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No.17608の一覧
[0] 【習作】惑星でうなだれ(現実→惑星のさみだれ)[サレナ](2010/03/28 09:58)
[1] 中書き[サレナ](2010/03/28 09:57)
[2] 第1話[サレナ](2011/08/01 03:37)
[3] 第2話[サレナ](2010/03/28 22:43)
[4] 第3話[サレナ](2011/08/01 03:37)
[5] 第4話[サレナ](2010/07/31 04:00)
[6] 第5話[サレナ](2011/08/01 03:38)
[7] 第6話[サレナ](2011/08/01 03:47)
[8] 第7話[サレナ](2011/08/01 04:18)
[9] 第8話[サレナ](2012/08/03 00:02)
[10] 第9話[サレナ](2013/12/01 01:09)
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[17608] 第2話
Name: サレナ◆c4d84bfc ID:37afdf3f 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/03/28 22:43
春。
初登校日は既に終わり、まもなく本格的に高校生活が始まろうとしていたある日の事。
朝目が覚めると、眼前を巨大な黒い何かが塞いでいた。
俺の住む寮の一室はそれ程大きくない。
距離を取らねば全貌を見渡せないデカイ図体によって、部屋の空間は既に大部分を占拠されていた。

「あの、突然ですみません。驚かないで聞いて欲しいんですけど……」

声がする。
それも目の前の黒い奴からだ。
近すぎて何なのか分からない物体はそのまま話を続ける。

「私、カジキマグロの騎士、ザン・アマルと申します。
 実は今、この星は悪の魔法使いに狙われ、破壊されようとしています。
 それを防ぐ為に、貴方の力を貸して欲しいんです」

黒はカジキだった。そしてマグロだった。
カジキマグロが体格に合わない水槽に押し込められているかの様に、俺の部屋を泳いでいた。
宙でうねる。
俺は上体を起こし、枕元の時計を見た。
6時。
休みの日にこんな時間に起きるなどなんて勿体無い事だろうか。
俺は二度寝するために再び横になると、頭から布団を被った。

「聞いてください!?」

「ZZZ...」

「早!?」

起きたのは11時だった。





第2話 カジキマグロと隠蔽工作





「改めましてこんにちは。お昼のニュースです」

「あの……」

「本日のお昼未明、某県某市の学生寮でカジキマグロが解体されていたというショッキングな事件が発生しました」

「ひいっ!!」

「マグロはスタッフが後で美味しく頂きました」

「食べないでください!?」

なんというか、凄く弄り甲斐が在る魚類だ。
弄られキャラが実に似合っている。

「まあ冗談はこのくらいにしておこうか」

「ほっ」

安堵のため息をつくマグロというのもシュールな光景だな。
今後もシュール続きなんだろうけど。
俺はカジキマグロの目と向き合うと(つまり横)、改めて自己紹介を始めた。

「俺は天川あまかわ織彦おりひこ。別世界で生まれた転生者だ」

うん。言ってて鳥肌が立った。
何この厨二病患者。他に聞いてる人がいたら間違いなく引く。そして死ぬ(俺が)。
しかし事実なのだからしょうがない。
何故わざわざ彼……彼? 彼女? まあいいや。彼に素性まで話しているかというと。
今後およそ1年くらいは彼と共に過ごす事になる。
彼の謙虚で純朴な人(?)柄については既に知っている訳だし、だったらこちらとしても含む所なく過ごしたいと思ったのだ。

