朱里ちゃん…ああ、間に合ってくれたのね。
わたし、もう駄目みたい…。
最後にあなたに会えて良かった…おねがいしたい事があるの…。
あなたの才能って曹丕の十倍くらいあると思うの。
だから、蜀の国は大丈夫だよね。
私が死んじゃった後、阿斗ちゃんに君主としての才能があったら…
ううん、ないよね。わかってるの…あのこには君主としての才能はないと思うの。
じゃぁなんの才能があるの?って聞かれたらすっごい困るけど。
だから、あなたが皇帝になって…。
「はわわ〜、陛下、私、阿斗様に一生忠節を尽くしましゅ」
***
「ってとっさに言うしか無かったけど、本当の事いうわけにもいかないし、嘘も付きたくないし返事にすっごい困ったんですよね」
「…あと、曹丕に十倍ってのもちょっと納得いかないものがありました」
…あのー
「ふ、先主殿はすばらしい方であった」
「…だがあの阿斗様の扱いは正直、どうか、と思ったぞ」
***
「桃香様!阿斗様をお救いしましたぞ!しかし、甘の旦那は阿斗様の盾になって!」
「ああ?桃香様!阿斗様をなぜ大きく振りかぶるのです?」
ビッ!
「ひーーーーーーーーーーー」
ターン(ゴツ)
「ゴツって言った!今ゴツって言いましたぞ!!」
もぅ、こんな娘が居なきゃ、星ちゃんが危ない目に逢わないですんだのにー!
星ちゃんの方が大事!あなた程の武将は得がたいんだから!怪我しなかった?へいき?
子供なんてまた産めばいいの。あ、旦那もいなきゃ駄目かー、てへっ。
***
「将としては大事にしたいただいて有難かったが…あの時の周囲の凍った雰囲気…未だ思い出してもおぞけが…」
…あのー
「…あの衝撃が阿斗様の発育に与えた影響は否めぬしな…」
「発育といえば、私が来た頃は太腿の部分痩せに凝っていましたよね」
***
ここのお肉が、おにくが!えーん、朱里、痩せ方教えて〜。
「痩せるのに必要なのは適切な食事と運動ですよ」
わかった。がんばってみる。
あ、でもこのお肉おいしいね、鈴々ちゃん。
「鈴々ちゃんと一緒にばくばくご飯食べたらだめでしゅー」
***
「思えばあれが軍師としての初仕事だったんですか…」
…あのー
「肉と言えば、あの思い出話だな」
***
あのねー、星、知ってる?狼の肉ってすっごくおいしいの〜。
むかし、劉安さんっ、て猟師の人にお世話になった時に、ごちそうしてもらったんだけど、ほっぺた落っこちるかと思っちゃった。
でも、次の朝、劉安さんの奥さんがなんでか死んじゃってて可哀想だったなぁ。
お葬式とか大変だったんだから。
***
「うむ、あれは桃香さまの話から類推すると…」
「はわわー類推しないでほしいでしゅ!」
「…あのー!…ワタシ、桃香さまのお墓に初めてお参りしてるんです!少しはしんみり桃香様を偲ばせてくれませんか!」
「私達も偲んでますよ、ねぇ」
「勿論ですな。ここで偲ばずしてどうする?」
共同作戦後、蜀へ帰還する焔耶達の永安寄り道のお話でした。