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No.18636の一覧
[0] 【習作】このMMOは荒れている[banepon](2010/05/24 01:01)
[1] 【習作】このMMOは荒れている2[banepon](2010/05/24 01:03)
[3] 【習作】このMMOは荒れている3[banepon](2012/10/22 00:58)
[4] 【習作】このMMOは荒れている4[banepon](2012/10/22 22:55)
[5] 【習作】このMMOは荒れている5[banepon](2012/10/22 22:56)
[6] 【習作】このMMOは荒れている6 おまけ追加[banepon](2010/05/24 01:30)
[7] 【習作】このMMOは荒れている7[banepon](2010/05/28 23:42)
[8] 【ネタ】このMMOは荒れている8[banepon](2010/06/07 22:14)
[9] 【習作】このMMOは荒れている9[banepon](2010/06/08 01:26)
[11] 【習作】このMMOは荒れている10[banepon](2012/10/22 20:02)
[12] 【習作】このMMOは荒れている11[banepon](2012/11/08 10:12)
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[18636] 【習作】このMMOは荒れている11
Name: banepon◆67c327ea ID:a5735ce5 前を表示する
Date: 2012/11/08 10:12
ゲーム内の話が進まない・・・orz
今回もどっちかというと閑話になります><


5.○プレイだけは勘弁な!!




「はい、あ~~ん」

「あ~~ん」

白木の手にしたお子様用フォークに刺さった黄色い塊。親鳥に餌をねだる雛のように、口を開けてあむあむ租借する幼児こと緑川としあき君(三才)。

「おいちいね~~」

「ね~~」

ものの10分ほどでチャッチャとこしらえられたオムレツは、確かにうまそうだった。

掌くらいの黄色いアーモンド形のオムレツの切れ目からはトロリと半熟の中身が漏れ出ているし、中には軽く塩コショウで炒めたエリンギやマッシュルームといったキノコ類に輪切りにしたウィンナー。そして、赤いケチャップでアン○ンマンが描かれている。皿には栄養のバランスを考えてのことだろう、プチトマトやブロッコリー、ニンジンのグラッセがさりげなく添えてあった。

それをコタツに座った白木が、自らの膝の上に乗っけた幼児に手ずから食べさせているのである。

雛に餌をやる親鳥のような献身さ。この男にも愛情とか優しさとかいうものが在るという発見は、ちょっと新鮮な感動だろう。

まあ、ほんわかと和やかな光景だといっても良いかもしれない。

一方、

「やっぱ遠いな、狩場・・・」

『ピアーチェはなまじタウンとして設定されてあるのに、直通のワープ石がないですからね(TдT) ウゥ』

「あとは狩場取られてないのを祈るだけか・・・」

『orz』

パーティ全滅→狩場死に戻り途中にある他の面子は、半ばお通夜状態だった。

「みんな俺について来い!!」

ただ一人、先頭で引率(先頭を走っている。他の人間は全員一列に並んで追尾機能を使っているので、マウスから手を離して休憩タイム)をさせられているのにやたらハイテンションな黒澤。この男が始めて人様の役に立っているのを見るというのも中々貴重な体験であろう。

それ以外は全員狩場に着くまで各々の時間をすごしていた。

不毛な電車ゴッコ(近場のタウンから開始5分経過。@10分くらい)は続くよどこまでも~。

「バネ、やっぱり予備はボールマウスしかないわ」

「仕方ない。ないよりましか」

マウスの裏面を開けて、干からびた尺取虫のようなゴミを取り除く俺様。

そして、

『ハァハァ (*´д`*)ハァハァ 』

先ほどから白木ととしあき君の会話に触発されてか、徐々にディスプレイの向こうから何かが漏れ出し始めているハバネロ氏。もはや俺様は彼に対して言うべき言葉を持たない。

人は常にその手にフェイクを掴むもの。人は大いなる悲しみを背負ってこそ、成長できるのだ。それが青春!だから、彼が自ら気付くまで生暖かく見守ろうではないか!