「転生者、ですか?」

「ああ。俺はこことよく似た世界で一生を送り、この世界で再び産まれたんだ。
 まあだからといって超能力的な何かが在る訳でもないけどな」

結局何故俺がこの世界に居るのかは分かっていない。が、正直どうでもいい。
死んだ後に次が在るかどうかは知らないが、試すつもりも無い。なるようになるだけだ。

「不思議な事も在るものですね」

「オイそこの不思議代表」

喋るマグロに不思議とか言われたく無いぞ。

「では実際の年齢は違うのですか?」

というか不思議の一言で済ませていいんだ。
話が早くて助かるけどさ。

「そうなるな。まあ単純に生きてる年月を数えた年齢とは違うだろうけど。老人になった事が無ければ老人の経験は得られないだろ?」

「そういう物ですか……」

精神年齢なんてどんな経験をしてきたかどうかの方が重要だ。
普通に20才まで生きた人間と、小学生を20才まで繰り返した人間ならどちらが大人かなど言うまでも無い。

「ま、そこら辺の話はおまけだ。重要なのは、俺がこの世界を漫画で見た事が在るって事だ」

「ええ!! 私達って漫画だったんですか!?」

ああ、なんてリアクションが素直なんだろう。
ある意味理想の反応を返してくれるこのマグロが段々可愛く思えてきた。
生まれてこの方、非常識な自分の素姓を語れる機会なんて師匠との遭遇時以外無かった。
自分の秘密と言うべき物を自由に語れる事が、理想的な拝聴者がいる事とあいまって、自然と俺の口は饒舌になる。

「それもどうかな。そうかも知れないし、違うかも知れない。
 実は漫画家は物語を想像してるんじゃなくて、別世界の情報を観測してるだけかもしれない。
 ここは漫画に良く似た平行世界かも知れないし、誰かの見てる夢って可能性も在る。
 だから自分の存在に疑問を持つだけ無駄さ。そうだったとしても、それで何かが変わる訳じゃないだろ?」

神様が見える訳じゃない。
世界の裏側が覗ける訳じゃない。
自分の行動の責任は自分にしか無く、運命だとか世界の意志なんて物に肩代わりなどしてはもらえない。
新しい選択肢を探して、その選択が用意された物じゃないとどうして言えるのか。
全て水掛け論に過ぎない。
だったら考えるだけ無駄だろう、という結論の末に何も変わらなかった俺がいる訳だ。

「あの、それじゃあもしかして、この戦いの結末も知ってるんですか?」

「知らん」

「え゛!?」

「まだ連載途中だったからなぁ……」

まあ魔法使いに負ける事は無いだろうけど、主人公とヒロインが、なぁ。
世界崩壊ENDが無いと言い切るには、ちょっとばかし難しい。
心配はしてないけどね。

「詳しい内容はおいおい話すさ」

「そうですか……でも、それなら心強いですね」

「ん?」

「敵の情報が在ると言う事は、戦いも楽になるでしょうから」

「あ、俺戦う気無いから」

「えええええええ!?」

今までで一番大きなリアクションが返ってきた。
そうか、ザンにとっては俺の厨二設定より戦わない事の方がよっぽど驚きなんだな。
少し寂しい。

「どうしてですか!?」

「世界の命運とか興味無いし」

心配はしてないからね。

「死んじゃいますよ!」

「最終的に人は死ぬさ」

「まだお若いのですから未来が在るでしょうっ」

「学生時代二巡とかすれば十分だろう」

「ご自分だけでなく家族やご友人もなんですよ!」

「そんときゃ俺も死んでるし気にしなくて良くない?」

「そんな……」

「そういう訳だから、別に願い事とかも叶えなくていいよ」

ことごとく切って捨てる。
俺のあんまりな対応にザンは力無く項垂れた。

ザクリ

「危ねぇから!」

「あぁっ、すみませんっ!」

鼻先が絨毯に食い込んだ。



なんとも締まらないので、一旦お茶を入れる事にした。
ペットボトルの緑茶をコップに注ぎ、ザンの前に置いてストローを突き刺す。
純粋なカジキマグロには無理だろうが存在自体色々おかしい彼ならきっと飲めるだろうと信じてる。

