翌日、教室に着くとカオスっていた。
オーク♂連盟制共和民主主義の崩壊がそこにあった。
昨日の『南条祐介風評被害事件』によりモテない男(笑)たちの不満が爆発したようだ。
ただちに男はモテる男とモテない男(笑)に二分され勢力を争うことになった。
世はまさに戦国時代!
言ってなかったがこれらはすべて水面下で起こっているものであり、表面では仲良しこよしなクラスであることはわかっていただいていると思う。
現在C組の勢力図はこのようになっている。
・中立系モテない男A派(4人)
二次元しか愛していないので別にモテなくていい。むしろモテたくないという集団。オークの中でもさらに不細工なやつが集っているのは気にしてはいけない。
・中立系モテる男派(6人)
なぜ恨まれてるのかよくわかってないので、とりあえずことなかれ主義でいつも通りの男たち。麻雀が好き。
・開戦Ⅰ系モテない男B派(8人)
モテる男を許さない完全無欠のアホたち。自分たちがモテないのは顔のせいであり、イケメンは全人類の敵であると宣言するオーク集団。実はひそかにこのメンバーの中の1人を好いている可愛いオーク(可愛いとはあくまでオーク基準である。)がいることはあまり知られていない。
・開戦Ⅱ系南条祐介(1人)
誰かが流した心無い風評被害により敵視されている可哀想なイケメンオーク。昨日の所持金は500万円だったがゲーセンで早くも5万円使っちゃった猛者。今日も行くらしい。
・開戦Ⅰ系廊下藩(6人)
顔面醜悪なんちゃってスイーツ。スイーツでオークなダブルで最悪なオークたち。種族はダブルダーク。風評にまともに感化され祐介を敵視している。
・開戦Ⅱ系窓際藩(6人)
『祐介くんがそんなひどいことするはずないよ』をモットーとする祐介の味方軍。種族はノータリン。雄の影もかけらもないオークが多い。
・開戦Ⅱ系新朝廷(4人)
合言葉は『廊下藩まじうぜー』なオーク衆。完全版スイーツ。種族はトリプルバカ。全員年上の彼氏がいて週1や2でXXXなことや、はたまたXXXなことをしているのだが、実はその彼氏たちが毎日のように可愛いオーク(※)をナンパしているのは気付いていない。
・中立系旧幕府(2人)
中立というか何故か俺を敵視している2匹のオーク。ハイオークは最近経営難に陥ったらしく、元子分Aと仲違いぎみ。金の切れ目は縁の切れ目なのだ。
・中立系ひきこもり浪人(1人)
ひきこもり。
・中立系ゴブリン(1人)
クラス唯一のゴブリン族。こんな状況でも愛玩動物と化している彼女のその策略や恐るべきものがある。本名は谷口さん。種族はワワワ。
そして俺である。
また、外部勢力も存在するのだが、外部はあくまで進級まで直接的には関わらないので割愛する。
以下に大まかな今日の彼ら及び俺がとった行動を記す。
前日≫廊下藩が風評被害を広めるべく『これはここだけの話だから誰にも言わないでね作戦』を開始。瞬く間に噂は尾びれをついて広まる。
0810≫いつのまにか『祐介が女を堕胎させた』から『そのせいで女は自殺した』へと進化した噂を聞き付けた廊下藩はその噂で激怒。ますます敵意を抱くようになる。
0820≫祐介くん風評被害によりモテない男B派(以下、×B)も大激怒。中には『待て、これは孔明の罠だ。』と一瞬考えたオークもいたが、イケメン許すまじで固まる。
0830≫ホームルームで風評被害について取り沙汰されることに。俺はこのとき頭痛のため保健室にいた。(※事態の把握はステルスの分身体によるものである。)
0850≫祐介くん大尋問会勃発。事態は平行線となる。俺はこのとき腹痛のためトイレにいた。(※)
