季節は移り変わり十二月。
アースラにやっかいになっているフェイトが漸く時の庭園内での事後処理も終わり、そろそろこっちに来る事が出来るようになる事が決まっていた。
なのはやアリシア、勿論ボクも、フェイトの到着を今か今かと待ち望んでいた日の夜。
今までの平穏を打ち破る事件が起こった。
夜、ボクは部屋でなのは、アリシアとくつろいでいた。
今日は珍しく3人だけだ。
ブリュンヒルデ、フリュムはヴァルハラ内の調整ポットで定期メンテナンス中。
今日いっぱいは掛かるらしい。
フェイト、アルフはアースラ内に留まっていて不在。
そんな時いきなり封鎖領域にボク達3人は閉じ込められた。
「のぞみちゃん!?」
「お兄ちゃん!?」
ボクの方を振り返るなのはとアリシア。
「閉じ込められた」
「ってなんでそんなに落ち着いてる?」
なのはが少し慌てながら問いかけてきました。
「慌ててもしょうがない」
「それは、そうだけど!」
「それで?お兄ちゃんどうするの?」
「ここに居れば大丈夫、この部屋には色々な結界が刻んである」
「そうなの?」
「うん」
そんなやり取りをアリシアとしていると。
『対象、高速で接近中です』
と、レイジングハートが警告しました。
「近づいてきてる?」
なのはが何か考えるような仕草をした後、部屋を飛び出していってしまいました。
「なのは!?」
叫んだのはアリシア。
しかしなのはは止まらずに家を飛び出して行きました。
それを見送っていたアリシアがボクの方を振り向いて。
「お兄ちゃん!?どうするの?なのは出てっちゃったよ?」
ここに居れば安全だっていったのにわざわざ出て行きますか。そうですか。
「・・・・・・・・・・お兄ちゃん?」
少し黒いオーラが出ていたのか躊躇いがちに聞いてくるアリシア。
「・・・・・・・・・・・・追いかける、アリシアはここに居て」
「私も行く!私もなのはが心配だもの」
強い意志のこめられた言葉を聞いて。
「・・・・・・・・ボクから離れたらダメ」
「わかった」
了承の意を伝えてボク達はなのはの後を追いました。
なのはを発見したときは丁度戦闘中の相手の攻撃でビルにたたきつけられている時だった。
「お兄ちゃん!?」
その光景を目の当たりにしたアリシアが驚愕の声を上げる。
「アリシア、ボクにしっかり捕まっていて」
「うっ、うん」
そしてボクは転移魔法を展開する。
『ギューフ』
そして飛んだ先ではなのはが又しても襲撃者に吹き飛ばされている所だった。
吹き飛ばされているなのはを丁度真後ろに転移してきていたボクが勢いを魔法で減衰させてキャッチする。
「大丈夫?」
「なのはっ大丈夫?」
ところどころ服はボロボロでレイジングハートに至っては自己修復が出来るのか疑問に思えるくらい大破している。
「にゃ?のぞみちゃん、アリシアちゃん?」
「一人で出て行くなんて無茶しすぎ」
「本当だよ」
「うぅ・・・・・ごめんなさい///」
何故か真っ赤に成りながら謝るなのは。
そんな会話をしていると、不意に正面から声が掛かった。
「へえ、お前らも魔導師か。ちょうどいい」
と、赤い服に身を包んだ幼女が呟いていた。
side なのは
行き成り展開された封鎖領域に私は家を飛び出した。
ビルの上で辺りを警戒していると不意に誘導弾に襲われ、バリアで防いでいると今度は小さな女の子に襲われビルの上から吹き飛ばされてしまった。
その後レイジングハートを展開させていきなり襲ってきた赤い女の子と戦闘になったけれど、撃鉄が降りる音と同時に形を変えたデバイスの攻撃は凄く強力で、私は展開したバリアを貫かれてそのまま威力を殺しきることは出来ずにビルに激突してしまった。
彼女の攻撃をもろにレイジングハートで受けてしまい、レイジングハートはボロボロ。
ごめん、無理させちゃったね。
しかし体制を立て直す暇も無く又しても女の子が私に襲い掛かってきました。
それをどうにかプロテクションを展開して防ごうとしたけど、やはり貫かれて又しても私は吹き飛んだ。
しかし今度は激突の衝撃が来ない。
むしろ凄く安心する物に包まれている感じがする。
そんな事を少しはっきりしない意識で考えていると、近くから声が掛かった。
「大丈夫?」
「なのはっ大丈夫?」
そういったのはのぞみちゃんとアリシアちゃん。
「にゃ?のぞみちゃん、アリシアちゃん?」
そっか、私はまたのぞみちゃんに助けてもらったんだ。
なんていうかいつも私が吹き飛ばされると優しく抱きとめてくれるよね。
ん?抱きとめて?
