<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

チラシの裏SS投稿掲示板


[広告]


No.18953の一覧
[0]  マブラヴ+SRW α アフター (チラシの裏から移転)[まくがいば~](2014/03/30 23:28)
[1]  マブラヴ+SRW α アフター  プロローグ[まくがいば~](2014/03/30 02:06)
[2]  マブラヴ+SRW α アフター  第一話[まくがいば~](2014/09/14 03:31)
[3]  マブラヴ+SRW α アフター  第二話[まくがいば~](2014/03/30 02:04)
[4]  マブラヴ+SRW α アフター   第三話[まくがいば~](2014/03/31 20:49)
[5]  マブラヴ+SRW α アフター   第四話[まくがいば~](2014/03/30 02:03)
[6]  マブラヴ+SRW α アフター  第五話[まくがいば~](2014/03/30 02:03)
[7]  マブラヴ+SRW α アフター  第六話[まくがいば~](2014/03/30 02:03)
[8]  マブラヴ+SRW α アフター  第七話[まくがいば~](2014/03/30 02:02)
[9]  マブラヴ+SRW α アフター  第八話[まくがいば~](2014/03/30 02:02)
[10]  マブラヴ+SRW α アフター  第九話[まくがいば~](2014/03/30 02:01)
[11]  マブラヴ+SRW α アフター  第十話[まくがいば~](2014/03/30 02:01)
[12]  マブラヴ+SRW α アフター  第十一話[まくがいば~](2014/03/30 02:00)
[13]  マブラヴ+SRW α アフター  第十二話[まくがいば~](2014/03/30 02:00)
[14]  マブラヴ+SRW α アフター  第十三話[まくがいば~](2014/03/30 01:59)
[15]  マブラヴ+SRW α アフター  第十四話[まくがいば~](2014/04/12 00:53)
[16]  マブラヴ+SRW α アフター  第十五話[まくがいば~](2014/04/24 01:00)
[17]  マブラヴ+SRW α アフター  第十六話[まくがいば~](2014/06/16 21:14)
[18]  マブラヴ+SRW α アフター  第十七話[まくがいば~](2014/08/24 21:53)
[19]  マブラヴ+SRW α アフター  第十八話[まくがいば~](2014/08/24 21:56)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[18953]  マブラヴ+SRW α アフター  第十三話
Name: まくがいば~◆498b3cf7 ID:a9e6514e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2014/03/30 01:59
 ―新西暦の世界で―

 コ・エンシャクの乱入により、サニー登場で混沌としていた現状報告会は、さらに収拾つかない状態にな
ったと判断したミサト。明朝十時に改めてこの場で、報告会を兼ねた対策会議を開くと決定。
 同時に、この件においての対策本部を、この極東基地に置くことも宣言。これについては、αナンバーズ・
ネットワークを利用し、アステロイド・イカロス基地司令のブライト=ノア准将や、新設された異星外務庁
長官である大河幸太郎等、有力者と共に、連邦政府に根回しを行い、この件を自分たちで解決する公の立場
を、早々に手に入れたのだった。
 コ・エンシャクの再襲撃を警戒し、今回の出席者は、極東基地内に宿泊することになった。そして、その
エンシャク対策をサニーに頼んだところ、
「よろしいですわ」
 と二つ返事で、この建物に、よくわからない魔法による結界を張り、エンシャクに備えるサニー・ザ・マ
ジシャン。アンタ、BF団でしょ、大丈夫なの? と、気になったアスカが訊くと、
