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No.19251の一覧
[0] (習作)ハラペコ転生記(多重クロス なのは、東方、他)[ニガウリ](2010/08/04 17:31)
[1] プロローグ~長い夢の始まり[ニガウリ](2010/06/02 16:04)
[2] 第一話 ハラペコなハジマリ[ニガウリ](2010/07/04 16:46)
[5] 第二話 吸血鬼[ニガウリ](2010/07/04 16:47)
[6] 第三話 紙芝居[ニガウリ](2010/07/04 16:48)
[7] 第四話 妙神山[ニガウリ](2010/07/04 16:48)
[8] 第五話 箱庭[ニガウリ](2010/07/04 16:49)
[9] 第六話 異界からの贈り物[ニガウリ](2010/07/04 17:21)
[10] 第七話 苦行[ニガウリ](2010/07/04 17:26)
[11] 第八話 猪狩り[ニガウリ](2010/07/04 17:25)
[12] 第九話 時の庭園[ニガウリ](2010/07/04 16:52)
[13] 第十話 アースラ七不思議[ニガウリ](2010/07/04 17:24)
[14] 第十一話 上陸[ニガウリ](2010/07/05 00:32)
[15] 第十二話 第一次無限書庫戦争[ニガウリ](2010/07/08 20:25)
[16] 第十三話 ヴォルケンリッターといっしょ[ニガウリ](2010/07/11 18:19)
[17] 第十四話 ディナー[ニガウリ](2010/07/15 01:08)
[18] 第十五話 吸血鬼の求婚[ニガウリ](2010/07/18 09:28)
[19] 第十六話 チープ味覚ツアー[ニガウリ](2010/07/25 22:44)
[20] 第十七話 駅弁の旅[ニガウリ](2010/08/04 17:19)
[21] 第十八話 吸血鬼対決[ニガウリ](2011/01/10 11:49)
[22] 第十九話 試合観戦[ニガウリ](2011/05/25 13:22)
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[19251] 第十一話 上陸
Name: ニガウリ◆92870b4e ID:68c9a700 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/07/05 00:32
   第十一話 上陸



 よく晴れた日の午後、ミッドチルダに長い航海を終えた管理局艦船アースラが帰艦した。

 報告されていたロストロギア、ジュエルシードが慎重にアースラから下ろされ、慌しく人々が行きかう。

 そんな中。

 誰も知らない、危険人物が一人。

 ミッドチルダの大地を踏みしめた。



「ここが異世界……素晴らしい………」



 恍惚とした表情で、呟くのは紺色の甚平を着た食欲魔神ハジメだ。

 慌しく行きかう人々は、ハジメがあまりにも堂々とした態度で居るため、彼が密航者であることには気付かない。
 しかも、遠くから「きゃぁぁぁ?!Gぃぃぃぃ?!!」という悲鳴が聞こえ、それと共にうっかり魔法が放たれた。それをテロかと誤認した警備隊が出動し、混乱が生まれたため、余計に絵に描いたような凡庸な少年、ハジメを見咎めるような人間は居なかったのだ。

 混乱の御陰で、ハジメは特に問題を起こすことなく、楽に空港から出ることが出来た。

 こうして、アースラは数ある積荷の中で、最も危険な積荷を下ろしてしまったのだった。



   *   *



 ミッドチルダにある管理局の一室で、ユーノ・スクライアはちょっと拗ねていた。
 先日あったフェイトを元気付ける食事会に招かれなかったのだ。

「どうせ、僕なんて……。影薄いし、使い魔扱いだったし……」

 膝を抱えて、どんよりとした空気を纏うユーノに、エイミィが慌てる。

「ごめんね、ユーノ君。あの日、ユーノ君は一族の人と会う予定だったでしょ?あの日しか艦長の予定が空かなくって……」

 食事会のあった日、ユーノはスクライアの人間と会う予定だったのだ。スクライアの方ではあの事故の後、行方知れずになったユーノの生存を絶望視していた。そんな悲しみにくれる一族にユーノの生存を知らせる一報が入った。いてもたってもいられなくなった一族は、代表を選んでユーノの様子を見に来たのだ。
 そんな一族の、家族の再会を邪魔するなど、スクライア一族の必死ぶりを見ていたアースラの面々は出来なかった。
 故に、食事会はユーノを除いて開かれたのだ。
 別に日をずらせば良かったのでは、と思うだろうが、多忙な艦長職にあるリンディの予定があの日にしか合わなかったのだ。
 あの食事会の目的は、フェイトを元気付けることはもちろんそうだが、リンディとフェイトの交流を深める為のものでもあったのだ。
 
 リンディは、フェイトを養子にすることを考えていた。

 プレシアがまだ生きているうちにこんな事を考えるのは不謹慎かもしれないが、既にプレシアの死は避けられない現実だ。
 それに、フェイトは優秀な魔導師かもしれないが、まだまだ子供なのだ。いずれは保護者が必要になるだろう。

 そんな思惑もあって、ユーノには申し訳なくも、多忙な艦長の予定を優先したのだ。

「まあ、仕方ないって分かってはいますけど……」

 膝を抱えるのを止めたユーノは顔を上げ、溜息を吐く。

 あの食事会の日。スクライア一族との、家族との再会の日。
 再会した家族はユーノを見た瞬間号泣し、生きてて良かった、と繰り返しながらユーノを抱きしめた。
 それにはユーノも思わず涙ぐみ、涙の再会となった。たとえフェイトの食事会を事前に知っていたとしても、これでは食事会を優先する事は出来なかっただろう。
 ユーノだって、まだ九歳の子供なのだ。家族が恋しくなって当たり前だった。

