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No.17608の一覧
[0] 【習作】惑星でうなだれ(現実→惑星のさみだれ)[サレナ](2010/03/28 09:58)
[1] 中書き[サレナ](2010/03/28 09:57)
[2] 第1話[サレナ](2011/08/01 03:37)
[3] 第2話[サレナ](2010/03/28 22:43)
[4] 第3話[サレナ](2011/08/01 03:37)
[5] 第4話[サレナ](2010/07/31 04:00)
[6] 第5話[サレナ](2011/08/01 03:38)
[7] 第6話[サレナ](2011/08/01 03:47)
[8] 第7話[サレナ](2011/08/01 04:18)
[9] 第8話[サレナ](2012/08/03 00:02)
[10] 第9話[サレナ](2013/12/01 01:09)
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[17608] 【習作】惑星でうなだれ(現実→惑星のさみだれ)
Name: サレナ◆c4d84bfc ID:37afdf3f 次を表示する
Date: 2010/03/28 09:58
春。
桜の花びらが雨のように降り注ぎ、門出を祝うように校舎を彩っていた。
まだ肌寒い風が吹いていたが、卒業式という場所に満ちる熱気はむしろ暑いほどで、誰も気温など気にしていない。
筒に保管された卒業証書を大事そうに抱え、学生生活の想い出を語り合いながら、最後の一幕を形に残そうと笑顔で写真を取り合っている。
撮影する保護者。挨拶しあう教師と生徒。思い出の品を残す先輩後輩。
別れの席でありながらも、辺りは活気に満ち満ちている。

では気温を気にし、証書を適当に摘み、一人ぽつんと佇む自分は何をしているのか。
特に何もしていない。
あえて言えば空を眺めている。
桜でもなく。人でもなく。
その一切に興味を持たないまま、ボーっと突っ立っている。部外者であるかのように。

摘んだ証書が無ければもしかしたら誰も自分を卒業生とは思わないかもしれない。
そう思ったりもしたが、それはそれでいいかもしれない。興味無いし。
ただ、式の終わりに率先して帰るというのも目立つだろうし、後で来てしまうであろう奇特な人物の手をわざわざ煩わせるのもなんだと思ったのでここにいる事にした。
いればいたで、声を掛けてくる相手が増える事に気付いたのは、実際に声を掛けられてからだったが。



「彦君、卒業おめでとう」

「ああ、おめでとう、小石」

小石の目は僅かに赤い。式の最中に泣いたのだろうか?
彼女の高い感受性を考えれば想像に難くない。
涙を流したその胸の内は、今日という日を迎えた達成感から? それとも終わりや別れが訪れた事への悲しみ?
自分には久しく失われた感覚だというのに、『想像に難くない』なんて思えるのは、彼女との付き合いの長さ故かもしれない。

「なんだか、あっという間だった気がするよ」

「そうか? 俺は随分長い時間だった気がするけど」

「あはは、彦君はそうかもね」

いつも退屈そうだったもんね、と彼女は笑った。
否定する理由も無いので、そうだなとだけ返す。

「高校は楽しいことありそう?」

「そう……だな。あるかも知れない」

無いかもしれない。
態々地元から離れた場所を選んだのだから、在って欲しいとは思うけど。
楽しい学園生活を過ごす自分の姿は、残念ながら想像出来ない。

「きっとあるよ」

「だといいな。そっちは引越し先では上手くやれそうか?」

「うん。っていっても、おじいちゃんは入院してるんだけどね」

ああ、それなら上手くやるもやらないも無いか。
世話好きの彼女のことだから、碌でもない相手でも無ければ大丈夫だろうし。
ある意味碌でもない相手である事は知っているけれど、それでも彼女なら大丈夫だという事も知っている。
あえて心配する事でもなかった。

「小石、あっちでクラスメートが呼んでるぞ」

「ホントだ。ちょっと行ってくるね」

「こっちは気にしなくていいぞ」

「うん。後でね~」

気にしなくて良いと言うのに彼女はそう答えて、クラスメートの集団の元へ向かった。
再び手持ち無沙汰になった俺は、声を掛けられる前と同じ様に空を見上げた。
太陽が高い。
僅かに目を細める。
視界に入る日光を遮るように手を伸ばす。
広げた手の平は、届かない何かを掴もうとしているようにも見えた。