「私、愛の使徒サニー・ザ・マジシャンは、十傑集筆頭、混世魔王・樊瑞オジサマの意を受けて、行動して
おりますので、何の問題もありません!」
 と、BF団の内部揉めていますよと喧伝することを、キッパリと言い放ったサニー。自慢気ですらあった。
 そして、私服に着替えたアスカとレイは、明日に備えてサッパリしようと、女性用大浴場に向かっていた。
なぜか、サニーも入浴セットを抱えて、鼻歌を歌いながら付いてきている。
「……アンタも来るの?」
 ミサトに割り当てられた部屋も、空きがないという理由で、一般兵士用の四人部屋にレイと一緒にサニー
と同室になってしまったアスカが、胸中の複雑な思いを隠しもせず顔に出しながら訊いた。
「当然ですわ♪ 裸の触れ合い、乙女同士のガールズトーク♪ お泊まり会の定番ではありませんか?」
 いつ、お泊まり会になったのよ、とツッコミたいのをこらえるアスカ。今日は色々ありすぎて、精神強度
に限界が来ているのを、アスカは感じていた。
「……乙女、フフッ、それはどうかしら?」
 横を歩くレイが、さも意味ありげに笑い、サニーを見る。
「え、もしかして、レイ様は、その……?」
 レイの言葉に何を想像したのか、キャーと顔を赤らめるサニー。
「内緒……」
「これは、大作様との未来の為に、是が非でもお話を……」
 そんなアスカを尻目に、意気投合しているレイとサニーは、かしましかしまし、大浴場に向かう。そんな
二人を見て、アスカは天を仰いで嘆息する。
「……シンジ、アンタを助けにいくの、前途多難っぽいわ」


「……ん?」
 神代が淹れてくれたお茶をすすっていたシンジが、何かに気づいたように辺りを見回す。
「どう、されました?」
 今まで、会話という会話もせず、ドアの傍で控えていた神代が、白基調の学生服に着替え、ベッドに座る
シンジに声を掛けた。
「いや…… 呼ばれたような気がしたんですけど…… 気のせいですね」
 そう言って笑ったシンジを見た神代、わずかに後ずさるほど、その笑顔に気圧されてしまった。顔が我知
らず、赤くなってしまう。質実剛健清廉高潔を旨とする斯衛軍人の範たる神代、そのせいで異性にまったく
といっていいほど免疫がなかったりした。
 神代は今、この少年に話しかけられたら、どうしたら良いのだ、やはり部屋の外で控えているべきではな
かったのか、早く巴でも戎でもいいから交代に来てくれ、等々、グルグルと頭の中で思考が回っている状態
になってしまっていた。
 コンコン、と救いのノックがドアから。
「どうぞ!」
 シンジの返事を待たず、神代が勝手にドアを開くと、わずかに息を弾ませた真那が立っていた。
「碇様、よろしいですか?」
 と、部屋に入り、シンジに軽く一礼する真那。席を外していた真那が再び入室してきた理由は、これしか
ないだろうと察したシンジが訊いた。
「将軍様と博士が、到着したんですか?」
 ずいぶん、早いですね? と、真那の要件を察したシンジがそう言うと、
「はい、その通りです」
 と、シンジの聡明さに、パァっと花開くように、頬を赤らめる真那が居た。やっぱり、中尉、なんかヘン
だ、と神代は再確認する。
「一時間後に、シンジ様との会談を始めたいとのことです。シンジ様はよろしいですか?」
 悠陽は、自身たちの準備ができ次第すぐに、と望んだのだが、夕呼が武からシンジたちの情報を仕入れる
時間を希望したのと、両者の到着が、予定より二時間早かったことにより、加賀の厨房から、まだ料理がで
きていないという泣きが入った為だった。
「僕は構いませんけど…… そうか、一時間か……」
 了承した後、シンジは少し考えるように視線を巡らせる。
「お願いがあるのですが、いいですか?」
 シンジが真那を見て、そう言うと、
「はい、何なりとお申し付けください!」
 と快活に迷いなく返事する真那がいた。この調子なら、シンジが『加賀を占拠したいので、手伝ってくだ
さい』と言っても、二つ返事で了承するのではないかと、神代は上機嫌の上官を見て思ったりした。


「で、どうなのよ? アンタから見て、イカリシンジは?」
 夕呼の控え室にと用意された客室に入室後、時間がもったいないという理由から、夕呼と霞は武に目隠し