大丈夫、俺様もかつて通った道だ(1章9.助けて××様!参照)。

『パイカルさん、いえパイ様、としあき君に話しかけても良いですか?』

・・・なんすか、そのどこぞの三只眼吽迦羅様は。

「(・・・なんで"様"付け?)いいですよ~?」

上機嫌を絵に書いたような顔のまま、軽く頷く腹黒王子。

この悪魔の皮をかぶった悪魔も、可愛い甥っ子のこととなると色々緩むようである。

『としあき君、お母さんは好きですか?』

う~~?っとディスプレイをつぶらな瞳で眺める幼児の耳元に、白木が囁く。「お母さんのことは好きですかって、とっしー」

「あい!」

白木によくにた笑顔で頷く幼児。

この餓鬼はお母さん子なので、父親と二人きりだと夜泣きするらしい。それもあって、白木のところに預けられたそうな。こいつが添い寝すると泣き出さないらしいのだ。まあ、雰囲気が良く似た姉弟なのかもしれないが・・・白木(リアル女の)がもう一人とか、何それ怖い。

『お母さんは、綺麗ですか?』

「あい!」

『お、お母さんは、おいくつですか?!!』

何やら興奮しているのが激しくキモい。

「・・・えっとお、にじゅうごしゃい?」

小さな手の指をおりながら(白木が鼻血を出しそうな勢いで、その指に手を添えて正解に誘導している)答える幼児。・・・つか、ハバネロ、何聞いてんのよ?

『゚・*:.。..。.:*・゜ヽ( ´∀`)人(´∀` )ノ・゜゚・*:.。..。.:*』

キャラに高笑いモーションを発動させ、テンション爆超のハバネロ。狂喜乱舞するさまが伝わってくるようである。

彼が何かを激しく何を勘違いしているのかが手に取るように分かる。まあ、他人の無様を見守るのも一興であるw

しかし、

『ハバネロさんから:彼女は最高よおォ!!』

・・・なして俺に直チャするんじゃあ。

何やらやばい方向に覚醒しだしている気がするのは気のせいだろうか?

当の白木はといえば(ぺ)天使もかくやという笑顔で、不思議そうに見上げている幼児のほっぺに顔を摺り寄せている。

「とっしー、おなかいっぱいになりましたです?」

「あい!!」

元気いっぱいに応える幼児の口元をふきふきしてご満悦である。

「・・・観音様が・・!!」

そして何やら感じ入ったのか、恍惚とした雰囲気でいきなりヴォイスチャットを使い出し、地声を披露したハバネロ氏。何気にちょっと低めで渋い声である。聞いた感じ三十路くらい?

「す、すみません、ちょっと急用が出来ました!!」

え?

もしかして、パーティ抜けるのかな?まあ、急用では仕方在るまいが。本当に急である。

「十分、いえ、五分でいいんです!少し待ってください!」

えらい勢いでお願いされてしまった。まあ、五分くらいなら、いいと思うのだが。

「いってらっしゃい~」

「ああ、いってら」

『てらりです~(・∀・)b』

他の面子も快く承諾。まあ、勢いに押されたのかもしれない。

「すぐもどりますっ!!」

その場でふっと消えるハバネロ。すぐ戻ると言っていたが、ワープ石を使って街まで戻ったのだろうか?それでは戻るまで時間がかかりそうな気もするが、仕方がない。

狩場移動を一旦停止し、その場で待機する一堂。先頭を走っていた黒澤はその場で立ち止まり、画面をぐるぐると走っている。

「足HAEEEEEEE!!!」

どうやら移動速度を上げるアチャのスキル、スピーディ・フットがよほど気に入ったらしい。気持ちは分からんでもないし、初めてこのスキルをかけてもらったときに俺様も似たようなことをした覚えがある。だが、相手が黒澤だと激しくウザく感じるのは何故だろう。

しばらく黒澤の珍走を眺めていたのだが、10分ほどして画面の端からハバネロが猛スピードで走ってきた。

どうやら本当に街まで戻っていたようだが・・・

「ただいま帰りましたっ!!」

「おか~~」

『おかえりなさ~~い』

やっと来たか。何がしたかったのかは分からないが、ともかく狩場に急ごうと、再び電車ゴッコの体勢に整列しようとした時だった。

「パイ様、お願いにございます」

なにやら神妙な、ハバネロ氏の声。

そして、

「取引アイコン・・?」

幼児を膝に抱えたまま、白木が小首を捻った。

何やらいぶかしげに画面を注視しており、膝のとしあき君もそんな白木を不思議そうに眺めている。

「・・・え?」

この男にしてはあまりにも間抜けな、呆然とした声だった。

さすがにちょっと気になったので、白木の背後絵移動する。因みに、青崎も同じく首を伸ばして白木の画面を注視している。

覗き込んだ先には、



△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼


ハバネロさんから、【取引】の申し出がありました。

【取引】を開始しますか?


