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現在、「風操作」が最も上がるのはどういう状況だろう。
風の剣? 風の拳? それとも極・風弾?
ノン! 全てはずれ!
答えは……「風でビームを受け止める」だよ!
グラビモスが咆哮し、その巨大な口を目いっぱい開く。
「ォ゛ア゛ア゛アアアアアアアアア!」
シュキ―――――ン!
200メートル先の鎧竜グラビモスから、高い音をたてて溶岩ビームが発射される。
ハルマサはその前に立ち、腰につけていた手を翳した。
「風・球ッ!」
シュイーンと回っていた風の塊が、炎のビームを受け止める。
バァン!と音がして、均衡する風と炎。
僕は瞬時にその場から逃げ出した。直後風を打ち破り、彼方へと消えるごんぶとビーム。
いや、受け止めるけど、それは一瞬しか無理って言うかね。
精神力僕の数倍は有るようなモンスターと我慢比べするのはちょっと。
「どう!? 熟練度上がった!?」
≪はい。「風球」の維持と、光線を受け止めることで、熟練度が2万ポイントほど上昇しました。レベルも上がっています。熟練度は現在5万ポイントです。≫
「いよぉし! 次はもっと圧縮した「風球」を!」
頑張って圧縮すると「魔力圧縮」の熟練度も上がって魔力も上昇するからお得!
「ぬぉおおおおお!」
キュインキュインと魔力を回し、さっきよりも圧縮され、さっきよりも大きい「風球」を作り上げる。
ふふ、今にも弾けそうだ……!
≪来ます。≫
気化した溶岩を口腔にて圧縮し、嗜好性を持たせて開放させるグラビモス。
気体が電離しプラズマと化し、道筋を溶かしつつハルマサへと迫る。
「だりゃあ!」
バァン!
空気を震わせる衝撃があたりに響き、さっきより0.02秒くらい長持ちして風が射抜かれる。
ハルマサはとっくに熱風の範囲外だ。
「どう!?」
≪上昇値は2万5千ほどです。≫
「よッし!」
そうやって調子に乗りつつ「風操作」を上げていると、サクラさんが≪あ≫と声を出した。
「どうしたの?」
≪マスターが使役した魔物、火竜たちが他の魔物を打ち破ったので、マスターに経験値が4160ポイント入りました。≫
「おお、ナイス!」
≪同時に、魔物の一体も経験値を取得し、強さが上昇しました。≫
「ますます凄い! 多分金ちゃんだと思うけど、そのへん分かる?」
シュイーンと風球を作りながら問うハルマサに、サクラは答えた。
≪定かではありませんが、強さが上昇した魔物は、使役していた中で二番目に強かった個体です。恐らく間違いないかと。そして、さらに同時に起こった事があります。≫
「何? また良いこと?」
≪魅了が解けました。≫
「ダメじゃんッ!」
やばいよ! 子ガニが襲われちゃう!
くそう、なんで僕はこんなところで油を売っているんだ!
「悪いけど、速攻でいくよ!」
ハルマサはボゥ! と「黄金の煌毛」を発現し、髪を金色に染める。なんかテンション上がるのだ。
それだけではない。
右手に魔力の檻を作り、流し込むのは眩い電光!
ハルマサは姿勢を低くして走り出す。
魔力の檻に入りきらない電気が体を覆い、はじける雷光が断続的に空気を弾いてチッチッチと音を出す。
某忍者のアレだね!
「食らえ――――――雷切りッ!」
その瞬間「突撃術」が発動。
赤い光に染まったハルマサは爆発的に速度が高まり、ぶっちゃけ界王拳状態じゃね? と思いつつ、黒いグラビモスに「雷球」を打ち込み―――――手を挫いた。
メキャア!
「はぎゃぁああああああ!」
雷球は表面で弾かれて霧散した。雷無効な装甲だったのだろうか。
というかミラクル堅いぜこのモンスター!
ハルマサは腕がメッキャメキャに折れながら、体を回転させ、背中からぶつかる。
この時特技が発動した。
ハルマサの体が勝手に動き、ズシン、と重く震脚を踏む。
生じた衝撃は背中で爆発。
―――――――通・背・拳ッ!
ドパァン!
衝撃は内部に浸透、グラビモスの胸殻を内側から吹き飛ばす。
そして血が噴出した。
≪新しい特技「通背拳」が発動しました。一定時間全ての特技の使用が不可能になります。≫
ハルマサは、それよりも自分に向かって吹き出る血液に夢中だった。
血液うめー。
濃厚過ぎるッ!
ゴクゴクゴクゴク!
≪目的を忘れていますマスター! あ、概念を得ました。そしてレベルも上がっていました。≫
ついでのように! 結構重要だよ!
でも報告ありがとサクラさ――――ん!
一発で倒せたらしい。
凄い威力だね通背拳。
でも、特技使えないって結構キツイかも知れない。
ちなみに新概念は「濃赤の沸血(フッケツ)」。
敏捷が上がり、炎への親和性が高くなるとか。
ヒャッハー! 弱点減ったぜー!
ハルマサは喜びつつ、黒いグラビモスの死体を引っ張って、樹海へと走るのだった。
<つづく>
通背拳は、エアマスターでも使われていたような気がします。ランキング二位の人とかに。
レベル: 15 → 16 ……Lvup Bonus:81920
満腹度: 126316 → 215181
耐久力: 261687 → 344417
持久力: 125215 → 214090
魔力 : 209782 → 361700
筋力 : 308474 → 404694 ……☆121万
敏捷 : 300952 → 406490 ……☆121万 ……★182万
器用さ: 282238 → 466065
精神力: 113062 → 209024
経験値: 248318 → 330238 残り: 325122
○スキル(上昇値が大きい順)
風操作Lv14 : 35456 → 132803 ……Level up!
魔力圧縮Lv14: 95885 → 135832
魔力放出Lv14: 123343 → 153394
戦術思考Lv14: 83390 → 97432
撹乱術Lv14 : 76320 → 88930 ……Level up!
撤退術Lv13 : 64382 → 76672
鷹の目Lv13 : 37841 → 50021 ……Level up!
心眼Lv13 : 70382 → 81123
剛力術Lv14 : 102234 → 110453
概念食いLv14: 89932 → 97448
雷操作Lv12 : 35280 → 39840
突撃術Lv13 : 76931 → 80993
拳闘術Lv13 : 47832 → 51882
観察眼Lv13 : 74391 → 77849
空中着地Lv13: 78721 → 80743
回避眼Lv13 : 73845 → 75832
PテイスターLv15 : 173024 → 170043
○取得概念
濃赤の沸血
◇「濃赤の沸血」
密度が高く、さらに沸騰するほど熱い血液。その熱は鼓動を早める。発現中は、敏捷に10%のプラス補正、炎への親和性が増し(炎耐性に40%のプラス補正、炎操作のレベルに3のプラス補正)、持久力の減少速度が3倍になる。
◆「通背拳」
震脚と共に背中から剄を放つ技。中位の装甲を必ず貫通。使用後一定時間はすべての特技が使用不可となる。
○「沸血」かつゾンビ状態で火を受けた時の計算。
現在炎耐性は火属性のダメージを46%マイナスなので、「沸血」状態になると86%マイナス。
100のダメージが14になり、それがゾンビの効果で25倍。
14×25=350なので、火のダメージは3.5倍となります。