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ハルマサは川の近くで寝転んでいた。
周囲には動く気配もあるにはあるが、彼の敵となりそうなものは居ない。
遠くのほうでは竜とカニが戦っている音がまだ聞こえる。
元気になったら漁夫の利でも狙いに行きたいと思うハルマサであった。
そんな彼は現在、我慢する必要もないので完全に涙目であった。
(いた、痛ぁ! メチャクチャ痛いよ!?)
なんか魔力全部を使ったカロンちゃんパワーでも全快しなかったんですよね。
耐久力が高くなったせいかな。
歩いてきた道が一目で分かる仕様になっていたので、無駄に遠回りする感じでココに来ました。
確かに穴の空いていたっぽい肺とかアバラとか、歪んでいた背骨は完全に治って、動きやすくはなったんだけど。
他にも色々痛いところは治ったんだけど……。
でも、何も骨折した左腕を残さなくても……!
何かもう、声を出す元気も無いです。
ああ、ズキズキ痛むなァ……。
なんで漫画の主人公たちは腕折れても平気なんだろう。
尊敬するよ。
ていうかもう30分くらい寝転がってたんだけど、お腹空いてきました。
疲れた体がエネルギーを欲しているよ!
肉が食べたい! イノシシ狩りじゃあ―――!
と思って立ち上がったところ、なんかでました。
≪チャラ(略)ーン! 一定時間以上、一定段階以上の身体的苦痛を受け、かつ音声を発しなかったことにより、≫
(まさか、「痛み耐性」!?)
≪特性「痛覚変換」を取得しました!≫
(おお? なんか良く分からない。)
≪強烈な痛みに、声も出さずに良く耐えた! あなたの相手を思いやる気持ちに感動した! でも次からは一緒に気持ちよくなって欲しい! そんなあなたにこの特性を送ります。気持ちよくなれよー!≫
(??? 何これ。)
ステータスを見た感じではこうでした。
□「痛覚変換」
一定段階以上の衝撃を、心地よいものとして脳に送る痛覚神経。あなたの神経は痛過ぎることを快感として受け取ります。これであなたは天然の娼婦! 彼氏の○○でベッタベタだぜぇー!
(性別がちがうでしょぉおおおおおおおおおおおおお!)
これ完全に女性用ですよね!?
しかも明らかにヤっちゃった後に取得する特性だよッ!
彼氏のホニャホニャでベッタベタとかゾッとするんですけど!?
ああ、腕の痛みが気持ちよくなっちゃうッ! やばいやばいやばい! イヤだ――――――!
…………。
……あれ、変わらないや。
あ! そうか! ブレスレット、体内の奴まで消してくれてるのか!
でも桃色じゃないのに?
まぁ同じネタ系特性だけど……。
ネタ系も消されるのかァ……。
それって「臭気排除」も消されるんじゃない!?
戦う時は外すか……?
失くしそうだしなぁ……攻撃が気持ちよくなっちゃうし。
ていうかブルファンゴとかザザミにばれたのってこれのせいかも……。
カニに嗅覚あるか知らないけど、そうなら先に言ってくれないと……。
これから、戦う時は臭いにも気をつけよう!
いや、元々僕が臭いって思わないと消えないから、特性が発揮されて居てもばれてたかも知れないけど。
よし、あ、腕痛ぁ!
動かさないように……イノシシ狩りじゃー!
腕が折れて居てもハルマサは元気だった。
(イノシシ……サーチッ!)
まぁ「聞き耳」だけど。
あ、あっちにいる、気がする。
あの辺開けてるから少し不安だなァ……。
でも、僕は進む! 肉のために!
倒してもお肉ドロップしなかったら、もう諦めてキノコ食べるけどね!
さぁて、こっそり接近!
今度こそ、気付かれる前に倒してくれるわァー!
移動の最中に魔力が結構回復していたことに気付き、カロンちゃんにブツブツ言われながら回復してもらったので、全快状態でイノシシ狩りにいけることになった。
「祝! 肉ゲット!」
今度は風を操って、風下から襲い掛かって、無事討伐。
「手刀斬」で首を落としたら、また肉が手に入りました。
こう、スパッと切れるっていいね。
返り血でえらいことになるけど、そこは置いておいて。
ナイフをすでにマスターしてしまったので、次はフォークだろうか。
それよりか、さらに手刀を極めてセイント星矢式エクスカリバーの高みに……「解体術」を上げれば出来ないこともないはず。
「この世に切れぬものなし!」とか、言ってみたい!
エクスカリバーの人のセリフかは自信ないけど。
とにかく夢が広がるね!
でも、夢じゃあお腹は膨れないので、お肉を食べます。
前回の干し肉で思ったんだけど、焼いても風で煙を散らせばいいんだよね。
さらに、何時までも同じ味では、現代人として恥ずかしい!
ここは、キノコキムチを使ってキムチ味を!
