<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

チラシの裏SS投稿掲示板


[広告]


No.19251の一覧
[0] (習作)ハラペコ転生記(多重クロス なのは、東方、他)[ニガウリ](2010/08/04 17:31)
[1] プロローグ~長い夢の始まり[ニガウリ](2010/06/02 16:04)
[2] 第一話 ハラペコなハジマリ[ニガウリ](2010/07/04 16:46)
[5] 第二話 吸血鬼[ニガウリ](2010/07/04 16:47)
[6] 第三話 紙芝居[ニガウリ](2010/07/04 16:48)
[7] 第四話 妙神山[ニガウリ](2010/07/04 16:48)
[8] 第五話 箱庭[ニガウリ](2010/07/04 16:49)
[9] 第六話 異界からの贈り物[ニガウリ](2010/07/04 17:21)
[10] 第七話 苦行[ニガウリ](2010/07/04 17:26)
[11] 第八話 猪狩り[ニガウリ](2010/07/04 17:25)
[12] 第九話 時の庭園[ニガウリ](2010/07/04 16:52)
[13] 第十話 アースラ七不思議[ニガウリ](2010/07/04 17:24)
[14] 第十一話 上陸[ニガウリ](2010/07/05 00:32)
[15] 第十二話 第一次無限書庫戦争[ニガウリ](2010/07/08 20:25)
[16] 第十三話 ヴォルケンリッターといっしょ[ニガウリ](2010/07/11 18:19)
[17] 第十四話 ディナー[ニガウリ](2010/07/15 01:08)
[18] 第十五話 吸血鬼の求婚[ニガウリ](2010/07/18 09:28)
[19] 第十六話 チープ味覚ツアー[ニガウリ](2010/07/25 22:44)
[20] 第十七話 駅弁の旅[ニガウリ](2010/08/04 17:19)
[21] 第十八話 吸血鬼対決[ニガウリ](2011/01/10 11:49)
[22] 第十九話 試合観戦[ニガウリ](2011/05/25 13:22)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[19251] 第三話 紙芝居
Name: ニガウリ◆92870b4e ID:68c9a700 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/07/04 16:48
   


第三話 紙芝居



 静まり返った薄暗い部屋。

 唯一の光源は何本かの蝋燭のみ。

 ジリジリと蝋燭の炎が燃える中、部屋にひしめく十数人の男女が怯えるように手をとりあい、微かな音すら聞き逃すまいと耳を澄ませる。


 まさかまさか。こんな恐ろしいことが、恐ろしいものがこの世にいるなんて。

 まさかまさか。信じられない。信じたくない。


 怯える彼等の願いは空しく否定され、より大きな絶望が襲う。

 恐怖に震える彼等に更に追い討ちをかけるかの様に、声が響く。


 知られざる事実。
 知りたくなかった真実。
 知ってしまった秘密。
 

 彼等は後悔していた。


「……黎明。何をしている」

「ああ、ハジメ様!私、ハジメ様に盾突いた愚か者がいると聞きまして、こうしてハジメ様の空腹記を教えているのです」

「黎明。貴方、何時の間にここに来たのよ……」

「おや、我が同士」

「誰が同士よ!?」

「何をおっしゃる。ハジメ様の食事係りなる崇高な使命を担う同士ではありませんか」

「いらないわよ、そんな使命」

「む。この使命の崇高さが未だ分かっていないようですね。そんな事では真の食事係にはなれませんよ」

「なれなくて良いわよ」


 目の前に居る三人の男女。

 いずれも強い力のある存在で、内一人は何もかもが超越してしまっている。


 彼等、吸血鬼達は心底後悔していた。

 この、幻想郷に来てしまったことに。



   *   *



 真祖を喰い、妖怪達を適当な場所に捨て、吸血鬼達をある一室に閉じ込めた翌日。
 ハジメ達は吸血鬼達に話を聞くため、吸血鬼達を閉じ込めている部屋に向かい、意外なものを目にした。

