<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

チラシの裏SS投稿掲示板


[広告]


No.16711の一覧
[0] 【習作】東方農家伝【東方、オリ主】[ヤッタラン](2010/03/12 16:36)
[1] 【習作】東方農家伝【東方、オリ主】其の01[ヤッタラン](2010/03/12 16:35)
[2] 【習作】東方農家伝【東方、オリ主】其の02[ヤッタラン](2010/02/23 11:40)
[3] 【習作】東方農家伝【東方、オリ主】其の03[ヤッタラン](2010/02/25 08:16)
[4] 【習作】東方農家伝【東方、オリ主】其の04[ヤッタラン](2010/03/12 18:55)
[5] 【習作】東方農家伝【東方、オリ主】其の05[ヤッタラン](2010/03/31 23:58)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[16711] 【習作】東方農家伝【東方、オリ主】其の02
Name: ヤッタラン◆2fabd112 ID:1d1bbdd7 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/02/23 11:40
「ある程度落ち着いてからで構わないから、人里の田畑に顔を出して欲しい。里の守護者達には伝えておくわ。」
紫はそう言い残して切り裂かれた空間に消えていった。

さて、一人新たな移住地に放り出された(に極めて近い状態)わけだが、右も左も分からぬでは何もできない。
まずはここの土壌や水はけなどをまず知っておきたいので愛用の麦わら帽子を被って散策と洒落込むことにする。

我が家の新しい立地は幻想郷を一望できる小さい丘の中腹にあり、丘を降りれば人里のものらしい田畑が広がっている。
しかし遠目から見ても稲や他の作物の育ちが悪い。早めに顔を出すべきだろう。

(季節ももうじき初秋になる……。当座の食料を先に用意した方がよさそうだな。)

幸い家や畑共々移動してきた井戸の方は生きており、近くに池もあるので水には事欠かないだろう。
この一帯の丘も中腹とはいえ起伏もそれほどない草原で、平地となっている草原も多いので田畑だけではなく家畜を放し飼いにするのもいいかもしれない。
土の方は田畑の邪魔になる石や岩、切り株などもなく、土が痩せ気味である点を除けば耕作するにはうってつけな場所であることは分かった。

(紫があらかじめ用意したのか、それとも他に使われなかった理由でもあったのか……)。
まあ、使えるのであれば文句は言うつもりもないし、仮に何らかの障害があっても紫程度の相手でもなければ軽くあしらえる。

では丘と草原を田畑に変えるとしよう。



引っ越し後三日目。
目の前にはたわわに実った稲や麦や蕎(そば)が広がり、その奥の畑には南瓜(かぼちゃ)や大根、人参などの比較的保存の利く野菜も育っている。
いずれもつい先日まで野草の生えていた丘や草原であった場所は豊作といっていい程度の田畑と化していた。

「むこうから持ってきた堆肥もあったので早速試してみたのだのが、予想外な程良い土ができたのでな。
取りあえずここに住む者達への挨拶用としてはこんなものかな。」
田畑の予定地に堆肥を混ぜていつものように能力を使う。たったそれだけで土地の痩せた草原は極上の農地に変貌してしまったのである。
あまりの反則ぶりと呆気なさに我ながらしばらく放心したのは忘れたことにしておく。
というよりここ数日呆気にとられるようなことばかりの気がするが気にしない方が幸せだろう。

「挨拶どころではないわよ、これだけあれば人里なら一冬越しておつりが出るわ。」
散歩がてらで様子を見に来た紫もまた呆れ顔であったが、その目元は安堵の感情が見て取れる。
彼女としては私を幻想郷に誘ったことが間違いでなかったというところなのだろう。

「早速収穫して人里と妖怪の山に持って行きたいわ。お願いできるかしら?」
「構わんが、問題がある。」
私の返答に訝しむような顔をする紫に足下に用意していた農具一式を手渡し、こう言い放つ。
「収穫は人間と同じようにするしかないのでな。簡単な話、人手が足りんので手伝ってもらうぞ。
まさかそこまで私一人にやらせるつもりではないだろうな。」
我ながら意地の悪いとは思うが譲るわけにはいかない。収穫に脱穀、保存のための作業など妖怪であっても手間と時間のかかる作業なのだ。




人間の農夫が鎌で稲や蕎を刈り、猫又が束にして干す。人間の女子供が大根や人参を掘り出し、里の守護者が皆を纏めつつそれを集める。
そこには本来相容れるはずのない人間と人外が共に作業をするというある意味異様な光景が広がっていた。

収穫に際し紫が人里の守護者や人間の農民ら十名ほどに自分の式達を集めて来たので、早ければ今日中に乾燥と脱穀に入れそうだ。
もっとも当の紫本人は妖怪の山に用があると言ってこの場にはいない。本音は見え見えだがその分彼女の式達が頑張ってくれているので問題はない。

最初は人里の人間が妖怪の私のところに来て平気かとは思ったがそこは幻想郷。
人間の方もその辺の分別はついているし、何より人里の守護者が獣人である所から外では考えられない事だ。
問題は里の者達がここの田畑を見て目を丸くしたのはいいとして、守護者にまで拝まれる勢いで感謝されたのは勘弁して欲しい。
第一私は妖怪であって八百万の神ではないのだから。

