『失礼する。ヴェーダからの指令が届いたと思う。あなた方が保管しているGN-000を引き渡してもらおう。もちろん、太陽炉も含めてだ。』
『そんなっ!?太陽炉を失ったら、俺達のガンダムはどうやって起動すればいいんだ!!』
『心配はいらない。フェレシュテは解散と決定している。』
……という訳で、原作通りの展開となりました。
ここでフォンのイベントを起こしておかなきゃフォンが自由に動けないからな……リボンズと相談した上で、あえてフォンは泳がす事にした。
フォンが後々に起こすテロがなければ、宇宙開発も進まないしアロウズも発足されない。
その為、フォンに関するイベントは極力原作通りに進ませる事にした……たとえ、グラーベとヒクサーを失う事になったとしてもな。
そんな事を考えていると、フォンがプルトーネに乗ってこちらへと向かってくる。
……さて、ここからは少し遊ばせてもらうか。
『フォン・スパーク、ヴェーダの命令を無視するつもりか?分かっているとは思うが命令違反の場合キミの首にセットされた爆弾が……』
『あげゃげゃげゃげゃ!!面白い!!ここでカンダムを失う訳にはいかないんだよっ!!』
「……ヨハン、ミハエル、ネーナ。命令があるまで動くな。奴の相手は、私に任せてもらおう。」
『しかしマイスターW!!彼は命令違反を……』
「彼を無力化すれば問題ないのだろう?それに、ようやく私も本気で戦えそうだからなっ!!」
ヨハンの制止を振り切り、俺はスローネVCを駆ってプルトーネと激突する。
『あげゃげゃげゃっ!!……アンタ、以前オレ様の戦いをのぞき見してた奴だなっ!!』
「……なぜそう思う?」
『オレ様の首輪を爆発させずに戦う事を選ぶなんて、オレ様に興味があるという事だろう?』
「……先程の質問を肯定しよう。確かに私はキミの戦いを見ていた……そして、全力のキミと戦ってみたかったのだよ!!」
余裕そうにフォンには告げているが、内心はいっぱいいっぱいだったりする。
……けっこう本気なのに互角にしか持ち込めないとはな……機体性能の差を考えると、パイロットとしてのフォン・スパークはCBのガンダムマイスターの中でトップじゃねぇの?
原作でミハエルが勝てたのは首輪を爆破したからだな。
だが……これでっ!!
「はああぁぁぁぁっっっっ!!」
『ちぃっ!?』
ビームサーベルを振り抜いてプルトーネの右腕を切り裂くと、さらに左腕のGNチェインガンで左足を打ち抜く。
「……これ以上は戦えまい?大人しく投降しろ……そうすれば、再びガンダムマイスターとして戦う機会を与えよう。」
『アンタらはなんとなく気にくわないからな……断らせてもらう。』
「そうか、残念だ。HARO、ヴェーダに報告しろ……フォン・スパークはヴェーダに反逆行為を行ったとな。」
『ワカッタゼ、ワカッタゼ』
ドン
そして、モニターに映るフォンのヘルメットが内側から赤く染まる。
『フォン・スパーク、警部拘束具炸裂、炸裂。失血多量、失血多量……血圧急低下!!』
『……あ……げゃ……』
「さらばだフォン・スパーク……ミハエル、太陽炉を回収しろ。」
『けっ、わぁったよ。』
“さぁ、君はどうでるマイスター874?ヴェーダに従ってフォン・スパークを見殺しにするか?”
ついでに、脳量子波を通してマイスター874に発破をかけておく……この状況なら、動かざるをえないだろう?