ニオイとか気にしてられ無いぜ!
という訳で。
「メラ!」
ボッ!
メラです。
小規模の火をつけます。
今回は落ち葉とか枝とか。
その上に枝を組み肉を載せて、と。
「よーし。オホン! ……ちゃっちゃら~ちゃららっちゃっちゃら~……」
BGMは自分で歌いつつ、肉をくるくる回すのだ!
ウルトラ上手に焼いてやる!
早く焼けないかなァ……。
あ、風風。循環させて吹き散らせーい!
それはさて置き「メラ」である。
◆「メラ」
魔力を2消費してメラを放つ。精神力に応じて威力は変化。上位特技にメラミなどがある。
この体って、ドラクエ的な技だったら、条件はあるけど普通に出るんだよね。
以前、マダンテ試した時にナレーションが≪特技「マダンテ」が~≫って言ってて、これだけカタカナだったから、色々試してみた結果分かったんだけど。
ドラクエとかしばらくやってないから覚えている魔法少ないけどね。
消費魔力が少ないからか威力は控えめだけど、実生活では重宝しそう。
ていうかこうもポンポン魔法が使えると、僕も魔法使いになったんだって思えるね。
ちなみにホイミやベホマはやたら条件厳しかった。
それにブースト系の魔法はまだまだ手が届かなそうだね。
バイキルトとかヘイストとか使ってみたかったんだけど。あれ? ヘイストってFF?
とにかく「魔力放出」のスキルレベルも足りない上に、「魔法感応」「体質変換」スキルが必要らしくって。
どうやって得るのか皆目見当つかないよ。
でも「体質変換」っていえば、毒手が思いつく。
殴るだけで相手を無力化するあの拳……!
毒系っ憧れるなァ……格上を倒すにはこれ以上にって気がする。
どうやったら得られるかな。
ちょっと毒沼で泳いでこようか。
それともゴクゴク飲んでやろうかァ!
いや、痛いのいやだしどうしようか……。
まさかここで新特性の出番か!?
……イヤだなァ……。
そうこうするうちに、ジュウジュウと肉汁が火に落ちて良い匂いがし始める。
さらにニオイには香草の香りも含まれている。
「観察眼」で見つけたので、香草もこっそりと火に入れて置きました!
完璧だ! これぞ調理! 僕は今、文明人への一歩を……
≪チャラチャンチャンチャンチャラチャーン!≫
おお、なんか出た! もしや調理系では?
≪(前略)「調理術」Lv1を習得しました。習得に伴い器用さにボーナスが付きます。≫
(キタ――――!)
美味しいご飯が食べれるぜ!
む、早速このスキルの恩恵か、お肉の焼き加減が分かってきた……ここだ!
「ウルトラ上手にッ! 焼けました――――――ッ!」
と言っても過言ではないはずだ! ウルトラかどうかは知らないけど!
火から降ろした骨付きマンガ肉は、ホカホカと湯気を立て、表面はパリパリとした皮がやや引きつって割れており、その下から赤い肉が肉汁を浮き上がらせている。
なんて美味しそうなんだ! 干し肉も悪くは無かったけどこの光景には負けるね!
美味しさはまず、見た目から! 次に匂い! 味! 喉越し! そして歯応えだー!
思わずむしゃぶりついてしまったよ。
うめぇ、うめぇっす。
この野性味がたまらん……!
そして、薄く裂いた肉に、キノコキムチを挟んで、さらに数種の香草をサンド!
これが伝統の肉バーガーですね!
頂きます!
ウメェ!
そうやって美味しくご飯を食べるハルマサ。
煙と同時に匂いが吹き散らされており、この付近一帯から肉食獣が集まっていることなど、彼には思いも寄らぬことなのだった。
<つづく>
魔力 :11858→11863
器用さ:20018→20027
精神力:12722→12723
経験値1取得
神降ろしLv11:10922→10923
風操作Lv11 :13671→13677
魔力放出Lv11:12985→12990
調理術Lv1 :0 →3 ……New!
□「痛覚変換」
一定段階以上の衝撃を、心地よいものとして脳に送る痛覚神経。あなたの神経は痛過ぎることを快感として受け取ります。これであなたは天然の娼婦! 彼氏の○○でベッタベタだぜぇー!
◆「メラ」
魔力を2消費してメラを放つ。精神力に応じて威力は変化。上位特技にメラミなどがある。
■「調理術」
食材を調理する技術。美味しく調理する手順、タイミングが分かるようになる。熟練に伴い器用さにプラスの修正。熟練者は食べれないものすら美味しく出来る(でも食べれない)。
<あとがき>
肉食ってる場合か!
早く攻略しろや!
って作者が思うんだぜ。
「ウルトラ上手に焼けましたー!」って言う言葉はモンハンで「こんがり肉G」を作った時に聞けるセリフです。一応。ハルマサ君の頭がどうかなったわけではないんだぜ!