学院の裏にある森、そこに向かって二つの影が歩いてゆく。そして森の中にぽっかり開いた、広場のようになってるところで彼らは止まり、男のほうが魔法で煙を上げ始める。
するとばたばたと何かをたたくような音が近づいてきたかと思うと、そこら一帯に目を開けてられないほどの風が巻きあがる。
「何なの一体」
そう彼女は悪態をつくとその音のある方向に目を向けると、果たしてそれは。
見たこともないフネがそこにいた。
そもそも昼、ルイズを迎えに来たコルベールの様子があまりに不自然だったのだ。普通補習というのにあんなにテンションが上がる訳がない。もしかして召喚できなかったルイズに進級を条件に、あんなこととかこんなことを?などとも思ったが彼のあの状態ではそれはないだろう。もしそんなことをするならば事はもっとスマートに、かつ陰険にやるものだ。よってこの思考は却下。だが彼らの不自然な行動に対する興味には抗いがたく、こうして今尾行してきたのだ。そして今に至る。
そのフネの扉が開いたと思ったら、さも当然のようにそれに乗り込む二人。
そして船はその騒々しい音とともに飛び立地、朝オスマンが近づくな。と言っていた竜の巣へ向かっていった。
「驚いた。何あのフネ?」
目を丸くしてその光景を見送る。
帆もない。その代わり大きい風車が上についている。しかも今まで見たどのフネの形でもない。珍しいなんてもんじゃない。
「ふふふっ、これは何か面白くなりそうね」
彼女キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーは笑いながらその好奇心に抗うことなく、次の手をを打つために学院に戻っていった。
学院についたキュルケはすぐに親友のところに向かう、彼女のことだからまだ昼食を食べているだろう。
そしてアルヴィーズの食堂に向かい、彼女の席に向おうとした時、食事を終えたであろう廊下のあたりにたむろっている男子生徒に肩がぶつかる。
「あら失礼」
そう軽く謝罪した後、改めて彼女の席に向う、彼女はしっかりそこにいた。横には積み上げられた皿。今は食後のデザートに口をつけようとしている。
「タバサ、お願い」
「今食事中」
タバサという青髪の幼く見える少女はにべもなく言う。たとえ友人のキュルケといえども食事は邪魔されたくない。
「それなら食後でいいからお願い聞いて。ね?」
そんなマイペースな親友に笑みを浮かべ、キュルケは微笑みながら言う。
「ん、分かった」
一体何を頼むのかは知らないが、そんなに大層な事にはならないだろう。そう思いタバサは何も聞かないまま了承する。
一方その頃キュルケとぶつかった男子生徒は、ぶつかった拍子に落とした壜を友人たちに見られ、あまつさえその持ち主、そして二股をかけていた女生徒にもばれ折檻を受けていたが、それはまた別の話。
「それで、お願いって何?」
食事を終えたタバサは一息ついてからキュルケにたずねる。
「簡単なことよ?あなたの使い魔を貸してほしいの」
まぁ、貸すだけなら簡単だ。とは言うものの当然私も付き合うことになるんだが。
「どこに行きたいの?」
明日も学校がある。遠くてもせいぜいトリステイン位なもんだろうけど、わざわざ今行く必要はない。だからタバサは訊ねてみる。
「あそこ、昨日突然降って沸いた山にある竜の巣!」
キュルケはさも当然のように、そして楽しそうに言う。
「あそこに行くのは学院が禁止している。しかも竜の巣なんて危険すぎる」
学院が禁止などはただの方便だが、得体の知れない竜の巣なんて何を好き好んで行かなければいけないのか?あまりにリスクが大きすぎる。
「あそこにルイズとミスタ・コルベールが行ったのを見たのよ、しかも見たこともないフネで。何かあると思わない?」
好奇心に目を輝かせ、タバサを見つめるキュルケ。
「分かった。でも危険があるようならすぐ引き返す」
その瞳に負けたタバサは条件付きで了承する。
「さっすがタバサ、持つべきものは親友よねぇ~」
そう言いながらタバサに抱きつくキュルケ。だがすぐにタバサは彼女を引き剥がし、空に向って口笛を吹く。するとたいして間をおかず、空から青い竜が舞い降りた。