そう確信していると、プルトーネからコアファイターが分離し本体が爆発した。
『……なっ!?』
『ミハ兄ぃっ!!』
「くっ……ヨハン、ネーナ、ドッキングしろ。どうやら奴は逃亡するようだ……回収できないならば、破壊するしかない。」
『了解しました。』
俺の命令にヨハンは頷くと、アインとドライがドッキングしGNメガランチャーから赤いGN粒子が解き放たれる。だが、コアファイターはそれを回避すると深淵の彼方へと消え去った。
…………計画通り。
『……申し訳ありません、破壊する事が出来ませんでした。』
「仕方あるまい、まさか首を爆破されても動けるとは思わなかった……私のミスだ。」
『Oガンダムはどうするの?』
「太陽炉のないガンダムなど持ち帰る意味などない……全機、母艦に帰還しろ。」
ヨハン達に指示を出すと、再びフェレシュテに回線を繋ぐ。
「……君達も状況は把握したな?おそらく、ヴェーダからフォン・スパークと太陽炉の捜索を命じられるはずだ……まぁ、フォン・スパークが戻るかどうか怪しいがな。」
『フォンは、きっと私達が見つけてみせます。』
「……朗報を期待しているぞ。」
そして、俺は通信を遮断すると母艦へと戻った。
……そういえば、戦闘中のヨハン達の行動は確認してないんだけど……やっぱ原作通りにフォンの素性を喋ったのか?
うぅむ、そこは確認してないとな。
さぁて……次は、ユニオン軍の基地襲撃ミッションだ。
恨みはないが……エイフマン教授、あなたには消えてもらおう。
++++++++
「シャル……」
通信が閉じられると、シェリリンが不安そうな表情をこちらに見せる。
……私が弱音を吐く訳にはいかない……今の私は、フェレシュテの指揮官なのだから。
「……彼らはプルトーネにガンダムマイスター874が乗っていた事を知らない……きっとフォンは874が助けてくれる、そうよねシェリリン。だとすれば、私達は彼女を信じて一刻も早く見つけ出すことよ。」
「……うんっ!!」
私から仲間を奪ったプルトーネ……あなたが今度は私の仲間を助けてくれるなんて……
でも、気になる事は他にもある。
「あの新たに現れたガンダムとマイスター達……おかしな所があるわ。」
++++++++
「あいつらが、ユニオン軍の基地を襲ったっ!?」
……ブリーフィングルームに、ロックオンの声が響く。告げられたのは、あのトリニティと呼ばれるガンダムを操る彼らの行動。
なぜ……ユニオンの基地を?
「目的は?」
「不明よ。ヴェーダにも情報はきていないみたいね……」
「……勝手な事を。」
「おーおー、俺らへの風当たりが強くなるような事してくれちゃってぇ……」
「……マイスターなの?」
私がふと呟いた言葉に、全員がこちらを向く。
その表情には、疑問が浮かんでいる。
「彼らは本当に……ガンダムマイスターなの?」
……私には、彼らの行動で世界が変わるとは……思えない。
++++++++
「ハ~イ沙慈、元気にしてる?」
『バイトの途中。シフト入れすぎてもうクタクタだよ……そっちは?』
「結構盛り上がってる。花嫁さんがすっごく美人でね!!料理もいい感じだし、それからっ!!……ってあれ?」
沙慈と話をしていると、突然画面が映らなくなった。
「沙慈?……さぁ~じ~?も~、どうなって……ん?」
訳が分からなくて思わず空を見上げると、青紫の綺麗な光がキラキラと輝いている。
「あの光はもしかして……」
そして、その光と共に降りてきたのは………ゴツゴツした鎧のようなものを纏った、黒い機体。
「ガンダム……すごい、初めて生で見たっ!!」
これは、沙慈に自慢しなくちゃねっ!!
「おい、あれ……」
「おっ?」
「モビルスーツ?」
「あれ、ガンダムじゃないのか?」
「ガンダム……」
どうやら、他の皆もガンダムに気がついたみたい。
そして、ガンダムはゆっくりとこちらに右腕を向けた。
…………えっ?