ちうぅーーー

「おお」

飲んだ! ザンが飲んだ!
まるで車椅子の親友が両足で立ち上がった時のように俺ははしゃいだ。
凄いよザン。君はただのカジキマグロじゃなかった。

「続きを宜しいでしょうか」

「ああ、うん」

いけないいけない。
話の途中でついつい脱線してしまった。
それもこれも突っ込みどころ満載なザンという存在がいけないのだよ。
なんという魔性のカジキマグロ。
存在自体が出落ちというのは伊達じゃない。
だからこういう思考が脱線だと――。

「俺にはやる気が無い。が、その事は心配しなくてもいい」

「心配しなくていいとは……?」

「当然だけど、漫画の中だと俺は存在しない。つまりカジキマグロの騎士は他の人がやる筈だった」

「あ、そういえばそうですね。でもそうなってしまうと、貴方が代わりに戦う必要が在るのでは?」

普通に考えればそうなる。
しかし師匠の場合、戦場に出たのは一度きりで、戦いには騎士である必要性も無かった。

「その人は漫画だとすぐ死んじゃうんだよ。だから君の出番は元々ほとんどないんだ」

「それは……その方が死なずに済んで不幸中の幸いといいますか」

「いや、死ぬ」

「何故!?」

「本人に死を回避する気が無いからだよ」

「ご自分が死ぬことを知っているのですか?」

「ああ。ちょっと未来とか予知できるそうだ」

「……ではその方も、貴方のようにこの星の未来に興味が無いという事ですか?」

「全然違うよ。彼は自分の人生に満足し、子供達の未来の為に自分の命を使う事を選んでその生涯を終えるんだ。
 俺なんかと同列に扱っては彼に失礼だ」

あの人は最後まで希望と向き合っている。
俺のように逃げ回る臆病者とは似ても似つかない。

「……」

特に何も言わず、ザンが俺を見る。
先程までのように質問はせず、俺の目を無言で見詰めていた。
何となく目を反らす。

「兎に角、彼は自分の意志で死ぬし、俺も手を出すつもりは無い。
 戦局的にも影響は無い。OK?」

「……はい」

会話が止まる。
とりあえず俺のスタンスは説明したし、むこうから何か言ってこないならこれで自己紹介も終わりか。
……。
空気が悪いな。
散歩にでも出るか。
一度外へ……

「だめだ」

「え?」

窓に向けた視線を戻し、ザンを見る。
なんと巨大なカジキマグロ。

「デカ過ぎ」

「あ、すみません……」

「これじゃ出かけられんな」

「あのー……普通の人には見え無いから大丈夫ですよ?」

「騎士と泥人形に見つかるからだめだ」

「そうですか……」

傍から聞くと腰抜けの発言にしか聞こえない事を堂々と告げる。
異議を唱えない所を見ると、納得はしていないようだが俺が本気なのは理解してくれたようだ。
しかし困った。
これでは迂闊に外に出られない。
今は引きこもっていればなんとかなるかもしれんが、学校が始まればそうもいかない。
こういう事態を考えなかった訳じゃなかったんだが……

「あのさ」

「はい?」

「最初の想定ではドラムバッグにでもしまえないかと思ったんだよ」

「……私をですか?」

「そう」

「無理ですね」

「うん。無理だな」

一応チャレンジしてみた。
両手で押し込み尾びれを捕まえ角を掴み捻るように詰めてゆく。
結果。
目の前に在るドラムバッグだった何かを見れば一目瞭然だった。

「残念だ」

「骨が痛いです」

ザンは体にダメージを受けた。
俺は財布にダメージを受けた。
戦いとはいつも虚しい。




「行ってきます」

次の週の朝。
丁度いい時間に出発した場合、それだけ人通りも多くなるので、万が一ザンが騎士の誰かの目に留まろう物ならなし崩し的に巻き込まれる事は確定的に明らか。
そう判断して早めに寮を出発することにした。
自分が騎士だった事で、漫画の知識が全て当てになるとは既に思っていないが、師匠の言葉だと全局面にバタフライ効果が発生するほどの影響は無いとの事。
ならば実際に状況が変わるまでは知識を当てにして行動しても良いだろうと思ってる。
なもんだから、この時間なら泥人形の発生は多分無いだろうし、遭ったらそれから方針を変えれば良いやと、相変わらず考えてるのか行き当たりばったりなのか微妙なラインで行動していた。