をして、ベッドに座らせて、自身たちは着替えながら事情聴取を開始した。
「どう、とは?」
 質問が抽象的なのと、衣擦れの音が聞こえるのが落ち着かない武は、戸惑いを声に載せ、逆に訊く。
「容姿とか、性格とか、アンタが思いついたこと、全部よ」
 全部、と言われると、今度はどこから話せばいいか考えてしまう武。とりあえず、身体的なところから話
始めた。
「身長も全体の体つきも、俺の一回り下って感じで、顔は……」
「アンタよりいいでしょ。まりもの報告で『中性的で整った』って言ってたし。あの堅物が男をそんな風に
褒めるのって、滅多にないのよ」
 武の報告に口を挟む夕呼。根っから黙っていられない性分なのだろう、霞と足して二で割って三分の一に
薄めれば、ちょうどいいのではと武は思ってしまった。
 はい続き、と自分で止めておいて、続きを急かす夕呼。武は軽い溜息をついて、再び口を開く。
「華奢に見えるけど、只者ではないのは確かです。某かの、高度な体術の訓練を受けていると思います」
 その武の報告に、ふ~~んと相槌をうつ夕呼。
「じっさい、アンタの目から見てどのくらい? うちの連中基準でお願い」
 うちの連中、とはA―01の衛士たちの事だろう。合同で格闘訓練した時のメンツを思い出し、その時の
各々の実力と、武が予測したシンジの実力を照らし合わせてみる。
「一対一なら、シンジの方が、上、かな……」
 実際、シンジが戦うところを見た訳ではないので、確証は持てないとの注釈つきで、武が応える。武が、
シンジを見て、一番感心させられるのは、彼の姿勢、体幹の整い方と、挙措が綺麗なことだ。それは、武が
師事する武人たちにも通じるところがある。見立ては、ほぼ間違いないだろうというのが武の読みだ。
「二対一なら、ウチの連中ってコト?」
「……多分」
 シンジが逃げ回る、というなら話が違うだろうが、手合わせなら二対一でA―01の衛士たちが遅れをと
るとは思えなかった。
「じゃあ、次。イカリシンジの中身はどう。これもアンタなりでいいから。ちなみに、今、アタシと社、裸
だから」
 夕呼の関係ないアピールに、ずっこける武。見てもいないのに、思いのツボで顔を赤らめてしまった武。
「何、想像した?」
「えっと、ですね! シンジのことですよね!」
 夕呼のからかいを、大声で断絶し、武は続ける。
「俺から見て、シンジは、見た目とちがって、豪胆っていう感じですね。自分の世界で、色々な修羅場くぐ
ったせいか、肝が座っているみたいで」
 シンジの経てきた経験を、『色々』の一言で片付けていいか考えるところだが……
「ま、一人でこんなトコロ乗り込んでくるくらいだし……」
「あと、ですね」
 夕呼の言葉を遮り、武は言う。
「シンジは信頼できるヤツです。これは、俺が保証します」
 これだけはしっかり伝えておきたかった。シンジが、この艦に来てくれたのは、武と純夏を信頼した、そ
の一事につきる。だから、武もシンジの信頼に、出来うる限り応えたかった。それが、この言葉だ。
「そ、信頼、ね。ちなみに今、勝負下着を付けているトコ。目隠し外したら、銃殺よ」
「……銃殺、です」
 なぜか、今まで沈黙を続けていた霞まで、乗っかって物騒なことを言う。自分は意外と信用されてないの
か、と武はリアルにショックを感じてしまった。
「そうそう、アンタ、エジプトと一本角、じっさいに見たのよね。イカリシンジは、一本角のパイロットだ
っけ?」
「あ、はい。エヴァンゲリオン、と言うらしいです」
 武は我を取り戻して、答えた。
「エヴァンゲリオン…… アダムとイヴの創世神話あたりからとった名前かしらねぇ。ちなみに、下着、ア
タシは赤で、社は白よ」
「だからぁ、なんでイチイチ、そんな説明するんです!?」
「アンタをからかっているだけ」
 武が噛み付くと、あっさりと返され、言葉を失う。やはり、夕呼は人として大事な何かを、どっかに置い
てきている、と武は改めて再認識させられた。
「しかし、全長、五十メートル前後の人型兵器、ね。どんな世界状況なら、あんなの、開発しようとするの
かしら? 白銀、アンタ、想像できる? あの一本角、最大で重光線級九体、光線級四十九体のレーザー照
射を防いだのよ?」
「え……?」
