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No.18953の一覧
[0]  マブラヴ+SRW α アフター (チラシの裏から移転)[まくがいば~](2014/03/30 23:28)
[1]  マブラヴ+SRW α アフター  プロローグ[まくがいば~](2014/03/30 02:06)
[2]  マブラヴ+SRW α アフター  第一話[まくがいば~](2014/09/14 03:31)
[3]  マブラヴ+SRW α アフター  第二話[まくがいば~](2014/03/30 02:04)
[4]  マブラヴ+SRW α アフター   第三話[まくがいば~](2014/03/31 20:49)
[5]  マブラヴ+SRW α アフター   第四話[まくがいば~](2014/03/30 02:03)
[6]  マブラヴ+SRW α アフター  第五話[まくがいば~](2014/03/30 02:03)
[7]  マブラヴ+SRW α アフター  第六話[まくがいば~](2014/03/30 02:03)
[8]  マブラヴ+SRW α アフター  第七話[まくがいば~](2014/03/30 02:02)
[9]  マブラヴ+SRW α アフター  第八話[まくがいば~](2014/03/30 02:02)
[10]  マブラヴ+SRW α アフター  第九話[まくがいば~](2014/03/30 02:01)
[11]  マブラヴ+SRW α アフター  第十話[まくがいば~](2014/03/30 02:01)
[12]  マブラヴ+SRW α アフター  第十一話[まくがいば~](2014/03/30 02:00)
[13]  マブラヴ+SRW α アフター  第十二話[まくがいば~](2014/03/30 02:00)
[14]  マブラヴ+SRW α アフター  第十三話[まくがいば~](2014/03/30 01:59)
[15]  マブラヴ+SRW α アフター  第十四話[まくがいば~](2014/04/12 00:53)
[16]  マブラヴ+SRW α アフター  第十五話[まくがいば~](2014/04/24 01:00)
[17]  マブラヴ+SRW α アフター  第十六話[まくがいば~](2014/06/16 21:14)
[18]  マブラヴ+SRW α アフター  第十七話[まくがいば~](2014/08/24 21:53)
[19]  マブラヴ+SRW α アフター  第十八話[まくがいば~](2014/08/24 21:56)
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[18953]  マブラヴ+SRW α アフター  第十一話
Name: まくがいば~◆498b3cf7 ID:7e5247df 前を表示する / 次を表示する
Date: 2014/03/30 02:00
 網膜に投影される海原。変わらないようで変わっている景色に、シンジは飽きることなく眺めている。考
えてみると、自身が運転しない乗り物に乗ること自体が、久しぶりだ。近くに、レイやアスカ以外の女の子
の体温があることが、最初落ち着かなかったが、その気恥かしさも、彼女の姿がよく見えないお陰で、かな
り薄れている。
「体調は、大丈夫そうだな」
 シンジのバイタルを小まめにチェックしている、武が言う。
「あと、十五分くらいで、戦艦『加賀』に到着する予定だ。まぁ、代わり映えのない景色だけど、楽しんで
くれ」
「うん、ありがとう」
 武に礼を言うシンジ。彼なりの安全運転をしてくれているおかげか、加速病の兆候は感じられない。
 シンジは、この戦術機という機体が、なんとなく自分の世界の可変戦闘機、バルキリーシリーズの、ガウ
ォーク形態に似ているな、と感じていた。この機体で、あの怪獣たちと、どのように戦っているのか、その
辺りにも興味がある。
「……あのさ、シンジ。答えたくなかったら答えなくてもいいんだけど」
 少し間を置いて、武が遠慮がちに訊いてくる。
「お前たちの世界って、凄い戦争が何度もあって、最後に銀河系の真ん中で大戦争やって何とか勝ったんだ
よな」
「勝ったのかどうかはよくわからないけど、生き延びたね」
