<64>
閻魔様に話を聞いて貰っているうちに気付いた。
何時までもいじけていたってしょうがない!
せめて閻魔様の前では、潔くあろう!
そんな気持ちで立っていたのだけど、服着ろって言われてから閻魔様の表情を見ていると何だか変な気持ちがモヤモヤと……。
ダメだダメだ心頭メッキャ―――――ク!
そんなこんなで、またもや死んでしまった僕ですが、死んだ際、嬉しい誤算もありました。
新たな特性を得たのです。
≪耐久値を超える程度の苦痛を一定回数以上受けたことにより、特性「不死体躯」を取得しました。何度も何度も死亡しそうな攻撃に良く耐えた! 感動です! ていうかなんで死んでないのさこのゾンビッ! そんなあなたにこの特性を送ります。しっかり生きろよー!≫
またネタ系かと思わせる内容のナレーションだったが、意外や意外。
効果は凄く有用だった。
□「不死体躯」
生命力を豊かに蓄える身体構造。あなたの体は、時間が経つごとに気持ち悪いくらい回復します。これであなたは不屈の戦士! 相手はビビッてベッチャベチャだぜぇー! ※涙でねッ!
『※』のところ全然いらないよね!
それはともかく、これでカロンちゃんへかける迷惑も少なくなるだろう。
気持ち悪いって言うくらいだから、ほんとに見る見る回復するんじゃないだろうか。
期待しちゃうね!
さてやってきました穴の前。
ダンジョンの入り口に来るのはもう何回目か分からないけど、その光景は来る度に様々に変わる。
基本は平原なんだけど、主に僕のせいで荒野になったりクレーターが出来たりと目まぐるしい変化である。
だが、今回の変化は僕のせいではない。
そう思いたかった。
(なんでジャングルになってるの……?)
太陽光が見えないほど、植生が繁茂していた。
ダンジョンの入り口周辺こそ、なにかのパワーで守られているのか平野のままだが、その5メートル離れたところから急にジャングルになっている。
太いつるや緑がかった苔むした大木が視界を妨げていて、遠くがどうなっているのかは見えない。
広がりを見せている枝葉のせいで、上に行くにもいくらかの障害を越える必要がありそうだった。
「一体なんでだろう……」
ハルマサは疑問に思いつつ、密林に歩み寄って……後ろに飛びのいた。
直後、ズギャ、と地面を抉る太いツル。
こ、これは……!
「もしかして閻魔様のところの動く観葉植物!?」
バカな! 前々回ライフドレインで死んだはずなのに!
地下にでも潜ってやり過ごしたのか!? それとも種か!?
ハルマサが呟くと同時、周囲の密林は一成にウネウネしだした。
この動き、やはり……!
確信するハルマサの耳に、遠くから「助けてくれぇ―――!」と男性の声が聞こえた気がしたが直ぐに声はしなくなった。
この辺周囲一帯は何も無かったはず。
するとこのダンジョンに挑みに来て……やられたのだろうか。
(た、助けに行ったほうが……いや、手遅れになっちゃった……)
「聞き耳」で、声が聞こえた辺りからジュウジュウと何かが溶ける音がしている。
命が一つ消えたようだ。
しかし、黙祷を捧げる時間も無い。
ジャングルのツタたちはぎゅ、と溜めを作り、次の瞬間恐ろしい勢いで伸びてきたのだ。
いや、これは射出という方が正しい速度。
それも周囲360度プラス頭上から3本、すなわち全方位からの同時攻撃であった。
だが、この程度の危機、幾度も潜り抜けたハルマサである。
全快状態の今、負けるわけが無いッ!
キン、と「回避眼」が発動。
逃げる道は……!
「だぁ!」
前に飛び出すと同時、手に持った毒剣でツルを切り払い、空いた空間に身を刷り込ませる。
だが、ツタは何故か螺旋回転をしており、掠ったジャージの肩が破れてしまった。
しかもかなり速い。
一層をクリアしていないハルマサであれば簡単に緑のムチに貫かれていただろう。
閻魔様は何でこんな危険なものを放置しているのだろう。
自分の光線でここに飛ばしたことは知っているだろうに……。
(あ、危険だと思っていないのか。)
あの方、強過ぎるから。
強者ゆえ、気付けないこともあるらしい。
ふ、ならばこのハルマサ、閻魔様の失敗を密かに帳消しにしてみせる!
隠れたところで超頑張れ僕ッ!
そんなハルマサが手を掲げて叫ぶのは、魔法の祝詞。
「超、炎弾ッ!」
手の先へと魔力があふれ出し、火炎へと変質、凝集する。
それを彼は密林へと投げつける。
「炎操作」のレベルは、前回火竜のブレスに巻き込まれた時にイヤというほど上がったからね!
「極」は撃てないけど、「超」だったら簡単さ!
ドゴォオ!
「超炎弾」の炎の温度は一定だが、規模は精神力によって変化する。
一万近い精神力のハルマサが放てば、それなりの規模となるのだ。
「シャギャアアアアアアアアアアアア!」
「な、鳴くんだ……。」
生態が謎過ぎる植物は密林全体を揺らして苦しんでいる。
ここが決め時!
畳み掛けるんだ!
