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No.17511の一覧
[0] 【習作】ネギま! × JOJO4部ノベライズ[ホームパイ](2010/03/23 17:42)
[1] ダブル・ブッキング その②[ホームパイ](2010/03/26 03:18)
[2] ダブル・ブッキング その③[ホームパイ](2010/03/28 23:39)
[3] ダブル・ブッキング その④[ホームパイ](2010/09/28 17:59)
[4] ダブル・ブッキング その⑤ 誤字等訂正[ホームパイ](2012/03/19 00:07)
[5] ダブル・ブッキング その⑥[ホームパイ](2010/10/11 05:44)
[6] ダブル・ブッキング その⑦ 誤字等修正[ホームパイ](2012/03/18 04:00)
[7] ブック・ラーニング その①[ホームパイ](2012/03/18 03:41)
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[17511] 【習作】ネギま! × JOJO4部ノベライズ
Name: ホームパイ◆a4ca19c4 ID:5e3a6ad3 次を表示する
Date: 2010/03/23 17:42
 あの雪の日を夢に見た。
 あのひとがどの様に生きたか伝える記憶。
 訳も解らず頭に入ってきて、そのうち自分を追い出してしまった。
 だから、取り戻したかったのはその自分。
 他の誰の人生も見たくはない。
 純粋に自分だけの、そんな人生こそが欲しかった。


???/The Book




【ダブル・ブッキング その①】




 目を覚ますと、季節外れの桜が舞っていた。
 12月。例年にない冷え込みを記録したのは昨日の話だったはず。目をこらせば桜の正体は、ゆっくりと舞い落ちる雪だった。桜の木は枯れた幹枝を晒して、じっと冬を耐えている。
 ここは桜通り。並んだ街灯に照らされて、今は夜。

 体中が冷たい。その上に痛かった。わたしは雪に半ば埋もれて、桜通りの石畳の上に寝ていたのだから、それも道理だ。
 でも、なんで。
 困惑しながら立ち上がる。髪から、肩から、背中から。乾いた雪が零れて音を立てた。すぐ側にわたしの鞄が落ちているのを見つけ、拾った。拾ったと思ったが、取り落としていた。指が上手く動かない。そう気が付いた瞬間、上手く動かないのは指だけではないことにも気が付くべきだった。足を滑らせて、再び雪に転がった。

 嫌な音がした。全身を何かおぞましいものが駆け抜けた。
「……………………?」

 何か、べっとりしたものが体中にまとわりついていた。わたしはそれに足を滑らせたのだ。赤い、金臭いそれ。
 血だ。
 その一部が、わたしの目の前で溜まりをつくっている。いや、それはわたしから零れた。
 わたしの血だ。

 直後に、視界が半分赤く染まった。目を閉じる。血は目に染みた。拭おうとして、今度は両腕ごと動かないのに気が付く。それでも強引に動かそうと藻掻くうち、わたしは仰向けになり、その両の腕を掲げて固まっていた。
 片腕は関節がありえない方向に曲がっていた。
 片腕は尖った骨の先端を突き出し折れていた。
 転がったときに、こうなったのだろうか。そのはずだ。それまでは、ここまでではなかった。……ここまでではなかった?

 そして、痛みはもう一切感じていなかった。いや、それを言うなら冷たくすらない。足を動かすまいと決めた。どうなっているか知れたものではないが、これ以上の最悪はごめんだった。
「…………」
 声も出ない。どころか、口の中に幾つも鋭く尖った、しかし嫌に滑らかな硬いものを感じる。石が入ったのだと思うことにした。

 意識がだんだんと混濁しだした。ものの大きさが不鮮明になりだし、色合いが明滅し始める。それが灰色になって、輪郭を失うのはすぐだった。何が見えているのかはわからないのに、何かが動いているのはわかる。不思議な感覚だったが、どうせすぐ何が何だかわからなくなった。