え?もしかして今の私お姫様抱っこで抱きかかえられてるの?
そう思ったら急に恥ずかしくなってきて。
「一人で出て行くなんて無茶しすぎ」
「本当だよ」
そう言われた言葉に。
「うぅ・・・・・ごめんなさい///」
真っ赤に成りながらそう答えました。
side out
「へえ、お前らも魔導師か。ちょうどいい」
そういってデバイスを構える目の前の赤い服の魔導師。
そして有無を言わさずデバイスを振り上げ、振り下ろそうとする。
ボクはアイアスを展開しようと身構えたところで目の前に転送魔方陣が展開された。
そして振り下ろされる敵のデバイス。
だが。
ガキィ
それを転送魔方陣から出現したフェイトのバルディッシュが受け止めた。
「仲間か!?」
そう問いかける幼女にフェイトは幼女を弾き飛ばし。
『サイズフォルム』
「友達だ」
そうバルディッシュを変形させて宣言した。
しかしそこで空気を読まなかったなのはの訂正が入る。
「違うよ。フェイトちゃん」
「え?」
その声に驚愕の声を漏らすフェイト。
「フェイトちゃんは私の大事な友達で大事な家族」
「なのは///」
なのはの言葉の意味を漸く理解したフェイトが少し照れながらなのはを振り向く。
そしてボクにお姫様抱っこで抱きかかえられているなのはと目が合った。
「・・・・・・・・・・・・・・なのは?」
「何かな?フェイトちゃん」
「どうしてのぞみにお姫様抱っこされているのかな?#」
「えっと。あのー、あの女の子に吹っ飛ばされた時にのぞみちゃんに助けてもらったから」
「・・・・・・・・そう。なのは、あとでお話しよう?#」
「え?フェイトちゃん!?」
なにやら納得はしていないが取り合えず目の前の敵振り返るフェイト。
そしてその幼女に話しかける。
「民間人への魔法攻撃、軽犯罪ではすまない罪だ」
「なんだテメー。管理局の魔導師か?」
「時空管理局嘱託魔導師フェイト・テスタロッサ抵抗しなければ弁護の機会が君にはある。同意するなら武装を解除して」
そういってフェイトはバルディッシュを身構える。
「誰がするかよ」
そして赤い女の子はそう宣言すると勢いよくその場を去った。
「のぞみ、なのはをお願い」
「うん」
フェイトはボクになのはの事を頼むと赤い女の子を追いかけてその場から離れていった。
それを見送ってからボクはなのはを降ろし回復魔法をかける。
「・・・・・・・あったかい」
30秒くらいでなのはの怪我を完治させる。さらにおまけで失った魔力をなのはに送り込む。
「うっ!」
「苦しかった?」
「ううん。のぞみちゃんの魔力を直に取り込んだことなかったから、ビックリして」
「ごめん」
謝るボクになのはが。
「ううん。・・・・・・とっても気持ちよかった///」
・・・・・・・なのは?今の発言は色々ぎりぎりですよ?