 そんなユーノの子供らしい姿を見て、十四歳のクロノがちょっとバツの悪そうな顔をしたのは余談である。

 さて、エイミィとユーノがそんな遣り取りをしていたその頃。
 部屋の外では局員が慌しく動き回り、武装局員が管理局から出て行った。



 違法魔導師による事件発生。
 犯人はロストロギアを所持。
 人質をとって、逃走を図ろうとしている模様。

 人質は、紺色の甚平を着た、十台半ばの少年……。



   *   *



 とある壮年の武装局員の一人は、内心舌打ちしていた。

 まだまだ働き盛りではあるが、前線に立つのが厳しくなったと感じはじめたのは最近の事である。そんな時、今までの経験を生かし、局員を育てる教官にならないかと声がかかり、それを了承したのは昨日のことだ。

 まさか、最後の最後でこんな事件に行きあうとはな……。

 人生、思うようにはいかないものだ、と内心で苦笑しつつも、男は犯人の行動に細心の注意を払い、考える。

 人質にとられたのは紺色の甚平を着た十台半ばの少年だった。

 局員達が犯人を追い、ついに犯人を袋小路に追い詰めたと思った瞬間。
 犯人が背にしていた建物の窓が開き、少年が顔を出したのだ。

 犯人がそれを見逃すはずも無く、少年を窓から引きずり出して人質に取り、形勢逆転されてしまった。

 犯人がロストロギアを掲げて声高に叫ぶ。

「いいか!よく聞け!このロストロギアは俺が触れてる人間を一瞬で蒸発させることが出来る凶悪なものだ!こいつの命が惜しけりゃ、道を開けろぉ!!」

 犯人が手に持っているロストロギアは、使用者の任意で触れている人間を蒸発させられる危険なものだった。だが、このロストロギアは使用者が人間に触れなければ発動されない。その為、犯人をチェーンバインドなどで取り押さえ、犯人には触れずにロストロギアを奪えば言いだけの話だったのだが、人質をとられてしまった今、局員達は身動きをとれずにいた。

 人質になった少年は犯人が持つロストロギアを見つめて、恐怖のあまり固まってしまったようだ。

 まさか、ロストロギアを持つ凶悪な犯罪者が窓の外に居るなど思いもしなかっただろう。

 人質の少年の存在を思わず苦々しく感じながらも、同情する。

 局から応援が来るらしいが、はたしてこの状況が打破出来るかどうか……。

 緊迫した雰囲気の中、犯人が掲げていたロストロギアを胸元、少年の目の前に持ってきた。

 その、瞬間。



 がぶり。



 少年がロストロギアごと犯人の手に噛み付いたのだ。

「いってぇぇぇ?!」

 悲鳴と共に犯人は少年を振りほどき、同時にロストロギアからも手を離した。

 犯人は少年に手を上げようとしたが、局員がそれを許すはずも無く。


――チェーンバインド!


 局員数人の手により、バインドをかけられ、犯人は地面に転がった。

 これで一安心、と思いきや、局員達の耳に、妙な音が聞こえてきた。



 ゴリン。バキ。ゴリゴリゴリ。



 音の発生源。人質の少年の方を見やれば、少年は口をもごもごと動かし、何かを咀嚼したようだった。

 少年は何かを食べていたようだった。

 何を、食べていたのだろうか。

 局員達、ついでに犯人も少年に注目し、考える。その事実を否定したくて、考える。
 だが、残念ながら、常に真実は一つなのだ。

 少年の口に入ってものは何だったか。



 コイツ、ロストロギアを喰いやがった。



 唖然とする局員達や犯人の注目を浴びながら、少年はそれを気にするそぶりも見せず、出てきた窓から退出しようと窓に足をかけたのであった。



   *   *



 ハジメがそれを感じ取ったのはミッドチルダの都市をうろついていたときのことだった。

 なにやら、犯罪者が逃走中との事で、武装局員が街をうろついており、街は騒然としていた。

 そんな時、ハジメは微弱な力の流れを感じ取った。

 ミッドチルダはハジメの『体内』ではないので確信は持てないが、きっとロストロギアだろう。
 所有する魔導師がロストロギアに触れ、その力が微弱ながら解放されたように思えた。

 ハジメはその力の流れを頼りに建物に入り、それを見つけた。

 窓から引きずり出され、男が声高に何かを喚いているが、ハジメの目は男が持つロストロギアに釘付けだ。

 そんなハジメが、男が目の前にロストロギアを持ってきたとき躊躇するはずも無く……。



 がぶり。



 ロストロギアに、男の手に噛み付いた。

 正直、男の手が邪魔だったが、男はすぐにロストロギアから手を離したため、問題なくハジメはロストロギアを噛み砕いた。

 ハジメはロストロギアを咀嚼すると、もと来た道を戻ろうと窓に足をかけ、建物内に入った。

 ハジメは歩きながら呟く。

「まさか、着いて早々にロストロギアにお目にかかれるなんて……」

 何て素晴らしい世界なんだろうか。

 ハジメは食糧の宝庫たるミッドチルダをいたく気に入った。

 そうとなれば、ミッドチルダにいつでも来れるように道を敷く気が俄然湧いてくる。

 道を敷くのは簡単だ。

 ただ数日間ハジメがミッドチルダに滞在すれば、植物が根を張るように、自然と『ハジメ』と『ミッドチルダ』は繋がる。

 ハジメは後ろから何かが追ってくる気配を感じながらも、大して気にした様子も無く歩き続ける。

 次は、何処へ行こうか。



 とりあえず、『無限書庫』って、腹が膨れそうだよなぁ……。



 そんな事を考えながら、ハジメは建物を出て、街へ繰り出したのであった。











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