 夕呼の説明に、絶句する武。いま、夕呼が言ったBETAの攻撃を、どうやれば防げるのか、想像ができな
い。
「なんだか、赤いバリヤーみたいのを多重展開してたけど、ホント、どう言う仕組みなのかしら。頭来るけ
ど、想像もつかないわ」
 続いた夕呼の言葉に、自然に武の脳裏には、間近で見たエヴァの姿が浮かぶ。大作のジャイアント・ロボ
とは違い、生物的なフォルムを見せるあの巨人には、武は自分でも説明できない潜在的な恐怖を感じていた。
「ま、それはイカリシンジ本人に聞けばいいかしら。さて、ストッキングも履いたし、残念ね。もう、ブラ
ウス着てしまうわよ」
「残念ではないです。早く着てください」
「なによ、つまんないわね。じゃあ、もう一体のエジプトの方はどんな感じだった?」
 夕呼のからかいをツッコミでかわし、武はジャイアント=ロボに思考を移す。あのエジプト神像を模した
巨大ロボットに睨まれたのも、ある意味、恐怖体験だ。
「エヴァに比べれば、機械的で、大きさは海神をふた周りくらい大きくした感じでした。重量感が半端じゃ
なかったです」
 それと、大作のパーソナルデータでロックされていて、彼でしか動かせないとも付け加える。
「戦艦を小さくしたみたいな迫力がある機体でしたね」
 武の言葉が終わると、夕呼は少し考えるように「ふ~ん……」と相槌をうつ。それから、おもむろにタケ
ルに訊いた。
「で、これもアンタの見立てでいいから教えて。その二体を相手にして、あたしら、勝てると思う?」


 夕呼が武からアレコレ情報を仕入れている時、悠陽も純夏からシンジについて、色々と聞いていた。
「……シンジくんは、『いい人』です♪ あたしと武ちゃんが、太鼓判押しちゃいます!」
 先ほど、真那の前で披露した自説を、悠陽の前でも言っている純夏であった。
「そうですか、鑑がそう言うのでしたら、碇シンジという御仁は、きっと好ましいお人柄なのでしょうね」
 真耶に髪を梳いてもらいながら、純夏の得意げな自説を微笑ましく聞いていた。
 悠陽の下にも、まりもが夕呼に送った第一報と同じ精度の情報が届いている。異世界から来た、という突
拍子もないシンジの出自には、驚かされたが、光神の関係者である可能性が高い彼らなら、それもあるかと
納得している。
 これから、礼を言おうとしている人物が、人柄的に好ましい人物であるのは、悠陽にとっても嬉しく思え
た。彼女の中に、光神の関係者は好人物であってほしいという幻想のようなモノがあったのだろう。
「それとですね。シンジくん、リョウマ様の知り合いだそうです。何でも……」
「……え、か、鑑」
 続いた純夏の報告に、悠陽は驚愕に、思わず言葉を挟んだ。
「こ、光神様を知っている、のですか、その碇という御仁は?」
 神様を知っている、と言われ、悠陽は混乱を言葉にだす。純夏と武を助けた巨人の名が『リョウマ』だと
ういうのは、ごく僅かな者しか知らない事実。
 佐渡島で光神現象を起こした機体がいたのだから、光神に属する者たちであるとは思っていた。だが、悠
陽が三年近く追い求めていた光神の事を、あっさり『知り合い』と言われた悠陽の戸惑いは大きい。
「えぇ、説明難しいんですけど……」
 ゲッターロボとか、自分たちもリョウマに助けられて、この世界に来たとか、シンジと大作の話を思い出
し思い出し、訥々と語る純夏。聞いている悠陽と真耶は、神格化していた光神が、シンジ達の世界の兵器で
あったことに、そしてリョウマが、人であったこと、ただ驚くばかりだ。
「……私は、考えを改めなければなりませんね」
 高鳴る鼓動を抑えるように、胸に手を当て、悠陽は呟いた。
「光神様、と私たちが呼んでいた存在は、天界から降臨された神属などという不確かなモノではなく、血肉
を持った、人であったのですね」
 夕呼と違い、悠陽は、光神に神秘性を求めていたところがあった。夕呼は徹底して現実路線から、光神を
見ていたのを思うと、改めて、夕呼の明晰な頭脳に感心させられる。
「はい、リョウマ様、『流 竜馬』さんが、本当のお名前らしいのですけど、シンジくん曰く、本当に便り
になる人らしいです」
 そこで、純夏は、自身も感動したシンジと竜馬とのエピソードを語り始めた。


「あの二体と…… なん……」