なのはの治療を完治させてアリシアと一緒にビルの屋上まで移動する。
フェイトの方に視線を向けるとどうやらアルフも来ていたようで2人で赤い女の子の捕獲に成功していた。
だがそれを打ち砕いた一人の騎士風の乱入者。
赤い女の子の仲間なのか、行き成りフェイトに一閃。
アルフももう一人現れた男とにより弾き飛ばされる。
更にその騎士の攻撃でバルディッシュの張ったディフェンサーごと叩ききられビルにたたき付けられた。
「フェイトちゃん!?」
「フェイト?」
撃墜されたフェイト。それをみてなのは、アリシアが。
「のぞみちゃん」
「お兄ちゃん」
「「助けてあげて」」
なのは、アリシアの懇願にボクは肯定の意を伝える。
「わかった」
「お兄ちゃん」
アリシアが自分も行こうかと目線で問いかけてきた。
「アリシアはなのはと一緒に。なのはを守って」
「わかった」
「なのははレイジングハートが大破しているんだから出てこようなんて考えない」
「うぅ、わかりました」
自分も行く気でいたのだろうが、ここは大人しくしてもらう。
「ヘルブリンディ」
『スタンバイ・レディ、セットアップ』
『スレイプニル』
ボクは取り合えず撃墜されたフェイトのところまで向かいフェイトと合流する。
「フェイト」
「大丈夫」
気丈にもそう答えるフェイト。
「のぞみ、この結界から全員同時に外に転送できる?」
そう聞いてきたフェイトに。
「余裕だけど?」
「え?余裕なの?この結界結構複雑なんだけど」
「それでも所詮魔導師の張った結界。ボクにとっては穴だらけ」
「・・・・・・・・そう。なら」
「でも。ボク、今かなり怒っているんだ」
「え?」
ボクが怒っていると答えたのが意外だったらしく、あっけに取られているフェイト。
「うん、なのはにフェイト。ボクの大事な人を傷つけられた」
「え?///」
赤くなるフェイト。
「だから、徹底的に仕返しする」
ボクの怒気を感じたのか、フェイトが少しだけ萎縮する。そして。
「そう、だね。私も少し怒っているかな。大事な家族を傷つけられたんだから」
「うん」
そうしてボクたちは空中の敵に向かっていく。
そしてボクの立ちはだかる先ほどの幼女。
フェイトは騎士風の敵と交戦中だ。
「私の相手はテメーか?」
そう声を荒げる赤い女の子。
ボクはそれを無視して無言でヘルブリンディを構える。
「ち、だんまりかよ」
「なのはにした位のダメージは覚悟して」
「はん、一対一ならベルカの騎士に負けはねぇ」
そうとだけいって一気に距離を詰てくる。
「ヘルブリンディ、マテリアル2番ロード」
『ロードマテリアルカードリッジ』
ロードされたのはゲイジャルグ。
魔力の結合を無効化する破魔の槍。
更にボクはそこで神速を発動。
脳内のリミッターを解除してゆっくりになった視界の中、一切の手加減もなく相手の振りぬいたデバイスをかわしたあとヘルブリンディをたたきつけた。
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
なにが起こったのか解らない内にカウンターをくらい吹っ飛んでいく敵を眼前に眺めて更に追撃を加えるボク。
2撃
3撃
4撃
バリアジャケットを無視して内部にダメージを通す。
バリアジャケットは服の形をしたフェイールド魔法。
故にその結合は分解され紙くずのごとく切り裂かれる。
最後の一撃を加えると、そのまま2百メートルほど吹っ飛んでいってビルに激突した。
それを確認すると今度は後ろでの激突音。
どうやらフェイトが騎士に負けてビルに叩き落されたらしい。
すぐさま反転してフェイトの側まで移動する。
丁度2人は互いの自己紹介をしていたらしい。
そこに近づいていくボクに騎士(今の紹介でシグナムといっていた)が視線を向けて問いかけてきた。
「貴様。ヴィータはどうした」
どうやら赤い女の子はヴィータと言うらしい。
「アレはボクの大事な家族を傷つけた」
「それがどうかしたのか?」
「手加減はした。けれど生きているといいね?」
暗に撃墜済だと含めて言う。
「貴様ーーーーー!?」
殺気を向けてくるシグナム。
「ここらで引いてくれない?」
「何だと?」
「のぞみ?」
「解っているでしょう?あなたじゃボクには勝てない。あなたほど騎士なら相手の力量くらいわかるはず」
「くっ」
悔しそうにうなだれるシグナム。
「わかった、ここは引こう」
「そう」
そうして引く事を了承したシグナムからなのは達の方を振り返って、ボクは瞬間的に殺意が体から溢れました。