 あれを勝利、と言える自信はシンジにはない。バスターマシン三号は、銀河系中心部に多大な被害を与え
た。そこまでする権利が人類にあったのか、という者もいる。
 でも、生き延びることはできた。それを勝利と言えるのなら、シンジ達は間違いなく勝利したのだろう。
「でも、お前はナントカって敵と戦って、こっちに来たんだよな」
 やはり、武はそのことに気づいていたのか、とシンジは思う。これから平和を取り戻す為に戦地に赴く訓
練兵の子たちには、その事に気づいて欲しくなく、話をぼやかしていたのだ。その心情を察して、それを彼
女たちの前で言わなかったことに、シンジは感謝した。
「そんな凄い戦争に勝っても、平和はこなかったのか?」
「……あ、そっか」
 武の問いかけに、純夏もその事実に気付いたようだ。シンジは、今の自分の生活を思い出しながら、言葉
を紡ぐ。
「恒久平和、っていうのは難しいみたいでね……」
 シンジは自分たちの世界の情勢を二人に語り始めた。
 自分たちが地球に帰り着いてしばらくの間、地球圏はたしかに平和だった。だが、すぐに争いの火種は生
まれ、昨年、南米の一部で、独立運動が激化したことによる武力闘争が起きている。BF団やバイオネット
という組織によるテロ活動も散発的に起きていたし、今はプラントと地球連邦政府との間に、再び軋轢が生
じる気配がある。
 シンジの周り、日本地区は平和と言ってもいい状況だった。だが、それは自分の周りだけ、という思いは
大きい。
 実際、今回のBF団の攻勢は、南米争乱以来、カルネアデス計画以降最大の争乱と言える。なぜ、彼らは
平和を享受できないのか、そう問いかけたい思いはある。
 でも……
「それでも、僕たちが戦ったことは無駄じゃないと思う」
 あの時、命をかけて戦ったからこそ、自分の世界は未来を勝ち取れた。争いが何度起きても、その先に平
和が来ると信じて、戦い続けなくてはいけない。
 それが、あの終焉の銀河から戻った自分達の使命だと、シンジは思っている。
「だから、戦い続けているってわけか。勝利を無駄にしない為に」
「そうだね。自分にできるかぎりって制約があるけど……」
 武の言葉に、シンジは頷く。
「シンジくんって、やっぱり強い人なんだ」
「え?」
 すぐ傍にいる純夏が言う。その言葉には、素直な賞賛があり、くすぐったい思いにかられるシンジ。
「あぁ、俺もそう思う。強さってモンには色々な種類があるけど、お前は強いよ、間違いない」
 武も続く。そんなことないよ、と謙遜したくなるが、二人からの賛辞は素直にうれしく思え、シンジは、
「ありがとう」
 と答えた。声に照れがでてしまい、それに武と純夏が笑う。
 シンジは、この二人に出会えた偶然に、改めて感謝した。仲間と言える人がほとんどいない異世界に跳ば
された身だけど、彼らとは、共に戦える仲間になれる。そうシンジは感じていた。
 話している間に、邂逅地点は間近になっていたようで、
「さて、もう少しでランデブー地点のはずだが…… お、来てる来てる」
 水平線に巨大な艦影が見えてきた。海上戦艦、シンジの世界ではトンと見なくなった歴史漂う威容が、ど
んどん近づいてきている。何サンチかわからないが、無駄に大きい無骨な艦砲が、シンジの中の男のロマン
を掻き立てていた。またテンションが上がっていくシンジ。
「戦艦『加賀』。日本が誇る大和改級の一隻、あそこで殿下たちに会ってもらうって、また興奮しているな」
 武の言葉も耳に入らないようなシンジ、バイタルも再び上昇中。エヴァやジャイアント=ロボに大いに驚
かされた自分たちだが、自分の世界の物が異世界人であるシンジを興奮させられるのは、何だかやり返せた
ようで心地よい。武はそう思った。
「シンジくんって、意外と子供っぽいトコあるよね」
 純夏の笑いを含んだ評に、武も同意する。それと、素の姿を武たちの前で出してくれていることが、シン
ジなりの信頼の証のようであり、それが嬉しく思える武たちだった。
「さて、純夏、着艦許可貰ってくれ」
「はい、了解」
 シンジと悠陽、夕呼との会談で世界はどう動くのか、武にはまったく想像ができない。だが、この世界で
シンジ達の力に、できる限りなってやりたい。武はそう思っていた。
 加賀のヘリポートに、ゆっくり丁寧に降りていく瑞鶴改。純夏の連絡を受け、艦上では受け入れの為に厳
戒態勢に入っている。