 最後に見えたのは、黒。

 真っ白の中であっと言う間に大きくなって、こっちに近づいてきた。
「…………!!」
「…………!!」
「…………!!」
「…………!!」
 音は音としてではなくて、皮膚と骨を揺るがす何かとして感じられた。足音も、そうだ。
「……い、大丈夫か!? すぐ治して……」
「……んな事が……。これが、スタン……」
「……い熱ですわ。救急車を、いえシ……」

 意味は、わからない。
 何の意味かもわからない。





 わたしは、ファンタジーは嫌いだ。
 正確には、ファンタジーを現実に期待する人間が。

 ……たとえば、そう。空を飛べたらとは、わたしも時折空想する。実際、飛行機に乗って飛んだ事はあって、予想していたより遙かに限られた自由度に失望しつつも、地上を遙か高みから見下ろす愉悦はそれを上回った。でもそういうことではなく、今この瞬間、好みが浮き上がって、自由に空を動けたら。そうしたら、遅刻しなくてすむとか、行きたい場所に行けるとか、あるいは単に気持ちいいだろうなとは思うのだ。

 だけど、それを本当には望んでいない。ただ、その空想を弄んでいるだけだ。
 本当に飛べるようになれる手段を差し出されても、きっとわたしは空を飛ばない。



「フム……、それはどうしてだい?」
 手を動かすわたしの後ろで先生が聞いた。

 嫌ですよ、そんな見せ物じみた存在になるなんて。
 わたしは、地に足のついた普通の生活を愛していますから。

「じゃあ、例えば全世界の人間が飛べるようになったら、その時は君は飛ぶのかな」

 有り得ませんけどね。
 でも、そうなったら人並みに飛べるようにはしますよ。

「ありえないって事はないんじゃないか? これを見ていると、僕なんかはそう思うよ。少なくとも、僕が君くらいの子供だった頃、こんなに簡単に世界中の人間と連絡が簡単に取れるようになるとは、思っても見なかった」

 そんなものですか? わたしにとっては、コンピュータは産まれたときからあったものですから。
 でも、確かにここ数年でかなりできることは増えましたね。これからも増えるかも知れません。

「僕みたいな古い人間は、こういうハイテクは苦手でね。たまに君が扱っているのを見たから、もしかして、と思ったんだけど」

 わたしだって、そんなに詳しくはありませんよ。たまに、新聞の広告でパソコンの講座を宣伝してますから、行ってみたらどうですか。

「そうだね。暇を見つけてやってみようか。ところで千雨君、キミはどうなのかな?」

 わたしが、どうとは?

「部活動だよ。もちろんこれは強制じゃない。でも、部活動にも委員会にも所属していない生徒って言うのは、ちょっと珍しいと思ってね」

 すいません、そういうの苦手なんです。
 でも、わたしはわたしで楽しくやっています。これでも人間関係はあるんですよ。ネット経由ですけどね。

「……そうか。うん、わかった。引き留めて済まなかったね。それと、パソコンありがとう。書き直しにならなくてよかったよ」

 それくらいのエラーなら、コピペして検索にかければすぐ対処方法はわかるはずです。覚えておくと役に立ちますよ。……その、差し出がましいようですが。

「うん。助かった。もしまた、どうしようもないと思ったら、頼ってもいいかな?」

 お勧めはしません。
 わたしみたいな一介のパソコン少女なんかより、頼りになる人はいくらでもいるでしょう。それから、もうちょっと先生自身のスキルを上げた方がいいです。

「手厳しいな。うん、でもそれじゃあ、さようなら。今日は本当に助かったよ」

 いいえ。
 どういたしまして。
 失礼します。

 ――わたしは職員室を出た。全校生徒のプロフィールもしっかりと見て覚えた。警備員が巡回に来ないうちに――

 違う。
 わたしは、そんな事はしていない。
 昨日、高畑先生に頼まれて、先生のパソコンからバックアップデータを拾い上げた。
 生徒のプロフィールになんて、用はなかった。

