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No.19255の一覧
[0] 【習作】マイナー武将は平穏の夢を見るか【恋姫無双・転生・TS・オリ主・ネタ?】[HTAIL](2010/06/09 11:22)
[1] 第二話[HTAIL](2012/01/11 12:17)
[2] 第三話[HTAIL](2010/06/23 10:20)
[3] 第四話[HTAIL](2010/07/06 11:17)
[4] 第五話[HTAIL](2010/07/06 11:21)
[5] 第六話[HTAIL](2012/01/11 12:18)
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[19255] 第五話
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Date: 2010/07/06 11:21

 マイナー武将は平穏の夢を見るか



 第五話



 温恢が女官に扮して宮中に潜り込み早数日。
 意外なことに張譲の隠し部屋があると思われる建物の調査は順調に進んでいた。

 それもこれも、セキトの働きが大きい。
 温恢のお腹に括りつけられた袋の中にいるときはじっと動かずに耐え忍び、怪しい匂いなどを発見したときは身じろぎなどで知らせて声を出さない。
 深夜、こっそりと寝所を抜け出した温恢と二人(というか一人と一匹)で探索するときも鋭敏な嗅覚と聴覚で的確に補佐をする。
 僅か半日あまりの特訓でここまで優れた探索犬となってしまったのだから「武将のみならず仔犬までチートなのかこの世界っ!?」と温恢が内心驚嘆していたのもむべなるかな、である。

 さて、一通りの探索を終え、空白だった見取り図も大半が埋まった。董卓の匂いを覚えたセキトの反応を見ると、今までに埋めた場所の中に董卓が幽閉されている隠し部屋へ続く通路があるようだ。
 ならばこれ以上の探索はもはや必要ない。今後の活動方針を決めるため、再び華雄邸に集まった。

「隠し部屋に通じてると思われる扉は見つけました。ここの本棚です」

 見取り図の一点。張譲の私室にある本棚を指す。その本棚が配してある壁の向こう側は空白だったが、他の部屋の配置などを鑑みると明らかに不自然な空白だった。

「この扉の開け方までは流石に調べられませんでした。おおよその察しはついてますが、うっかり開けると兵の詰め所で鈴が鳴る、とかそういう仕掛けがないとも限りませんので試してません」

「警戒しすぎではないのか?」

「いいえ、それでいいわ。月の安全を考えると迂闊な動きは出来ないし。それで、この部屋に出入りしている人間については?」

「一日に二度、食事を運ぶ女官と護衛の兵士が。兵は交代制なのでしょうね、部屋に入った者と違う者が出てくるのを確認しています
 ただ、張譲の手勢はそう多くないのでしょう。入退室の顔ぶれが一定間隔で一巡しています」

「数はわかる?」

「仲穎さまの見張りとして二人。それを含めて十人くらいではないかと推測してます」

 ここで言う手勢とは張譲が『私室の隠し部屋に誰かを閉じ込めている』ことを知っている兵士のことを指す。女官も含めればもう少し数が増えるが。なお、幽閉されているのが董卓であると知っているかどうかは不明である。
 もちろん、張譲が直接動かせる兵数はもっと多い。しかし宦官である彼には直接兵力を握る権限は無いし、そもそも死んだことにして身を隠しているのだからおおっぴらには動けない。

「となると……ここは強襲をかけるべきかしらね?」

「そうですね。華雄さまの武力と文和さまの策。それにこれらの情報があれば」

 温恢が調べた情報の中には、当然のことながら兵士の配置や巡回経路なども存在していた。

「いけるわね。よし、それじゃあ華雄。あんたの武力、頼りにさせてもらうわよ!」

「ぅん!? お、おう! 大丈夫だ、寝とらんぞ!」

「……あんたねぇ」

「……華雄さま」

「い、いや、本当に大丈夫だから! 傷も大分良くなったし!」





 *





「それではー。春麗さんの再就職先決定を祝してー」

「「「「「かんぱーい」」」」」

 手にした杯が打ち合わされる。女官たちの宿舎では今現在、ちょっとした宴会が開かれていた。
 数日前にやってきた新入りの春麗が他の職場に移ることとなったのだ。なんでも、乳母を捜している貴族の屋敷に奉公に行くことになったらしい。
 せっかく仲良くなれてきたところだった矢先にこの話が持ち上がったのは残念だったけれど、此処で女官の仕事を続けるよりもずっと待遇も良いようなので快く送り出してやろう。
 そう考えた同僚たちがささやかながら送別会を開いてくれることになったのだ。