「やっぱり、まだ殿下と博士は来ていないようだな」
 島を立つ前の通信では、夕呼は新潟を出るところ、悠陽も出来うる限り早く駆けつけると言っていたが、
やはり武達が一番乗りのようだ。
 加賀に近付きながら徐々に減速、甲板上のヘリポートの指定された場所に誰もいないのを確認し、跳躍ユ
ニットをふかしながら、緩やかに降下、そして着地。幸いにも、シンジの体調にまったく問題はみられない。
「着いたぜ、お客さん」
 一仕事終えた武が、シンジに声をかけると、
「いやぁ、いい経験できたよ。ありがとう」
 と喜色を隠しせず、子供のように興奮している。こうした様子のシンジを見ていると、年齢より下の雰囲
気が見え微笑ましい。
「さて、出迎えはどうなっているのかなっと……」
 ヘリポートには誘導担当員の姿はない。代わりに赤と白の斯衛の軍服に身を包んだ四人が姿を現した。普
段は国連軍新潟基地に詰めている、月詠真那中尉率いる第19独立警護小隊の面々だ。悠陽は彼女が心から
信頼できる面子を総動員しているようだ。
 戦術機着艦時用の、簡易昇降タラップを、真耶の部下である神代 巽、巴 雪乃、戎 美凪ら三少尉がガ
ラガラ引いている。なるべくシンジに関わる人を減らしたい、という思惑が悠陽か夕呼にあるのだろう。
 瑞鶴改に片膝をつかせ、降着姿勢を取る。操縦ユニットをスライドさせると、潮を含んだ外気が流入して
きた。
「シンジ」
 前部操縦席で、純夏相手に簡易ジャケットと拘束を外す為に、ジタバタしているシンジに武は声を掛ける。
「なに?」
 振り向くシンジと目があった。その瞳は会った時と同じ自然体で緊張がかけらも感じられない。本当に、
大したタマだと感心しつつ、何と声を掛けようかと考える武。だが、掛ける言葉はこれしか浮かばなかった。
「頑張れよ」
 先ほど、夕呼から聞かされた情報が本当なら、シンジはこれからこの世界で安穏と過ごすことは、難しい
だろう。武がどれだけ力になりたくて、及ばない局面も多々あるはず。
 この世界でシンジ達が望む形の道を切り開いていくには、これからの会談が大事な一歩。
「うん、わかっている」
 シンジがそう言って、笑顔を返す。清々しいまでに、覚悟を決めているのがわかる笑顔だった。自分の思
いを全てわかった上で返されたその笑顔を見て、武はその境地に達することができるシンジに憧憬と、それ
とほんの少しの嫉妬を覚えてしまい、そんな自分に心の中で苦笑する。
「じゃあ、行こうか」
 シンジが、純夏の手を借りて瑞鶴改を出る。これから、この世界はどう動いていくのか。その試金石とも
言える会談が、始まろうとしていた。


 新西暦の世界では……

サニー・ザ・マジシャン。その少女のことを一言で評すとするなら、『地球圏でもっとも愛されている犯
罪者』であろうか?
 彼女が公の場に初めて姿をあらわしたのは、二年ほど前、カルネアデス計画成功から一段落がついた頃だ
った。地球圏すべての放送システムをジャックして、
『BF団、サニー・ザ・マジシャンと申します。以後、お見知りおきを♪』
 と今のようにポーズを決めて、いきなり『MAHARICK☆MAHARITTA~♪』と歌い始めた、この大多数
の民衆の唖然呆然とさせ、一部趣味的な民衆の心を鷲掴みにしたパフォーマンスののち、従来のBF団と一
線を画す行動を取り始めたサニー。
 彼女は破壊活動等に参加せず、地球連邦内の数多い腐敗の糾弾究明に乗り出し、証拠をこれでもかと提示
した後、勝手に『お仕置き』と称した制裁を加えて回りだしたのだ。
 この非合法活動は、連邦の腐敗体質に嫌気がさしていた民衆に喝采を持って迎えられ、その活動が続くに
つれアンダーグラウンドでの人気が、どんどん表層化していき、今では非公認のファンサイトを多数もつに
いたっている。彼女の行動の真意、思惑がBF団の新たな策謀かウケ狙いかも未だ不明。だが、サニーの人
気は今や真っ当な芸能活動をしている人以上、その影響力は計り知れない。余談ではあるが、罪人を勝手に
裁いたのちに行われる、文字通りのゲリラライブは、非公表にも関わらず、千人単位の人が集まることがあ
る程だ。
 その彼女、サニー・ザ・マジシャンが、どういう経緯で不倶戴天の敵、国際警察機構のエキスパートであ
る草間大作を慕うようになったのか、その顛末は置いておくとして、彼女は現れた。
 大作への愛の使命に燃えて。   

