「……くそっ!!なんなんだよあの強さはっ!?」
「なんで3対1なのに勝てないのぉぉぉっっっ!?」
「……さすがです、マイスターW」
……とりあえず、力関係を分からせるためにシミュレーションで相手をした訳だが……
トリニティの皆さん、格下キラーという事が分かりました。
……まぁ、俺の戦法にあまりにもはまってしまったってのもあるんだが。
「だいたいテメェ卑怯すぎるだろっ!?」
「ミハ兄ぃの言う通りだよっ!!なによあの戦い方はっ!!私、本当に怖かったんだからっ!!」
ちなみに俺のやった戦法とは、まずファングを持つツヴァイを遠距離から狙撃し、次にトップスピードでアインに接近しランチャーを撃たせる間もなくビームサーベルで串刺し、そして最後に基本武装しか持たないドライをじわじわとなぶり殺しにしただけだ。
……でもなぁ、こいつらに連携させると面倒だもん。迅速に各個撃破は基本だよなぁ……
「……戦場で自分の思い通りにならなければそうやって駄々をこねるのか?まるで子供だな。」
「「なっ!?」」
「それに、私なりの見解を言わせてもらおう……君達の連携は確かに素晴らしい。さすが兄妹なだけはある……だが、それだけだ。戦闘の要を連携に頼っている以上、君達は個々の戦力として見ればバランスが悪い……熟練のパイロットがガンダムと同等のスペックを誇る機体に乗れば、たやすく君達は撃墜されるだろうな。」
「……テメェ……言わせておけばぁっ!!」
「よせ、ミハイル!!……彼の言葉は事実だ。実際、私達は彼に完敗している。」
……ヨハンは本当に物分りがよくて助かるよ。
「……本来なら君達を鍛え直したい所だが、残念ながら君達のデビューまで僅かな時間しかない……せめて、私の命令には従ってもらおうか。」
「分かりましたマイスターW。あなたに我々の指揮権をお預けしましょう。」
「ヨハン兄ぃっ!?」
「マジかよっ!?」
「二人とも、いい加減にしろ……彼の言う事は正しい。それに……彼は、私達の事を高く評価している。」
「……ヨハン兄ぃ、お耳大丈夫?そんな事言ってないじゃない……」
【フザケンナバカヤロー、フザケンナバカヤロー】
「……いいか?彼が指摘しているのは私達に足りない要素だ。元々連携が取れている私達が個々の実力を高めれば……よりミッションを遂行しやすくなる。」
……うん、別にそこまでは言ってないんだけどな……いい意味に勘違いしてるよこの子。
ひょっとして、これ勘違いスパイラルの始まり?
「あえて私達をたたき潰す事で、彼はその事に気づかせてくれたんだ……私は、彼を信頼する。」
「……ヨハン兄ぃがそういうなら……」
「けっ!!俺は認めねぇからなっ!!」
………………すげぇやりにくいよこの現場。
あぁ、日本にいた頃が懐かしい…………
++++++++
「あたしの為に買ってっ!!」
「えっ、そんな…」
「買って、買ってっ!!あたしの為にっ!!」
「……何やってるのあの子たち……」
車の中で、頭を抑えた私は悪くないと思う。ふと窓の外を見てみれば、貴金属店のショーウィンドーで沙慈とルイスがなにやらじゃれついている。
……たしか、あそこに展示されてたのって12万くらいのペアリングよね……あの子、なまじブルジョワだから金銭感覚狂ってるんじゃないの?
まったく、私はヴァンとの関係が全然進んでないってのに……ヴァンは今長期の出張だし、刹那さんも保護者に会うからって留守にしてるし……
「のんきなもんですよね。今頃、1000機近いモビルスーツが大演習をやっているというのに……」
「あっちが異常なのよ。」
部下の言葉にため息をつきながら、私は沙慈達を眺める。
……そう、本当ならあの光景が普通なのだ。でも、ガンダムが現れてからはいつ沙慈達の身に不幸が降りかかるか……想像しただけで寒気がする。
この大規模演習も、あなたの計画に入っているのかしら?……イオリア・シュヘンベルグ……
++++++++
「どうだ!!アグリッサのプラズマフィールドの味はっ!?機体だけ残して消えちまいな、クルジスのガキがぁぁっっっ!!」
「あああああアアアアアァァぁぁぁァァぁぁァっっっっっっっっ!!!!」
電撃にさらされながら、私の脳裏に……今までの光景が思い浮かぶ。
……死ぬ……死ぬの?
この歪んだ世界の中で……何にも、なれぬまま……
失い続けたまま……朽ち果てるの……?
そして、思い浮かぶ……あの白いガンダム。
「ガンダム……」
……嫌だ……私はまだ、死にたくない……
「ガン……ダム……!!」
まだ、私には………やらなくちゃいけない事があるんだ……!!
その時、空中から赤いビームが降り注ぐ。
そして、私の元に舞い降りてくる……赤い粒子を翼のように広げた、白銀の機体。
「……あぁっ、あれは……」
………来て………くれたの………?
