時間前まで、畏怖の対照でしかなかった体長10メートルのモンスターと、今はしっかりと向き合えているのだ。
精神力の向上のお陰だろうか。足は震えない。

「グォオオオオオオオオオオオオ!」

ドドブランゴが両手を挙げて叫ぶ。
同時、地面から泥を割って、ハルマサの周囲に見慣れたモンスターが飛び出してくる。
ブランゴである。
その数、一度に10匹。
泥の下で生息しているはずも無いブランゴたちを見て、ハルマサは納得する。

(なるほど、あの群れはドドブランゴが召喚していたのか。)

ドドブランゴは以前のハルマサの動きを覚えていて、数で足止めに来たのだろう。

(だけど、それはあまり意味が無いよ。)

クックを倒しレベルが上がったハルマサの動きは、スキルによって加速され、既にドドブランゴを凌駕するほどなのだ。
ブランゴに遅れを取るはずも無い。
それにいいことも分かった。ブランゴの大群がリポップによるものでないならば、ドドブランゴを倒すことでしばらく猫たちに平穏がもたらされるのだ。

(ふっ!)

常人からすれば瞬き一つの間に、まず一匹。通り過ぎざまに切り捨てる。
すぐに切り返し、もう一匹。早すぎる攻撃が少年が通り過ぎた後にブランゴから血を噴出させる。
これでもまだ、全力じゃない。
全力で動いたら、ソニックブームが発生する。
敏捷はスキルを発動せずとも1000を超えるが、耐久力は550程度しかない。
動いて生じる空気の圧力に、体が耐えられないのだ。
自らの体を傷つけるため、空気の壁に当たらないギリギリのラインを、ハルマサは加減しつつ動いている。
しかしそれは、秒速300m前後という、脅威の速さなのだった。
ブランゴたちは一方的に蹂躙されていった。



ビ、と剣を払い、刀身に付いた血糊を飛ばす。10匹倒したことで、得た経験値は20。
レベル上昇に伴い、獲得経験値は本当に少なくなっている。
半分の、しかも切捨て。次レベルが上がればブランゴからの経験値は1になる。
もう一つ上がった時、切り捨てられず、1のまま保持される可能性はある。
だが、そこまで甘い世界でないことを、ハルマサは肌で感じ取っていた。

戦いの最中、常に警戒していたのだが、ドドブランゴは動きを見せなかった。
気にしすぎて損をした、と思った直後、座り込んでいるドドブランゴを見て重大なことに気付く。

(そうか!体を休めていたのか!)

体力の回復、そのための足止めか。
ならば、速攻で倒されて、きっと歯噛みしていることだろう。

畳み掛けるなら、今。
全力で、仕留める。
今の僕と、この魂の剣なら、きっとできる!
ソニックブームで体力が減らされるなら……常に回復すれば良い!

(魔力がきれる前に、決める! ……「神卸し」!)

上空から飛来する緑色の女神が、僕の体に乗り移る。

【ふふん。何やら面白い状況じゃの。】
(女神様。何秒もちますか?)
【うむ……この感じじゃと、60秒くらいじゃな。】
(一分。それだけあれば――――――)



――――――十分だ!



ドォン! と空気の分子を叩く音がする。
地を蹴った途端、視界がとんでもなく早く流れ、ドドブランゴに一瞬で接近する。
奴の反応より、僕の動きの方が、やや速い!
跳びかかり、横に跳躍し、空中に飛び上がりながら、針金の如き剛毛に包まれた皮膚を切り裂き続ける。
魂の剣はその切れ味をいささかも減させず、それどころかますます切れ味を増すように、ドドブランゴの体を切り裂いていく。

その間にも、空気の壁にぶつかって破壊されたハルマサの額から。目から。鼻から。口から。筋肉から。体中から血が流れ、ライフドレインの緑の光が補修する。

服は既に泥と血液に黒く濡れ、手に持つ剣はもとより黒き怨嗟の体現だ。
斬るたびに、跳躍するたびに、獣の反撃を避けるたびに、スキルは上がり、攻撃は重く、動きはますます早くなっていく。
逆に、ドドブランゴは剣の付与効果、「麻痺蓄積」によってどんどん体が重くなる。

「グォオオオオオオオオオオオオオオオ!」
「あぁあああああああああああああああああッ!」

雨の中、血を振り散らし、身を削りながら巨獣に挑む、神速の黒鬼がそこにいた。


【あと10秒しかないぞ。どうするのじゃ?】
「――――――じゃあ、一気に決める!」

「暗殺術」を発動。ハルマサの姿は透き通る。
姿を消して獣の姿を切り刻みながら獣の巨躯を駆け上るハルマサ。
そしてそのまま空へ。ドドブランゴは突然消えたハルマサの姿を見失っている。
そのまま、オロオロしとけばいい!
一歩、二歩、三歩、四歩!
空を踏み、ロケットのように飛び上がったハルマサは、ヨシムネの魂がこもった剣を頭上に掲げて力を込める。

一段階、二段階!