 サニー・ザ・マジシャンの突拍子もない登場に、度肝を抜かれていた一同。だが、『BF団』、十傑集とい
う単語を聞いて、鉄也と宙や五飛が反射的に立ち上がる。鉄也は光子銃を構え、宙はニューサイボーグにチ
ェンジし、五飛も拳銃を抜いた。
 が……
「マハリク☆マハリタ♪」
 いつの間にかサニーが手に持っていた小さなスティックを、呪文と同時に振るう。
すると、ポンッというコミカルな音と共に、光子銃と拳銃の銃口から大きな造花が生え、ニューサイボー
グの宙は、
「うわわ!」
 シャボン玉のような大きな膜に包まれ、浮かされてジタバタしている。せっかくの超人的能力も、重力の軛
から外されて、身動きできなくされている。
「皆さん、落ち着いてくださいませ。危害を加えるつもりはございませんわ」
 唄うような声で言うサニー。鉄牛が、
「あ~、お前ら、落ち着いてくれ」
 と、諦観がにじみ出た態度で間に入った。
「この嬢ちゃんは確かにBF団で、十傑集だけど、こと大作がらみで俺たちに何かするってことは、多分ねぇ」
「多分、ではなく、絶対ですわよ、鉄牛様」
 鉄牛の言葉に修正を加えるサニー。
「愛する大作様の為にすべてを捧げることこそ、このサニーの存在意義です。他の有象無象に構っている暇
はございませんの」
 そう言って、ふたたび呪文を唱えると、造花は消え、宙はドスンっと落ちる。鉄牛の保証に、訝しみなが
らも鉄也と五飛は銃を収めて、宙は腰を摩り、イテテと言いながら変身を解く。
「えっと、大作の恋人、なの、この子?」
 状況がうまく飲み込めていないアスカが、サニーを指差し、呉や鉄牛に訊く。だが、『恋人』という単語
に敏感に反応したサニーが、
「恋人、簡潔にして完璧にして完全な表現ですわ、惣流=アスカ=ラングレー様♪」
 瞬間でアスカの前に現れ、その手を握り締める。その瞳に歓喜の星の輝きをアスカは見てしまった。
 歌うように、私は大作様の恋人~♪とクルクル回っているサニー。誰かツッコミなさいよと周りを見るが、
カトルは未だ呆然としているし、その隣の五飛は腕を組んで眉間に皺を寄せているだけ。
「ちょっと、いい……?」
 すると意外なことに、レイが手を挙げて発言する。この無表情天然ボケっ子がツッコミを、と意外な思い
でレイを見るアスカだったが……
「あとで、サインを頂戴……」
 ガタンと音を立てて突っ伏すアスカ。ボケにツッコミを期待した自分が馬鹿だったと、レイをひと睨みし
たのち、サニーに向き直るアスカ。
「はい、喜んで。綾波レイ様♪」
 花咲くような笑顔でレイに応じるサニー。そこでアスカは気づく。この少女は、自分たちのことを知って
いるようだ。どこで、自分たちのことをと疑問に思うアスカに、サニーは答える。
「簡単なことです、アスカ様。私と大作様は愛のテレパシーで繋がっていますの。大作様の記憶は、全て共
有しておりますので」
 顔に考えがでたのか、読心術の類か、アスカの内心に答えを返すサニー。ヌヌヌ、と先ほどまでBF団抹
殺を誓っていたアスカは、魔法チック乙女チックな少女に明らかに気圧されていた。
「繋がってんじゃなくて、おめぇが勝手に繋げたんだろうがよ……」
 そっぽ向いて、小声でボソっと呟く鉄牛に、
「なにか、おっしゃいまして、鉄牛様」
 と静かだけど、聞くと背筋が凍る声でサニーが返す。
「いんや、何でもねぇよ」
 とぶっきらぼうに答える鉄牛。この二人のやり取りから察すると、付き合いはけっこう長そうな感じだ、
大作とあっていない四年間の間に、いったい何があったのか、アスカは興味を覚える。
「はいはい、サニーさん。そろそろ本題に入ってもらえないかしら。あなたも佐渡島の件で来たんでしょ?」
 今まで口出しせず、事の推移を見守っていたミサトが、パンパンと手を叩いて割ってはいる。
 あら、いけませんわと口元を抑えて、またクルクルと回ってモニター前に移動するサニー。何で普通に移
動できないかと思うアスカだが、開きそうな口を必死に閉じておく。ここで何か言ったら、また話が脱線し
そうだし。
「まず大作様他の生存根拠について、説明させていただく前に……」
 ポンとサニーがモニターを叩くと、大怪球ビックファイヤの線図が現れる。入れていないデータが突然現
れ、データを管理していた日向マコトが目を丸くしている。
「この度のBF団の作戦目的について、簡単に説明させていただきますわ」
!?
