停学明けの昼休みのことだ。
なぜか祐介がニコニコしながら携帯を手にしていた。
ぶっちゃけオークがニコニコしているのは気持ち悪いと思う。
「祐介どうしたんだ。顔面が酷い神経痛を起こしてるっぽいぞ。醜くて見たくない。いい整形科紹介しようか?」
「お前いつから人の顔をそんなにボロクソに言うようになったんだよ。」
「知らん。」
「まぁいいけど。これはあれだな。前言ってたスキャンダルのことだ。」
あれか。
「あぁ祐介の彼女に子供ができたってやつか。男か女かどっちだ? 名前決まったのか?」
周りから悲鳴が上がる。お前ら盗み聞きしてたのかよ。オークのくせに耳はいいんだな。
「ちげーよ! 何でそんな話になるんだよ! そもそも彼女いないし!」
「なるほど。孕ませたのは彼女ではなく女友達ってことか。」
またも悲鳴が上がる。サイテーという言葉があちらこちらから上がる。サイテーなのはお前らの頭の中身だ。
「違うわ! 山口だよ!」
「ハイオークとヤったのか!」
「違う! 違うって!」
辺りは阿鼻叫喚の地獄絵図となったが追撃をやめないのが俺。達人は止めを刺すまで手を抜かない。
「すまなかったな……お前が好きなやつなんて知ってたらハイオークなんて呼ばずしっかり山口と呼ぼう……」
「違う! 孕ませてないし子供もできてない!」
「まぁそれはどうでもいいけどどれくらい金もらえることになったんだ?」
「おま……分かっててやってたのかよ……」
「当たり前だ。」
「ふん……聞いて驚くなよ……? 500万だ!」
「何! 山口と別れさせるために500万で釣られたのかお前は! しかも堕胎だと! 貴様それでもオークか! 恥を知れ!」
「ちっがーう! それにオークじゃねーしふざくんなよお前!」
「で、500万ってのはドルか? ユーロか?」
「お前……あとでボコるからな……ドルじゃねーよ。円だ。」
「えっ」
「えっ」
「何、祐介お前たった500万円ぽっちであのスキャンダル売ったの?」
「500万円ぽっちて……大金だろう?」
「大企業のスキャンダルなんだからもっと高値で売れるだろうJK」
「い、いやぁでもなぁ……」
「まぁいいや。別に俺の金じゃないし。よかったな500万円手に入って。」
「そうだな……損したって言っても0やマイナスってわけじゃないしな。」
「代わりにお前に関する噂は最悪だけどな。」
「それはお前が流したからだろ!? うわなんかメールにサブアドで『死ねよ不細工気持ち悪いんだよ』とか来てるし! 最悪だ!」
「あぁそれはさっき俺が送ったんだ。」
「お前が送ったのかよ! ブチ殺すぞ!」
「なんだよ逆ギレかよ!?」
「お前が逆ギレしてるんだよ!」
「そういえばこのハムサンドうまいなぁ。そうだゴ……谷口さん、よかったらハムサンド一つ食う? うまいよ。」
「へ? あ……ありがとう……」
「何無視してんだ! しかも谷口さんにサンドイッチあげるなんて……しかも谷口さん食べてる! 谷口さんがサンドイッチを食べているぞ!」
「祐介。ハイオークがいるのに谷口さんに手を出すなんて雄として最低だぞ。」
「勇樹! 貴様とは相容れないことがわかった! 放課後ちょっと顔を貸してもらおう。いいな?」
「謹んでお断りだ。」
「うるせー。放課後すぐ、この高校の屋上に来い。」
「俺今日掃除当番だからなぁ。」
「~~~っ! 掃除が終わってから来いよ。わかったな?」
「谷口さんこっちのコロッケサンドもおいしいんだよ。」
「ちょ……それ俺のコロッケサンドじゃん! しかも谷口さん食べてる! 谷口さんが俺のサンドイッチを食べているぞ!」
ぎゃーぎゃーうるさい祐介を宥めつつ、昼休みは過ぎていった。
なんといううるさいやつだ。だがそれを完全に受け流すのが俺である。さすがの達人だと自負できる。
そうして放課後になった。