<51・変わってないです>
「さて。」
立て札には相変わらず、「2」というワクが浮かび上がっている。
ここに触れれば第二層にいけるわけだが……その前に魔法なのだ!
「女神ちゃ――――――ん!」
【…………】
あれ? 来ない。まだどっか調子悪いのかな。さっきから五分も立っていないし当然といえば当然だろうか。
「お腹でも痛いのー?」
【違うわッ! …………行ってもよいのか? 先から僅かな時間しか過ぎておらぬが、特性を封じておるのか?】
「もちろんだよー!」
【最初からそう言えぃッ!】
言葉とは裏腹に非常に明るい声で、女神ちゃんはやって来た。
「カロンちゃん。魔法を教えて欲しいんだ。」
【………ハスタァに頼まなんだのか? 悔し涙を流しておったのだが。】
女神ちゃん。君は何を馬鹿なことを。
「綺麗な声の女神ちゃんと話せるのに、わざわざあんなおっさん声と練習はしたくなかったんだよ。」
僕って割りと最低な事がポンポン言えるようになっているよね。
【そ、そうか? いや、お主がそう言うのなら我としては吝かではないが……】
カロンちゃんがテレテレしながらモソモソ言ってる。なんかほっこりするね!
そして僕の呼び方が貴様からお主になってる! 凄い進歩だ!
【で、どのような魔法が使いたいのじゃ?】
「えっとねー、遠距離攻撃が出来る魔法が欲しいな。」
本当は植物が無いところで張れるバリアーも欲しいけど、これを言うと女神ちゃんに気を使わせちゃいそうだから、おっさん声に聞くか、自分で編み出してやるよ!
「以前、「超炎弾」? っていうのを発動しそうになったんだけど、確かポーズとか耐性とかが足りなくってダメだったんだ。」
その時はこんな感じでした。
≪ポーン! 特技「超炎弾」を使うには、レベルが1足りません。魔力が442足りません。器用さが393足りません。精神力が147足りません。特性「炎耐性」を取得する必要があります。スキル「魔力放出」Lv5を取得する必要があります。スキル「火操作」Lv7を習得する必要があります。規定のポーズをとる必要があります。≫
【ふむ? 「超炎弾」やら耐性やらは分からんが、ポーズというものは、恐らく体の構えではないじゃろう。魔法全般で必要な心の構えじゃ。今回の場合は、炎を出すという強い意志とイメージが必要なのじゃろうな。】
難しいな。気合がいるってことかな。
「耐性……どうしよう。今まで最多で食らったのも雷属性を3回だし……もっとくらってみれば出るかな……。女神ちゃん、ちょっとビリビリちょうだい。」
【我はあまり攻撃魔法は得意ではないのじゃが……やはりハスタァに……】
「女神ちゃんが良いんだよ! むしろ君でないとダメだ!」
【う、うむ……そこまで言われれば我も女じゃ! 行くぞ! 「雷槌」!】
瞬間ゴソッとハルマサの魔力は奪われ、ハルマサの頭上に巨大な円形の黄色い光が出現する。
バチバチバチバチッ!
大きすぎて、空がほとんど覆われているし、遠近感がつかめない。
「うわぁ……」
【手加減が苦手でのぅ……死ぬな。】
「そっちの苦手か――――――ッ!」
雷撃の槌が降って来る。
「ま、負けるかぁ―――――――ッ!(泣)」
ハルマサは全力で「雷操作」を発動。体の周囲を何重もの三角錐で覆い、周りの地面に雷を流す準備をする。
さらに、詰襟の上着を脱いで体の前面に掲げ、「これで「防御」してやるよ!」とばかりに「防御術」の発動も視野に入れ……ついに「雷槌」が降って来た。
バシィッ!
制御可能容量を飽和させ、一瞬で砕け散る三角錐たち。掲げる制服は一瞬で燃え上がり、質量すら感じる雷に、ハルマサの足は地面にめり込む。
(し、死んでたまるかぁあああああああああああああああッ! アバババババババババッ! ちょ、シビれ……!)
ぬぅおおおおおおおおおお!
「ま、負けるかぁあああああああああッ!」
残り少ない魔力で、三角錐を再構築、さらに制服からも地面に魔力のアースを引っ張る。
三角錐はまた一瞬で破壊された。
手の肉は焦げ、髪からは黒煙が上がり、ハルマサは鼻血が出そうなほど、歯を食いしばり、耐えた。
これって、カロンちゃんのオートライフドレインが無かったら死んでない?
やがて。
「い、生き残った……ぐふぅ。」
焼け爛れた腕でガッツポーズをするハルマサの姿があった。
【まぁお主のカスみたいな魔力の、さらに半分程度しか呼び水に使わなんだからの。耐えれて当然じゃ。
最後に残りの魔力を使ぅて回復してやろう。……またの。】
「さ、サンクス……!」
ポワワーンとか優しい音をさせつつ、体が緑の光に包まれる。あったけぇ……。
ハルマサは自分の格好を見る。
魔力はすっからかんになり、体もぼろぼろ(修復中)。さすがに修復する余裕は無いのか、服は下半身しか残っていない。
指輪とブレスレットは無事でよかった。
そして、周囲の様子はさらに悲惨。
草原が、ドレインのせいでただの荒野になってしまった。
もはやぺんぺん草も生えまい。
さっきウネウネしていた観葉植物は陰も形も無い。一体どうなったのやら。
そして。
立て看板のキャシーも、色素が抜けて白い木になってしまった。
何もこいつから奪わなくてもッ!