 敵側の組織の人間が、あっさりと内情をばらそうとしている。
「ちょ、ちょっと、アンタ!?」
 思わず口が出てしまうアスカ。言ってから、自分のツッコミ体質を呪うが、そのまま突っ走るしかない。
「いいの? その、アタシ達にそんな機密みたいなこと喋っても?」
「構いませんわ。BF団が総力を上げた大作戦でしたが、失敗してしまいたし……」
 そこで彼女はわずかに顔を背け、皆から顔を隠すようにして、
「羽扇親父の立案した作戦ですもの、いい気味ですわ」
 と、毒成分の入っていそうな声で、ボソッと呟いた。どうやら、BF団も一枚岩ではないのだな、とアス
カは感じる。
「まず、この大怪球『ビック=ファイア』について、説明させていただいきます。直径一キロを誇る、この
オディロン=ルドンの絵を彷彿させる巨大眼球モドキ、これに私たちが崇拝し、全霊を捧げるビック=ファ
イア様のお名前が冠されたのは……」
 そこで、タメを作るように間を置くサニー。
「この大怪球は、ビック=ファイア様の能力をコピーしたもの、だからです」
 ルドンって誰よって、近代美術に造詣が深くないアスカは思ったりしたものだが、能力をコピー発言に、
驚かされてしまう。
「能力とは、エネルギーを吸収してしまう、あのフィールドのことですか?」
 今まで諦観無言で、事の推移を見守っていた呉が口を挟んだ。興味が抑えられなかったようだ。ビック=
ファイアがどんな存在なのか、アスカにはわからないが、そんなトンデモ能力を個人で発現できるとは
さすがに悪の秘密結社の総領。
 と、思っていたのだが、サニーは、はぁ~と態とらしい溜息をついて、
「やはり、理解していませんでしたのね、ビック=ファイア様の能力を」
 と、呉の見解を否定する。
「で、では……」
「あの大怪球は、そのビック=ファイア様の至高の能力の一つ、『アンチ・エネルギー・フィールド』を再
現する為に作られたのです」
 吸収、ではなく、抹消もしくは相殺、それがビック=ファイアの能力。しかも一つというからには、他に
も何かあるのだろうか。やはり、トンデモ人間達の総領は、その上をいくトンデモぶりみたいだ。
 サニーの説明は続く。
「それを人工的に再現したら、あの大きさになってしまったそうです。他にも磁力線は消せないとか、自身
300メートル圏内のエネルギーは消滅させられないとか、様々な欠陥が生じて完全コピーには至らなかっ
たようですけど……」
 またそこで、顔を背けるサニー。まぁ、羽扇親父の造らせたモノですし……と、また黒く呟いている。サ
ニーはその羽扇親父とやらと、よほど合わないのだろう。
 ポンポンとサニーがモニターの端を叩くと、線図だった大怪球の画像が、3Dになり、そして、分割し、
内部の状況まで表示された。さすがに核である直径300メートルのアンチ・エネルギー・フィールド発生
装置のトコロには『SECRET』の文字があるが。
「ふむ、この核の部分を覆う鎧として、あの超絶的な内蔵火器群があったわけですか……」
「しかも、そこはアンチ・エネルギー・フィールドの影響を受けない。上手くできていますね」
 呉とカトルが感心して、大怪球の内部を分析している。今、話すところはソコじゃないでしょうとアスカ
が突っ込もうとしたら、
「サニーさん、質問いいですか?」
 後ろに座っているキラ=ヤマトが、挙手して発言を求めた。
「はい、キラ=ヤマト様」
 学校の先生のように、質問を促すサニー。この場の空気は、完全にこの魔法メルヘン少女に仕切られてし
まったようだ。アスカはふと先程まで思いつめていた早乙女博士を探す。椅子に座ってミチルに介抱されて
いる早乙女博士、張り詰めていた気が緩んだか弾けたかしたようで、完全にグロッキーモードになっている。
まぁ、無理が重なっていたようなので、あのまま休んでもらったほうがいいかな、とアスカは思った。
「あの瞳孔を模したあのブロック、そこだけ独立しているけどあれってもしかして」
 キラの言葉に、モニターの分割図を見ている。確かにあの悪趣味な瞳部分は、独立した構造をしていた。
瞳孔に見えたところは、別に球体構造になっている。
「タマの中にタマがタマタマあったのね……」