 夕呼の問いは、シンジが武達に見せてくれた信頼を疑っているとしか思えなかった武、声を荒げ、夕呼に
反発しようとしたのだが……
「別に、連中のことをどうこう思っているわけじゃないわよ。あたしの思考ロジック、いい加減理解しなさ
い」
 と、夕呼に窘められ、そうだ、と思い直す武。夕呼は、何があろうと、常に最悪を想定して物事を進めて
いく。この質問も、そのロジックに従ったモノで、特に他意はないのだろう。
 コホンと咳払いをして気持ちを落ち着け、夕呼に言われたことを考えてみる。シンジのエヴァは、想像も
出来ない防禦手段を持っていて、大作のジャイアント=ロボは大和級の主砲の一斉射でもしない限り、傷一
つ付きそうもない迫力があった。
 実際に戦闘をしているところは見ていないのだが、シンジの語った宇宙怪獣との一大決戦を参考に、勝手
に想像してみると……
「……日本帝国総軍を持ってしても、何とかなるかどうか、ですね」
 あの二体をどうにかするには、地図を変える覚悟での戦艦による一斉射撃とか、帝国中のS―11をあり
ったけ叩き込むとか、戦略核を数発叩き込むとかしか、武には浮かばない。
 武の、大仰とも言える評を聞いた夕呼の反応は、
「……そう」
 と短いものだった。と言うことは、夕呼も自分と似たりよったりの予想をしているのでは、と武は考える。
「はい、目隠しとっていいわよ。さて、どうしましょうかねぇ~~♪」
 夕呼に言われ、目隠しを外すと、いつも通りの白衣に国連軍の軍服を纏った夕呼と、オルタネィティヴ4
の特注軍服にウサ耳を揺らす霞の姿があった。思えば、先ほどの二人の強化装備姿は、レアだったなぁと武
は思い、青春の1ページとして心に刻んでおくことにした。
「で、ここからが大事なんだけど……」
 こちらを見つめる霞のジト目を、気のせい気にしないと受け流し、夕呼の言葉の続きを待つ武。夕呼の訊
きたい事は大体予想がつく。
「佐渡島で、光神現象を引き起こした第三の機体について、ですか?」
「ご明察、やるじゃない白銀」
 佐渡島へ現れた機体は三体、それは衛星画像からも確認されている。だが、武たちが今、確認できている
のはエヴァンゲリオンとジャイアント=ロボのみ。夕呼が烏賊頭、と名づけた最後の機体の所在は今持って
定かではない。
「その件については、シンジたちは何も言っていません。でも……」
「隠している、とは思えない。あえて、喋っていないだけってトコ?」
 武が続けようとした言葉を、夕呼が代わりに言った。驚きを顔にだす武をからかうように夕呼が言う。
「リスクを避ける為に、2:1に分かれたんでしょ。抜け目ないのよ、連中」
 もし二人に何かあったとしても、もう一人残っていれば、対応ができる。それを、この世界に来てすぐに
選択できるのは、たしかに抜け目ないと武も同意する。
「あの烏賊頭が、光神関係なのは、観測結果から見て間違いないのよ。一番会いたいヤツがいないのは、ち
ょっと不満よねぇ」
 夕呼はベッドに腰を下ろし、持ち込んだトランクに入っていたノートPCを広げる。起動してすぐに映し
出されたのは、消息不明の烏賊頭が、エヴァをぶら下げたロボと共に、能登半島上空を飛行していく姿。衛
星画像の他に地上から撮影された映像の中で、一番鮮明だったものだ。武が、モニターを覗き込むと、
「この烏賊頭、ハイヴから光って出てきた時、全然別の形だったのよ」
 夕呼が、そう言って、スライドパットを操作する。新たにでてきた映像は、赤い何かが、光の中から飛び
出していく姿。烏賊頭とは、色も形もたしかに違う。
「これ、ハイヴが光神現象で崩壊した直後の映像、この後……」
 その赤いのが、何か光学兵器のようなモノを数度発射して、周りにいたBETAをかなりの数、なぎ払って
いる。そして、生き残っていた光線級数体が、レーザーを発射した時だった。
「!?」
 赤い何かが三つに分かれた。的が分割したことで、光線級のレーザーは虚しく空を裂いただけだ。そして、
その三つの何か―戦闘機のように見えるが形が独創的すぎる―は、再び一つに集合して、
「烏賊頭の出来上がり、ってね。で、この後、残像だして陸上移動物体の世界記録ぶっちぎって、佐渡島か
ら逃げ出したのよねぇ」
 動画が終わった。ちなみに、この烏賊頭、最高マッハ1.3で走り抜けたのよ、佐渡島。と呆れた口調で
