まもののむれは全部で5人。
誰が誰かよくわからんから全部オークで統一することにした。
リーダーオークは体育館裏にフィールドを変えたいため、ついてきてほしいらしいのだがさっさと帰りたいので無視して校門に行くことにする。
オークたちは何やら喚いて追いかけてきているようだ。オークごときが俺の歩行速度に追い付けるわけないだろう。
だがしかしなんということだろうか。途中、律儀に信号待ちをしている俺はオークたちに追い付かれた。
「ひぃ……ひぃ……テメ…タダじゃ………すまねーから…なっ」
「大丈夫? なんか死にそうだけど。救急車呼ぼうか? 番号何だったかなぁ。991だった気がする。」
「ふざけんなっ……!」
オークCがふらふらな状態でとびかかってきた。
横に避けるとオークCは倒れふしてしまった。どうやらひんしのようだ。
そうこうしているうちに信号が青になったのでオークたちを振り切り再び歩行する。
リーダーオークはまだ体力が残っていたようで追いかけてきたが、途中で転けてひどく悔しがっていた。
接触したこともない不良に何の理由で絡まれたのか思案しつつ帰宅し、すぐ寝ることにした。最近眠すぎて困る。
翌朝、学校に着くと下駄箱に虫っぽい何かが入っていた。ひどい嫌がらせである。
俺は適当にサイズの合いそうな上履きを他の下駄箱から取り、変わりに虫が大量についた上履きを入れておく。
どちらの上履きにも名前が書かれていないので特に問題はなかった。
教室に着くと今度は机に落書きされていた。そして椅子がなかった。なんだこれは。ひどすぎる。
「おい勇樹! お前の机が……」
祐介が現れた。なんだ? 俺の机とお前の机を交換してやってもいいぞ。
「まぁもちつけ祐介くん。俺の机が落書きされた。それはなにで落書きされたのか?」
「……?」
「答えは水性ペン。ペンは油性と水性では全く違うのはご存知の通りだから説明は省くが、驚くことにこの文字は素人目にもわかるものだ。つい先程、1時間以内書かれたもののようだ。」
「それがどうしたんだ?」
「つまり実行犯は今このクラスの中にいる確率が極めて高い。」
「そりゃまぁわざわざ人のクラスに入ってまで落書きなんかしないからな。」
ククク……甘いな祐介。甘すぎるぞ! 韓国産キムチよりも甘い!
「祐介、お前が学校に来たときは既に落書きはあったんだな?」
「そうだけど。」
「お前が学校に来る前にクラスには誰がいた? 目立つやつでいい。」
「あー。山口がいたな。」
「山口って誰だ?」
祐介はハイオークを指してあいつだと答えた。
「あぁあのハイオークか。」
「「は、ハイオーク…!?」」
しまった。また口を滑らしてしまったようだ。まぁいいか。
「気にするな。ただの渾名だ。おいハイオーク、お前がクラスに来たとき他に誰がいた?」
「誰がハイオークだって!?」
「騒ぐなよ不細工が余計に不細工になるぞこの豚野郎。で、質問に答えられないってことはお前が犯オークでいいんだな?」
「不細工って! あんたの方が不細工でしょ!」
そうだそうだと野次が上がる。言われ慣れている俺にはダメージなどないに等しい。
「ふっ。ハイオークの感性ではそうなんだろう……」
「だ、誰が!」
「大体目元が気持ち悪いんだよ。何考えてるのかようわからん顔しやがって。髪の毛も金髪近くまで染めてプリンになってるし、耳の形も悪い。化粧も下手くそでそのせいか皮膚がざらざら。これでハイオークじゃなきゃ何なんだ。人間様を嘗めるなよ。」
泣き出した。さらに気持ち悪くなる顔。もう勘弁してくれ。
「ちょっと山口泣いちゃったじゃん! 最低! なんであんたなんか帰ってきたのよ!」
「あん? 元はと言えばこいつが悪いんだぞ。人間様の机に落書きなんてしやがって。オーク族のくせに生意気だぞ。」
「落書き落書きって山口がやったなんて証拠ないじゃん!」
「あるぞ。そいつ服に水性ペン入れてるから。」
「そんなもん私だって入れてるし!」
「ふむ。共犯者か。」
「ちげーよ! 証拠にならねーってことだよ!」
「まぁ落ち着けよ。そろそろホームルーム始まるぞ。」
「ぐあああああああ!」
ハイオークの子分Aが殴りかかってきた。すかさずカウンターを入れる。顔が若干凹んだようだが俺は達人なので仕方ないし気にしない。
「男女差別反対派。」
周りは女を殴るなんて……というような目で俺を見ていたがオーク退治なんて当たり前だろ。なんなんだお前ら。今のは殺さなかった俺の慈悲深さに感動するところだろう。
しばらくすると担任の白川とやらが教室に入ってきて何事かとあたふたしはじめた。
その日俺は一週間の停学を食らった。
理不尽だ。