なぜならなのはとアリシアの体からリンカーコアが放出され、見る見る小さくなっていくのが目に見えたから。
「・・・・・・・シグナム?アレはあなたの仲間の仕業?」
「答えるとでも?」
「そう」
そしてボクはヘルブリンディに命令する。
「ヘルブリンディ、マテリアル1番ロード」
『ロードマテリアルカードリッジ』
そして排出される薬きょう。
「アレを行っている敵は?」
『なのはの後方100メートルくらいに反応あり』
「そう」
そしてヘルブリンディに集まっていく強大な魔力。
それをみていたシグナムがボクに攻撃を加えようとしてボクの殺気に当てられて身動きが取れなくなった。
「ひっ!」
「騎士ともあろうものが見っとも無い」
そして視線をシグナムからはずしながら続ける。
「だが正しい。今ボクを攻撃したら殺している」
先ほどからフェイトの反応が無いと思っていたらボクの殺気に当てられて気絶して落ちてっている。
魔法で助けようかとも 思ったがどうやらアルフが助けたようだ。
そしてボクはヘルブリンディを振りかぶり。
「ゲイ・ボルグ!」
詠唱と同時にボクはヘルブリンディを目標めがけて投げつけた。
side アリシア
私は今なのはと一緒にお兄ちゃんとフェイトの戦いを屋上からみている。
お兄ちゃんは負けると事なんて想像もつかないけれど、フェイトはすこしおされ気味みたい。
そんな戦いを見ていたなのはが。
「やっぱり助けなきゃ」
なんてことをいいだした。しかしそれを止めるのが今の私の役目だろう。
「ダメだよなのは、お兄ちゃんがここを動くなって」
「でも!」
それでも助けに行こうとするなのは。
「レイジングハートだって壊れているんだよ」
「うっ」
『大丈夫ですマスター。フェイトたちを助けに行きましょう』
レイジングハートがコアクリスタルを光らせながら言う。
「レイジングハート」
「ダメ!なのは、レイジングハートも!壊れちゃったら、レイジングハートが死んじゃったらどうする?」
『私はマスターのために存在する杖ですから』
「あーもう#絶対にダメだからね、大人しく此処で私とお留守番」
「でも・・・・・でも!?」
なんて言い争いをしていたらいきなりなのはの体、胸の辺りから腕が生えてきている。
「っあ」
嗚咽を漏らすなのは。
「なのは!?」
私はなのはの名前を叫び、安否を確かめようとしたところで今度は自分の胸からも腕が生えてきている事に気づけませんでした。
「ぐっ」
どうやらこの手の目的はリンカーコアだったらしく気づいた時にはどんどん魔力を吸われていき足っていることもまま成らないくらいまで魔力を吸われてしまっていて、私はそこで意識を失いました。
意識を失う直前に見えたのは夜空から振り落ちる一条の光、それは凄く強大で、しかし私には凄く安心する光でした。
だってアレはお兄ちゃんの魔力を感じたんだから。
side out
「ゲイ・ボルグ!」
そういってボクはこんしんの力を込めてヘルブリンディを投擲する。
ゲイ・ボルグ。クロノに以前使ったソレとは違う、ゲイボルグ本来の使い方。
伝説では投げれば30の鏃となって降り注ぐ魔槍。
マテリアルをロードして再現したそれは放てば必ずそのリンカーコアを貫く。
目標は攻撃を視認できる範囲外からの攻撃に対処できるわけも無くリンカーコアを貫かれ。
「きゃああああああああああああああああああああ」
そんな悲鳴が聞こえてくるような気がする。
そして。
『プランダー&シーリング(略奪&封印)』
相手のリンカーコアから魔導資質と魔力を略奪し更に回復しないようにリンカーコアを封印する。
幾分かキレていたが、どうやらヘルブリンディは非殺傷設定を切ってはいなかったらしい。
そして封印が済むと相手から抜け落ちクルクル回りながらボクの所まで戻ってきたそれをボクはキャッチする。
「殺したのか!?」
シグナムの質問に。
「殺してはいない」
とだけ答える。
「そうか」
「さっさと去れ」
さらに殺気を込めてシグナムをにらめ付ける。
「っく、この借りはいずれ返すぞ」
屈辱に思ったのかシグナムが苦し紛れの言葉を放つ。
「人質などはとらなで」
「・・・・・・」
「人質など取ろうものなら、そうだな」
そこで一旦ボクは言葉を切り。
「自分ではなくあなたの大事な物を壊す」
そう殺気をこめて言い放つ。
「心得よう」
「あと、もし、なのはとアリシア・・・あの2人に後遺症が残っていたりしたら、世界の果てまで追っていって殺しますが大丈夫なのですか?」