 自転車の荷台に載った大きな木箱。上部に取り付けられてる蓋のような物。それを立てれば、なにやら小さな劇場のように見える。劇場で上演されるのは紙面で繰り広げられる物語。物語の後には、木箱に詰まっているお楽しみ、駄菓子の登場となる。

 そう。それは、まごうことなき『自転車紙芝居屋』であった。

 とりあえず、やることは一つである。

「おい、黎明。駄菓子全部よこせ」

「……ハジメ様。まず、黎明の格好に突っ込みましょうよ」

「はっはっは。ハジメ様、それは紙芝居の後にしていただかないと」

「あんたも何普通に対応してるのよ」

「なら、奪うのみ」

「ぶげふぅっ!?」

「れ、黎明ぃぃぃっ!?」

 自転車紙芝居屋に扮した黎明を殴り飛ばし、駄菓子の入った木箱を漁るハジメ。何故か恍惚とした表情で地に沈む黎明。それにどん引く紫。そして、部屋の隅に固まり、怯える吸血鬼達。
 場は混沌としていた。

 とりあえず黎明を放置し、紫は吸血鬼達に近寄る。

「代表者は誰?」

「私だ」

 そう言って立ち上がったのは、オールバックの美男子だった。

「私はスキマ妖怪の八雲紫よ。貴方は?」

「私の名はカルロ・ド・ブラドーだ」

 少々青ざめながらも、しっかりとした受け答えをする。ただし、向こうで駄菓子を貪るハジメを視界に入れようとしない。黎明は一体何を吹き込んだのやら。

 呆れを含んだ目で黎明を流し見、視線をカルロに戻す。

「貴方達は何故幻想郷へ?」

「……住んでいた所が住み難くなったのだ。所謂、時代の所為だな」

「時代の所為?」

「ああ。今、ここに居る我々は人肉を好み、血を啜って生きている。だが、我々以外は進化というべきか、退化というべきか。力が弱まった変わりに、人間の血を少量飲むだけで生きることが出来るようになった。ある者に至っては薔薇の精気のみで生きることが出来る」

「へぇ……」

「我等、人肉が無くては生きて行けぬ者は今や少数。故に、我等は新たな地に移り住むことにしたのだ」

「それが幻想郷だったのね」

「そうだ」

 紫は暫し黙考し、言う。

「幻想郷は貴方達を受け入れるわ。ただ、今回の様な件はハジメ様が出ずとも、遅かれ早かれ支配を望まない妖怪に叩き潰されてたでしょうね」

「……ああ、そうだろうな」

 紫達の襲撃は日の高い吸血鬼の最も苦手な時間帯で、いくらか弱体化していたとはいえ、紫達の強さを肌で感じたカルロは素直にそれを認めた。

「それで、幻想郷に住むのは構わないんだけど、一応ここにもルールが存在するのよ。好き勝手やられちゃ困るのよね」

「我々は今回の件で敗者となった。勝者たる貴殿等の要求は出来る限り呑もう」

「それは、どうも」

 紫とカルロは話し合い、意見をぶつけ、折り合いをつける。
 吸血鬼達は食糧となる人間の供給を受ける代わりに、その行動にはさまざまな禁止事項が設けられることとなった。
 これは後に『吸血鬼条約』と呼ばれるようになった。

 どうやら、いくらか緊張が解けたらしい吸血鬼達は思い思いに何処へ住むか、これからどうやって暮らすか、と話し合っている。
 そんな吸血鬼達を横目に、紫はカルロに尋ねる。