 ――いや、確かめたのだ。かつて、自分には見覚えのない高校生はいなかった。それが確かに一致するか確かめた、そのついでに――

 ちがう。
 わたしは、そんなことはしていない。
 高校生の顔を覚える趣味なんて無かった。そもそも、昔いた数少ない友達の顔だって、今じゃ覚えていないんだから。
 見かけただけの人間の顔を覚えたりする理由がない。

 ――理由はなくても、覚えてしまった。産まれてきてから死ぬまでのことを、俺は覚えていた。何一つ忘れていない――

 …………。
 ……………………………………………。
 何のことだ。





 次に目を覚ますと、布団の中だった。
 暑苦しい布団を押しのけ、起きあがる。
 清潔と言うよりは潔癖白で統一された空間。カーテンで区切られた幾つものベッド。ここは病院だ。
 そのカーテンをくぐって、真っ黒な人影がふたつ現れた。それはカトリックのシスターの服だとわかった。大小二人組のうち、大きい方が口を開く。といっても、彼女達は覆面をしていたが。

「おお。ココネの言ったとおり、起きてる。えーと。わたしは通りがかりの謎のシスターなんだけど。どこか調子悪いとか、ない?」
「……?」
「長谷川さんは、雪の日に外で寝てて風邪引いたんだけど、覚えてる? どーしてあんなところで寝ていたの?」

 覆面の自称謎のシスターの言葉をキーに検索を開始。雪の日は124件。風邪にかかったのは32件、関連してインフルエンザが6件。雪の日、外で寝たことはなかった。それは記憶にない。
 どうやら困惑が表情にでたらしい。

「んー。記憶にない? そっか。まあ、そうかもね」

 それから、二人のシスターは目を合わせた。ただのアイコンタクトではない、何かを伝えるための動作だと思った。覆面の下で唇が僅かに動いていた。小さな声で喋っているのかも知れない。覆面がなければ唇を読めたろうが、今はそんなことよりも気怠さが勝った。
 早く出ていかないかな。
 そう思った瞬間、小さいシスターが謎のシスターの袖を引いた。

「……調子よくないみたい……」

 読むどころか、読まれていた。シスター達は口の中で別れの挨拶をしていたようだったが、聞いてはいなかった。
 布団を被る。また一眠りしよう。
 そう思った矢先、新たな客が現れた。
 今度もまた黒い。
 改造した学ランの上に、リーゼントを固めた頭が載っていた。その背は謎のシスターよりずっと高い。カーテンの枠に頭をぶつけないためにか、大仰に頭を下げて入ってきた。
 男は、その厳ついなりに似合わない、あるいはそのせいで卑屈にも見える柔和な態度で、シスター達に話しかけた。

「確かシスターシャークティのところの……確か、春日」
「ノー! わたしは通りがかりの謎のシスターでスよ?」
「……こんにちは」
「えーと、か」
「だからノー!」
「…………」
「…………」
「こんにちは、謎のシスターさんに、ココネちゃん。……で、どうだった?」
「長谷川さん、何も覚えていたみたいッスよ」
「まあ、そりゃそうだろうな……今までもそうだったて話だし、それを言えば俺だって」

 その声は、検索するまでもない。
 東方仗助。
 雪の日。
 ――読みかけの小説、虹村億安、【ザ・ハンド】、崩れた本棚、インフルエンザの記憶、上へ、茨の館の壊れた窓、【クレイジー・ダイヤモンド】、【本の存在により、仗助は死ぬ】、砕けた万年筆、変更を余儀なくされた筋書き、それから――

 手の中に、人肌の様な感触の、一冊の本があった。目を向けなくても、そのダークブラウンの表紙を知っている。その本の内容を。その名前を。
 最も頼りにするものの名前を、呟いた。