 隣でボソッと寒い事を呟いているレイは意図的に無視、この娘はいったいドコに向かっているのか、アス
カは同居人として心配を超え、不安すら覚える今日この頃だ。
「ジャイアント=ロボ捕獲用ブロックですか?」
 驚きの視線がキラに集まる。サニーは手を叩いて、賞賛でそれを肯定した。
「さすが、スーパーコーディネーターのキラ=ヤマト様♪ 国際警察機構のお二方、キラ様はこの短いやり
取りだけで、正解に辿り付きましたわ」
 キラの言葉に驚愕を隠せない呉学人と鉄牛。大怪球にロボを捕獲するためのスペースが作られていた、そ
の事実が意味することを考えると、答えは信じられないが一つしかない。
「大怪球ビック=ファイアは、ジャイアント=ロボを捕獲する為に……」
 認めたくない事実を、怖れるように口に出す呉学人。
「ロボだけではありませんわ。大作様の御身も、BF団の目的でございましたの。そして、今回の一連の作
戦は……」
 サニーの切った言葉の続きを、呟くようにアスカが繋いだ。
「ジャイアント=ロボと大作を手に入れる為にやったって事?」
 自分で口にしながら、アスカは自分で口にしたことでありながら、その事実に半信半疑になってしまう。
この一週間、世界を巻き込んだこの争乱の目的が、ロボと大作の捕獲にあったとは言われても、やはりすぐ
には信じられない。
「つまり、この一週間、世界は……」
 サニーは、そこでバンと大きくモニターを叩く。そしてそこには羽扇で顔を隠し、上等そうなスーツに身
を包んだ細身の男性が映っていた。これが先ほどから言われている羽扇親父だろうか?
「組織の都合で顔が出せないのですが、この男、策士、諸葛亮孔明の掌の上だったのです!」
 ぐぬぬ、と力強く拳を握りしめ、今までの可憐イメージを払拭せんばかりに悔しそうにするサニー。この
少女は確実にこの策士孔明とやらを嫌悪している。それだけは確信できたアスカだった。
「あら…… はしたないところをお見せしてしまいましたわ」
 コホンと咳払いして、自身を落ち着けるサニー。呉が顔を手で覆い、サニーとは対象的にシリアスに考え
を巡らせている。
「我々は前提を間違えていた、という訳ですか……」
 呉の言葉は、作戦に参加した者すべての気持ちを代弁したものと言っていいだろう。だが、ロボの捕獲が
目的というのなら、納得いかないことがある。
「あの、サニーさん」
 隣に座るカトルもアスカと同じ疑問を持ったようで、挙手してサニーに訊く。
「なら、何故、パリでジャイアント=ロボを捕獲しなかったのですか?」
 カトルの問いかけに、アスカは小さく頷く。状況を聞いた限り、パリに大怪球が出現した際、ロボは行動
不能に陥るほどの大ダメージを受けたはずだ。戴宗が命を賭けて、ロボと大作を護ったとも聞いている。だ
が、地上の大都市殲滅が目的ではなく、ロボの捕獲が前提の作戦であるなら、佐渡島での攻防戦規模の戦力
をパリで用意していれば、ロボの捕獲は容易であったはず。
 わざわざロボを強化させる時間を作り、佐渡島まで決戦を持ち越した意味がアスカにも理解できなかった。
「それは、呉先生の方が思い当たるのではありませんこと?」
 サニーがその答えを呉に促す。呉学人は、サニーの言葉に思い当たることがあったのか、慄然とした顔で、
「……我々の手で、ロボのプロテクト・コードを解除させるためですか」
 と呻くように言う。
「正解ですわ」
 サニーの言葉に、呉は膝をつき、苦悩を示す。
「……我々は、孔明の策にまんまとはまってしまったのですね」
「慰めるわけではありませんが……」
 口惜しさに落涙せんばかりの呉に、溜息まじりでサニーが声を掛ける。
「あの羽扇軍師の戦略は、ホント、何とかと紙一重クラスの精密さです。今回の作戦も、地球圏での情勢を
全て読みきった上で、発動されたものですし」
「地球圏の現状、というと、特機の不在か……」
 今まで沈黙していた鉄也が言う。サニーは頷く。
 アスカも真ゲッター暴走事件に参加して思ったのだが、今の地球圏はカルネアデス計画から帰還後、もっ
とも手薄になっていたと言える。
 兜 甲児は自身の制作した宇宙船のテスト飛行、ひびき洸はそれに随伴、獅子王凱と大空魔竜隊は地球圏
