掃除当番が終わり屋上につくと何やら人だかりができていた。
ギャラリーに囲まれている祐介を見ると、彼はニヤリと笑って叫んだ。
「諸君! 決闘だ!」
「決闘?」
「そこの北条とやらは、俺に謂われ無き罪を被せひどい風評被害を与えてくれた。」
周りから自業自得だろーと叫ばれる。正直可哀想になってきた。
「自業自得ではない! 彼が流した単なる噂だ! 彼があの噂を流さなかったらこんなことにはならなかった!」
がんばれ北条ー。と応援する声。嫉妬団のものだ。
「そこで、名誉をかけた決闘として君を倒すことにした。」
とどこからともなく豚バラ肉が入ったパックを取り出し近くに置いた。
するとギャラリーから背の高い喧嘩の強そうなオーク♀が現れた。
「彼女の通称はワルキューレ。身長190cmジャストであること(190→/90→÷90→ワルキューレ)、喧嘩が強く、たくさんの子供を養って行かなければならないため日々金欠なシングルマザーだ!」
ギャラリーからどよめきが聞こえる。なんでこんな所にママさんがいるんだ的な意味の。
「今、俺には金があるが力はない。この豚バラ肉はワルキューレの参加料代わりすなわち今日の彼女の家の晩御飯は二年ぶりのカレーだ!」
「久しぶりに……子供たちにお肉を……」
「よって、力ない僕は彼女を決闘に参加させることにする。」
『卑怯だぞ南条!』とか『貴様それでタマキンついてんのか!』と、喚き声が上がる。祐介は完全に悪者扱いだった。
「ククク……勇樹? 何か言い残すことはあるか?」
「祐介、お前が豚バラでおいしいカレーができる魔法を使うと言うのならば俺は『けん』を使おう。」
「剣だって? なんだどこにあるんだそんなもの。銃刀法違反だぞ。」
「違うな。間違っているぞ祐介。けんはけんでも剣ではない。券、すなわち映画のチケットだ!」
「映画のチケットがなんだというのかね?」
「聞いたことはあるだろう。これは近々放映されるガンダムのルーンチケットというものだ。」
「ルーンチケット……?」
「ルーンとは『秘密の』と言う意味でルーンチケットとはつまり『秘密のチケット』。いわゆるV.I.P.しか見ることができないものを見ることができる。」
『うぉーくれー!』『よこせー!』との声が遠くから届く。
「それが何だと……はっ、まさか!」
「そう、その券をそこのワルキューレにあげればどうなるのか。賢い君にはわかるはずだ。」
「君は卑怯だ! 間違ったやり方で得た結果に意味はないのに。」
「ふん。せいぜい喚くがいい。」
「うおおおおおおお!」
そこで目が覚めた。
「あれ?」
「何寝てるんだよ。折角今から喧嘩しようとしてたのにニヤニヤしながら寝てるとか……」
あー。掃除当番が終わったから喧嘩しに屋上来たけど誰もいなかったから寝たんだっけ。
「気にするな。じゃあ今から喧嘩するか?」
「いやなんかめんどくさくなったからいいや。久々に一緒に帰ろうぜ。」
「そうだな。」
俺と祐介は2人で300年ぶりの商店街をぶらつくことにした。
「なぁ、500万円ってどうなったんだよ?」
「今から行くところで渡すんだってよ。」
「俺も行っていいのか?」
「知らんがな。」
「知らんのか。」
「そういやお前ってなんで人のことオークって言い始めたんだ?」
「だってオークに似てるじゃん。」
「似てないと思うぞ? てか山口のことはハイオークって言ってたけどなんでだ?」
「オークのとりまとめ役だったからだ。」
「なんじゃそれ。」
「ちなみにお前はイケメンオークだ。」
「嬉しくねぇよ! じゃあ谷口さんはなんていう渾名なんだよ?」
「お前の愛しい愛しい谷口さんはゴブリンだ。」
「ゴブリン……? オークじゃないんだな。」
こいつ『愛しい』ってところ否定しなかったな……。
「あぁ。オークより人間っぽいからな。」
「人間だろ!」
「えっ」
「えっ」
「ゴブリン族は街でたまに見かけるんだよな。たまにだが。」
「ゴブリン族ってなんだよ……じゃああの人は?」
「オークだな。」
「じゃああっちの人は?」
「オークだ。」
「……じゃあお前は?」
「一応人間のつもりだが怪しい。」
「お前もかよ! 人のこと言えねーじゃねーか。」
「気にするな。」
「でも何がゴブリンとオークの決め手なんだ? よくわからんが。」
「顔だ。」
「顔って……千差万別だな。」
「どれも似たり寄ったりじゃないか。」
「似たり寄ったりって似てねーよ全然!」
「俺には白川と山口の差がわからん。服の違いだなありゃ。」
「同じ所なんて髪型しかなくね?」
「同じ顔だろ。」
「……」
「まぁ想像してみろよ祐介。」
「何をだ。」
「目の前にハムスターがいます。ハムスターの両隣にはまた違ったハムスターがいます。そのハムスターの横にもまたハムスターがいます。そうしてどんどん続けてください。」
「ふむ。で? それがどうしたんだ?」
「これが癒し空間である。」
「何の説明だよ!」
「まぁまぁ。がなるなよ。ほら500万円受けとる場所ってここだろ? たかが500万。」
「ったく……たかがーってお前そんな金持ちじゃないだろ。俺にとっては大金だからいいんだよ。」
「んじゃあほれ。500万。」
そう言ってさっきまで持っていたバッグを祐介に渡す。
「は? なんだよこの鞄?」
「中に500万円入ってる。」
「はぁ? うわっなんじゃこれ。なんでお前が持ってんだ。」
バッグの中に入っている金を見ている祐介。なんという小市民なのだろうか。
「ヒント:売り込みを提案したのは誰でしょう。」
「……いくらで売ったんだ。」
「オークのくせに察しがいいな。」
「オークじゃねーし。てかお前絶対がめんてんだろ! 半分よこせ!」
「それが半分だ。」
「嘘つけ!」
「嘘なぞついたことすらない。」
「よく言うわ。」
「まぁ落ち着けよ。今日はその金でパーッと遊びに行こうぜ。」
「こんだけあればキャバクラでも問題ないくらいだな。」
「なんでオークの巣窟に金払ってまで行かなきゃならないんだよ。むしろ倒して金奪いたいぐらいだ。」
「オークオークうるさいな。勇樹の言う人間ってのはどういうやつなんだよ。」
「そうだな……例えば祐介のかっこよさを5とすると。」
「すると?」
「2000くらいじゃね?」
「違いすぎだろ。てかそんなかっこよかったり可愛かったりする人間がいるわけねーよ。」
「哀れなオークだな。」
「てめ! この!」
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後書き
会話文主体になってきてるというか頭がとぅっとぅるーなことになってる。
最初の夢落ちはゼロの使い魔のギーシュ・ド・グラモンと平賀才人との決闘を元にかなりこじつけてます。
書きながら気付いたんですが、グラモンって順番入れ替えるとモグランになるから使い魔がモグラなんですかね?