緩やかに惰性で空へと上っていたハルマサは、赤く光る大剣を握り、空を蹴る。行き先は、下。

ドゥン! 音速を超えた感触! これで五歩!

≪――――規定のレベルに達しました。スキル「突進術」はスキル「突撃術」に昇華――――――≫

重力加速度を加えて、真下に向かうハルマサ。その体が、昇華したスキルの効果で青く輝く。
体内で生じた強烈な力が爆発しそうに荒れ狂う。空気抵抗で血を噴出しつつ赤く光る巨剣を構えたハルマサは、輝く一筋の彗星のように巨獣へと迫る。
轟々とうねる風の中、悪鬼は地上へと向かう最後の一歩を踏み込んだ。

三・段・階・目ッ! 踏み込みと同時に振り下ろされる漆黒の剣!

「ぁあああああああああああああああああああッ!」

カッ――――――!

解放された力は、ドドブランゴの脳天を一瞬にして突き破り、骨を、肉を切り裂きながら地面へと到達。
轟音が響かせながら地面が爆砕する。
ハルマサは、「身体制御」で衝撃を吸収するも、全ていなすこと叶わず、紙切れのように吹き飛ばされた。

そして落下。
ハルマサの体は限界を超えていた。内臓は軋み、骨は折れ、肉は切れ。
仰向けになったハルマサは動くことが出来なかった。

【無茶をするのぅ。我が守りの壁をつくらんかったら、体がバラバラになっておったぞ?】

周りの草木が急激に枯れ果てている。
ハルマサは口にたまった血を吐いて、体の力を抜いた。
雨が気持ち良い。

【治しきれなんだが、時間じゃ。】
(ありがとうね。)
【ふん……また呼ぶが良い。貴様の体は居心地がいいゆえな……】

女神様はモニョモニョ言いながら消えて行った。
本当に、彼女には感謝仕切りである。




フゥ、と息をつく。
湿度飽和状態の雨の下では、吐いた息が暖かければ、それは白い蒸気となる。
それを見ながら、ハルマサはなんでこんなに無茶しちゃったのかな、と考えていた。

別にここまでやらなくても、勝てていた。
「天罰」スキルを使えば、隙を作るのは簡単だし、今の敏捷ならその隙を突く事も容易かっただろう。
だけど、ガムシャラにやってしまった。
いや、やりたかったんだ。

(……そうか。)

ハルマサは得心がいったよう瞳を動かし、右の手に持つ剣を見る。

(ヨシムネの仇を取りたかったんだね、僕は。)

「殺害精神」のせいで何も思わなかったなんて、嘘だ。
ホントは悲しい。
ヨシムネが死んだ時、何も感じなかったなんて、嘘だ。
だってこんなに胸が痛い。
だいたい説明に書いてあるじゃないか。
「薄れる」だけだって。

それに、君が死んでしまったって、君との記憶は変わらない。
楽しくって温かかった記憶は忘れたくても忘れられないみたいだ。

君が死んでしまって、寂しいよ。
だから、今、君を想って泣いても変じゃないよね。


「―――――、――――ッ! ――――!―――――ッ!」


雨音に全てはかき消され、情けない声は自分にすら聞こえない。
涙は雨で分からない。

だから僕は、勝手に死んだヨシムネに、勝手に怒って、勝手に謝って、そして勝手に泣いた。



<つづく>





<おまけ>

ココット村でハルマサは体の汚れを落としていた。


「ハルマサ、湯加減はどうニャ?」
「ん? あぁ、いいよ? ちょっと傷にしみるけど。」

ハルマサは苦笑しつつ、五右衛門風呂の下で、筒を咥え、火に息を吹き込んでいたアイルーを見る。
アイルーは汗を拭うように額を擦ると、こっちを見上げてきていた。
その顔を見てつい笑ってしまう。

「顔、煤で黒くなってるよ。」
「んニャ!?」

顔を手で擦る様が愛らしくて、ネコってほのぼのするなァ、とまた笑ってしまうハルマサである。

「ねぇヨシムネ。」
「何ニャ?」

こちらを向くアイルーに僕はなんでもない風に言った。

「あのね、僕は多分ここを直ぐに出て行くんだけど、僕が君に付いて来て欲しいって言ったら、ヨシムネはどうする?」

瞳に意思を滾らせる猫。それって僕に多分一番足りないものだ。
だから一緒に行けたらな、と少し思った。閻魔様のこととは別に。
ネコはきょとんとした後、思案顔でヒゲを撫でる。

