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No.16740の一覧
[0] RealCelia(オリジナル/VRMMORPG)*第二章開始[佐伯 緋文](2015/09/27 03:41)
[1] 1- 「ラーセリアへようこそ」[佐伯 緋文](2012/10/15 23:26)
[2] 2- クソゲー?[佐伯 緋文](2012/10/17 00:42)
[3] 書物 「初心者さんへ」[佐伯 緋文](2012/10/19 12:11)
[4] 3- 「アタシ達に追い付いて来い」[佐伯 緋文](2010/02/26 02:41)
[5] 4- 初めての修練[佐伯 緋文](2010/05/22 23:45)
[6] 5- 冒険の仲間[佐伯 緋文](2010/05/22 23:53)
[7] 6- リアの真髄[佐伯 緋文](2010/03/02 23:01)
[8] 7- 相棒[佐伯 緋文](2010/03/03 01:40)
[9] 8- イベント[佐伯 緋文](2010/03/04 07:23)
[10] 9- 黒の恐怖[佐伯 緋文](2010/03/05 02:46)
[11] 10- 二重の歩く者[佐伯 緋文](2010/03/07 12:00)
[12] 11- ゲームマスター・エクトル[佐伯 緋文](2010/03/12 00:21)
[13] 12- 他力本願[佐伯 緋文](2010/04/01 07:32)
[14] 13- 壊滅情報[佐伯 緋文](2010/04/01 07:48)
[15] 14- 蛇の潜む藪[佐伯 緋文](2010/03/26 01:14)
[16] 15- サラマンダーの脅威[佐伯 緋文](2010/03/31 23:07)
[17] 16- 評価[佐伯 緋文](2010/04/08 16:50)
[18] 17- 作戦[佐伯 緋文](2010/04/16 16:11)
[19] 18- 消沈[佐伯 緋文](2010/04/19 02:07)
[20] 19- 要塞[佐伯 緋文](2010/04/26 07:57)
[21] 20- 賭け[佐伯 緋文](2010/05/02 01:05)
[22] 21- 自己像幻視[佐伯 緋文](2010/05/13 00:31)
[23] 22- 大地の蜥蜴[佐伯 緋文](2010/05/16 03:05)
[24] 23- 深緑の王者[佐伯 緋文](2010/05/16 23:59)
[25] 23+1/3- 真紅の恐怖[佐伯 緋文](2010/05/18 00:00)
[26] 23+2/3- 真炎の恐怖[佐伯 緋文](2010/05/20 02:35)
[27] 24- 激昂の遠吠え[佐伯 緋文](2010/05/25 00:10)
[28] 25- タイムオーバー[佐伯 緋文](2010/09/14 02:55)
[29] 26- 帰還[佐伯 緋文](2010/09/20 02:57)
[30] 27- 同僚の参戦[佐伯 緋文](2010/06/18 02:00)
[31] 28- 絶望的状況[佐伯 緋文](2010/06/25 04:25)
[32] 29- セーブポイント[佐伯 緋文](2010/08/17 14:59)
[33] 30- 攻城作戦[佐伯 緋文](2010/10/06 00:26)
[34] 31- 白翼の幻[佐伯 緋文](2010/10/26 03:46)
[35] 32- 死者の行方[佐伯 緋文](2011/01/29 00:53)
[36] 33- 割り振り[佐伯 緋文](2011/03/14 04:22)
[37] 34- ファンブル[佐伯 緋文](2011/05/08 01:00)
[38] 35- 突入[佐伯 緋文](2011/06/28 17:13)
[39] 36- 開戦[佐伯 緋文](2011/08/12 04:17)
[40] 37- 無謀な突貫[佐伯 緋文](2011/10/06 01:29)
[41] 38- モンハウ[佐伯 緋文](2012/04/11 08:29)
[42] 39- 爆発[佐伯 緋文](2012/04/14 00:07)