「・・・・それは大丈夫なはずだ」
「そう。ならさっさと仲間を回収して立ち去れ。ボクは管理局ではないので逮捕権はありませんしどうでも良いのですが。あの正義かぶれの組織が何時までもこんな結界を放置しているとは思わない方がいい」
「・・・・・感謝する」
そういってシグナムは仲間を回収して去っていきました。
それを横目で確認しつつボクはいそいでなのはとアリシアの元に駆け寄りました。
気をうしなって倒れているなのはとアリシア、アルフに連れられてやってきたフェイト。
「のぞみ!?なのはとアリシアは大丈夫なの?」
「ここでは検査も出来ないからヴァルハラに運ぶ、フェイトはどうする?」
「私は、管理局に頼まれてここにきている、だからここでのぞみについていくとヴァルハラがばれる可能性があるから」
「そう、一旦戻って、落ち着いたら家に来て」
「うん」
そしてボクは転移魔法でヴァルハラへと移動した。
ヴァルハラ内部。
ボクは転移してきて直ぐにブリュンヒルデとフリュムをたたき起こした。
「いかがされましたか?マスター」
「何かあったのですか?」
そう聞き返してくるブリュンヒルデとフリュム。
「なのはとアリシアが何者かに襲われた」
「「な?」」
「2人の協力が要る、精密検査、手伝って」
「「了解しました」」
すぐさま運びこまれたなのはとアリシアベッドに寝かせ、ヴァルハラに在る機材をフル稼働して2人の容態を調べた。
「どうやらリンカーコアがだいぶ小さくなっていますが、暫くすれば元通りに回復するかと」
「そう。後遺症の心配は?」
「今の所確認されていません」
「よかった」
「マスター、いったい私達がいないあいだに何があったのですか?」
それからボクは先ほど起こった戦いをブリュンヒルデ達に説明した。
「そんなことが在ったのですか」
「うん」
「よりにもよって私達の調整中に襲ってくるとは」
「私達がついていれば撃墜なんて事にはならなかったかも知れませんのに」
そう自己を責める二人。
「いや、ボクがもっとなのはを止めるべきだったし、ボク自身がなのはのそばに居るべきだった」
「マスター」
「うん。この話はお終い。そろそろフェイトを迎えにいってくる。なのは達をお願い」
未だ目を覚まさない2人をブリュンヒルデ達に任せボクはいったん家に戻るのだった。
side シグナム
今日の蒐集はこちらの受けたダメージ半端なく大きかった。
無事だったザフィーラと共になんとかシャマルとヴィータを回収して逃げれたのは僥倖だった。
確かに蒐集した2人の魔導師からおおよそ100ページほど稼げるという異常事態には諸手をあげて歓迎すべき事態ではあったが。
しかし、それでもかなりの痛手を負ったのも事実。
ヴィータは数日は絶対安静にしていなければならない傷を負い。
シャマルに至っては総ての魔法を封印された上でリンカーコアの回復も見受けられない。
念話くらいは何とか可能なのだが、カードリッジの補充や傷の手当てが出来ない分これからは消耗を抑えて戦っていかなければ成らないだろう。
それは余りにも手痛い。
総てはあの黒いバリアジャケットを着たあの敵が出てきてからだ。
あの敵とは出会ってはいけない。
あれにはどう足掻いても勝てない。
騎士であるわが身が殺気一つでその身を拘束された。
あれほどの恐怖を味わったのは何時以来か。
破壊と再生のうちに忘却されていく記憶の中でも、あれほどの物を感じた事はあるまい。
更にもう一つ懸案事項がある。
傷ついたシャマルとヴィータを旨く主から隠さねば成らない。
それは見た目以上に辛いことだった。
と、そんな事を考えていると、ザフィーラから声をかけられた。
「何を考えている」
「今日会った敵の事を」
「そうか」
「お前はあの黒いバリアジャケットに槍のようなデバイスを持った奴の方をどう思う」
しばし黙考ののち。
「あれには手を出すべきではない」
「・・・・・・・そうか」
「ヴォルケンリッターの将ともあろう者が弱気だな」
「解っている。が、あれがまた出てきたら私たちでは見逃してもらえるうちに逃げる以外の手が思いつかん」
「だが、あやつを倒さねばシャマルにかけられた封印の解除は出来そうになかろう?」
「それでも・・・・だ」
「そうか」
「ヴィータは傷を負い、シャマルは戦力外。暫くは2人だけで蒐集するしかないか」
と、ため息混じりにザフィーラにかたった。
side out