「見つからないように気をつけてな」

「はい、わかりました」

ザンに一言だけ注意しておいた。
事前に話しておいたから、あくまで念の為。
指輪の付いた片手をポケットに突っ込み、通学路をのんびりと歩いていく。
よく考えれば寮から学校へ続くこの道を歩くのは、初登校の日以来だ。
多分大丈夫だろうが、もし道に迷ってもこの時間ならまったく問題無い。
ゆとり在る時間のなんと素晴らき事か。

「外の空気が美味しいです……」

「ずっと部屋に引きこもってたからなー」

今日まで学校は休んだ。
近所にコンビニが在るので、外出も最低限しかしなかった。
体の大きいザンにあの部屋の生活は結構大変だったのかもしれない。
これはあれか。ペットの健康の為に定期的に外に散歩に連れて行ってあげないとダメなのか。
面倒くさいぞマグロの世話。

「面倒くさいぞマグロの世話」

「酷い!?」

しまった。ついつい思った事を言ってしまった。ワザとだが。
残念ながら無意識に思っていた事を口に出してしまうようなキチガ○スキルは持ってないんだ、俺は。
所で18禁ゲームでさえキチガ○というのは伏字にされる事が在るのは何故だ。
え、知らん? ごめん。
訳の分からん質問に付き合わせた心の中の誰かにそっと謝った。

「嘘だよ。食事もトイレも寝床も不要なんだからそんな事思わないって。――狭いが」

「そこはごめんなさい!!」

うんうん。やっぱり同居人には正直に本音を話した方がいいよね。

「そうだ、今度ザン用の寝床でも用意するか。長方形の発泡スチロール製のベッドなんだ。素敵だろ?」

「勘弁してください」

予算の都合上、氷は無いので蒸し暑いかも知れないなぁ。

「しかし浮きっぱなしというのも物理法則に喧嘩売りっぱなしだな。いったいどうなって……待て」

「人がいますね」

前からこちらに歩いてくる人影を二つ見つけた。
ザンに静かにするように言い、何食わぬ顔をして真っ直ぐ歩き始めた。

「あ」

「あ」

近づくと見えてきたのは眼鏡の男性と、ポニーテールの女の子。

「夕日さん」

そして朝日奈さみだれ。
思わぬ所で主人公とヒロインに遭遇することとなった。

「ああ、確か小石の友達の……ひこ君だっけ」

「はい。天川織彦です」

とはいえ、彼らに会った事が完璧に想定外だった訳ではない。
こっちの高校に通うと小石に話した時、夕日が通う大学もこっちに在る事は聞いていた。
流石に来て早々会うとは思わなかったけども。

「もしかしてこの辺受験したのかい?」

「ええ。今は寮暮らしです」

「そうか」

二人の格好は夕日がジャージ姿で、さみだれはハーフパンツ姿だった。
服装からして今はトレーニングの帰り道といった所か。
夕日の肩にはトカゲが乗っかっていた。
俺はトカゲに可能な限り目が向かないようにし、夕日との会話に意識を向けた。

「そちらは彼女ですか?」

「え、そう見える?」

「ちゃうよー」

あ、バッサリいった。
夕日は顔には出さないようにしているが、さり気無くダメージを受けてる。

「ぷふっ」

――っぶね、トカゲの笑い声に一瞬視線が移りかけた。
トカゲの位置を飛ばしてさみだれを見る。

「彼女は朝日奈さん。僕の家のお隣さんだ」

「さみだれいいます。よろしくー」

「あ、よろしく」

「姫。こちらは従兄妹の友達の天川君です」

『姫』とか傍から聞くとなんか色々凄いっすよ夕日さん。
あだ名と取れなくは無いけど。
従者ですか。
従者ですけど。
あれ、もしかして俺も従者か?
自分がこの子にかしずく姿を想像してみるが、そもそも自分がかしずいてる姿が浮かばなかった。