++++++++
『マイスターW、ラグナから次のミッションが入りました。』
「あぁ、こちらでも確認した……目標ポイントへ向かうぞ。」
『またかよっ!?』
『や~だ~、ここんとこ働き詰めじゃない!!』
『我慢しろ、戦争根絶を達成させる為だ。』
「だが、君達もそろそろ休息をとらねばならないな……次のミッションが終われば、私からヴェーダに進言してみよう。」
……うん、流石に俺も連続のミッションで疲れてきているからな……ここら辺で休みが欲しい所だ。
『ほんとにっ!?やった~!!……ん?』
喜んでいたネーナだったが、ふと何かに気がついたような顔をする……ちっ、ハレヴィ家の結婚式に気がついたか?
「……どうした、ネーナ。」
『あそこに結婚式場があるんだけどさ……その上空に、見たことないガンダムが居るんだけど。』
「…………………なんだとっ!?」
ネーナの言葉に慌ててカメラを向けると、そこには青紫の粒子を輝かせた……黒いガンダムが存在していた。
その大まかなシルエットから、エクシアに酷似している事が分かる。
そして、そのガンダムは……右手に持つライフルを結婚式場に向けていた。
…………まさかっ!?
そして、青紫の光が……結婚式場を貫いた。
『…………え?』
『おいおいおいおい……何やってんだよアイツッ!?』
『………馬鹿な………あの場所は、軍事とは何も関係の無い場所だぞっ!?』
ヨハン達の驚きをよそに、黒い機体はどこかへと去っていこうとする……逃がすかよっ!!
「……ヨハン。お前にこれからの指揮権を任せる。お前達は即刻この場所から離れて次のミッションへと向かえっ!!私は、あのアンノウンと接触するっ!!」
『マイスターW!?』
ヨハン達と別れると、俺は黒い機体が去っていった方向へと機体を加速させる。
……しばらく飛んでいると、海上で黒い機体に追いついた。
『へぇ、スローネヴァラヌスか……なかなかいい機体に乗ってるじゃない?』
すると、黒い機体から通信が繋がる……その声は合成音声だったが、喋り方からおそらく女だという事が分かる。
「……貴様、転生者だなっ!?」
『やっぱり、私の他にもいたのね……はじめましてというべきかしら?』
「御託はいいっ!!なぜ……なぜハレヴィ家を襲撃したっ!?」
ビームサーベルを抜き放つと、俺は黒いガンダムに斬りかかる。
黒いガンダムはというと、右手に構えたGNソードを展開してビームサーベルを受け止めた。
『あら?本編通りに進めただけじゃない……何をそんなに怒っているの?』
「……なんだと!?」
そんなばかな……なぜ、コイツが原作通りに展開を進めようとしているっ!?
「ならば、なぜCBの武装を強化したっ!?貴様は……原作をよりよい方向に変える為に動いているのではないのかっ!?」
『なるほど、それで勘違いしてたのね……別に?あの武装強化はなんとなくよ。』
「何っ!?」
『私は自分が楽しければそれでいいの…………いちいち原作の展開を変えるなんてめんどくさいじゃない?まぁ、展開がカオスになるのは歓迎だけどね♪』
……コイツ、自分の事しか考えてないのかっ!?
『だいたいさぁ、原作知識ってそのストーリーがそれに沿って進むからこそ有利なんでしょ?それをわざわざ捨てるなんて……馬鹿みたい。』
「貴様……」
『あぁ、反論しなくていいわよ?別にあなたの意見を聞く気もないし……さっさと私の前から消えて?』
……その時、黒いガンダムの装甲が赤く輝く。
そして、気がつけば……スローネVCの右腕が斬り飛ばされていた。
馬鹿な……これは……
「……トランザム……だと?」
『だぁいせいかぁ~いっ♪じゃ、さよなら……名前も知らない転生者さん?』
次々と襲いかかる赤い斬撃にスローネVCの体はどんどん切り刻まれていく。
そして、激しい衝撃と共に……俺の意識は、空に浮かぶガンダムを見ながら、闇の中に沈んでいった。
(つづく?)