代表として、ゼ・バルマリィ帝国の遷都記念式典に参加、コンバトラーチームとボルテスチームもボアザン
星復興計画に参加中、破嵐万丈、グッドサンダーチームも各々の目的の為、銀河の深遠に旅立っていた。
 イデオン、真龍虎王はあの霊帝との戦闘を最後に、その姿を見せていない。最強特機であるガンバスター
は、大気圏内での戦闘行為を基本禁止されている。
 そして、真ゲッターはこの二年間、起動できないでいた。今挙げたメンツの中で、一機でも地球圏に残っ
ていれば、状況はだいぶ違っていたはずだ。
「ヒイロが火星に釘付けなのも、お前らの仕業か……」
 これまた今まで黙っていた五飛が、腕を組んだまま、不機嫌丸出しで言う。プリベンターに非常勤で所属
しているヒイロ=ユイは、今、連邦政府外務次官であるリリーナ=ドーリアンに随行して火星にいる。今回
の大怪球争乱にあたり、地球に帰還しようとしたのだが、リリーナの身辺に不穏な動きがあるという理由で、
火星に留まることを選んでいた。なぜ、そこであの無表情リリーナ命男の名前が出るのか、アスカには分か
らなかったが、
「そうか、ゼロ=システムがあれば、あの時……」
 と後ろのキラは納得している。キラが言うには、バンプレイオスによる攻撃の際、あの場にウイング=ゼ
ロもいれば、大怪球を護るフィールドが消失していたことに気づいていたはずだと。たしかに未来をも予測
するゼロ=システムと、MSで最大の攻撃力を誇るツインバスターライフルを搭載したウイング=ゼロが参
加していたら、状況は変わっていたかなとアスカも思った。
「さすが、歴戦のαナンバーズの方々、ほとんど正解ですわ」 
 心のから感心、という風に手を合わせるサニー。この少女が端々に見せる少し大げさなリアクションは実
に愛らしい、とアスカは思う。友人の相田ケンスケが好きそうだなとも。もしかしたら、アイツならファン
サイトでも立ち上げているんじゃないかとも訝しんだりした。
「ゼンガー=ゾンボルト様とレーツェルー=ファインシュメーカー様、グルンガストシリーズ、それにそち
らのブルックリン=ラックフィールド様達も、非常時戦力として作戦に参加せず。この羽扇野郎は、そこま
で完璧に読み切っていたのですが……」
 サニーはモニターにまだ映っている顔を羽扇で隠した男性の映像を、バンバンと叩く。よほど、孔明とや
らには腹に据え兼ねることがあるのだろう。彼女が言うとおり、バイオネットらによる便乗テロを警戒し、
参加を許可されなかった特機もある。日本でも天海護と戒道幾巳が搭乗する『覚醒人凱号』の出撃が見送ら
れていた。
「唯一、読みきれなかった誤算が生じました。それが、真ゲッターロボの暴走です」
 サニーの言葉に、アスカは事の発端を思い出させられた。そうだ、真ゲッターの暴走、これが全ての始ま
りだった。とたんに、行方のわからないシンジのことを思い出し、不安、焦燥が心に芽生えてしまうが……
「……アスカ」
 レイがアスカの手に自分の手を重ねた。その温もり、合わせた瞳で先ほど決めたことを思い出す。
 シンジは絶対に生きている、無事。帰ってくる、私達のところに。
「で、これにお前は関係しているのか?」
 五飛が不機嫌さを隠さずサニーを睨みつける。
「あら、心外ですわ。そうですわよね、鉄牛様」
 手にスティックを構え、なぜか鉄牛に同意を求めるサニー。
「あぁ、そうだな……」
答えた鉄牛、その瞳が獰猛に輝いた。
「うらぁ~~~~!!」
 鉄牛の雄叫びと共に、いきなりの轟音、そして粉塵が舞い、視界が奪われる。
 見ると、鉄牛の手にはいつの間にか鉄節につながれた手斧が握られており、それが早乙女博士とミチルが
休んでいた近くの壁に突き刺さっている。何故、いきなり壁破壊、とアスカが目を丸くしていると、
「マハリク☆マハリタ!」
 サニーが続いて呪文を唱えると、床から蔦が無数に生え、何かに絡みついた。と思ったら、その蔦は瞬時
に切断され、影のようなモノが飛び出し、フリーフィングルームの窓を突き破り、消えていった。
「え、え、え?」
 一瞬の攻防、ついて行けてないアスカが答えを求めて、キョロキョロする。だが、自分と同じように視線
