ハルマサのステータス
耐久力:3119
持久力:5346
魔力 :10570
筋力 :3474
敏捷 :11610
器用さ:15551
精神力:9756
継続時間(全快時)
暗殺術:254秒
神降ろし:556秒
回復速度
持久力:3/分
魔力 :7/分
<65>
【第二層・挑戦3回目】
顔にバババと風を受けつつ、ハルマサは滑空していた。
既に姿は消している。
ジャージは風を受け止めやすいなァなどと思う。
そりゃフンドシと比べれば。
前回、上空で広範囲攻撃をされて危機一髪だったことをハルマサは覚えている。
よって、今回は攻撃が来る前に、目的地に向け空を蹴っていた。
ダン、ダン、ダン――――――!
ハルマサは、また森丘の攻略へと挑むつもりだった。
一度や二度の失敗ではへこたれんぞ――――――!
閻魔様のところで黄昏ていたのはノーカンで!
前方下方へ向けて全力で空を踏み込んで一歩ごとに加速しつつ、風を切って進む。
(ゆっくり空を飛ぶのも良いけど……こういうのも良いよね!)
僕は今、流星ッ!
人々の願いを受けて輝くのだ――――――ッ!
このダンジョン人いるか知らないけどね!
ハルマサは瞬く間に地表へと達し、神様印の衝撃吸収が行われ……勢いが殺され切らなかったので盛大に地面に突っ込んだ。
地面に足を脛まで突っ込みながら、ハルマサは巻き上がった泥に顔をしかめていた。
そう、泥。この辺の大地は非常に緩かったのだ。
「かはぁ、ペーッペッペッペ!」
うわぁ、また服が汚れちゃったよ。
神様の力も変なところで中途半端だ。
脛まで突っ込んだことで膝へのダメージがきつかったけど、地面柔らかいしまぁ大丈夫そうだね。
よっと。
ズボズボと足を引き抜き、森丘へと向かおうとしたハルマサは、「聞き耳」で嫌な声を聞いた。
ズシンズシンと大地を踏み鳴らしつつ、体長13メートルのモンスターが迫っていたのだ。
「ギョワアアアアアアアアアア!」
黒いゲリョスだった。強さはレベル11相当。
着地音がうるさかった……?
それとも?
……つまり、ゆっくり降りれば熱線に狙撃され、急いで降りれば衝撃吸収が完全には発動しなくてゲリョスに襲われる――――――ということか!?
もう何回目か分からないけど神様性格悪いと思うよッ!
ゴム質の尻尾をビヨンビヨン振り回しつつ、毒怪鳥はこちらに向かっている。
右方から来る彼らとハルマサの距離は、200メートルも無い。
ゲリョスは走ってきているが、走ることは彼らの本来の移動法ではないためだろうか、そのスピードはそれほど速くない。
(これならじっくり狙える――――――炎弾!)
ゴォオ! と飛んでいった炎塊は、斜め上へ飛び立ったゲリョスにあっさりと避けられる。
指先から飛ばしただけだから仕方ないといえば仕方ない。
もっとスピードを出すなら皮膚を焦がしながらでも掴んで投げないといけないので、ハルマサはしたくなかったのだ。
連続で撃つつもりだったが、ゲリョスのスピードは空において驚異的なまでに上昇していた。
地面を翼で叩くような羽ばたきをして、ゲリョスは黒い影となり空を舞う。
大きくU字を描くように空を飛び、きりもみ回転をしつつゲリョスは飛んでくる。
「暗殺術」で姿が見えないはずなのに、先ほどの魔法が打ち出された場所を見ていたのだろう、しっかりとハルマサのところに。
「ギョアッ!」
上空に居たはずなのに、距離はほぼ一瞬で無くなりハルマサは慌てて横に跳ぶ。スピード変化が激しすぎる!
ドギャア!
足爪から下りたゲリョスは地面を盛大に割り抉りつつ着地し、したと思ったら頭を少し上げてスン、と鼻を鳴らす。
そして間髪の間も入れず、ギョロリとこちらに眼を向けた。
「ゲリョァアアアアアアアアアッ!」
(こ、怖ぁ――――――!)
透明になってもほとんど関係ないのッ!?
嗅覚良すぎじゃない!?
ハルマサは驚きつつ、高速で吐き出された紫色の汚物を避ける。
汚物が落ちた地面は、半径3メートルが一瞬にして紫色に染まり、さらにジワジワと毒の範囲が広がった。
この毒!
この人チャチャブーみたいに「毒吸収」持って居ても全然おかしくないよ!