「やっぱり凄い竜ねぇ…」
そうつぶやくキュルケ、タバサは先に竜の背に乗り、キュルケに乗るよう促す。
「そういえばこの子名前なんて付けたの?」
この竜の名前を聞いていないキュルケがたずねる。
「この子はシルフィード。風竜の幼生」
「そう、シルフィードね。いい名前ね」
その言葉にタバサは嬉しそうだ。シルフィードも嬉しそうにきゅいきゅい鳴いている。
「さぁてそれじゃ行きましょ」
キュルケのその言葉にタバサはシルフィードはふわりと浮き上がる。
「行き先はあの山の中腹の大きな穴」
その言葉にシルフィードは嫌がるようにきゅいきゅいと抗議の声を上げる。何せあの穴から得体の知れない、明らかに同族ではない何かが夜明け前から轟音を立てて出たり入ったりしてるのだ。気味が悪くてしょうがない。
「黙って行くの」
タバサから杖で頭をたたかれ、涙混じりになりながらも目的地に向って飛んでゆく。
「きゅいぃ…」
幸か不幸か山と学院はまさに目と鼻の先だ。断崖絶壁と高度があるせいで地上から直接上るのはかなり辛いが空からだと別だ。キュルケたちを乗せたシルフィードは程なくして山の開口部に近づく。あと少しでその口に着きそうな時、山から竜のような物が飛び出した。
「きゅいきゅい~!」
恐慌状態に陥ったシルフィード。このままでは振り落とされそうだ。そこでキュルケはとっさにフライの呪文を使い一番近い足の着けるところ、エリア88の滑走路に降り立った。その直後にシルフィードを何とか立て直し、タバサも滑走路に着いた。
「一体何なの?ここ?」
「私にも分からない」
キュルケの問いに同じく呆然と滑走路を見てるタバサ。しばらくそこに立ち尽くしていると、コルベールがやってきた。
時間は少しさかのぼる
迎えに来たヘリでまた平民達のところにやってきた。
こ のヘリコプターって言うのは確かに凄いが、魔法やフネで飛ぶほうがはるかに静かだし楽なはずだ。でもこんなのを操れれば、それはそれで楽しいのかもしれない。
私は昨日は暗くなってあまり見えなかった学院を見下ろしながらそんなことを考えていた。
横に居るコルベール先生は、自分でも飛べるのに何が楽しいのか中と外落ち着きなくを交互に見ている。少しは自重しろ、あんたも貴族の端くれでしょうに。
そんなこんなでヘリは短い空の旅を終え、基地に着いた。
出迎えは昨日と違いサキ司令と執事だろうか?同じような服を着た初老の男性の二人だけだ。その周りには昨日も見たひこおきや、それに群がる人たちが居るが、わたしには一体何をやっているのかすら分からない。
「ようこそ、ミスタ・コルベール、ミス・ヴァリエール、君たちを歓迎しよう」
サキ司令が微笑みながら挨拶してくる。なんか立ち居振る舞いが様になって見える。やはり平民とはいえ、司令官にもなった人物だからだろうか?
「お招きいただきありがとうございます、サキ司令。私など今日が待ちきれなくておかげで寝不足になりました」
コルベール先生が興奮気味にあいさつを返す。これじゃどっちが貴族だかわかりゃしない。こうなるとトリステイン貴族としての誇りにかけて平民相手とはいえ無様なことは出来ない。
「お招きいただきありがとうございます。サキ司令。今日はわたしの使い魔を見立ててくれる言うことでかんニャッ」
…かんだ。なんて無様な。そしてわたしのかぶった猫はあっという間にはがれた。
「で、サキ司令?わたしの使い魔になりそうな物は?」
わたしはいつもの口調になりそうたずねる。
「まぁ、そう急かないでくれたまえ。まずはこの基地を見学するといい。案内役として彼をつけよう」
そう言って紹介されたのはサキ司令の少し後ろに居た初老の男性。
「このエリア88の副司令ラウンデルだ」
「はじめまして、ミス・ヴァリエール」
そうサキ司令に紹介された後こちらにあいさつしてくる。副司令だって、執事じゃないのね。軍関係には疎いが副司令に比べるとサキ司令って若すぎよね?普通貴族でも平民でも組織は大体は年功序列のはずだ。そうじゃない場合は貴族が上司で平民が部下にいると言う図式は、こちらの軍ではよくある。でもこの基地はみんな平民のはずなのに、これはどういうことだろう?