を彷徨わせているのは、日向マコトに、レイ。それに騒動の至近にいた早乙女親子だけ。キラとブリットは
いつの間にか自分とアスカをかばうように前にいるし、ライとカトルもミサトの前に。鉄也や五飛は先ほど
サニーにしたように銃を抜いており、宙もニユーサイボーグになり再び戦闘態勢をとっていた。皆、反応が
早い。
「今のは?」
 ミサトが肩についた埃を払いながら訊く。
「孔明直属のコ・エンシャクですわ。やはり早乙女博士を狙ってきましたわね」
 サニーも三角帽子を外し、ついた埃を落としながら答える。
「コ・エンシャクが動いたということは、孔明が早乙女博士を狙っているということですか」
 扇子を構えていた呉学人が、早乙女博士とミチルを介抱している。アスカとレイも慌てて、それを手伝いにいく。
「どうして、父が……」
 嵐のように過ぎ去った一瞬の攻防に、呆然と流されていたミチルが呟く。
「ゲッター線…… か……」
 そう呟いて、早乙女博士が目を閉じる。無理と無茶が祟り、それに今の襲撃で気力が尽きたのか、気を失
ってしまったようだ。ミチルが慌てて脈や呼吸をチェック、そう大事ではないと判断しとりあえず、救護班
を呼んでもらう。
「お疲れの早乙女博士にはしっかり休んでいただきましょう。博士がいらっしゃらないと、大作様達の捜索
に支障がでますし」
 サニーの登場や、エンシャクとやらの襲撃で話がどっかに行っていたが、この集まりは本来、行方不明に
なってしまったシンジ達についての説明だったはず。シンジたちが生きている根拠は、サニーの繋がった魂
とやらでしか説明されていないが、実際、どうなのだろうか?
「大丈夫ですわ、アスカ様。大作様は100%生きていますし、その傍にいらした碇シンジ様もきっと無事
でいらっしゃいます」
 信じましょう、とサニーがアスカの手を両手で握り締める。内心に答えられたのは気になるが、この少女
が敵方でありながら大作のことを本気で想っているのは、同じような想いを持つ身として、本能的に信頼で
きる。
「そうね」
 握られた手に自分の手を重ねるアスカ。シンジ達の捜索、救出への道は険しそうだが、信じる心だけは持
ち続けよう、そう心に決めたアスカだった。


 話はその想い人の跳ばされた世界へ。

 加賀のヘリポートに、白銀武専用の瑞鶴改が片膝を着いて降着姿勢を取っている。
「神代、巴、戎」
「「「はっ!」」」
 月詠真那の指示で、簡易タラップを部下の三人が引いていく。
 海風が真那の髪を吹き上げるのを手で押さえる。引き出された操縦ユニット、その中に白銀鑑コンビの他
に、超重要人物が乗っていると真那は聞かされていた。その重要人物の艦内での身辺警護が、真那たちに託
された命令だった。
 詳しくは知らされていないが、件の人物は佐渡島ハイヴ消失、そしてあの光神現象の関係者であるとか。
悠陽が自分達を信頼し、託してくれた役目に身を引き締める真那だったが……
 神代に手を引かれ、タラップに降りた白いツナギのような服を着た少年を遠目に見て、なぜか胸がドキン
と大きく鼓動を刻んだのを感じた真那。
 少年は物珍しげに周囲を見渡しながら、ゆっくりと階段を降りてくる。近づいてくるにつれ、その少年の
面差しがはっきりしてくる。
 顔は中性的で、カッコイイと言うより、整っているという表現があっている。細身で身長もそれほど高く
ないが、その体幹の整い方、垣間見る挙措の隙のなさに、高度な訓練を受けているのがわかった。
 少年が近づくにつれ、鼓動はドンドン大きくなる。自身でも理解できない状況を何とか面に出さず、前に
立つ少年に敬礼をする真那。
「斯衛第19独立警護小隊の月詠真那中尉です。えっと、貴君の警備とお世話を申し使っております」
 少年の名を知らないので、貴君という時代めいた言い回しをしたことに、顔が赤らんでしまう真那。
「僕は碇シンジと言います。お世話になります」
 少年、イカリシンジは笑顔でそう名乗る。その笑顔を見たのがトドメとなり……
 月詠真那は恋に落ちた。


 【ちょい後書き】
  作者、暴走モード継続中。どこにいくんだ、このSS。



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