「【The Book】」

 己の半生を綴り、記憶している相棒の、それが名付けて間もない名前だった。
 この世にたった三人しか知らない名前だ。そのひとりが、布団を隔ててそこにいる。

「…………!」
「え? なになに? どうしたの?」
「ミソラ……ッ」

 呟きは、東方仗助の耳に入ったらしい。それは明らかな失態だった。警戒が、鋭利な形状を持って突き刺さる。その震えが、マグマのように魂に響いた。
 例え布団の上からでも、【クレイジー・ダイヤモンド】の破壊力は衰えることはないだろう。だというのに、攻撃は来なかった。今はその事実だけが貴重だった。
 いや。
 既に、彼はその必要を認めていないだけかも知れない。
 なぜならば、

 なぜならば、

 ――その一瞬に、体中の骨が折れ、折れた骨に体中が引き裂かれた。その爆発的な力に、身体は抗う術を持たなかった。【The Book】のページが、雪崩を打って抜けていき、街の空に散っていった。街に分け与えられたのだと思った。自分の人生を回顧して、仗助にほんの僅か語った。袖を支えられた学生服を、苦労して脱いで、そして――
 そして、
 そして、
 そして、死んだのではなかったか?
 蓮見琢馬は、死んだのではなかったろうか。

 心臓は夜に繋がり、血液を放出し始めた。体の冷たくなっていく音が聞こえる。
 布団が跳ね上げられた。
 抗う術もない。また、それどころではなかった。

「その本は……【The Book】ッ!?」
「東方、仗助――――!」

 気怠さをはね除け、ベッドの上で仗助に向き直った。仗助の傍らには重武装したギリシア彫刻のようなヴィジョンが拳を構えている。【クレイジー・ダイヤモンド】の速度を忘れることはない。ギロチンにかけられているに等しかった。
 動いたせいで、【The Book】は手とベッドに挟まれている。すぐには攻撃に移れないが、それ故に生かされているのだと信じたい。

「古本屋にたたき売りそこねたな。俺は……」

 そこで、言葉が止まった。
 俺は、生きている。そういおうとしたのだ。しかしそれは、何故だろうか。
 たしかに、身体には傷一つない。こんな事ができるのは、俺に致命傷を与えただろう【クレイジー・ダイヤモンド】に他ならない。破壊と再生。そういう矛盾した力を【クレイジー・ダイヤモンド】は持ち合わせていた。
 俺は敗北して、生かされたのかも知れない。
 ありそうな話だった。そうする動機が彼にはある。
 しかし、

「まさか、蓮見先輩なのか、あんたは」

 仗助の表情は、隙だらけだった。そしてそれ以上に驚愕に染まっていた。
 まるで、俺が生きているのがおかしいみたいだな。
 そんな軽口を思いついて、そうかも知れないと思ってしまったのは何故だろう。
 視線を仗助に固定したまま、謎のシスターと名乗った少女に意識を移す。彼女が俺のことを、何と呼んだかも、覚えていた。【The Book】を開くまでもない。

「ちょっと、どうしたの? 長谷川さんは病人だよ!」

 長谷川。長谷川千雨。
 そうだ、わたしは長谷川千雨。そういえばコイツのこと、どこか覚えがあるような。聞いたことのあるような声。わたしは活動範囲が狭いから、クラスメイトとか、そういう顔をよく合わせる間柄の誰かなのかも知れない。覆面シスターに知り合いはいないはずだけど。

 いやまて。
 おかしいだろう。

 俺は、蓮見琢馬で間違いない。
 わたしは、長谷川千雨で疑いない。
 そんな、馬鹿なことがあるのか? 

「え? わたし――俺? なんだ、あれ?」

 混乱の極致にいるのをみてとってか。仗助は戦闘態勢を解き、懐から手鏡を取りだした。髪型を整えるのに使っているのだろう。
 同時に、仗助の学ランに校章が付いているのに気が付いた。ぶどうヶ丘高校のものではなく、それは魔帆良の大学のものだった。

 鏡に映っていたのは――――、













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