「炎弾ッ!」
グバァ! と違う箇所も燃え上がるジャングル。
さらに、
「風弾ッ!」
風を送り込み、炎はさらに勢いを増す。
まだまだ行くよ!
「炎弾! 風弾! 炎弾! 風弾! 炎弾!炎弾!炎弾!炎弾! 炎弾ワッショーイッ!」
テテテテンション上がってきたァ―――!
フゥオオオオオオオオオッ!
異常に盛り上がるハルマサはさて置き、執拗なまでの攻撃に密林は火の海と化した。
その中心、これまで動かなかったこの密林の核が、郡体の危機を察して終に動き出す。
ジャングルの一部がズズズゥと盛り上がる。
それを「空間把握」で察したハルマサは、天へと「風弾」を放ち、視界を空ける。
そこに居たのはいっそ奇怪なまでの姿をした魔物だった。
「も、モルボル……?」
なんかあのFFXで出てきた、臭い息を吐いて状態異常をいっぱい誘発させる気持ち悪い外見の奴!
モルボルだっけ? ゲレゲレだっけ? 自信ない……。
密林の上に見える怪物は、目が着いた触手をメデューサのように頭にいっぱい持っており、口がでかくて、体の下には触覚がある。
現実に見せられると引くなァ……。
30メートルくらいあるし。
ズルズルとこちらへ近づいているようだ。
「ボルボルボルボルボル……」
(ぼるぼる言っとる――――――!)
魔力はあと……4000くらい。
僕に倒せるのだろうか……いや、僕は倒さなくて良い!
他に頼れる人が居るなら、ここはすっぱり任せよう!
「ハスタァ―――――――――――――ッ!」
【なんじゃああああああああああああああああい! ってお主、生きとるのか!?】
出てきたハスタァはいきなり驚いている。
え、生きてちゃダメなのだろうか。
さり気に傷つく。
「……この通りだよ?」
【む、ならば姉さんの勘違いか? そうだと思ったのだ。ふふふ、よい土産話が出来たわ! 今のオレは気分が良い! 何でも来い!】
言葉の通りハスタァは上機嫌である。
僕としても助かるね。
「雷雲を伴う雷を使って欲しいんだッ!」
【標的はあいつか! 良いだろう! 風もおまけしてくれるわァ―――――――!】
「おふっ!」
ハスタァが元気に宣言した瞬間、急激に魔力を抜かれて、ハルマサは軽いめまいを起こす。
【天罰ゥウウウウウウ……】
ゴォオと風が巻き起こりモルボル(仮)をもみくちゃにする。
緑色の血液(樹液?)が吹き出てかなり気持ち悪い。
【てきめぇええええええええええええんッ!】
言葉と同時、上空に集まっていた雷雲が、電光の瀑布を走らせる。
内臓にくるような爆音と共にハルマサは吹き飛ばされ、かなりの距離を転がった。
そして起き上がれば、今までで最高規模のクレーターが出来ているのだった。
ひゅう、と寂しく風が吹く。
怪物は影も形も無い。
ジャングルもあの怪物が拠り所となっていたのか急激に萎れていって無くなった。
【正直やりすぎたな、と今は反省している。】
「キャシーは残っているから良いけどね。」
立て札は少々焦げつつも立っていた。
……なんで残っているのだろう。今にも崩れ落ちそうなのに。
神様のパワーかな。
一層の中に煤が降り注いだ事が少し気になるけど、まぁ特に問題ないでしょ。
【では、さらばだ!】
「あーりがーとねー!」
黄色いハスタァは天上へと帰っていった。
焼け跡にあった白骨を、埋めてあげつつ、僕はこれからどうするか迷っていた。
ハスタァさんが魔力全部使っちゃったんだよね。
魔力回復するまで暇だなァ……。
「伝声」でも使ってみようか。
「カーロンちゃ――――――――――ん!」
『はわわ―――――ッ! あ、あ! あぁ……プリンが……』
プツン。
「伝声」の時間は終わった。
…………ご、ごめんなさーい!
その後昼寝したり寝すぎたりした。
そういえばカロンちゃんのライフドレインの方が早く片付いたかもなァなどと考えたりもした。
まぁそんな感じで魔力が4000ほど溜まった彼は、今度こそいけるだろうとキャシーに指輪を突きつけるのだった。
<つづく>
レベル:9
耐久力:3119
持久力:5346
魔力 :9923 →10570
筋力 :3474
敏捷 :11610
器用さ:15411→15551
精神力:9756
経験値:2563 あと2555
モルボル(仮)はLv6相当で、経験値は5でした。
天罰招来Lv9:2026 →2533
炎操作Lv9 :2837 →2907
風操作Lv11 :14673→14743
魔力放出Lv11:15446→15586
回避眼Lv9 :3778 →3779
聞き耳Lv9 :2832 →2841
□「不死体躯」
生命力を豊かに蓄える身体構造。あなたの体は、時間が経つごとに気持ち悪いくらい回復します。これであなたは不屈の戦士! 相手はビビッてベッチャベチャだぜぇー! ※涙でね!
>現代編
良いと言ってくださる方もいる……。
もう分からない!
分からないので今のところ放置で。
話数たまってその他板行くか! ってなったらそのときもう一回考えることにします。
>グローなんたら
あなたが神か……
>H eroさん
ありがとうでありんす。
ほかにも誤字脱字いっぱいあると思います。申し訳ないです。