 もちろん温恢がでっち上げた嘘経歴なのだが。
 お人よしな彼女たちをだまくらかすのはいささか気が引けるものの、こちらも主の命、ひいては自分の命やら立場やらが掛かっているので致し方ない。

 そして一刻(約二時間)後。宴に参加した女官たちは皆、賈駆が調達してきた薬入りの酒で深い眠りへと落ちる。

「さて、次は……っと」

 今度は詰め所の兵を無力化するために移動する

「おお、春麗さん。どうしました、宴会だったのでは?」

「こんばんは、隊長さん。
 みんな主役をほったらかしにして騒いだ挙句寝てしまったんですの。おかげさまで時間が空いてしまいまして。
 それでまあ、お世話になったお礼ついでに差し入れを、と思いまして」

「おやおや、それはかたじけない」

「やった! 酒だ!」

「まさか。果実水ですよ。お仕事中の人にお酒を差し入れるわけにはいきませんから」

 果実水(果汁を水で割ったもの。嗜好品)が入った壺を掲げてみせる春麗にえー、と若い兵士が不満を漏らすも言ってることは至極正論なので文句のつけようも無い。

「ではわたくしはこれで」

「わざわざありがとうございます」

 詰め所を離れる……と見せかけて、近くの物陰に潜んで様子を伺う。もちろん、あの果実水も賈駆御用達のクスリ入りである。
 と、一人の若い兵士が詰め所を離れてこちらへ向かってきた。なにか怪しいところでもあったか?
 そう自問しながらも、ここでこの兵士を見逃すのはまずいので自分が居る場所を通り過ぎたところで背後から不意打ちの延髄切りを食らわせて気絶させる。倒れた兵士を隠れていた物陰に引きずり込み、彼の衣服を使って拘束。
 そのまましばらく詰め所の様子を伺うも、特に騒ぎは起こらずに静かになった。どうやらあの場に居た兵士は皆果実水を飲んで昏倒したらしい。
 ならばこれ以上ここにとどまる理由は無い。その場に拘束した兵士を放置して今度は通用門へ。巡回中の兵が詰め所に戻ってくる前に華雄たちを引き入れねばならないのだ。



 ちなみに、気絶させられた兵士は下心があって春麗を宿舎まで送ろうとしていたのだが、温恢はそんなことにはまったく気がついてなかった。
 彼の名は李間。「女は人妻か未亡人に限る」と豪語するなかなかにどうしようもない業を抱えている彼は、後に紆余曲折を経て劉備軍に参加。
 そこで一目惚れした黄忠に熱烈な求愛行動(ストーカー行為とも言う)をとるもことごとく孟獲とそれを支援する厳顔に妨害され、非常に低次元な暗闘を繰り広げるのだが、それはこのお話には関係のないことである。





「あの人、なんだったんだろうね、セキト」「わふん?」





 *





 通用門の門番二人も不意打ちであっさりのしたあと、少し離れた場所で待機していた華雄と部下五人を招き入れる。
 賈駆と残りの部下はまた別の場所で脱出用の馬車を用意して待機している。

「さて温恢。場所は何処だ」

「こちらです。ああ、走らずに急ぎ足でお願いしますね。走ると足音が響きますから。
 走るのは仲穎さまを救出した後、逃げるときに全速力で」

「うむ」

 ややあって張譲の私室へたどり着く一行。
 部屋の前にも見張りがいたが、これも温恢の不意打ちとそれに連携した華雄の一撃でさっくりと排除。即、扉を蹴り開けて部屋に踏み込む。

「き、貴様っ! 華雄! 何の真似だ!」

 寝台から身を起こした張譲に華雄が己の得物、金剛爆斧を突きつける。

「知れたこと。董卓殿の身柄、返してもらうぞ」

「何を……っ! 誰かあ 「はいお静かに」 ぐっ!?」

 声を上げ、人を呼ぼうとする張譲をこっそりと近寄った温恢が絞め落し手早く縛り上げる。
 目が覚めても声を上げられないように固く絞った布を口に捻じ込んで猿轡を噛ませる事も忘れない。

「……おい温恢……」

「文句は後で。さ、華雄さま。あの本棚をぶち破ってください」

「いいのか? 大きな物音をたてては人が来るのではなかったか?」

「ただの物音と人の呼び声とでは兵が駆けつける速さが違いますから、余裕はありますよ。
 それに、どうせ中の見張りには気づかれてるでしょうから。不意を突く為にもちょっと派手めにいきましょう」