[43] 40- 決着[佐伯 緋文](2012/05/18 10:34)
[44] 41- イベント終了[佐伯 緋文](2012/11/21 18:51)
[45] 42- オートマティック[佐伯 緋文](2012/12/14 13:15)
[46] 43- レジェンドモンスター[佐伯 緋文](2013/02/19 16:53)
[47] 44- ミーティング[佐伯 緋文](2013/04/14 23:49)
[48] 45- キャリッジ[佐伯 緋文](2013/05/09 00:12)
[49] 46- クエスト(前)[佐伯 緋文](2013/08/06 03:01)
[50] 47- クエスト(中)[佐伯 緋文](2013/08/06 04:47)
[51] 48- クエスト(後)[佐伯 緋文](2013/08/27 01:22)
[52] 48+1/2- トラストの試行錯誤[佐伯 緋文](2013/08/31 23:25)
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[16740] 10- 二重の歩く者
Name: 佐伯 緋文◆d27da47b ID:d9b3a872 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/03/07 12:00
 命からがら、とはまさにこのことだ。
「撒いたか?」
 振り返るのも恐ろしい。
「……多分」
 横でカルラが、瓦礫の隙間から背後を確認する。
 あの馬鹿でかい巨体から、逃げ出せるとは思ってもみなかった。
「さっきの馬鹿デカいシールド魔法のお陰だな。ありがとうカルラ」
 魔法で巨大な盾を展開し、カルラは一撃だけ黒い巨体から放たれる業火を防いでくれた。
 代わりに、と言っては何だが、
「けど、……MPが、……ない」
 これでカルラの魔法は打ち止めだということだ。
 一応システム上、少し経てば自然回復するはずなんだが、カルラの今使った魔法は、どんな攻撃でも一度だけ防ぐかわりにMPが30分ほど自然回復しないそうだ。
 薬でも持ってれば良かったんだが、バフォメットとの戦いでほとんどを使い切ってしまったらしい。
『アキラ、まだ無事?』
 リリーからのウィスパーが響く。
 どうやら部屋に入れなくても、ウィスパーだけは可能になっているらしい。
「何とかまだ無事だ。2回ほど死にかけたけど」
 ほっとしたような嘆息が返る。
 リリーは今どこにいるんだろうか。
『ところで、リアがいるよ』
「え、どこに?」
 思わずそう言うと、上から一枚の羽が降ってきた。
 ばさり、と音を立て、それを追うようにリリーが降りて来る。
――お、羽だ。
 二つ名の通り、まさに白翼を折り畳むように舞い降りたリリーの手を握り、一緒に降りてきたのはリアだ。
「――ごきげんよう、アキラ」
「あぁ、数時間ぶり」
 ふふ、とリアは嬉しそうに笑みを浮かべた。
「それにしてもまさかボスのオン・パレードとはね」
 嬉しそうだな、とは口にしなかった。
 多分言うまでもなく嬉しいんだろう。
「しかし状況的にヤバくないか?コレ」
 言うと、リアがくすりと笑う。
「私の小屋に行きたいところだけれど、こんな機会でもなければ拝めないダーク・ブラックまでいるのだもの。……楽しみましょう」
 死ぬかと思ったんだが、と呟いてみると、あらあら、と笑って返された。
「あの狼みたいなのは何だ?ホワイトファングじゃないよな?あれ」
「狼?」
 リリーが問い返す。
「ああ。南門に戻った直後に襲われたんだ。多分属性は氷か何かだと思う」
「……多分、……ハティ」
 カルラが答えると、リアが顔を輝かせる。
「ハティもいたの?何て大盤振舞いなのかしら」
 ハティか。後で調べるとして、そんなことよりどうするかだ。
「イシュメルが来たら、魔族でぶちのめしてもらうってのは?」
「タイラスでは歯が立たないわね。……ダークは魔族と同じ闇属性よ。炎と氷が弱点だけれど、」
 リアがそこまで言った瞬間、誰かが俺を突き飛ばした。
 位置的にはカルラだ。
 そしてそこに襲い来る黒い爪。
   ズガァンッ!!
 轟音を立て、いつの間に忍び寄っていたのかダーク・ブラックの足が今まさに俺たちのいた辺りを踏み潰す。