[Yes or No]


△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼



というアイコンが開いている。

・・・・取引?そういえば聞いたことがある。アイテムをプレイヤー同士で交換できる機能がある、と。

しかし、なんでこのタイミング?

白木も同じ疑問を持ったのか眉根を寄せているが、ひとまず様子を見ようというのだろう、【YES】ボタンをクリックした。

その途端、

「ぶっ!!!」

「おいィ?!!!」

画面には、画面の半分程度にもなる大きめのウィンドウが表示されていて、その中に幾つかのアイテムらしきアイコンが映し出されていた。



△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼

(ハバネロさんから提出物)

1.【ルデールの十字架】
[種別]アクセサリー(Exユニーク)[装備可能レベル]Lv55 [部位]首
[能力]全防御力+40、全攻撃力+30%、HP+20%、クリティカル率+3%、即死攻撃+1%
[オプション]ユニークアイテムにオプションは付きません

2.【鉄のガントレット】
[種別]防具(ノーマル)     [装備可能レベル]LV35 [部位]腕        
[能力]物理防御力+45 魔法防御力+25
[オプション]
[攻撃速度Lv.10]:攻撃速度+10%
[HP増大Lv8]:HP+8%

(あなたの提出物)
なし



ハバネロさんが、【取引】を承認しました。

【取引】を承認しますか?

[Yes or No]

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼



白木と青崎が同時に吹いた。目を白黒させて唖然と二人とも唖然とした表情である。

・・・何が起きたのよ?

やはり事態についていけない俺様。童貞じゃ(ry

「ボ、ボ、ボ、ボスアクセ!!!これが噂の公式バランスブレイカー・・・、って、確か相場じゃ最低でも50Mはいったような?!!」

・・・ゴスアクセ?・・・M?

何やら卑猥な響きに聞こえるのは俺様の気のせいだろうか?

「こっちのガントレットもノーマルだけど攻撃速度の補正がマックスだ。おまけにHP補正までLv8って、これ少なくとも20Mはいくんじゃねえか?」

珍しく狼狽した様子の白木に、額に汗を浮かべる青崎。察するに、かなりのレアアイテムのようだが・・・

しかし、そんなものを持っているとは・・・。ハバネロ氏、いったい何者だ?

「ようは、あの馬鹿、恐ろしくレアなアイテムを白木にただでくれてよこそうとしてやがる!」

アホの子のように呆けていた俺様に、青崎が耳打ちした。

fmfm・・・なるほど、そういうことか・・・・って、え?!!!

もしやこれは『貢がれている』という状況ではないだろうか?

「あの、これはいったい・・・?」

さすがの白木もコレは斜め上の反応だったらしく、額にうっすらと汗を浮かべながら、素で首をかしげている。

「レアアイテムは、差し上げまする・・・!!」

画面の中では、土下座モーションを発動させて、白木のPAICAL前にひざまずくハバネロ。

俺様、何やら嫌な予感がして冷や汗が止まりません(´∀`;)。

「是非、私めを、下僕にして頂きたい・・・!!!」

あまりにも真剣な声だった。

「・・・はいィ?」

・・・おいィ?

いや、淡い青春の幻影とか、一事の過ちとか、

まさかハバネロ氏の目には、奴が観音様にでも見えているのというのだろうか。

よもやココまでトチ狂っていたとは・・・!いや、トチ狂わせた白木こそ、恐ろしいというべきか。これが彼は噂に聞く『魔法使い』というやつかもしれぬ。三十過ぎてまで・・・・哀れな。

ともかく前言撤回!今すぐ彼に真実を教えないとトンデモないことになりかねぬ!