そして素手でゲリョス攻撃したら、そこから毒が吹き出そうだよ!
(ここは……必殺技の出番では!? ッてうわッ!)
考え事を中断して、低空飛行による突進をジャンプして避ける。
ゴゥ、と足元を過ぎていく黒い影に一発風をぶつけてやろうとして手を構え――――――
5倍ほども伸びたゲリョスの尻尾に足を掴まれ、引きずり落とされた。
「ちょ、なんでそんな正確に……いや、これまず、い……!」
足に万力で巻きつく尻尾は、ハルマサの力では外すのが困難である。
尻尾でさえもハルマサの筋力を上回っているのだ。
(く、「手刀斬」――――)
右手を振り上げた瞬間、ハルマサはぐぅんと足から引き上げられる。
「うぉ!」
またもや5倍ほども伸び、10メートルを楽に越す長さの尻尾はその長さの分ハルマサを持ち上げ―――――地面に叩き付けた。
「――――――ッ!」
咄嗟に地面に向け、右手の剣に左腕を添えて頭を防御。
瞬間、砕け散る毒剣と、折れるハルマサの腕。これで腕も毒剣も一本しかなくなった。
地表の下、厚い岩盤が叩き割られ、ハルマサも一発で瀕死の体になる。
肺から空気が搾り出されて声も出ない。
体に刺さった毒剣の破片が地味にやばい。
クレーターの中、ハルマサの足にはまだ尻尾が絡みついたまま。
もう一度やられたら………死ぬ!
しかし、それよりもさらにゲリョスは容赦ない。
尻尾が外れたと思ったら、ずしんと岩ごと体を抑える大きなゲリョスの足の爪。
左肩に食い込む巨大な爪より恐ろしいものが、岩に埋まったハルマサには感じ取れた。
「空間把握」にはこちらに向けて口を開くゲリョスの姿があったのだ。
(ここで毒なのッ!?)
間髪無くドボォ! と吐きつけられる毒の塊。
大半が岩を溶かすが、露出していた体がジュウ、と焦げる。
熱い……! 特に顔が痛い!
「空間把握」で見えるのは、二発目を吐こうと顎を開くゲリョス。
「ぐぅううううああああああああああッ!」
もう毒とか知ったことかッ!
折れた腕でゲリョスの足をがっしりとホールドし、
「――――――手刀斬ッ!」
「解体術」で見えた、ゲリョスの足指の弱点に、渾身の手刀をめり込ませる。
当たる瞬間「的中術」も発揮され――――――クリティカル発動ッ!
―――ブシッ!
「ギョアアアアアアア!」
丸太ほどもある足指は一撃で切断され、クルリと回る。
突然の痛みにゲリョスは跳び上がった。
切断面から飛び散る血液はやはり毒液混じり。
おかげで無事だった右腕まで毒まみれ。
痛いなんてもんじゃない!
ハルマサから飛びのいたゲリョスは、ざッざッざッ、と三度飛んで後ろに下がる。
「ゲゲゲゲ……」と喉を鳴らした後、怪鳥はおもむろに額のトサカを打ちつけ始めた。
カシュン!
一回目は掠っただけ。
(閃光ッ!? どうする―――どうする!?)
何とか岩を押しのけて立ち上がりつつハルマサは思考をまわす。
カシュンッ!
二回目も失敗。三回目は? 絶対成功するよね!?
(――――――考えてる暇がないッ!)
ハルマサは自身が持つ最も強い遠距離攻撃を選択する。
熟練度ボーナスで魔力はギリギリ足りる! ほとんどなくなっちゃうけど……死ぬよりマシだッ!
ぎゅお、と右手の上に巻く烈風。
「はぁあああああああああッ! 極・風弾ッ!」
今だ毒で煙を上げる右腕で、裂傷を受けつつ風塊を投げる。
ゴォッ!
開けた空間であるここで、少なからず風の塊は拡散する。
「ギョアッ!?」
とても致命傷には届かないが、広範囲を舐めた風は、ゲリョスを仰け反らせることに成功した。
ここだ! ここを逃したら、死ぬと思えッ!
(ぁあああああああああああああああああッ!)
体はまだ透明。ニオイで居場所を知る暇も無いほど――――――速くッ!