そんなことを悩んでいるとラウンデル副司令がわたしを促す。
「それではむさくるしいところですがどうぞ」
そう言い先に立って歩き出す。
「あ、待ちなさいよ」
わたしは彼において行かれないように歩き始める。何でもコルベール先生とサキ司令は話があるそうなので別行動らしい。
歩きながら彼はこの施設の説明をしてくれる。今歩いている廊下にしても両側が壁なのにこんなに明るいのは何でも電気という物で照明を光らせているそうだ。この電気はいろんなところで使われているらしい。コルベール先生が聞いたら狂喜乱舞しそうな話だ。
そして大まかな説明の後にひこおきの格納庫に連れて行かれる。
「これがわがエリア88の主戦力の飛行機群です。当然魔法の力などは使ってません」
昨日帰るときに横を通り過ぎ、そして宝物庫を穴だらけに変えた鉄の化け物がそこでは静かにしている。
近づいてみるとかなり大きい。タバサとかいう子が竜を召喚したけど小さい物でもそれの倍以上ある。
「こんなのが空を飛ぶんだ…」
昨日も遠目では見たけどやっぱり信じられない。まだヘリコプターのほうか風を下にたたきつけてる分信じられるけど。それに昨日今日と乗せてもらったし。
「飛ぶだけではありません、こいつらは音より早く飛んでゆきます」
ラウンデル副司令がそんな説明をするがさっぱり分からない
「音より早く?音に速度なんてあるの?」
「ミスヴァリエールは山彦というのをご存知かな?」
「あの山とかでやる遊びでしょ?したことあるわよ。それが音の速さとがどう関係するのよ?」
「山に向って声を出すとしばらくしてからその声が返ってきますな。それが音の早さです」
そう言われればそうだ。でもそういうことをする時のの山は結構遠い。そう言うことは音もかなりの速度なんじゃないの?そんなことが有り得るの?
「有り得ないわそんなの。風竜ですら時速600リーグも出ないのに」
「リーグ?果てそれはどれくらいの単位ですか?」
どうも彼らはわたし達とは違う単位を使ってるようだ。そこで軽く単位のすり合わせをする。
「この機体の中にはは最高時速2000リーグ、最高高度は軽く12000メイルを超えるものもあります」
当たり前に言う副司令。でもそんなの信じられるわけがない。あのアルビオンに登るのもフネだと一苦労だ。その4倍の高度なんて想像もつかないしハルケギニアでそんなに昇った竜の話も聞いた事がない
「そんなの信じられるわけないでしょ!私を莫迦にするつもり?」
「それならば一度お乗りになりますか?」
ラウンデル副司令、もぉいいや、こんな奴に副指令とかつけてらんない、ラウンデルでいいや。がニヤニヤしながら言ってきた。
「乗ってやろうじゃない、これで嘘だったらただじゃ済まないんだからね!」
「それではこちらで着替えてください」
何を言うのだこの男はなぜ貴族の私が平民と同じ服を着なければいけないの?
