レベル1 3
はうぅ~
眠いよ~
おひさまの登らないうちから出発して、ゼオルドさんと待ち合わせ……
にゅふふ、これってなんだかデートみたい。
行くのはダンジョンだけど、ゼオルドさんと一緒だから大丈夫だよね?
それにしても……眠いよ~
「おはおうございまふ~」
………ずいぶん寝むそうだな。
「すみまふぇん、わふぁふぃあさがよわくっふぇ」
眼がとろんとしてて可愛いんだが、このままダンジョンへ入るわけにはいかないな……
仕方無い一度戻って出直すか。
無防備に俺へもたれかかって眠ってしまった眠り姫を抱きかかえてダンジョンの入り口を後にした。
何時も使ってるベットより柔らかい……
それになんだか暖かい……
暖かいけど……あぅ!?
そうだ!
今日はゼオルドさんとダンジョン前で待ち合わせしてるんだったよ!
急がないと!
「目が覚めたか?」
……ふぇ?
自分の被っていたシーツを蹴飛ばすようにして起きた私が目にしたのはゼオルドさんでした。
あれ?
えっと……?
私はたしか、ゼオルドさんと待ち合わせをしてて……
あ~!
思い出したよ!
私起きる→寝ぼけてダンジョン前→ゼオルドさんに抱き付く→多分ゼオルドさんの家(今ここ?)
あれ?
でもでも、私が家を出たのも朝で、今も朝みたいだよ?
家の外は見えないけど、鶏の鳴き声が聞こえるもん。
きっと朝だよ!
だったら私には記憶の無い空白の1日があるわけだよね……
う~ん。
私起きる→寝ぼけてダンジョン前→ゼオルドさんに抱き付く→記憶に無いけどゼオルドさんと、きゃ~~~!恥ずかしくて言えない!→翌朝(今ここ?)
そっか……そうだよね、記憶に無いけど知らない部屋で寝てて、そこに男の人が居るって事はそうなんだよね?
でも記憶が無いのは何でだろ?
う~ん
あ!
近所のお姉ちゃんが言ってたっけ、最初は痛いけど後から気持ち良くなって、最後は何も考えられなくなっちゃうって!
凄い時は意識も飛んじゃうって言ってたし、きっと記憶もとんじゃったんだ!
でもでも、初めての私にゼオルドさんったら……
「う~私初めてだったのに……ゼオルドさんのエッチ!」
「何故そうなる!!」
「だって、こんな所で寝てるって事はゼオルドさんとその……」
あぅ、恥ずかしくて言えないよ~
「そんな訳あるか!!」
「そんな訳あるか!!」
まったく、何を考えているんだ?
「だってだって、ゼオルドさんの待ってたダンジョンに朝行ったのに、ゼオルドさんの家で寝てる今も朝だって事は……」
朝?
何を言ってるんだ?
「今はもうとっくに昼だぞ?」
「え~!鶏が鳴いてるから朝だと思ったのに!?」
鶏が鳴くから朝ってお前……
「鶏は昼でも鳴くぞ?」
「え~!?」
うん?
何故驚く?
ケビンは農村の出だと聞いているぞ?
「そっか、お昼だったんだ……ティア勘違いしちゃった」
なんだ、勘違いか。
「そっか、お昼だったんだ……ティア勘違いしちゃった」
そうだよね、ゼオルドさんみたいな優秀な先生が生徒に手を出すわけないよね!
でもでも、なんで私ゼオルドさんの家に居るんだろ?
「まったく、朝が弱いのならそう言え、寝ているお前をダンジョンへ連れて行く訳にもいかず、ここまで運ぶのに苦労したぞ?」
あぅ……
「ご、ごめんなさい」
「まぁ良い。だが、朝が弱いとなると致命的だな」
え?
なんでなんで?
「かりにお前がアシストになったとして、昼から夕方までしかパーティーに参加出来ませんって言うのか?そんな短い間だと誰も相手にしてくれなくなるぞ?」
……そっか、そうだよね、私一人じゃ無くて相手も居るんだもんね。
「でもでも、朝が弱いだけでそれ以外は何ともないんですよ?」
「ほとんどの冒険者は朝出発して夕方にはダンジョンから出て来る」
「中には昼出て真夜中に帰って来る人だって居るんじゃないんですか?」
「中には昼出て真夜中に帰って来る人だって居るんじゃないんですか?」
何を言ってるんだ?
「そんな奴はほとんど居ない。真夜中に帰っても宿屋が空いていないだろう?」
「あっ!そっか……」
ケビンは何も教えてなかったのか?
「まあ俺は初心者の間面倒を見るだけだから昼から夕方まででも構わんがな」
「うぅ~明日からは頑張って眼を覚ましますから見捨てないで下さい!」
私はゼオルドさんにお昼ご飯を御馳走になってから宿屋へ戻りました。
昼からダンジョンへ潜っても、先に入った人が狩りをしていて邪魔なんだそうです。
先に居る人が邪魔になるっていうのがちょっと良く分からないけど……
「ティアちゃんお帰り!」
考え事をしながら歩いていると、前の方からレイちゃんが歩いて来ました。
「レイちゃん!ただいま!」
本当の名前はレイチェルちゃん。
長いから皆レイちゃんって呼んでます。
「今日の狩りどうだったの?」
「う~んそれがね、せっかくレイちゃんに起こしてもらったのに、ダンジョン前で寝ちゃった」
「え~!?それってもしかして相手が怒って帰っちゃったりしたんじゃないの?」
「うんん、大丈夫。先生は明日からがんばれって言ってくれたよ?」
「良い先生なんだね」
「うん!」
あれ?
何でだろ?
レイちゃんの顔が曇っちゃったよ?
「ティアちゃんは良いな~、私なんて兄さんが、最高の先生を連れて来るからそれまで待ってろ!なんて言うんだよ?」
「へ~、レイちゃんのお兄さんって確かもう少しで上級ダンジョンに行けるようになるレベルなんだよね?そんな人が最高の先生って言うくらいだから相当良い先生なんだね」
ふえ?
ため息をついて首を振るって事はダメな先生って事?
「それがね、調べてみたらその人、他の冒険者に仲間殺しって言われてるらしいの」
……仲間殺し?
なんだか怖い……
「そんな怖そうな人をお兄さんはレイちゃんの先生にしたがってるの?」
「そうみたいゼオルドって言うらしいんだけどね……」
え?
「ゼオルドのアニキ!」
ん?
時間が空いてしまった為、畑仕事をしているとケビンが訪ねて来た。
妹の調子を聞きたいと言ったところか?
「今日こそ妹の面倒を見てもらうっすよ?」
は?
後書き
えっと、感の良い人なら第2話で気付いてたかと思いますが、ティアはケビンの妹ではありません。