「ところで、貴方達は何で真祖と一緒に居たの?」

「ん?そんなに不思議な事ではあるまい」

「だって、真祖よ?妖怪の天敵じゃない」

「ふむ……。ああ、成程。どうやら貴殿は何か誤解しているらしい」

「?」

「確かに我等吸血鬼にとっても真祖は天敵だが、堕ちた真祖は我等とは力の大きさこそ違えど同類となる」

「同類……」

「堕ちた真祖が築く血まみれの道は、実に我等好みだ。まあ、真祖と拮抗する実力のある吸血鬼でなければ、支配下に置かれることになるがな」

「ふぅん。知らなかったわ」

「ふむ。俺も知らなかったな」

「ハジメ様が知らなければ、私も当然知らない――って、何時の間に……」

 紫の真横に、気配も無くハジメが立っていた。手には水飴が握られており、もっちゃもっちゃと水飴を練っている。懐は駄菓子でいっぱいだ。
カルロは青白い顔色を更に悪くさせ、ハジメに視線を向けた。

「……貴殿が世界の根源ですか?」

「おう。その通りだ。黎明から何を聞いたかは知らんが、あんまり気にするなよ」

 カルロは、それは絶対無理だ、と思った。
沈黙するカルロにハジメは尋ねる。

「ところで、カルロにはちょっとアホな親族は居ないか?」

「アホ…ですか……?」

「おう。ペストを流行させた世界征服を企むアホだ」

「…それなら私の弟かと」

「お、やっぱり親族だったか。顔がそっくりだったから、そうじゃないかと思ったんだ」

「ペストを流行させたって、それってブラドー伯爵ですか?え、あのドクターカオスに敗れた、あの?」

 紫は興味津々、といった体で身を乗り出す。
 対するカルロは眉間にしわを寄せて、苦々しい表情だ。

「どうにも、弟は箱入りで育ってしまいまして。未だに世界は平らだと思っているし……」

 何やらぶつぶつと愚痴を言い出したカルロは、どうやら柔軟な思考の持ち主らしい。幻想郷を支配しようとする所はブラドー伯爵を彷彿とさせるが、それは真祖がバックにおり、且つ妖怪達の意欲の低下も考慮してきちんと機を見て行動している。そこが確実にブラドー伯爵とは違う。
もしかするとブラドー伯爵は柔軟さを全部カルロに持っていかれたのかもしれない。

「ドクターカオスを見物に行ったら、偶然見かけてな。力はまあ、そこそこあったな」

「へえ…。けど、ハジメ様。ずるいじゃないですか、私もドクターカオスを見てみたいのに」

 羨ましがる紫に、カルロは不思議そうに尋ねる。

「貴殿はスキマ妖怪なのだろう?見に行くのは簡単じゃないのか?」

「普通はね。けど、ドクターカオスが自分に刻んだ魔方陣の所為で上手く場所を特定できないのよ」

「ほう……。元は人間の癖に、中々の人物なのだな」

 感心するカルロは、自分の弟が敗北した事については全く興味が無いらしい。それよりも、妖怪でも上位の力をもつ紫が、相性もあるのだろうが、元は人間であるドクターカオスに遅れをとっている事に関心があるようだ。

「カオスは天才だからな。今、この世に頭脳でカオスに勝る奴は居ないだろうな」

 後にボケ爺となるカオスだが、この時代では確かに天才錬金術師の名を欲しい侭にしている。

 とりあえず、ハジメはこの世界に『GS美神』が混ざっていたのは知っていたが、カオスがあれ程の人物だとは思わなかった。正直、ボケ爺のカオスも嫌いではないが、あまりに勿体ない。『GS美神』の原作が終わったあたりでカオスの脳の容量を増やしてみようかとも考えているのだが、所詮予定は未定だ。

「まあ、とりあえずブラドー伯爵は自分の領地で静養するらしいぞ。もしかすると、カルロに甥とかが出来るかもな」

 練り終わった練り飴を食べながら、ハジメは話をそう締めくくった。
 自分が確認している各物語が本格的に動き出すのは少なくとも八百年は先だ。ハジメはその時を楽しみにしつつ、懐から取り出した新たな練り飴を練るのだった。









前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.022939920425415