そんな物、掴もうとは思わなかったが。





第0話 水泳と金槌





漫画の好きな子供だったと思う。

空想の世界で登場人物達が縦横無尽に騒ぎ回り、時に嘆き時に死に絶え時に生き返る。
そんな突拍子の無い出来事が当たり前の様に起きて、それを奇跡だとか愛だとかこっ恥ずかしく語る世界を夢に見た。
自分もいつか不思議な力を発揮したり異世界に旅立ったりするんだと、棒っ切れを振り回して勇者を気取ったりした頃が懐かしい。

そんな自分も大きくなるにつれ、現実にはファンタジーなんて起こりえない事に気づいてしまう。
お化けは錯覚で超能力はトリックで自分は只の凡人で。
学校で成績が悪くても『本気を出せば何とかなる』なんてレベルは通り過ぎ、高校や大学に行く頃には遊び呆けて、大人になるのを怖がるだけの駄目人間になる始末。
『現実なんてこんなもの』なんて冷めた目で見る横で、同級生達は自分達のコミュニティーを学生のソレから社会人へ舞台を移し、誰も彼も巣立っていく。

自分はといえば、気付けば本やゲームくらいしか趣味を持たず彼女もいない哀れな男がニートすれすれの生活を送るというBAD END直行な事実を理解してやさぐれているだけだった。

どっかにリセットボタンねーかな。

特に働かせもしない頭の中で、いつも片隅にそんな思考を置いたまま、いつも通りにバイトに向かう。
バイト先へ自転車をこぐ事さえかったるいと思ってしまい、そんなやる気の無さには自分自身でも呆れてくる。

だから、余所見している所に障害物に突っかかり、転げた拍子に頭を打って死んだ所で、特に感慨は湧かないのだった。


次に目が覚めたのは母親の腕の中だった。
母親といっても今まで母と呼んでいた人物ではなく、目が覚めた時の身体を産んだ母親だ。
見たことも無い人物に抱えられている事に混乱したし、目が覚めるまでの記憶が無いのだから状況も分からないし、自分の身体も違和感だらけだ。
状況を理解するだけの情報を集め、整理するまでに数週間掛かったとしても仕方無い事だろう。
そうして時間を掛けて状況を理解し、自分が生まれ変わったと判断すれば、どうしてそうなったかなんてどうでも良くなるくらいの喜びに変わった。

夢にまで見た非現実的な現象。
ようやく訪れたファンタジーな展開に俺の未来はドキドキだ。
今まで鬱屈していた感情が噴出したようにはしゃぎ回り、まるで人生全てが楽しいという様に振舞った。
一度成人した人間だというのに、子供以上に子供だった。

同じ年の子供達と話していても当然考え方が違った。
大人と会話しようにもそこに在る年齢差が邪魔をした。
二度目の人生を有意義に使おうと、出来る事を何でもやろうとして、空回っていたのだろう。
周囲と自分の間に温度差を感じて、徐々に冷静になってくると、自分が突っ走って行こうとした道に対して、欲しくも無い疑問が生まれた。
ただ日常を過ごすだけなら、自分の境遇はファンタジーでも何でも無いんじゃないのか、と。

人生を一度経験しているのは大きなアドバンテージだ。
何も知らない子供の頃は選択肢の総当りみたいなもので、効率や失敗の可能性なんて欠片も考えていない。
土台が既に用意された自分は、より高みを目指す事も可能なのかも知れない。
しかし自分が求めていたのはそんな物だっただろうか?
ステータスが若干高いからといって、普通に学校に行って勉強して社会に出て行く流れに違いは無い。
つまらない日常からの脱却は無く、何処までも世界は『普通』だった。

生まれ変わりが起こった割には、魂の実在とかそんな話は聞かない。神様に出合った覚えも無い
もしかしたら自分は一種の天才で、赤子の頃に一つの物語を空想していただけなのかも知れない。
ある若者の一生というものを。
夢落ちなんてつまらない結論の方が納得出来てしまう、そんな自分の物分りのよさが嫌になる。

結論が出てしまえば、もう何かに意欲を見出すことは出来なくなっていた。
頑張らずとも世界は回る。
目を開けば映るのは、未来の無い真っ黒では無く、郷愁覚えるセピア色では無く、無味乾燥な灰色の世界が広がっていた。