0950≫祐介くんの友軍、新朝廷及び窓際藩が登場。『証拠がない噂だけで人を責めるなんてそれはどうなのよ』や『火のないところに煙は立たぬ』とさらに平行線が続くが先程よりは良好の様子。俺はこのとき腹痛のため近くのラーメン店にいた。(※)
1050≫新朝廷が噂の発端の俺がいないからそれまでお預けの一時停戦を提案する。両軍ともに渋々だが納得する。俺はこのとき眠かったので寝ていた。(※)
1250≫昼飯時ということで外部勢力からの凄まじい攻勢を30分近く飯も食えずに受ける祐介。謂れのない罪でサイテーと罵られている姿はまさにメシウマであるwwww
1440≫俺学校に再び舞い戻る。昼に駄菓子屋で買ったどら焼きを食べながら教室に入ると祐介に掴みかかられた。しかしそのまま授業へ突入するので解放される。
1550≫帰りのホームルーム。俺による『あぁ、あれのことか? あんなの嘘に決まってんだろ。それがどうしたんだ? 発言』で事態は一件落着となった。この件により廊下藩、×B派勢力は勢いを失うこととなった。
おわり。
「おわりじゃねーよ! お前のせいで退学させられそうだったんだぞ!」
「まぁ一件落着したからいいんでないの。」
こまけぇことをぐずぐずと……。それでも人間か! オークでしたねすみません。
「よくねーし元はと言えばお前が変な噂流したからだろ。」
「俺は悪くないし悪いのはお前だ。」
「大体お前なんで今日朝から夕方までいなかったんだよ?」
「夢で『今日は朝から夕方まで教室にいてはいけない』って死んだばーちゃんが言ってたんだ。」
「何そのピンポイント爆撃な嘘!? つかお前のばーちゃん両方生きてるだろ!」
「な、なんだってー!」
「あぁそういえばお前記憶喪失なんだっけ? 都合の悪い記憶は忘れてるんだなぁ。」
「そりゃ人間だからなハハハ。」
「何だその『あなたとは違うんです。』って目は。」
「そういえば慰謝料とか請求しなくていいのか?」
「は? なんで?」
「風評被害で心身共に傷付いたんだから取れるところから取った方がいいと思うぞ。」
「ほう……」
なんだそのニヤニヤ顔は。気持ち悪いからやめろよカス。
「ちなみに俺から取ろうとすると、なぜか俺に【『俺は祐介から脅されて風評被害を止めた』と勇気を持って告発してしまう呪い】がかかるからやめた方がいいぞ。」
「ひどい脅迫を見た!」
「で、どうするんだ?」
「別に気にしない。金に困ってるわけでもないしな。」
「ふーん。意外と優しいんだなお前。」
「はははー! 南条祐介は誰にだって優しいんだぜ!」
「お前って時々気持ち悪いよな。」
「何爽やかな顔で気持ち悪いとか言ってるんだ! 謝罪と慰謝料を要求するニダ!」
うわぁ……
「じゃあ俺こっちだしまた明日な。」
「……そうだな。また明日な。」
なぜかよくわからないが祐介は疲れた顔をしていたように見えた。
オークの顔がどうなのか判断できるようになるとか俺もこっちに慣れてきたんだろうかね。
そんなことを思いながら帰り道へと歩みを進めた。
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後書き
クラス内戦争を書いてみました。
こういうことって現実でも実は起きてると思うんですよ(・ω・)
いつのまにかあのグループが変わってたとか。なんか居たたまれなくなって他のグループに行ったとか。あっという間に孤立していたとか。進級時に同じクラスに友達がいないとか。なんとなく仲間外れにしたりされたりとか。
いわば自分の立場を確立したいがための一人を一国とした社会的大戦争ですね。
中高生の方はクラス内で冷戦が起こっていると仮定して、勢力を把握してみると面白いかもしれません。(巻き込まれなければですが)
戦争シミュが好きで学校がつまんねとか言う方にはおすすめな暇潰しです。