一歩、右上前方に飛び上がり。
二歩、彼我の距離を詰める踏み込みを空で踏み込む。
この一瞬複数のスキルが発動し、ハルマサは神速の領域へと踏み込んだ。
暴力的なまでの向かい風を操作し、自らの推進力に変える。
三歩、加速し。
四歩、到達した。
ゲリョスの頭上背後に来たハルマサは、空を蹴って跳ね返り、背面飛びのように下へ飛ぶ。
魔力が切れた。
ビュウと押し寄せる風に眼を細めながらハルマサは右手に力を込める。
空を蹴る爆音に反応してこちらを振り向くゲリョス。
その立派なトサカに、ハルマサは体に巻きつけるように溜めを作った右手を開放する。
(これで――――――!)
――――――手刀斬ッ!
(―――壊れろッ!)
ズガン! とハルマサの手は、ゲリョスの頭部を直撃する。
手ごたえあった!
バギャン!
「ギョァアアアアアアアアアッ!」
ハルマサが叩き壊したのはゲリョスのトサカ。内側から光り輝く鉱石をこぼすゲリョスの最ももろい部位であった。
痛みで頭を振り回すゲリョスに、ハルマサは弾き飛ばされつつ、接触の瞬間にトサカの欠片をもぎ取った。
ハルマサは弾き飛ばされたまま、地面を擦るように転がってから、よろめきつつ立ち上がった。
満身創痍だが、スキルの熟練度アップボーナスで魔力は回復している。
「魔力放出」を使えばこのくらい出来ないこともなかった。「身体制御」もある。
口の端から怒りの煙を吐きつつこちらを見るゲリョスに、ハルマサは「暗殺術」を解く。
そして、掴んでいるのも辛いゲリョスのトサカの一部を掲げ――――――握力で砕いた。
カシィと砕け、パラパラと落ちる鉱石の欠片。
「こう、なりたくはないだろう? もう止めにしない?」
無理やりに口元を引き上げる。
脅しにもなっていない脅しだが……
魔力はないし、耐久力だって無い。
腕も折れたし、体中が爛れて痛い。毒が効いて目が回る。
もう何も出来ない。
(これで……逃げてください……ッ!)
「ギョアッ!」
ゲリョスの返答は、毒吐きだった。
(ちくしょうッ!)
悲鳴を上げる体を操って横に跳ぶ。
どぽん、と地を侵食する毒の着弾音を聞きつつゲリョスに眼を向けると、
「ギャァ……ア……ァス……」
(……?)
ズシ―――ン! とゲリョスは地へと体を横たえた。
(???)
しばらく待ってみても動かない。
そこでハルマサはティン! ときた。
(し、死んだフリか――――――ッ!)
あなた全然ダメージ食らってないでしょ!?
「空間把握」であなたの瞼がピクピクしてるの分かりますからァ――――――!
やらしい! 死んだフリとかホントやらしいな!
でも、ありがとうございまぁ―――――――すッ!
「じゃあ、さよならッ!」
満身創痍なんだよぉッ!
しかもね、遠くからゲリョス亜種が寄ってきているんだよ!?
当然逃げるよ!
あばよぉ、ゲリョッつぁん!
僕はゴキブリの如くカサカサ逃げるぜぇ―――――――!
再度「暗殺術」を発動したハルマサは、死んだフリをしているゲリョスを放置し、明日(森丘)への逃走(匍匐前進)を開始するのだった。
<つづく>
「手刀斬ッ!」のところを「ナイフッ!」と読むと、ハルマサ君とシンクロ出来ます。
耐久力:3119 →3795
持久力:5346 →9728
魔力 :10570→12705
筋力 :3474 →5698
敏捷 :11610→15324
器用さ:15551→17476
精神力:9756 →12110
経験値:2563 あと2555
拳闘術Lv8 :446 →1946 ……Level up!
片手剣術Lv8:1260 →1725 ……Level up!
解体術Lv7 :138 →749 ……Level up!
身体制御Lv10:7768 →9082
暗殺術Lv10 :3953 →5744 ……Level up!
突撃術Lv9 :3093 →3610
撹乱術Lv10 :7097 →8345
空中着地Lv10:5608 →7423
走破術Lv8 :473 →2163 ……Level up!
撤退術Lv10 :4271 →5288 ……Level up!
防御術Lv9 :3097 →3380
炎操作Lv9 :2907 →3008
風操作Lv11 :14743→16236
魔力放出Lv11:15586→17721
戦術思考Lv10:4577 →6922 ……Level up!
観察眼Lv10 :3992 →5534 ……Level up!
鷹の目Lv9 :2934 →3428
聞き耳Lv9 :2841 →3257
的中術Lv9 :1715 →2725 ……Level up!
空間把握Lv10:4710 →5839 ……Level up!