付け加える夕呼。そりゃ、残像もでるだろうと、武も呆れてしまう。
「しかし、赤いのが、どうやって烏賊頭になったんでしょうね?」
 武はその変身システムが想像もつかず、一緒にモニターを覗き込んでいた霞と顔を見合わせる。霞も、見
当つかないのか、首をかしげて、疑問を呈していた。
「ちょっと、近いわよ、二人とも。まぁ、推論はいくつかあるけど、考えれば考えるほど馬鹿らしい答えに
なりそうだから、考えるのを辞めたわ」
 肩ごしに覗き込んでいた二人をたしなめ、パタンとノートPCを閉じる夕呼。夕呼に答えが出ないモノを
自分が考えても出るわけないと武も考えるのをやめる。後でシンジにでも訊けばいいのだ。
「白銀、悠陽殿下が今回の話し合いでドコまで持っていくつもりか、聞いてる?」
 喉乾いたから、お茶でも淹れてと催促した後、部屋に備え付けのティーセットでお茶を淹れる武に、夕呼
が訊いてきた。訊いた本人は、髪を霞に梳かせて、身だしなみの最終調整に入っている。
「一刻も早くお礼を言いたい、は殿下の本心だと思いますよ。その先については、聞かされていません」
 夕呼が『政治モード』に入ったのを武は感じた。こうなった彼女は、一寸の油断もできないキレ者になる。
武は言葉に気をつけながら、事実のみを告げる。
「ふぅ~~ん、白銀と鑑を送ったくらいだから、やる気十分なのはわかるけど、どこまで持っていくつもり
なのかしらね、殿下は」
 武の方をみず、壁を見つめながら夕呼は呟くように言う。ここで余計なことを訊くのは危険だとわかって
いた武だが、好奇心に負けて口を開いた。
「あの、博士は、ドコまで持っていくつもりなんです?」
 武は、湯呑を渡しながら訊いた。返答はだいたい予想がつく。お茶を受け取った夕呼は、ゆっくりと武に
顔を向けた。その顔には笑顔が浮かんでいる。武は、その笑顔に潜む静かな迫力に、冷や汗が流れるのを感
じた。
「決まってるじゃない。連中丸ごと、取り込むのよ」


「……そうなのですか。リョウマ様とは、そのようにご立派な御仁なのですか」
 純夏の話を聞き終えた悠陽は感無量、と言った風に目を閉じる。シンジを助けると言った約束を、自身が
窮地に陥っている状況でも果たした、リョウマとはそんな人物だと悠陽は思ったようだ。
「鑑、月詠……」
 再び目を開いた悠陽の瞳には、強い決意の光があった。
「私は、信じてきました。鑑が受けた光神様の予言を……」
 悠陽が言う、予言。『待っていろ、救いは来る』というシンプルな言葉。
「それが叶う日が来た、私にはそう思えてなりません。ですから……」
 悠陽の言下に漂う迫力に、純夏は悠陽が『熱血モード』に入ったことを悟った。こうなった彼女はテコで
も主張を曲げない頑固者になってしまう。今日も、このモードになり島に行くと言った彼女を諌めるのに、
どれだけ苦労したことか…… 先行きの不安に純夏は溜息が出そうになるのを、必死にこらえた。
「私は、お願いしてみるつもりです。日ノ本だけでなく、世界からBETAを駆逐する為、私たちと共に、戦
っていただきたいと!」
 そう高らかに宣する悠陽。真耶が、ご立派ですと追従の拍手なんぞしている。それを見ていた純夏は、
『そんなお願いしなくても、シンジくん、既にやる気ですよ』と言いたいのを、グッとこらえるのであった。


「え、御剣さん?」
 真那に持ってきてもらった、現政威大将軍煌武院悠陽が、十四歳で即位した時の様子が載った新聞の縮刷
版を見たシンジは、デカデカと一面殆どを飾っている写真を見て、驚きの声を挙げた。
 シンジが真那に頼んだのは、これから会う二人のことを、失礼にならない程度に教えてほしい、というこ
とだった。この世界この日本の住人ではないシンジにはまったく実感できないが、これから会う人物のうち
の一人は、この日本を代表する人物であるとのこと、さすがに二人を目の前にした時、どちらがその人物か
わかるくらいの予備知識は持っていたい、そう思ったシンジが真那にそのことを頼んだら、彼女はこの艦の
図書室に直行し、この縮刷版を持ってきたのだ。
 そして、煌武院悠陽十四歳即位の姿を見たシンジが、その容姿がさきほど島で会った御剣冥夜に、似すぎ