だが、その甲斐あって祝! 耐性獲得ッ!
≪一定時間以上、電気による刺激を受け続けたことにより、特性「雷耐性」を習得しました。≫
≪一定時間以上、一定威力以上の熱源による刺激を受け続けたことにより、特性「炎耐性」を取得しました。また熱による合計ダメージが一定量を超えたため、スキル「炎操作」Lv1を取得しました。習得に伴い、器用さにボーナスが付きます。≫
炎系もゲットだぜッ!
にしても、バリアーを張らずに受けなければならんかったとは……ていうか、この「炎耐性」って風呂に入っているだけじゃダメなの? 2号さんがどんな基準作ったのか凄く聞きたいよ。
暖かいじゃなくて熱いと感じないとダメとか? 60度以上の、タンパク質が凝固し始める温度でないとダメ、とか?
難しいよ!
もっと日常の中で得られる耐性にして欲しかった!
ま、まぁ良いさ! これで計らずしも、スキルは揃った! あとはちょっと頑張ってスキルレベルを上げれば、魔法が使えるぜー! これで生肉ともおさらばだいッ!
一応図書館で火の起こし方を調べてみたけど、無駄になっちゃったね。
ところで、以前失敗した魔法は「超」がついている。ならば当然、付かない奴もあるだろう。
ただの「炎弾」も使ってみることにした。
炎……炎が出てくるイメージ!
手のひらを上に向け、もう片方の手で手首を押さえる。ここから、火が出る! 強い威力の火が出るゥ――――ッ!
「炎弾ッ!」
≪ポーン! 特技「炎弾」を使用するには、魔力が482足りません。≫
おお、ポーズ?はこれでいいみたいだ!
魔力は……ステータスで見ると今、18、19になった。
500いるってことですな。
これって余裕じゃん!
撃ち放題だよ!
でも魔力が回復するまで、試し撃ちも出来ないし、第二層に挑むのは魔力がないと不安だし……
ここで、寝てても良いけど、時間は有限! 有意義に使うべきだよね!
「いろいろ試してくれるわァ――――――! 「ショック」!」
≪ポーン! 特技「精神破壊」を使用するには、魔力が149986足りません。精神力が134339足りません。スキル「雷操作」Lv10、スキル「精神感応」Lv10を習得する必要があります。≫
(マインドクラッシュきた―――ッ!)
「ええい、次だ! 「バリアー」!」
≪ポーン! 特技「守りの壁」を使用するには、レベルが7足りません。魔力が199,972足りません。精神力が584,339足りません。スキル「土操作」Lv17またはスキル「風操作」Lv18、加えてスキル「魔力圧縮」Lv17を習得する必要があります。≫
(ハードルたか―――――いッ!)
「まだまだぁ!「サンダー」!」
≪ポーン! 特技「ポケモン召喚:サンダー」を使用するには、スキル「雷操作」Lv20、スキル「ポケモントレーナー」Lv10を習得する必要があります。ジムバッジが4つ足りません。≫
(ポケモン!? ジムバッジ!!?)
「負けるかぁー! 「マダンテ」ぇ―――――!」
≪ポーン! 究極秘奥義「マダンテ」を使用するには、親友の心臓が必要です。≫
(予想以上にえぐ―――――いッ!)
「く、くそぅ! 「バルス」ゥ!」
≪ポーン! 秘奥義「天の火」を使用するには、性交渉を終えた信頼する女性と手を繋ぐ必要があります。純度90%以上の風石が1t足りません。天空城を所有している必要があります。レベルが90足りません。魔力が(略)精神力が(略)スキル「風操作」Lv(略)。スキル「炎操作」Lv(略)。≫
(ハードルが高すぎる――――――ッ!)
こうやって遊んでいるうちに、何時の間にか魔力が2000以上になっており、そろそろ第二層行くか、と思ったハルマサだった。
<続く>
レベル:10
耐久力:3499 →4627
持久力:6050
魔力 :18280→18488
筋力 :8349
敏捷 :25919
器用さ:17976→23648
精神力:14788→15661
経験値:5118 あと5120
特性
炎耐性
雷耐性
防御術Lv7 :201 →1129 ……Level up!
神降ろしLv10:3342 →9014 ……Level up!
炎操作Lv1 :1 ……New!
雷操作Lv8 :646 →2078 ……Level up!
魔力放出Lv11:12934→13142
□「炎耐性」
火からの刺激(熱)を和らげる、皮膚の機能。炎属性の攻撃に対して、被ダメージが[30+(プレイヤーのレベル)]% マイナスされる。ダメージ減少率が100%を越えた時、特技は昇華する。
□「雷耐性」
雷流への絶縁性を高くする、皮膚の機能。雷属性の攻撃に対して、被ダメージが[30+(プレーヤーのレベル)]% マイナスされる。ダメージ減少率が100%を越えた時、特技は昇華する。
■「炎操作」
炎を制御する技術。魔力を用いて、外界の炎を制御する。熟練に伴い、器用さにプラスの修正。スキルレベル上昇に伴い、制御可能量(規模)が増加する。