「ニャ……。すごく魅力的な提案ニャけど……遠慮しておくニャ。」

まぁそうだよね、と思った。

「ゴメン、無茶言って。」
「あ、そうじゃないのニャ。すごく行きたい気持ちもあるのニャ。だけど……」
「だけど?」

アイルーは肩をすくめる。やたらこなれた仕草だった。

「ここには愛する妻がいるニャ。かなりの美ネコだから放っておけないのニャ。」
「ええ!? 結婚してたの!?」
「あ、何ニャ? 信じてないのニャ? 本当なのニャ。」
「いや、別に信じてないわけじゃなくて……。結婚ってどういうのか想像つかないから。僕って女、じゃなくてメスと付き合ったことも無いし。」

アイルーは驚いた後、ひどく可哀相なものを見る顔をする。

「なんか不憫なのニャー……。今日の宴、僕の妻でよければお酌してもらうと良いニャ。」
「いや、なんか余計に傷つく気遣いだよ、それ。」
「ふふん。あまりの美しさに、腰を抜かしても知らないニャ?」
「なんだよ、それ。」

あの毛並みの美しさはマタタビ100個分なのニャ、と力説するアイルーを見つつハルマサは微笑む。
彼との語らいはとても楽しかった。
そういえば、初めて出来た友達なのかもしれない。ネコが初めてとか、僕スゴイなァ……。
あれ?友達って思ってていいのかな?

「あの、ヨシムネ?」
「何ニャ。改まって。というか早く出ないと茹で上がっちゃうニャ?」
「あ、うん。いや、そうじゃなくて…………僕たちって、友達かな?」

アイルーは、何を言ってるんだという顔をする。

「そういうことは聞いちゃダメニャ。言葉にするもんじゃないんだニャ。」
「そういうもんかな。」

相槌を打つハルマサに、まぁ、とアイルーはトコトコと風呂の出口のほうに向かいながら言った。

「友達ニャんて付き合っていくうちに、勝手になるもんだニャ。」

その時アイルーは背を向けていたのだが、恐らく照れていたのではないか、とハルマサは思うのだった。



ヨシムネとの、初めての友達との、記憶だ。


<おまけ終わり>







ステータス

レベル:7→8  ……レベルアップボーナスは320
耐久力:541 →1005
持久力:838 →1734
魔力 :1574→1894
筋力 :463 →1641
敏捷 :1379→3175
器用さ:1211→1851
精神力:1181→2248
経験値:1248→2548 あと10

昇華スキル
突進術Lv5 :177→突撃術Lv6:585 ……New!


両手剣術Lv7:152→872 ……Level up!
身体制御Lv7:401→721 ……Level up!
暗殺術Lv7 :435→792 ……Level up!
撹乱術Lv7 :402→1023……Level up!
空中着地Lv7:441→874 ……Level up!
撤退術Lv6 :287→437 ……Level up!
神卸しLv7 :418→982 ……Level up!
戦術思考Lv6:294→411 ……Level up!
回避眼Lv7 :424→729 ……Level up!
観察眼Lv6 :329→487
鷹の目Lv5 :54 →276 ……Level up!
的中術Lv7 :132→637 ……Level up!
空間把握Lv6:366→575


■「突撃術」
 「突進術」の上位スキル。敵対する対象に向かって移動する際、筋力と敏捷にプラス補正。助走を一定距離以上とった攻撃時に、さらに筋力にプラス補正。熟練に伴い筋力と敏捷にプラスの修正。スキルレベルの上昇に伴い、二度目の筋力補正が発動する助走距離が短くなる。[(20-(スキルレベル))×10]m以上の助走距離でスキル発生。※10m以下にはならない。






<32>



条件は揃った。
最高神が設定した第一層の仕掛けは簡単なもの。
プレーヤーがダンジョンに入ると同時に活動を始める、ドスランポス、ドスファンゴ、イャンクック、ドドブランゴの四匹の魔物を消滅させること。
前二匹は魔物同士の争いで消滅。後者二匹はプレーヤーが討伐した。
今、神の仕掛けたスイッチが、第一層の最後の魔物の目を覚ます。




ピシリ。

小さいながらも不吉な音が雪山の頂上で、微かに響く。
何かが割れる音。

ピシリ。ピシリ。ビシッ! ビシビシビシ!

