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No.19251の一覧
[0] (習作)ハラペコ転生記(多重クロス なのは、東方、他)[ニガウリ](2010/08/04 17:31)
[1] プロローグ~長い夢の始まり[ニガウリ](2010/06/02 16:04)
[2] 第一話 ハラペコなハジマリ[ニガウリ](2010/07/04 16:46)
[5] 第二話 吸血鬼[ニガウリ](2010/07/04 16:47)
[6] 第三話 紙芝居[ニガウリ](2010/07/04 16:48)
[7] 第四話 妙神山[ニガウリ](2010/07/04 16:48)
[8] 第五話 箱庭[ニガウリ](2010/07/04 16:49)
[9] 第六話 異界からの贈り物[ニガウリ](2010/07/04 17:21)
[10] 第七話 苦行[ニガウリ](2010/07/04 17:26)
[11] 第八話 猪狩り[ニガウリ](2010/07/04 17:25)
[12] 第九話 時の庭園[ニガウリ](2010/07/04 16:52)
[13] 第十話 アースラ七不思議[ニガウリ](2010/07/04 17:24)
[14] 第十一話 上陸[ニガウリ](2010/07/05 00:32)
[15] 第十二話 第一次無限書庫戦争[ニガウリ](2010/07/08 20:25)
[16] 第十三話 ヴォルケンリッターといっしょ[ニガウリ](2010/07/11 18:19)
[17] 第十四話 ディナー[ニガウリ](2010/07/15 01:08)
[18] 第十五話 吸血鬼の求婚[ニガウリ](2010/07/18 09:28)
[19] 第十六話 チープ味覚ツアー[ニガウリ](2010/07/25 22:44)
[20] 第十七話 駅弁の旅[ニガウリ](2010/08/04 17:19)
[21] 第十八話 吸血鬼対決[ニガウリ](2011/01/10 11:49)
[22] 第十九話 試合観戦[ニガウリ](2011/05/25 13:22)
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[19251] 第十四話 ディナー
Name: ニガウリ◆92870b4e ID:68c9a700 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/07/15 01:08
   第十四話 ディナー



 ハジメは『箱庭』にある森に来ていた。

 目の前にはもみの木…に良く似た針葉樹。そして、ハジメが担いでいるのは斧だ。

 もうお解かりだろう。

 クリスマス・イブである。



「よいさぁぁぁぁ!」

 スパーン!!



 掛け声と共に斧をフルスイングして、斧らしからぬ切れ味で、もみの木モドキを一振りで切り倒す。

 三階建てのビルと同じくらいの大きさの木をハジメは軽々と担ぎ、家路につく。

 少し急がなくてはならない。

 何故なら、今年のイブは予定があるのだから。



   *   *



 はやては、穏やかなまどろみに身を任せようとしていた。

 全ての始まりは九歳の誕生日。

 一人ぼっちで寂しかったはやてに、四人の家族が出来た特別な日だ。

 家族が出来たその日からは、とても楽しい日々を過ごした。

 たとえ足の麻痺が進行し、入院を余儀なくされても、はやては幸せだった。

 家族が出来てからというもの、はやての周りは少しずつ賑やかになっていった。

 図書館でであったすずかを始め、なのはやフェイト、アリサとどんどん友達が出来た。

 はやては幸せだった。

 家族を失うまでは。

 突然、病院の屋上に来たと思えば、告げられたのは家族が魔力の採集を行っていたということ。そして、自分はもう助からないのだということ。

 そして、懇願するはやての目の前で、友人が家族を殺した。

 その瞬間、はやての怒りと悲しみがはじけ、ついにはやては『闇の書』の『真の主』となってしまった。

 そして、『闇の書』の起動と共に意識を失ったはやては、今は闇の中でまどろんでいた。

 銀髪と赤い瞳を持った女性が、はやてに穏やかな眠りを勧める。

「あなたの望みは、すべて私が叶えます」

 はたして、自分の望みとは何だっただろうか。

 朦朧とする意識で、考える。

 わたしの、望みは……。



 その時だった。



 ラン、ラン、ランララ、ランランラン……



 何か聞こえてきた。



 何だろう。何だか見逃してはいけない気がする。

 はやては根性で落ちそうになる瞼を開いた。

 はやての視界の端に映ったのは、紺色の甚平を着た少年だった。

 その少年が歩いた後は金色の光があふれ、まるで金色の草原のようだった。

 それは、いい。不思議な光景ではあるが、それは、とりあえず横へ置いとこう。

 問題は、その少年の後をついて歩く存在だ。

 はやての関西人の血が騒いだ。

「なんでやねん!!」

 我慢しきれず、華麗な裏手ツッコミをかます。



 はやての視線の先。

 そこには、金色の光の草原を、やたらと綺麗な顔をした兄ちゃんが、団子虫の様な某蟲の王様の着ぐるみを着てイイ笑顔で歩いていた。



「一気に目が覚めたわ…」

 はやてはそう呟きながら、少年と残念な美形を見つめる。

 はやての隣では、銀髪の美人が呆気に取られた様子で少年達を見ていた。

 少年達ははやて達の視線は気にせず突き進み、立ち止まる。

 そして……。



 どすっ。



 少年が闇に向かって、ストローを突き立てた。

 そして、少年は行動した。ストローの用途は一つしかない。



 ずずず~。



 少年は闇をストローで飲みだしたのだ。

 はやてを包んでいた闇が急速に薄くなり始める。

 それと同時に、はやての意識も何だかスッキリしたというか、保ちやすくなっていった。

 きっと、あの闇は悪いものだったのだろう。

「アレか。アレやな。『その者青き衣をまといて金色の野に降りたつべし。失われた大地との絆を結び ついに人々を清浄の地にみちびかん』伝説は、本当やったというわけやな」