「――忘れていたわ、私は運がないのだったわね」

 言うなりリアは、背に担いでいた自分の身の丈ほどもある杖を振りかざす。
「リリー、この辺りには誰もいないわね?」
 リアが声をかけると、リリーが上空へと舞い上がる。
 遥か上から、オッケーよ、と声がすると、リアはにこりと笑った。

「受けて立つわ、ダーク・ブラック。今なら私の本領を発揮できそうだもの」

 言うなり、リアはダーク・ブラックの前に飛び出した。
「ちょ、あぶな――」
 俺が制するより早く、竜の目が彼女を捕らえる。
 その爪がリア目がけて振り下ろされる瞬間、思わず俺は目を背けた。
   ズガァンッ!
 衝撃と音が響く。
 目を背けたことを後悔しつつリアの方を見ると、リアは何事もなかったかのようにぱんぱん、とマントを掃っていた。
「リア!」
 無事だったことに安堵しつつ名前を呼ぶと、リアはにっこりと笑って見せた。
 その後ろ姿に、容赦なく振りかざされる巨大な爪。
「危ない!」
 思わず叫ぶと、リアはマントを盾のように持ち上げた。

「――エンチャント、アンチドラゴン。エンチャント、アンチインパクト」

 マントにダーク・ブラックの爪がかかる寸前、リアの口から呪文が漏れるのが聞こえる。
 轟音とともにリアの体が数メートル弾き飛ばされるが、リア自身はほとんど無傷だ。
「うっわ……何だ今の」
 解説されるまでもない。
 リアはその場でマントをエンチャントしたのだ。
 恐らくは、対ドラゴンと、対衝撃の防御を。
 一歩間違えば、マント自体が消滅すると言うのに、そんな危険を思わせることもないほどリアの表情は余裕綽々だ。
 先ほどと同じようにマントを手で掃うと、
「衝撃全部を弾くことはできないってことかしら。私もまだまだね」
 それでも不服なのか、はぁ、とため息をつく。
「リア、人が来る!」
 リリーが上空から叫ぶ。
「あら。……ではそちらに任せましょうか」
 言うと、追撃するダークの爪をひょいひょいと避けながら、リアは数歩後ろへバックステップした。
――と。その時。

 ダークの口が業火に燃える。

 やばい、と思った時には遅かった。
 どん、と言う衝撃とともに、業火が放たれた。


 ぜーはーと肩で息をしながら、俺達はようやく東門の辺りまで退避していた。
「マジビビった……今度こそ死んだと思ったぜ」
 一人平気そうなのは、空を飛んでいてダーク・ブラックの視界から逃れていたリリーだけだ。
「大丈夫?」
「……多分、……平気」
 カルラが、平気とは思えないほど疲れた声を上げる。
「……まさか、『黒の暴虐』とはね」
 リアが呟くように言いながらも、ふうと溜息をついた。
 リア曰く、あの業火はそういう名前のスキルらしい。
 使えるプレイヤーはドラゴニアンの専用スキルらしいが、ダーク・ブラックにもそれは可能らしい。
「もっともそれはプレイヤーが勝手に付けたネーミングなのだけれどね」
 実際のスキル名は不明。最初にダーク・ブラックが使ったことからこのネーミングが付いたのだそうだ。
 さて、と呟いて、リアはふふ、と笑った。
「どうなるかしら、見物ね。魔族でもいれば話は別なのだけれど」
 あ。
「そういやそろそろ8時だけど、イシュメルのやつは寝坊か?」
 時計を見ながら言うと、あ、とリリーが声を上げた。
「まさかとは思うが、やられてたりはしないよな」
「ありえないことではないわね」
 あっさりとリアが言う。
「死んだらウィスパーは、ログインしていない扱いになるもの」
 あ。
 そう言えばイシュメルに対してのウィスパーは試していない。
「ウィスパー、イシュメル=リーヴェント」
[該当キャラクターはログインしていません]
 無機質なアナウンスだけが帰って来る。
「ダメだ、繋がらない」
「電話じゃないんだから」
 くすりとリリーが笑うと、カルラもつられたのか、くすくすと笑う。
「ま、死んでないことを祈るか」
 呟くと、俺もつられて笑う。