「着替えなんて何故しなくちゃいけないのよ、それに貴族たる私がそんな平民と同じ服なんて着れる訳無いでしょう?」
「専用のパイロットスーツに着替えてもらわないと高空の寒さで凍死しますよ?」
ラウンデルはため息を吐きつつ、そんなことを言う。
「そんなに寒くなる訳無いじゃない。私が何も知らないからってからかってるのね?」
「ミスヴァリエールの身を案じて申し上げているのですが、そこまで言うのでしたらいいでしょう。ですがハーネスとヘルメットは着けてもらいます。それだけは譲れません。よろしいですね?」
まぁ、それくらいは妥協しようじゃないの。ヘルメットはあのヘリの御者もかぶっていた物だし、ハーネスって何かはわかんないけど着替えなくていいのならまぁ我慢することにしよう。
「では、こちらへ」
格納庫の近くに控え室のようなところがある、そこに通されると色彩こそ地味だが、色んな柄の、でもデザインはみんな同じ服を着た見るからに怖そうな連中がたむろしていた。
「グエンは居るか?」
ラウンデルがそう尋ねると奥のほうで何かゲームをしている男が返事をしてきた。
「オウ、ここに居るぜ。俺に何の用だ?」
そう言いながらそのゲームに使っていただろう竿のような物を置いて彼はこちらにやってくる。
彼は顔中に傷があり、ひげを蓄えたいかにも軍人と言う風貌だ。正直ちょっと怖い。
「何、このお嬢さんをつれて遊覧飛行をしてほしい」
「副司令正気か?こんな小さな子を?遊覧飛行って言ったって俺達の乗る機体は旅客機じゃない。お上品な操縦なんて出来ないが、それでもいいのか?」
信じられないという顔でわたしとラウンデルを見るグエンとかいう男、…言うに事欠いて小さいですって?
「失礼ね、これでも私は16よ!そっちの世界じゃどうか知らないけどもう立派な大人よ!」
それを聞いたそこに居る男達はみんなしてぽかんとした顔をする。その中でグエンが口を開いた。
「お嬢ちゃん16歳だって?それじゃキムと同い年じゃないか。それにしてもそうは見えないな、せいぜいジュニア・ハイの1年生ってところだな」
ジュニア・ハイって言うのが何かは知らないけど、かなり年齢を過小に見られたのだけはなんとなく分かる。
「ま、いいだろう。キムと同い年なら遠慮はいらないよな?」
キムって言うのが誰かは知らないけど私と同い年の子もいるのか。その子には負けらんない。
「当然遠慮なんていらないわ、だからお願いできます?ミスタ・グエン」
敬称なんて平民に付けるのもなにかとは思うが、一緒に飛んでくれる人だ。これくらいはいいだろう。
「ミスタなんてよしてくれ、お嬢さん。副司令、俺達が乗る機体はどれだ?」
「連絡用のT-38を、と思ったが一応何があるか分からんからな。F-4を用意する」
「了解、それじゃお嬢さん、空の旅としゃれ込もうか」
ミスタは止せ、というのは分かったがそのあとのラウンデルとの会話はさっぱり分からない。でも彼が私と飛んでくれるのは決定したようだ。
「じゃ、よろしくね、グエン」
私達は再び格納庫に向う。
そのあと、飛行機に乗るまでも大変だった。まずハーネスを付ける。これがいけない、何せスカートがめくれあがるのだ。そしてこのハーネスを付けないと機体の機動で体が投げ出されるらしい。…結局私はパイロットスーツを借りた。そして杖も刺さると危ないという理由でまた取り上げられた。
本当にこの基地の平民どもは。いつか思い知らせてやる。
そして機体に乗り込む。想像以上に狭い、しかもなんだか分からないものが所狭しと並んでる。それだけで目が回りそうだ。外にいるラウンデルからヘルメットを受け取り、顔の下半分を覆う仮面を無理やり付けさせられる。ちょっと息苦しいがここまできたら少しは我慢しなくちゃ、そう思っているとヘルメットから声が聞こえた。
「どうだいお嬢ちゃん初めての飛行機は」