「ひこくん、最近元気無いけど、どうしたの?」

小石は俺が以前のように騒がなくなったことを心配していた。
家が隣で毎日顔を合わせているから、こちらの調子なんてお見通しらしい。

「特に何も無いよ」

そう、何も無い。
変わった事が無い日々に慣れてしまっただけだ。
それが普通で、今までの自分がおかしかっただけ。
生まれ変わろうがなんだろうが、この退屈な日常が変わる訳じゃ無い。
町で殺人事件が起きたってそれが将来に影響する訳でもないし、地球に隕石が落ちても一時的に騒げば直ぐに元に戻るだろう。
全て、慣れる。
死も、新しい家族も、未来にも、退屈にさえ。

「ほんとに? なんでも相談に乗るよ?」

「無いから。そんな気にするなって」

「うーん……」

納得してはくれないらしい。
彼女のように相手を気遣える人間というのは正直不思議でならない。
他人に興味を覚えることが極端に少ない自分にとって相手の事情なんてどうでも良い物で、そこに下手に踏み込んだ所で得体の知れない情報群に翻弄された揚句に弾き出されるのが落ちだと思っている。
だからといって彼女の行動を批判したい訳では無い。
理解し難い物を排除するだけの了見が狭い人間では無いつもりだ。
というのは嘘だ。
単に自分以外に視野が向かないだけの話。
などと自己分析に浸る間も、小石は気遣わしげな視線を送ってくるので、とりあえず答えておく。

「家庭に問題は無いし」

「うん」

「勉強も問題無い」

「そうだね」

「クラスメートともうまくやってるし」

「最近一人のこと多いよ?」

「イジメはありません」

「そっか」

とりあえず引いてくれるようだ。
納得したかは分からないが、これなら下校時に同じ質問をされるようなことは無いだろう。
とりとめのない話をしながら川沿いの通学路を二人で歩く。
小学校へは途中で反対方向に曲がるので、見えてくる橋は渡らない。

「あ」

「ん?」

小石が足を止める。
視線を追うと、橋の上で川を見下ろす子供の姿があった。
俺も子供だけど。
小石が子供に近づいて行った。
こんな所でどうしたのかと訊ねると、どうやら帽子を川に落としてしまったらしい。

「昨日買って貰ったばっかりなのに……」

「そりゃ怒られるな」

「う……」

「もう、おどかさないの」

泣きそうな子供とあやす小石を放って、俺は川面の帽子を探す。
幸いすぐに見つかった。
水没こそしていたが、伸び生えた植物に引っ掛かっていたため流されてはいなかった。
ランドセルを肩からおろし、あいきゃんふらい。

「ああほら、泣かないで……って、えーーーーーー!?」

一切の躊躇いなくおこなわれた暴挙に、小石が気付いて止めるような暇は無く、見事な水柱が川に上がった。

「ひこくーん! だいじょーぶー!?」

「ああ、ほら。ぼうしー!」

「わわっ!」

全力で投げ上げた濡れた帽子は風に流されずに橋まで届いた。
小石は危うく掴み損ねる所だったみたいだが、掴めたんだから問題無し。
俺も楽しかったので問題無し。
こうやって、時々変わった事をしていれば、退屈もまぎれるかもしれないなんて少しだけ思う。
上の様子を見ると、小石が子供に帽子を返しているみたいだった。

「はい、もう落とさないようにね」

「……」

「どうしたの?」

「流されてる」

「へ? ああああ! ひこくーーん!!」

川は結構深かった。
プカプカ浮かんだまま俺はのんきに漂う。
夏だから水はそれほど冷たくない。
服が濡れるのも気にならない。
なんとなく足をバタつかせた。背面キック。
流れる速度が加速した。
小石の声が段々遠くなっていく。
彼女の必死な声と、自分ののんびりした心境のギャップに、不謹慎にも少し笑ってしまう。
世界が遠くなるような感覚に、このままどこまでも流されてみようかなんて考えた。
世界の果てまで?
それもいいか。
流されて流されて、例え世界が平らで果てから落ちても俺はきっと気にしない。
もしも落ちたら、落ちた先には何が在るのかな。

そんな風に、世界の終着点に思いを馳せていたら、視界に妙なものが映りこんだ。
空に浮かんだシルエット。
意味不明な光景に、図太い俺でも思わず目をむく。
まるで今にも落ちて来そうな、世界を睥睨する姿。
巨大な巨大な、大きなトンカチ……

「ビ……ビスけごぼごぼぶ!」

溺れた。


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