「あいつだけじゃなく、俺のことも心配して欲しいな」

 振り返ると、アズレトがそこにいた。
「あら。……こんばんは」
 リアが声をかけると、手近な岩……というか瓦礫に手をかけ、息を整えながら、アズレトはにこやかに笑って見せた。
「初めまして。リアです」
 言うと、リアの名前が浮かび上がる。
 それを見たアズレトの顔が興味に変わる。
「お。あの本の作者か」
 どうやらリリーは、知り合い全員にあの本を勧めたようだ。
「本のことは忘れて頂戴」
 やや赤くなりながら、リアが即座に切り返す。
 どうやらあの本はリアにとって黒歴史らしい。
「そうはいかないな。あの本が書かれた時期、俺はまだ初心者だったから大いに助かった。例を言わせてもらうよ」
 下手をすると嫌味に聞こえるが、リアはそうは受け取らなかったようだ。
 もう、と苦笑してみせるリア。
 と言うかアズレト、考えてみればお前、俺が来るまではハーレム状態だったんだな、考えてみれば。
 仄かに沸いた殺意を抑えつつ、簡単に現状を説明する。
「バフォは倒したんだな?……それにしても、ダークにハティか。同時に来られたら厄介だな」
 他にも同時に召還されている可能性はあるが、当面わかっている情報はその二つか、とぶつぶつ呟きながら、アズレトが杖を肩に担ぐ。
「壊滅させるつもりのイベントなら、こんなもんじゃ済まさないだろうし、どうする?」
 リアの小屋に逃げ込むという手も実はあるのだが、それは根本的な解決にはならないだろう。
 そもそもこのイベントの後始末はするんだろうか。
 イベント終わっても町はこのまま、と言う可能性も捨てがたいが。
 実際、情報サイトによれば、イベントによる町の破壊はNPCとプレイヤーの手で修復されたそうだから、今回も例に漏れずそういうことになるのだろう。

『おいおい、アタシがいない間に何コレ』

 頭にフィリスの声が響く。
「お、フィリスか」
 言うと、全員が俺に注目した。
『町の壊れっぷりが笑えるんです、けど!』
 あはは、と笑うフィリスの言葉が不意に乱れる。
「――ひょっとして戦闘中か?」
「どこにいるか聞いて」
 リリーの言葉に従い、どこにいるか聞いてみる。
 どうやら、朝俺と別れたところからほとんど動いていないらしい。
「ってことはあのドワーフの武具屋前か」
 言うなり、リリーがそっちに飛んで行った。
「リリーが行った。俺たちも向かうよ」
『リリーが?』
 怪訝そうな声色が帰る。
『……ひょっとして、そこ他にも誰かいる?』
 おっと、と声が一瞬慌てたような声色に変わる。
「あぁ、アズレトとリアがいる。あとカルラ」
 言うと、一瞬フィリスが息を飲む。

『逃げろ、そいつはアズレトじゃない』

 その言葉とほぼ同時に、背後から聞こえる鋭い金属音。
 振り返ると、アズレトとリアの杖が交錯していた。
「……ドッペルゲンガーとは、また古風な罠を敷いてくれるわね」
 苦笑するリアが、アズレト……いや、ドッペルゲンガーの、俺への攻撃を防いでくれたらしかった。
 マジかよ、完璧に騙されたぞ。カルラも信じられないと言う顔をしている。
 鋭い剣戟が2度、3度と交錯する。
 火花さえ散らし、鬩ぎ合うリアとドッペルゲンガー。
『よりにもよってアズレトとはね……気をつけろアキラ』
 今行くから、とフィリスが言うが、何をどう気をつければいいのかわからない。
「……生憎ね。私はアズレト本人のことは知らないから手加減はしないわ」
 言うなり、リアが距離を取る。
「『我願う、全てを焼き尽くす炎よ、全てを等しく塵と化せ』」
 その呪文を聞いたカルラが、俺の頭を引っ掴み、地面へと押し付ける。

「『フレイム・ゾナー!』」

   ごぅんッ!!
 まさに灼熱の業火。
 一瞬遅れたカルラの髪を巻き込みつつ、業火はアズレトに似たそれを焼き尽くす。
 うへぇこぇぇ。
 以後リアだけは怒らせないようにしようと心に誓う。
「……ッ!?」
 しかしそれで終わりではなかった。
 炎の中から立ち上がる影。
 リアも信じられないものを見ているように一歩後ずさる。
「――『リジェネレイト』」
 炎の中からその声が響く。
「無茶苦茶ね。……そのアズレトって男」
 ドッペルゲンガーは殺した者に成り代わるって話だけれど、と呟いて、リアが溜息をついた。


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