岩のように灰色の塊の表面に、無数にヒビが入る。
そして開いた隙間からは、ヒュウヒュウと風が吹き出してくるのだ。

バキバキと音をたて、灰色の塊の頭から尻まで、一直線にヒビが入る。
そうして硬質の殻を割り裂いて出てくるのは、まず背中。
そして長く細い首。いや、細いと言っても、それは全体を見ているからこそだ。
単体で見れば、そこらの木のよりは断然太い。
続いて引き抜かれるのは大小さまざまな角が後ろに向かって生えている頭だ。
顔は前後に長く、鰐のような長い口がずらりと鋭利な牙を揃えている。
それは龍の顎そのまま、色だけがくすんだ灰色の頭である。

目が覚めた第一層の守護者は、身を包んでいた邪魔な殻をはね飛ばし、大きく羽根を広げる。
蝙蝠のような翼は、しかし鈍色に硬質な輝きを放つ。
守護者は久しく動かしていなかった口を開く。パキパキと硬化していた鱗が剥がれ落ち、煌く金属質の鱗が顔を出す。
さぁ、叫ぼうか。大地を竦ませる、龍の咆哮を。

守護者の名をクシャダオラ。嵐を呼び寄せる古代の龍である。





雨がようやく収まってきたという頃。
友との別れを悼んで下がっていたハルマサのテンションも、どうにか盛り返してダンジョンクリアに目が向き始めた。
ドドブランゴ戦の疲れを癒し、何か新たなスキルを習得するか、このまま雪山に吶喊するか悩んでいた時である。


「――――――――――ォァァァァァァァァ―――――」


遠くから、相当に遠くから、身を竦ませるような声が届いたのだ。

(なに? 何だ!?)

猛烈な悪寒。
ハルマサは、たまらず「聞き耳」を全力で行使しつつ、高い木に登る。
「鷹の目」はレベルが上がっており、密林にいながら、雪山を見通せるまでになっていた。

「あれは……嵐?」

視界の先、焦点をあわせた先では、雪山の頂上辺りで、暴風が渦巻いている。
その中で、何か大きなものが蠢いているのが見えた。

まって! あれ、かなり大きいんですけど!
楽勝で10メートル越えてるし≪20m83cmです。≫あ、ありがとう「観察眼」。絶望をどうも。

あ、待てよ名前くらい≪ポーン!「観察眼」Lv9を習得する必要が≫無理だー!
こいつこそ真のボスだよ! なんか分かるもん!
ドドブランゴあんなに強かったのに、僕ってめっちゃチートだと思うんですけど、それでもすんげぇ苦労して倒したのに!
それより強い敵来たー!
ドドブランゴの二倍強い敵来たよー!?

勝てるわけ…………。

いや。諦めるのはやめよう。
僕はこのソウルオブキャットに相応しい人間になりたい!
勇気の塊であった僕の最初の友達に、誇れるような人間になるんだ!

大体考えてもみなよ。レベル15の敵とか来なくて良かったッでしょ!?
あの敵なら、何とか……何とか……出来たら良いなァ。

そのためには、まず勝てそうな材料を調えるんだ!
勝負のためのカードをネ!
あ、今チラッと見えたよ! 顔とかちょっと見えちゃった! すぐ隠れちゃったけど!

ねぇ……今のってクシャルダオラじゃない!?
村クエの星4つで出てくるくせに、やたら強かったクシャルダオラじゃない!?

クシャルダオラって20メートルもあったのかぁ……勉強になるなァ……知りたくなかったなァ……。
とりあえずまだ僕には気付いていないみたいだし、今の内に出来ることはやっておかなくちゃ。

クシャルダオラの弱点は?
はい!分かりません!

じゃあ弱点属性は?
はい! 知りません!

何か有効な武器は?
はい! ライトボウガンで通常弾撃ったら跳ね返ってきてエライ目にあいました! すぐ3死しました!

何か効くものは?
はい! 毒投げナイフとかが支給されてましたけど、全然当てれませんでした! フワフワ跳びすぎです!


結果。

「毒が効くかも!」

まぁそれ以外がさっぱり分からなかったって言うのが本音だね。
ていうか過去の僕はもうちょっと頑張るべきだったんじゃないだろうか。

攻撃力守備力32倍のチート使って倒したことはあるけど、あの時もゴリ押しで倒しただけで、風で吹き飛ばされまくって大変だった。
今の僕は何が出来るんだろうなァ。
吹き飛ばされてオウフ! ッてなったら即死だよね多分。
あ、オウフ! ッて言うのは地面に叩きつけられたときに出す予定の声ね。
そんなん出す間もなく逝っちゃう可能性の方が高いけど。

正直毒とかどうやって使えば良いのか分からないし、何か勝てそうな要素ないかなァ……。
とステータスを見ていた時、僕は気付いた。

(そういえばもう少しでレベル上がる!)

こいつぁ上げとかねぇと後悔するぜ! ッて具合にテンションの上がった僕は、モンスターを索敵する。
森丘の……あっちと……あっちとあっちに、ランポスがいる!

少しでも経験値を得るため、レベルが高くて群れているランポスをターゲットに据えて、ハルマサは動き始めるのだった。



<つづく>

ボス

耐久力:10209
持久力:7809
魔力 :9985
筋力 :14283
敏捷 :8534
器用さ:8321
精神力:11272


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