<50・変わってないです>
とりあえず、平原である。
陥没しているところがあったりするが、平原だ。
僕の前に光に飛ばされた観葉植物がウネウネしているが気持ち悪いので見なかったことにした。ていうかなんで動いてるの?
そして、僕はさっき思いついたテレパシーが使えないか試してみることにした。
(閻魔様ぁああああああああああああ!)
何も無い。思考だけではダメなのかも。叫んでみた。
「閻魔様アアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
≪ポーン!≫
何か出た!
≪特技「伝声」を使用するには、相手との間に経路を設置する必要があります。≫
ああ、やっぱりアクセサリーじゃダメか……。
でも、これが刺青なら? カロンちゃんなら「伝声」が使えるかも。
せぇの。
≪女神ちゃぁああああああああん! 僕だぁアアアアアアアア! 結婚してくれぇえええええッ!≫
『な、なんじゃ! 幻聴か!? ……もう歳かのぅ……』
(おお、伝わった!)
数秒だが向こうの声も聞こえた。
というかカロンちゃんの年齢って凄く気になる。絶対聞けないけど。
◆「伝声」
叫ぶことで、肉声の届かない遠く離れて居ても声を届ける事が出来る。伝えられる量は両者の精神力に依存する。二者の間に経路が開いている必要がある。
カロンちゃんの精神力が低いはずないから、僕の精神力が高くなれば良いのかな。
その内会話できるようになったりして。
でも、まぁ会話といえば、「神降ろし」があるし。そこまで使うこともなさそう。
まぁ特技の確認も終わり、これから新しい階層に挑むことになるのだが、その前にどうしてもやっておきたい事があった。
魔法習得である。
魔法には、憧れがある。
敵を一撃で壊滅させ、味方を治癒し、仲間を補助する。
そんな魔法はあるのだろうか。
カロンちゃんに聞いてみよう。
耐久力も魔力も、閻魔様が移動させてくれるたびに回復している。
あの方が何か熱いものを注入してくれているんだ! そう思うと震えちゃうぜ!
という訳で「神降ろし」も問題なく使えた。
(カロンちゃーん!)
【…………。】
今日は無言で登場した。
機嫌が悪いのかな。
(何かあったの?)
【何も無いわぃ! あってたまるか!】
やっぱり機嫌が悪いようだ。
そっとしておこう。
(カロンちゃん、敵を一撃で葬ったり出来る魔法ってない?)
【あるぞ。】
カロンちゃんは簡潔に答えてくれた。質問には答えてくれるようだ。
【ただし、貴様の言うような強力な魔法には魔力が多く必要でな。】
(つまり僕にはまだ出来ない、と。)
【例外として、対価を払う方法もある。呪い等は相手から対価を取る事があるゆえ、比較的条件は軽いの。】
(へえぇ……じゃあ桃色の呪いはどうなっているんだろ。)
【桃色?】
カロンちゃんは怪訝そうな口調で聞いてくる。
そういえばカロンちゃんには話していなかったか。というか知らないんだね。閻魔様は天国中の女性を率いたって言っていたけど、カロンちゃんは閻魔様より若いのだろうか。
それか地獄の人なのだろうか。
(実はカクカクしかじかで。)
【ふむ、あの乳袋にでさえかかる呪いか……】
(ところで、カロンちゃんは大丈夫なの? 話をするだけで魅了してしまう特性もあるんだけど。)
【なんじゃとぉ!? ………ぬ、ぬーんッ! ふんなぁッ!】
カロンちゃんの唸り声と共に、頭の中でパリーンと言う音が聞こえる。桃色の鎖が弾き飛ばされた映像も(何故か)見えた。
(え、えーと?)
【ふ、ふふ。見事に捕らえられておったわ。跳ね除けてやったがの。これは巧妙じゃ。レジストする程の違和感を感じさせぬとは……どうりで最近……いや、でもこれは以前から……?】
(最近? 以前?)
【なんでもないわ! 兎角、今までの分は我がかき消したゆえ問題ないが、これ以後、貴様が我を魅了しようとすれば、逆に貴様が我に惹かれることになる。我はそのようなことは好かん。その特性を封印するまでもう話しかけるな。】
(そんな無茶な! 聞きたいことがたくさんあるのに!)
【相談役はハスタァでよかろぅ。我が許す。言っておくゆえ、好きに使え。】
(そ、そう? 君と話せないのは残念だけど、分かったよ。)
【く、違う、これは特性のせいでないというのか……!?】
(カロンちゃん?)
【ええい、話しかけるなというのに! もういい! はよぅ我を呼び出せるようにせぃ! 分かったな!】
(あ、うん。)
【さらばじゃッ!】
バシューンと空に飛んで行く光と化したカロンちゃん。もうとっくに惹かれまくってるけど言わないのが花だよね。
どうでもいいけどなんでカロンちゃんは死神なのに緑色なんだろうなァ……。
それはさて置き、早速「降ろ」す!
足を肩幅に開き、手の平を天にむけて、叫ぶ(心の中で)!
(来ぉいッ! ――――――ハスタァアアアアアアアアッ!)
【ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!】
シュパァアアアアアアアアアアアン!
ノリ良く野太い声で叫びながら降りてきて、僕に乗り移った光は初代「天罰」の精霊(?)ハスターさんです。
色は黄色でした。
(ハスターさんって雷の精霊なの?)
【それは誤りだぁあああああああ。我はぁあああ、最速の神よぉおおおおおお!】
(……韋駄天?)
【さぁな。】
いきなり普通に喋りだした。確かに唸りながら話すのってきつそうだもんね。
【俺は、風・雷を扱う。貴様らがどう呼ぶかは知らん。興味が無い。】
(そうなんだ……。あれ? 火を使ってなかった?)
【お主を丸焼きにしようと思って頑張った。ついやってしまったが、今も反省してない。】
(へ、へぇ……。……そういえばさ、カロンちゃんのこと聞いて良い?)
そう言うとハスタァは突然キレた。
【うるさぃわぁ! だまれぇ! 貴様、少し気に入られたくらいで、良い気になりおッてェ! 体の中から丸焼きにしてくれようかァ!】
すごいテンションの上がり方だった。ビックリしちゃう。
(うわぁ……。)
まぁカロンちゃんのことはいいや。
それよりも……。
魔法の練習をしよう。
この人に教わるのは……すこぶる不安だけど。
(ねぇハスターさん。魔法……あ。)
良く考えたら僕って腕輪してるから桃色トーク封印できてない?
(いや、やっぱりカロンちゃんに頼むからいいや。呼んだり返したりごめんね。)
【き、貴様ぁああああああああああ! 我を犬猫と勘違いしておらぬかぁ!? 覚えておれよぉぉぉぉぉ…………】
(いやホント、ゴメンね!?)
黄色い光はフェードアウトしていった。
今度こそ魔法習得編だ!
<つづく>
神降ろしLv10:2813→3342