これさすがにコレ止めたほうがよくね?

「お、おい青崎・・!」

「いや、ほっとこう。つか、アレに関わりたくねえ!」

断言しやがった。まあ、俺様も全力で同意である。

しかし、問題は白木の反応であった。

「・・・・・・・」

きゅっと目を細めて、何やら思案している。普段のこの男の行動からして、ちょれえ!!と内心喝采しているのかもしれない。何せレアアイテムを受け取った上で、便利な下僕ができるのだ。

普段からコイツの腹の中を身にしみて理解している俺様は、白木がそうするに違いないと思ったのだが・・・

「いけません」

ふっと、優しげな微笑を浮かべて、そう言った。

そして、マウスを操作すると[No]をクリックする。

「え?」

【取引】が中断され、画面の中でハバネロ氏が戸惑ったような声をあげた。

「だめですよ、ゲームで知り合ったばかりの人間にこんな高価なものを送っては。受け取ることは出来ません。これは、あなたの大切な人のために使ってください」

ね、と念押しするように優しく微笑む白木。

声だけ聞けば、そう、声だけ聞けば・・・・orz

「パ、パイちゃん・・・いやパイ様!なんて、なんていい子なんだ!!これはもはや天使、いや女神!!」

不幸なことに、ハバネロ氏はこれで完全に"堕ち"てしまったらしい。

「それよりも、"お友達"になってくれませんか?」

華のような笑みを浮かべる白木。

だが、その声を聞いたとき、俺様の脳内で"お友達"が"便利な道具"、あるいは"奴隷"と変換されたのは何故だろうか?

「も、もちろん!是非フレンドリストに登録させてください、パイ様!!」

そして両者の間で、フレンド登録が取り交わされたのだった。

画面の向こうで、エキサイトし始めるパイカルを余所に、室内は完全に凍りついていた。

その場の全員の視線は、白木に釘付けとなっている。

白木の目元は、目元はすでに笑っていない。つい先ほどまで慈母の笑みを湛えていた唇は吊りあがり、今はもう直視するのも恐ろしい陰惨な笑みになっている。

そして、マイクに拾われぬように軽く手で押さえられた口元から、クスクスと漏れる静かな笑い・・・((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル

決して大きな声ではないのにも関わらず、笑い声は、その場の全員の耳に届いた。誰も一言も口にすることなく、黙って笑い続ける白木の顔を吸い込まれるように見つめている。

静まり返った室内に、しばらくの間、白木のクスクス笑いだけが響いた。

「お、お願いします、パイ様!!お、俺、およびがあればどんな時でも何でもします!!いつでも呼んでください!!」

コチラの空気をまるで感じさせない能天気なハバネロ氏の声。

まあ、画面の向こうの気配を読むとかニュータイプでもなければ無理なのだろうか・・・ハバネロェ・・・!!

「こちらこそよろしくお願いしますね、ハバネロさん」

白木の声は、声だけは、邪気のない笑顔を浮かべていた先ほどまでと変わらないのだが・・・何これ、怖い。

「パイ様!こ、これはもはや信仰だ!!今ココに神が舞い降りた!!」

人の心を巧みに操り、哀れなるハバネロを更なる奈落へと突き落とした白木。これ何もかも人の心を流し動かす策士の技なり。

真の支配とは、支配されている当人に自覚させずに操ることだというが・・・白木ェ・・・

「とっしー、犬はこうやって飼うんですよ♪」

ね、と先ほどとまったく変わらない声。

だがこちらは真に自愛のこもった声でささやきながら、白木は幼児の頭を撫でていた。

「あい!!」

意味が分かってるのか居ないのか、元気にお返事するとしあき君。

『・・・・・・』

いつもはそれなりにリアクションをとるローズヒップ氏も、先ほどから無言で『見下す』モーションを発動していた。あきれ返っているのに違い在るまい。・・・いや、気持ちは分かる。

「パイ様!パイ様!!」

ローマ式敬礼のモーションを発動させて、歓喜の声を上げるハバネロ。

これは、もう駄目かもわからんね。






○=姫



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