「そういうことならば……ぬぅんっ!」

 華雄が振るった金剛爆斧は棚に見せかけた扉をたやすく打ち砕き、破片を中へとぶち撒ける。
 異変を感じて身構えていた兵士もこれには対応できず、直後に踊りかかった兵士にあっさりと制圧された。





「無事か、董卓殿」

「かゆう……さん……?」

 見張りの兵士を排除し、据えつけられている牢へと向き直る華雄。
 中には儚げな容貌の少女がびっくりした表情でこちらを見ていた。

「助けに来た。賈駆殿が逃げる準備をしている。さっさと行こうか」

「詠ちゃんが!?」

「ああ、ひどく案じていたぞ。あやつを安心させてやるためにも、早く帰るとしよう。温恢!」

「はい。鍵見つけてきました。仲穎さま、ちょっと失礼しますね」

 張譲の部屋からくすねてきた鍵束の中から目当てのものを見つけ出すと、あっさりと牢の扉は開いた。

「はじめまして、仲穎さま。私は文和さまにお仕えしている温恢という者です。立てますか?」

「はい……。あの、ありがとうございます」

「いいえ、どういたしまして」

 董卓の手をとって牢の外に連れ出すも、虜囚生活で筋肉が衰えているのかふらりとよろける。
 その様を見て取った温恢はとりあえず部下の一人に彼女を背負わせることにした。

「温恢、張譲はどうする」

「そうですね……。ここに置いていって変な証言とかされてもことですし……浚っちゃいましょうか」

 かくして、背に負われるものが二人に増えた。





 *





 あらかじめ調べていた巡回経路と眠らせておいた兵士たち。それらの下準備の甲斐あって、宮中からの脱出は上手くいった。
 今、一行は賈駆たちが馬車を用意している合流地点へと急ぐために裏道を走っていた。しかし、この道を選択したのは間違いだった。いや、どちらかというと間違ったというよりは運が悪かったというべきか。
 なにせ夜間の見回りをしているはずの兵士たちが纏めてサボっているなんて誰も思わないし、そいつらがこんな裏道でたむろしているなどとも予想できるわけが無い。結果として兵士の一団に囲まれる羽目になっていた。

「おいおい姉ちゃんたち、こんな夜更けに何処に行くんだい? 怪しいなぁ~。ちぃと、詰め所まで来てもらおうか」

 にやにやといやらしい笑みを浮かべて代表と思しきむさい男が声を掛ける。周囲を取り囲んでいる連中も下卑た薄ら笑いを顔に貼り付けている。
 状況としては一本道の前後をふさがれた形だ。前方に十人ほど、後方にも五人ばかり。道幅はかなり広く、三人くらいなら広がって戦えるだろう。
 
 この場を切り抜ければ集合場所まではもう少し。時間もそう掛けられない。ならば戦って状況を打破するのみ。
 そう判断すると華雄は温恢に一声掛けて前方の集団に飛び込んだ。

「温恢! 董卓殿を守れ! 後方は任せる!」

「はい! 私と後二人で後ろに壁を作りますよ! 残りは真ん中で仲穎さまの護衛!」

 ざっくりとした指示を出すと温恢は董卓を背負ってる兵士から借り受けた剣を引き抜く。
 と、同時に敵兵士が切りかかってきた。右手に持った剣で軽くいなして体勢を崩した所に味方の一撃が決まって倒れ伏す。

「てめぇ、やりやがったな!」

 仲間をやられて激昂したのかさらに襲い掛かってくる兵士。今度はいなせずに受け止めるも、まずい、と判断する。
 華雄もそうだが、温恢も汜水関で受けた傷は治りきっていない。左腕は折れててまだ添え木が外せないし、右腕は大分マシだがまだ少し痛む。
 加えて、いま切り結んでいる相手は後方の兵士連中の中では腕が立つようだ。普段なら討ち取れようがいまの体調ではかなり梃子摺りそうだ。


 ザシュッ!