「あたしはゆーくんの主で、ゆーくんはあたしの――下僕や」

「――」

なんと答えていいか分かりかねたのでとりあえず夕日に目を向ける。

「ああ」

肯定したよこの人。いやまあ、分かってたけどさ。

「そうですか。あ、俺今日ちょっと早いんでもう学校行きますね」

俺は笑顔で彼らと別れた。
流れるような仕草だったと思う。
そう、不自然な所など何も無い。

「引かれたな、夕日」

「関係無いさ」




そもそもこのマンガを愛読していた俺があの程度の発言で引く訳が無い。
単に会話を打ち切る丁度良いタイミングだったから利用しただけだ。
二人と別れた後、道を曲がって彼らが視界に映らなくなった所で、俺はようやく声を出した。

「気付かれなかった、な」

「はい」

今まで沈黙を守っていたザンが返事を返す。

「いつ気付かれるかとハラハラしましたよ」

「俺もだ。おかしな挙動にならないように必死でトカゲから目を逸らしてた」

夕日達と話している間、向こうが宙に浮かぶカジキマグロに気付いた様子は無かった。
夕日なら当然騒ぐだろうし、さみだれも普通に話しを聞いているだけだったように思う。
あくまで俺の主観だけど。

「トカゲに気付いた様子は?」

視線を向ける訳にはいかなかったので、トカゲの様子はザンに確認する。

「ノイ=クレサンドが気付いた様子はありません。私から見た限りではお二人と視線が合う事も無かったので、おそらく大丈夫かと」

その答えを聞いて安堵の溜め息をついた。
ジロジロ見ても問題ないザンの視点から見ても二人の挙動におかしな所が無かったというなら問題無いだろう。

「検証は終了。いきなり騎士と姫にぶつかって驚いたが、これはこれで都合が良かったかな」

「お疲れ様です。しかしホントに気付かれないとは……」

「言ったろ、人間相手なら大丈夫だって。これでとりあえず、最初のハードルは越えたぞ」

ザンの方を向く。
けれど俺の目にはなんの変哲も無い住宅街が映るだけで、カジキマグロの姿は影も形も無かった。
姿は見えないまま声だけが聴こえてくる。

「後は、泥人形にも気付かれなければ心配は無くなるんだが……」

相手は人間ではない。
目を持っていても目で物を見ているとは限らないし、騎士の位置を直接感知するような能力を持っていたとしたら、狙われた時点で終わりだ。
そうなったら攻撃手段の無い自分では煮るなり焼くなりされるだけ。
どちらにしても、誰かに助けを求めるつもりが無い以上、自分の能力を信じる以外やりようは無いのだ。

「所で、トカゲの騎士の方とは面識が?」

「ああ、地元の友達の従兄妹のお兄さんでね。遊びに来ていたときに何度か話した事が在る」

俺が会った時は既に虐待生活が始まっていたのだろう、昔から暗そうな子供だった。
精神が彼より上な分、なんとも子供らしく無い目をしていると思ったものだ。

「主人公なんだよ」

「え?」

「俺が見た漫画の話さ」

星を砕く物語は、誰が勝者となるのか。
魔法使いか。精霊か。騎士か。魔王か。人間か。
結末を決めるのは、世界の中心ともいえる彼だ。

『君の選択で未来は変わる』

そんな事は無い。そんな事は無いんですよ、師匠。
だって俺は特等席から眺めているだけなんだから。
観客は脚本を書き換えない。
悲劇も喜劇も貴賎無く、ただ結末を受け入れるだけだ。

「緊張したから一度休みたいな。さっさと学校へ行くか」

「そうですね」

立ち止まっていても徐々にだが体力は失われている。
学校に着いたら掌握領域を解除しよう。
ザンを何処に待機させるか考えながら、俺は学校への歩を再開した。


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