「ガン……ダム……」
私は、瞳から涙を零しつつモニターに手を伸ばす…………どうして……私は泣くんだろう………?
「ガン……ダム……!!ガンダァァァァァムッッッッ!!」
++++++++
……やれやれ、まさか俺がこの場面に立ち会う事になるとはな……
「……エクシアのパイロット、無事か?」
俺はモニターを開くと、エクシアに通信を繋げる。サーシェスの方には暗号通信を送って撤退してもらった……まぁ、これでなんとかなるだろ。
『……お、お前は……?』
うん、仮面で顔を隠しているし声も変えているからばれてないな。よかったよかった。
けどさ刹那よ……もう少し女の子っぽい口調でいいんだぞ?
……おっと、危うく素がでる所だった……
「…………マイスターW。君と同じ、ガンダムマイスターだ。そして、この機体はガンダムスローネ……」
『……ガンダム……スローネ……』
「今頃、君の仲間達は私の仲間が救出に向かっている……何も、心配はいらない。」
『こちらヨハン、ミッションに成功した。』
『こちらミハエルッ!!キュリオスの救助に成功したぜっ!!』
『こちらネーナ、ミッションクリアッ!!』
……すると、タイミングのいい事にヨハン達から連絡が入ってくる。
さぁ……仕上げといくか。
「ネーナ・トリニティ、GN粒子を最大領域で散布しろ。現空域から離脱するぞ。」
『了解ねっ!!いくよ、ハロッ!!』
『シャアネーナ、シャアネーナ!!』
『GN粒子、最大散布っ!!いっけぇっ……ステルスフィールドッッ!!』
そして、空を赤い粒子が覆い尽くす……これで、ミッションは完了だ。
『こ、この光……』
「……エクシアのパイロット、君達も撤退するといい……追っ手は来ないからな。」
『ま、待てっ!!』
「いずれ……また会うだろう。」
そして、俺はエクシアを置いてその場を後にする。
………さぁ、やるだけやってみますか。
++++++++
「……とにかく、これだけは教えてくれない?あなた達は、あのガンダムで何をするのか……」
「もちろん、紛争根絶です。」
「本当に?」
「あなた達がそうであるように、私達もまたガンダムマイスターなのです。」
現在、ある一室でトレミー組と接触中です。けど、やっぱ相手側に不信感があるのが見て取れます。
……まぁ、一番怪しまれているのが俺なんだけどな。だってフルフェイスの仮面だし。一応、ヨハン達に告げたのと同じ理由でマスクを外すのを拒否ったけど。
とりあえず一番の驚きは、ティエリアが完璧に女だったって事だ。いや、顔は変わってなかったけど体つきが明らかに女性だったし……マスクがなかったらアホ面晒してたんだろうな。
「つまり、俺達と組むっての?」
「バーカ、そんな事すっかっ!!あんたらがヤワイ介入しかしねぇから、俺らにお鉢が回ってきたんじゃねぇかっ!!」
……この馬鹿ミハエル。何相手を怒らすような事を……
「……どういう意味かな?」
「言った通りの意味だ。あてになんねぇのよ。あぁ?不完全な改造人間君?」
「何ぃっ!?」
「おっ、やっかぁっ!?」
「………この馬鹿者がっ!!」
とりあえず、ミハエルの頭をぶん殴る。これ以上話をややこしくすんなっ!!
「いてぇっ!?……何しやがるテメェッ!!」
「それは私の台詞だこの馬鹿者。友好関係を築こうとしているのになぜ喧嘩腰になる必要がある……申し訳ない、部下の無礼を謝罪しよう。」
「私からも、弟の無礼を謝罪します……ですが、私達に命令を下した存在はあなた方の……」
「ヨハン、君もそこまでだ。自分達に自信があるのは構わんが、今まで作戦行動を行ってきた彼らに失礼だぞ。」
「……申し訳ありません。」
………ったく、こいつら爆弾をどんどん放り込んでやがる……原作に俺と同じような立場の奴がいたら、絶対胃が痛むんだろうな。
「……私達は、お払い箱?」
ほら、スメラギさんが若干怖いよ………
「そういう事ではない。君達は今まで通り作戦行動を続けてくれ……私達は独自の判断で作戦行動を行う。」
「……あなた達は、イオリア・シュヘンベルグの計画に必要な存在なのかしら?」
「どうだろうか?それは、我々のこれからの行動によって示されるだろうな……少なくとも、君達が今まで行わなかった事をやるつもりだ。ではヨハン、ミハエル、行くぞ。」
………部屋を後にすると、マスクの裏側に備えられたモニターに暗号文が届く……なるほど。
「ヨハン、ミハエル……新しいミッションが入った。」
「はっ、今度は暴れられるんだろうな?」
「やけに早いですね……それで、ミッションの内容は?」
「あぁ……フェレシュテと合流する事。詳しい内容はその道中で説明しよう。」
(つづく?)