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No.19251の一覧
[0] (習作)ハラペコ転生記(多重クロス なのは、東方、他)[ニガウリ](2010/08/04 17:31)
[1] プロローグ~長い夢の始まり[ニガウリ](2010/06/02 16:04)
[2] 第一話 ハラペコなハジマリ[ニガウリ](2010/07/04 16:46)
[5] 第二話 吸血鬼[ニガウリ](2010/07/04 16:47)
[6] 第三話 紙芝居[ニガウリ](2010/07/04 16:48)
[7] 第四話 妙神山[ニガウリ](2010/07/04 16:48)
[8] 第五話 箱庭[ニガウリ](2010/07/04 16:49)
[9] 第六話 異界からの贈り物[ニガウリ](2010/07/04 17:21)
[10] 第七話 苦行[ニガウリ](2010/07/04 17:26)
[11] 第八話 猪狩り[ニガウリ](2010/07/04 17:25)
[12] 第九話 時の庭園[ニガウリ](2010/07/04 16:52)
[13] 第十話 アースラ七不思議[ニガウリ](2010/07/04 17:24)
[14] 第十一話 上陸[ニガウリ](2010/07/05 00:32)
[15] 第十二話 第一次無限書庫戦争[ニガウリ](2010/07/08 20:25)
[16] 第十三話 ヴォルケンリッターといっしょ[ニガウリ](2010/07/11 18:19)
[17] 第十四話 ディナー[ニガウリ](2010/07/15 01:08)
[18] 第十五話 吸血鬼の求婚[ニガウリ](2010/07/18 09:28)
[19] 第十六話 チープ味覚ツアー[ニガウリ](2010/07/25 22:44)
[20] 第十七話 駅弁の旅[ニガウリ](2010/08/04 17:19)
[21] 第十八話 吸血鬼対決[ニガウリ](2011/01/10 11:49)
[22] 第十九話 試合観戦[ニガウリ](2011/05/25 13:22)
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[19251] 第十六話 チープ味覚ツアー
Name: ニガウリ◆92870b4e ID:68c9a700 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/07/25 22:44


   第十六話 チープ味覚ツアー



 それは、とある午後のこと。

「ラーメンが食いたい」

 ハジメは突然そう思った。

 食べたいものは、ただのラーメンではない。

 学生達が愛用するような、安くて美味いラーメンが食いたいのだ。

「よし、ちょっと行ってくるかな」

 そう言って、ハジメは出掛けたのであった。



   *   *



「待てぇぇぇぇ!!」

「マコラー!!」

 日本でも有数の力の持ち主、GS界での有名人、GS美神令子は友人(?)である、六道冥子の式神を追っていた。

「横島君、冥子はどうしたのよ!?」

「いや、今はマコラ!マコラが先でしょ!?」

 美神の隣を走るのは、アルバイトの横島忠夫だ。美神の色香に惑わされ、激安の賃金で美神にこき使われているのだが、本人は不満はあるようだが、それでも辞めないのだから、それで良いのだろう。

「あ、美神さん!マコラ、あそこの角を曲がりましたよ!」

 美神のすぐ横を飛ぶのは、巫女さん姿の幽霊、おキヌだ。
 美神に成仏させてもらうために、現在、美神の元でアルバイト中である。

「マコラー!いい加減、観念して……って、ええ?!」

「なんだぁ?!」

「マコラ?!」

 曲がり角を曲がり、美神達が見たものは、紺色の甚平を着た少年と、その少年に頭を鷲掴みにされたマコラだった。

「?!!?!」

「あん?なんだ?これ、あんた達のか?」

 必死になってもがくマコラに対し、少年は涼しい顔をしてる。

「ああ、助かった。そのマコラは…」

「横島君、離れて!近づいちゃ駄目!」

 横島が安堵して少年に近づこうとするが、それを美神の鋭い声が制止する。

「え?美神さん?」

「その子、只者じゃないわ」

 美神は鋭く少年を睨み付ける。

 少年が掴むモノは、あのマコラなのだ。マコラは鬼であり、その力は人間など軽く凌駕する。
 見たところ、少年は霊力を手に込めているわけでも、特別な道具を使っているわけでもなさそうだった。この少年、只者ではない。