 うんうん、と頷き、納得するはやてはもしかすると寝ぼけていたのかもしれない。

「姫姉様じゃないのが惜しいけど、伝説をこの目で見れるなんてな…」

 あの映画大好きやねん。わたしのバイブルや。
 そう呟くはやては、もしかすると、ではなく確実に寝ぼけているに違いない。そうであって欲しい。
 そしてはやては、青き衣ではなく、紺色の甚平を着た少年をキラキラとした瞳で見つめた。

 そんなはやての横では、『闇の書』の管制人格が未だ呆然とした面持ちで少年を見つめていた。

「まさか…入って来れるなんて……」

 ヴォルケンリッターとの隕石鬼ごっこの件を知る管制人格は、嫌な予感がしてならなかった。

 いつの間にか握り締めていた拳を開けば、じっとりと汗をかいている。

 頬が次第に引き攣っていくのを感じていると、はやてが話しかけてきた。

「なあ、お姉さん、誰なん?伝説のご一行だったりするん?」

 無邪気なはやての問いに、管制人格は全力で首を横に振った。

「私は、この『闇の書』の管制人格です」

 そう言って、管制人格は語りだす。

 今までのことと、今現在何が起こっているのかを。

「そっか……。なのはちゃん達、わたしを助けようとしてくれてるんや……」

 はやては嬉しそうにそう呟くと、管制人格を見つめる。

「今、防御プログラムは停止状態です」

 むしろ、ほぼ喰われていて跡形も残っていない。

「管理者権限は、主のものです」

「そっか、さすが伝説やな」

 伝説に失礼である。

「貴女の名前はリインフォース。祝福のエール、幸運の追い風…強く支えるもの」

 微笑みあう二人は、やがて金色の光に包まれた。



 はやてが再び目を開けると、そこには自分の家族と、友人達が揃っていた。

「良かった…。皆、無事やね……」

「はやてぇぇぇ!」

「はやてちゃん!」

「主はやて!」

「よかったぁぁ…」

 口々にはやての名を呼びながら、はやてに抱きついてくる。

 家族が居て、友達が居て。

 ああ、何て幸せなんだろう。

 はやてが幸せを噛み締めていると、人だかりの向こうに、紺色の甚平の少年が見えた。

「あの人が助けてくれたんよ」

 はやては笑顔で少年を指し、皆ははやての指す方へ視線を向けた。

「「ああっ?!あの時の!!」」

「あああああ、カミサマ、どうか、お助けくださいぃぃぃ」

「き、ききききさ、貴様!なななな何故此処にぃ?!」

「に、逃げろはやてぇ!隕石が来るぞ!」

「キャインキャインキャイン!!」

 なのは達は以前会った少年との再会に驚き、ヴォルケンリッターは神に祈ったり、震える手で剣を構えたりと忙しい。

 はやては、そんな家族や友人達の様子を見て、不思議そうに首をかしげた。

 そんな騒ぎの中、少年は平然とした様子ではやての元へ歩いてくる。

 それを友人達や家族は止めようとしたが、それを難なく掻い潜り、少年ははやての目の前に辿り着いた。

「えっと、あの、助けてもらってありが――」

 はやては、とりあえず助けてもらったお礼を言おうと口を開くが、言葉は最後まで言えなかった。

 何故なら……。



 ひょいっ。ぱくんちょ。



 はやての手から『闇の書』こと、『夜天の書』を取り上げ、食べてしまったのだ。

「ええぇぇぇぇ?!」

 ぎょっとして目を剥くはやての目の前で、少年はもぐもぐと口を動かす。

 そして……。



 ぺっ。



 吐き出した。

 吐き出された『夜天の書』はどういう訳か、小さなメモ帳サイズという変わり果てた姿をしていた。

 呆然とするはやて達を無視して、いつの間にか近くまで来ていた残念な美形が少年に声をかけた。

「ハジメ様。今ならデザートの時間に間に合うかと」

「ん?そうか。じゃあ、もうここには用は無いから、とっとと帰るか」

「はい」

 そして、彼等は一瞬で姿を消した。

 はやて達に何のフォローもいれず、痛い沈黙だけを残して……。



   *   *



 ハジメは『箱庭』に戻り、イチゴのムースを食べていた。明日のクリスマスはブッシュドノエルを食べる予定である。

 ムースの出来に満足していると、玄関の方から、黎明のすすり泣く声が聞こえてきた。着ぐるみが戸に嵌って入って来れないのだ。
 ハジメはそれを無視した。

 本日のハジメのイブのディナーは『闇の書』だった。

 全部食べてしまおうとも思ったのだが、ヴォルケンリッターと遊ぶのが楽しかったのと、以前繋げた道が喉に引っかかったのもあって、途中で吐き出したのだ。そこそこ腹が膨れたので問題ない。

 次はいつ遊びに行こうか、と考えながら、ハジメは黎明のすすり泣く声をバックに、また一口ムースを食べた。










 後日、リインフォースの言うところによると、完全に無事なシステムは転生機能と管制人格のみであり、守護騎士システムは転生機能とリンクが切れ、その存在は今回限りで終わりになるらしい。そして、採集機能は完全に失われ、『夜天の書』は転生機能のあるただのユニゾンデバイスとなった。
 しょんぼりするはやてに、守護騎士達は「最後の主がはやてである事が誇らしい」と言って笑い、はやてを慰めた。
 いろいろな事があって、慌しく日々が過ぎていく。
 新しい家族を迎えたはやては、次のステップへ進む。
 家族の犯した罪を共に償っていくために、動くようになった自分の足で、家族と共に歩いていくのだ。

 きっと、この先は色々な問題が待ち受けていて、大変な事だって沢山あるのだろう。
 
 けれど今、はやては確かに幸せなのだった。








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