何これ?どうやって聞こえるの?後ろに居るグエンとはガラスで隔てられている。こんなに鮮明に聞こえるわけが無い。
「驚きなさんな、こうやって機内で、そして基地とも通話できる。便利だろ」
そういって笑うグエン、よほど私はびっくりしていたんだろう。
「そろそろ離陸するぞ。びびんじゃねぇぞ。コントロール、グエンだ。離陸許可を」
私たちの機体は山の入り口から1500メイルほどのところにいる、全長でいうと2000メイル程あるそうだ。ここから助走を付けて飛び立つらしい。なんでも以前は1000メイルしかこの道(滑走路というらしい)が無かったせいで、カタパルトとか言うもので無理やりはじき出してたそうだ。そう考えるとこんな道がいる分ずいぶんと飛行機というのは結構不便だ。
”コントロールよりグエン、離陸を許可する。グッドラック”
「サンクス」
一連の通話のあと後ろにあるエンジンがうなりを上げ、機体が動き出す。その速度は馬車より、馬より、竜籠よりも速い。私はその加速に体が押さえつけられる。
その速度に声も出ない
「さぁ、飛ぶぞ!」
そう言うグエンの言葉とともに足元からの振動は無くなり、機体は基地から飛び出した。
そのとき何か下から飛んできたような気がしたが、そんなことを考える間も無く機体は上昇を続ける。途中にある雲を突き抜け、どんどん昇ってゆく。
「すごいすごい!」
私はそんなありきたりの言葉しか出なかった。頭上に広がる蒼い空、眼下に広がる雲と箱庭のような私の居る世界。昔家族でアルビオンに行ったときですらこんな光景は見たことが無い。
「グエン、今の高度は?」
ラウンデルの言ったことは嘘じゃなかった、でも一応確認のためにグエンに聞いてみる。
「現在高度12000メートル、どうだいお嬢ちゃん」
「こんなすごいの初めて。」
そしてラウンデルの言ってたもうひとつの言葉を思い出す。
「もうこの機体は音を超えてるの?」
「まだ音速は超えてない。お望みならばいっちょ出してみようか?」
音の速さを超えるというのはどんな感じなんだろう?もしかしてグエンの声も聞こえなくなるとか?
「お願い、音の速度の向こうに私を連れて行って」
私はきわめてシンプルに望んだことを口にする。
「了解、ちょっとGがかかるが我慢しろよ」
そして後ろのエンジンがさらに唸りを上げ、私の体がシートの背に押し付けられる。
目の前の針のいくつかが震えだした。そしてその数瞬後、音が消えた。
今まで震えていた針が静かに安定し、エンジンの音だけが機体を通して聞こえてくる。
今までの風切音なんかが嘘の様な静寂。
「…これが音の向こう?」
私はただ呆然とその状態に、下を流れる雲を眺める。
「あれは海岸線?」
私が驚いてる間に海岸線が見えてきた。もうこんな所まで来たなんて信じられない。これが魔法のない世界の乗り物?私達より遥かに凄いじゃない。
「そうさ。そろそろ戻るか。少し高度を落とすから地上の風景を見物してればいいさ」
そう言う彼の言葉に眼下を見下ろすと小さくラ・ロシェールの港が見える、その近くにある平原は確かタルブの村だ。信じられない、ここまで学園から馬でも2~3日かかる距離をわずか数十分で来れるなんて。そしてしばらくするとトリステインの王城が見える。もう基地はすぐそこだ。
「さて、お嬢ちゃん、名残惜しいだろうが遊覧飛行はもう終わりだ。基地へ戻る」
本当に名残惜しい、もっとこれに乗っていたい。これを自分の手足のように操ってみたい。この飛行機というのは魔法なんて関係ない世界の乗り物だ。魔法が使えなくても操ることが出来るなら私にだって…
「…ィズよ」
「どうした?気分でも悪くなったか?」
「私はルイズよ。お嬢ちゃんなんて呼ばないで」
なんだか平民だ貴族だなんてどうでもよくなってきた。だから私はグエンにそう言う。
「OKルイズそれじゃ帰ろうか」
そして私たちを乗せた機体は基地へと機首を向けた。
10.6.12 改訂