「あっ」

 余計なことを考えていたからか、胸元を軽く切り裂かれる。とっさに一歩下がったため切られたのは布一枚だが、大きく胸元がはだけて下着と谷間が見えている。

「へへへっ、いい乳してんじゃねぇか。ちょっと待ってろ。その乳たっぷり揉みしだいて天国に連れてってやるからよ」

 ねっとりとした視線に思わず胸元を押さえた温恢の左右で戦っている部下たちから怒号が飛ぶ。

「てめぇ、何言ってやがる!」 「そうだそうだ! 温恢様をやらせるかよっ!」

「あなたたち……

「あの乳は我らが至宝!」 「そう、『呂布様派』や『張遼様派』といった『美乳党』に押される我ら『巨乳党』に、天が遣わせてくださった希望の星なのだ!」

        ……あとでおぼえてろよ」

「大丈夫です温恢様! 俺はそんなことに関係なくお慕いしてます!」

 思わず左右の部下をあとでど突きまわそうと決心していた温恢に、董卓と張譲を庇わせている兵士からフォローの声が掛かる。

「だって俺、『陳宮様派』ですから!」

「あなたは後で処刑。宮刑あたりで」

 董卓と張譲を背負っている両名が思わず彼から一歩離れても誰も責められまい。





「うらっ!」

「なんのっ!」

 ギンッ! ガンッ! と、そんな漫才じみたやり取りの間にも温恢と敵兵の斬り合いは続いていた。
 左腕を怪我しているのに気づいたのか、敵は執拗に左手側を狙ってくる。剣を握る右手も、痛みと疲れで握力が落ちてきた。

 このままではまずい。

 そう考えた温恢は賭けに出る。

「そらよっ!」

「ああっ!?」

 さらに何合か打ち合わせた後、温恢の手から剣が弾き飛ばされる。
 男が勝利を確信した瞬間、温恢は胸元に手をやり、



 ビビィーーーーーッ!

 一気に服を引き裂いた!



「ををっ!?」

 当然、そのたわわな乳房は外気に晒され、ばるん、と派手に揺れる。
 男が思わず目をやったその隙に、温恢は拳を、

 正確には、添え木代わりに左腕に括りつけておいた短剣の柄を、男の眼窩に抉り込む!

「ぎゃああっ!?」

 思わず顔を抑えてのけぞる男に金的蹴り。今度は股間を押さえる男の髪を引っ掴んで頭を押し下げる。
 そうして、背中に覆いかぶさるようにして胴に腕を回し、右手でしっかりと左手首を掴む。

「ふんぬぁっ!」

 と、大根を引っこ抜くかのように勢いよく相手を抱え上げ、反動で相手は半回転。温恢の肩の上に尻が乗っかるような形になる。
 その勢いを保ったまま、自分も前に身を投げ出し、体重を掛けて相手の体を振り下ろす!

「死ぃねよやぁっ!」

 二人分の体重、腕力、遠心力、重力加速度もろもろをのせて……相手の後頭部を地面に叩きつける!





 ぱぐしゃっ





 一瞬、場が静まり返る。ゆらりと温恢が立ち上がる。

 口角を吊り上げた恐ろしげな笑顔で残る敵兵に向き直り……。

「つぎは、どいつだ?」

 その一言で生き残っていた敵兵は逃げ去った。





 *





「お゛お゛お゛お゛お゛っ!? うでが!? うでがいたい!!」 

「お、温恢様っ!?」

「大丈夫ですか!?」

「だ、だいじょうぶ!? だいじょうぶだよ!?」

 とてもそうは見えない。

 ともあれ、後方の連中は片付けた。
 急ぎ前方で孤軍奮闘している華雄さまの援護をしなければ、と気を取り直した温恢が前方を見てみれば……。

「おお、そっちも片付いたか温恢」

 とてもいい笑顔で金剛爆斧にこびりついた血や臓物を振り払っている所でした。
 周囲は血の海という表現がぴったりくる有様で、どうやら逃げられた兵は一人もいない様子。

「あ、あれ? もう片がついたんですか?」

「うん? 当たり前だ。いくら手負いとはいえこの猛将華雄。雑魚の十人二十人など物の数ではないわ!」

「あ、そうですか。どうということはないですか……。私、あいつ一人しとめるのに結構苦労したんだけどなぁ……」

 微妙に凹んだ様子の温恢に不思議そうな顔をして。

「よくわからんが……まあいい。行くぞ!」

「「「「「「はっ!」」」」」」

 合流場所に向かって駆け出す。





「あの……その前に温恢さんの格好をどうにかしないと……」

「あ、そういえば乳剥き出しでしたね私」

「おお、そういえばひどい格好だな」

((((ちぃっ!))))

 董卓の指摘にとりあえず着ていた上着を脱いで適当に引き裂き、胸に巻いてチューブトップ状にして間に合わせると今度こそ集合場所に向けて走り出した。









 あとがき
 ども、作者のHTAILです。
 私生活が忙しかったり難産だったりで遅れてしまいました。楽しみにしていてくださった方々には申し訳ありません。

 今回もさっくり風味。多分次回かその次位に反董卓連合編が終わります。
 そのあと拠点イベント編をいくつか書いて、そのあとは萌将伝が終わるまで充電期間ということにさせていただこうかと。

 それではこれにて。ありがとうございました。

 


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