ていることに驚いた、という訳だ。
「シンジ様は、冥夜様をご存知なのですか?」
 驚きの声を挙げたのは真那も同じ。ちなみに彼女、今はシンジと共にベッドに腰をかけて、密かな密着状
態に至福を味わっていたところだった。
「えっと、この世界に来て、最初に接触したのが、新潟基地の訓練兵の皆さんと、その教官さんだったんで
すが……」
 シンジの、ハテナマークを浮かべまくった困惑の表情に、再びトキメキながらも、真那はあるセリフが気
になった。
「この、世界、ですか?」
 その言い方だと、シンジはこの世界の住人ではない、という事になってしまう。この国、の言い間違いか
とも思ったが、困ったような笑顔になったシンジを見ると、今のであっているようだ。
「聞いてなかった、ってことは言っちゃダメだったのかな。まぁ、内緒ですよ」
 と人差し指を口の前に立てるシンジに、目眩を覚えそうなほどのトキメキを感じながら、コクコクと頷く
真那。先ほどまで控えていた神代がこの場にいたら、上司の変貌に、困惑を超え混迷を覚えたことだろう。
「……では、碇様は、その異世界から来られた方なのです、か?」
「はい。まぁ、世迷言だと思って聞いておいてください」
 詳しい説明ははぐらかされてしまったが、それは事実なのだろう、と真那は直感でそう感じていた。それ
なら、シンジについての説明を純夏に求めた際の、彼女のあやふやな反応も納得できる。
「あ、それで、なんで御剣さんが、ここに写っているのか、よければ教えていただきたいんですけど?」
 まさか、冥夜と面識があるとは思ってもいなかった真那。彼女が仕えるべきもう一人の主君である冥夜と
悠陽の関係は、城内省の中でも秘中の秘、と言ってもいいことがらなのだが……
「ここだけのお話、ということにしていただけますか?」
 と真那も口の前に人差し指を立て、シンジに言う。シンジが頷くの待って、極秘事実をあっさり漏洩して
いた。
「碇様とこれからお会いになる、悠陽様は、御剣冥夜様の双子の姉君であられます」
 真那が緊張に震える声を抑えて話した事実を、シンジは、そうですかとあっさり受け入れる。
「双子…… 似ているのも当たり前ですね。名字が違うのは、何か複雑な事情があるんですね、わかりまし
た」
 それ以上は訊かない、とシンジは暗に真那に示したのだろう。この国の民にとっては衝撃の事実を聞かさ
れも、シンジにとっては事実以上の何者でもないのだろう。心に動揺は見られない。
 秘中の秘を打ち明けても、あっさり受け入れてくれ、しかも必要以上のことを聞こうとしないシンジの心
根に、真那は頭がクラクラするほど、トキメキを覚えていた。失神するのも近いかもしれない。
 トントン、とドアがノックされる音がし、「よろしいですか?」という神代の声。
「あ、どうぞ」
 とシンジが応えると、ドアが開き、かしこまった神代が敬礼をして告げる。
「貴賓室の準備が整ったとのことです。殿下、香月副司令もそちらに向かわれました」
 時計を見ると、四十分経っていない。準備が思ったより早くできたので、予定を早めたのだろう。
「碇様はよろしいですか?」
 ベッドから立ち上がり、真那が訊くと、シンジは気負い無く、
「はい、大丈夫ですよ」
 と答えて立ち上がった。
「おかしなところ、ありませんよね?」
 自分の服装を確認しながら、そう真那に尋ねるシンジ。真那の目から見たシンジは、白基調の学生服が神
懸って似合って見えた。自分のチョイスは間違いなかった、と確信を持ちながら答えた。
「とても、凛々しゅうございますよ、碇様」
 声に喜色が載るのを隠せない真那が、そう太鼓判を押す。
「では、行きましょうか」
「はい」
 神代を先導に、シンジ、真那と続いて部屋を出て、会談の場である貴賓室に向かう三名。
 日本帝国政威大将軍、オルタネィティヴ第四計画最高責任者、そして異世界からの来訪者、三者の会談が
今、始まる。


 【ちょいと、後書き】 上の『今、始まる』を書くとき、素で『今、ようやく始まる』と書いてしまいました……  ホント、ようやくだねぇ……



前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.049232006072998