「なんだぁ?こいつ、あんた達のモノじゃないのか?」

「あ、いや!俺達のじゃないけど、知り合いの人のなんだ!」

 訝しげな少年の問いかけに、横島は慌てて答える。

「そうか。それじゃあ、ほれ、連れて行きなよ」

「お、おう。サンキュー」

「おい、お前。大人しく主人の元へ帰れよ。でないと喰っちまうからな」

「!!!!!」

 マコラは怯えた様子で美神の後ろへ隠れ、ガタガタと震えている。

「ちょ、ちょっとマコラ!?」

「!!!」

 マコラは美神にしがみついて離れない。

「んなぁ!?おい、マコラ!離れろ!羨ましいだろうが!!」

 マコラは首を横に振って、涙目になっている。

「ああ、もう。仕方ないわね」

 美神はマコラを剥がすのを諦めて、少年に向き直る。

「とりあえず、お礼を言っておくわね。ありがとう」

「どういたしまして」

 少年の返答はそっけないものの、その視線は美神から外れない。

「はっ!?駄目だぞ!美神さんの乳は俺のもんじゃぁぁぁ!!」

「誰の何がお前のものだぁぁぁ!?」

 そう言って美神の胸めがけてダイブする横島を、美神が張り手をかまして吹き飛ばす。

 壁に激突した横島を美神は放置して、おキヌと共にマコラを連れて去って行った。

「おい、大丈夫か?」

「こ、こんな事で俺の情熱は折れない…」

 派手に額から血を流しているが、元気そうである。

「なあ、お前、名前なんていうんだ?」

「あ?俺か?俺の名前は横島忠夫だ」

「そうか、横島か」

 少年は納得するような仕種を見せ、言う。

「俺の名前はハジメだ。なあ、横島。美味いラーメン屋、知らないか?」

 まさか、この目の前の少年が、想像もつかない大物中の大物である事など、横島は思いもしない。

 これが、横島とハジメのファーストコンタクトであった。



   *   *



「いやー。悪いな、俺まで奢ってもらっちゃって」

「別に良いぞ。他にも店を教えてもらえればな」

「よし、任せろ!次は、駅前にあるラーメン屋だ。あそこは、ラーメンも美味いが、炒飯が一番美味いんだ」

「ほーう」

 ハジメと横島は、すっかり意気投合し、ラーメン屋を回っていた。

 そして、横島のお勧めの店に入ってみると…。

「あら、ハジメ様」

 何故か紫が居た。

「紫?何でここに?」

「うおぉぉ!綺麗なねーちゃん!!」

 興奮する横島をよそに、こそこそと紫がハジメに耳打ちする。

「ここ、妖怪が店を出してるんです」

「ああ、成程」

 そう言って納得するハジメの背を、横島がつつく。

「ああ、はいはい。紫、こいつは横島。んで、横島、こいつは紫だ」

 ハジメは、とても大切な部分を省いて二人をそれぞれに紹介する。

「はじめまして、美しいお嬢さん。横島忠夫です」

「あら、ありがとう。私は八雲紫よ」

 キリッとした表情を作って自己紹介する横島に、紫は笑顔を返す。

 ご機嫌で席に座る横島に気をつけながら、ハジメは紫に聞く。

「まさか、ここで人肉を使ってるなんて事はないよな」

「大丈夫ですよ、使っていません。あまり栄養にはならないけど、美味しいから通っているだけですから」

 その返答に、ハジメは安堵する。

 正直、人肉を出そうが出すまいがハジメには関係ないのだが、街中で堂々とそんな物が出されていたら嫌だ。それも、横島がそれを食べていたら、物凄く嫌だ。

「ハジメ様、あの人間を気に入ったんですか?」

「なかなか、面白い人間だぞ」

 そう。ハジメは横島が気に入ったのだ。

 これほど素直で、真っ直ぐな人間は珍しい。

 人間の三大欲求の一つにやたらと傾いているようではあるが、こそこそしていないぶん、そこに厭らしさはなく、人の苦笑を誘う。

 人間的魅力に溢れた人間と言って良いだろう。

「アラ、横島サン。また来てくれたノ?」

 イントネーションに特徴のある喋り方をしたのは、この店の店主の娘で、妖怪でもある花梨だ。

「おう、花梨ちゃん!今日も可愛いね!」

「モウ、横島サンったら。何処かノオジサンみたいヨ!」

 くすくす笑いながら、花梨は注文を取って調理場に去って行った。

「どうやら良い人間みたいですね。あの子、なかなか気難しいのに、あんな良い笑顔見せちゃって……」

 花梨と横島の遣り取りを見て、紫は横島をそう評価する。

「だから言っただろう?面白い人間だって」

 そう言って笑うハジメに、紫も笑顔を返す。

 妖怪変化に好かれやすい横島忠夫。

 これからの彼の変化は、実に面白く、観察にしがいがあるものだ。

 花梨にセクハラをかまし、お盆で頭を強かに叩かれ、頭上に星をちらつかせる横島を横目に、ハジメは来たるべきその日を楽しみに思うのだった。

 





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