それは兎も角、皆が収穫に精を出す中私は休憩用に握り飯と漬け物、茶の準備のため家の台所にいる。
一人暮らしが長いせいか、大人数の食事を用意するのは初めてだがこういうのも悪くはないのだろう。
「こっちは出来上がったが憂香。後は何を出す?」
そういいながらできたての握り飯をいれた箱を持つのは紫の式神の八雲藍、九つの尾を持つ狐である。
「水出しの茶もそろそろいい具合だろうから井戸から取り出しておいてくれ。暖かい茶は漬け物と一緒に持って行く。」
しっかりと密閉できる薬缶(やかん)にあら熱をとった茶を入れ、井戸で冷やしておくと程よい水出しの茶が出来上がる。
熱い茶もいいが休憩時の最初には冷えた茶の喉ごしが堪らない。

私の返事に軽くうなずくと藍は予め用意してくれた人数分の湯飲みなどを持って部屋を出て行く。
主の急な招集に文句一つなく従い且つ、必要となる農具や食器などを用意してくれた辺り、妖力などの純粋な力以外の実力がうかがい知れる。
彼女程の妖獣を使役する紫の実力を見せつけられる気分だが、それ以上に有能な式を持つことにうらやましくもなる。

(幻想郷に来た以上、一人では何かと不便であろうし私も式神なり使役できる存在がいたほうが良さそうだな……)。
今度紫に相談してみるかと考えつつ、皿に盛った漬け物と茶入りの薬缶を持って私も外に出る。
既に皆一息つけようと集まっているようだ。


握り飯や漬け物を各々食べる中、人里の農民と下の田畑の作付けや出向く日取りを話し合っていると人里の守護者を勤める上白沢慧音が来た。
「収穫に加勢してくれて助かった。実らせるまでは良かったのだが如何せん一人では手に余る所だったのでな。」
「いや、繰り返すようだが感謝するのはこちらの方だ。これだけでも今年は無事越せる。本当にありがたいよ。」
「礼なら紫に言ってくれ。ここに来たのもこうなるのも全てアレの仕向けた結果だ。
とりあえず次の田おこし(冬に行う土を掘り起こす作業)までにはふもとの田畑に出向いておくからそのつもりでいてくれ。」

「何から何まですまない限りだ。必要ならすぐに声をかけて……「え~すいません、お取り込み中失礼しますね。」
突き飛ばす音が聞こえると同時に何者かがいきなり顔を出してきて話を遮ってきた。
頭の烏帽子や翼を見る限り天狗らしいが何の脈絡もなく現れないで欲しい。危うく茶がこぼれるところではないか……と思ったら慧音が見事に吹っ飛ばされていた。

「え~私この幻想郷にて新聞記者をしております清く正しく謝命丸文と申します、今後ともよろしくお願いします。
さて早速ですが、取材のほうさせて頂いてよろしいでしょうか?」←ここまで一息。
年頃の娘の顔なだけ救いではあるが顔が近いし喧しい上に鬱陶しい。
元隠者の私にはもっとも相手にしたくない部類だがおぼろげがちな前世の記憶が警告を発する。
こういう手合いはぞんざいに扱うと身体的以外でいろいろと厄介なことなりかねない分尚タチが悪い。
ふと横を見ると藍が苦笑かつ同情的な目で見ているあたり、こうなることは予測済みらしい。


思わず眉間に手を伸ばそうとすると、天狗の肩を誰か……言うまでもなく慧音が掴む。
湯飲みを持ったまま派手に吹き飛ばされたらしく、その姿は泥やら何やらにまみれてひどい有様だ。
一方の天狗の方はというと流石に自分に非があるが理解しているのか、後ずさりつつ情けない声をあげる。
「謝命丸……。覚悟はできているだろうな………。」
その言葉のすぐ、慧音と鴉天狗は空中で花火のような光弾を大量にばらまきながら派手な追いかけっこを始めた。

「藍、収穫の指揮を頼む。私はここの片づけと風呂を沸かしてくる。」
休憩していた皆も収穫を再開し始める中、藍は溜息一つの後頷いてそれを了承してくれた。
私の方も食器を重ねながら上空を見やる。仮に作物に弾を当てたら二人揃って半殺しにしてやるから覚悟しておけ。




結局夕暮れ近くまで弾幕ごっこをやった挙げ句、双方傷だらけ泥だらけになった慧音と鴉天狗の文だったが結局私の半殺しだけは避けられたと言っておく。

もっとも真面目に働いていた農民達(特に子供)の微妙に白い目は下手な弾幕などよりよっぽど応えたらしく、
二人揃って米や野菜を満載した大八車(ちなみに四輪)を引っ張る罰が全会一致で言い渡された。
(後で聞いたが、幻想郷の人里では寄り合い所などでの合議制で大抵のことは決まっているらしく領主などは存在しないらしい)。

本来なら数日かけて乾燥させてから脱穀などをするのだがそこは反則ものの私の能力、その日のうちに俵や布袋に詰めて無事妖怪の山と人里に運ばれていった。
尚、農民達から人里に招待されたが夜も更け始めていることなどから明日妖怪の山共々伺うと伝えて帰ってもらった。


皆が家路についた頃、私も正直流石に疲れたのですぐにでも風呂に入って寝るつもりだったのだが……。
「漬け物も美味しかったけど大根汁も絶品だわ。」
「味噌からまるで違います……、負けました………。」
「これ、すごく美味しいですっ。」
「……気に入ってもらえて助かる。」
なぜか八雲家の三人(三妖もしくは一妖二匹)と囲炉裏を囲っている。
皆を見送り家に帰ると当然のごとく部屋にいて茶と茶請けを要求してきた紫に実力行使をしなかった私の堪忍袋を褒めてやりたい。
式神二人も自分たちの家に主がいないと知るや私の家に舞い戻って来たので連れ戻してくれると思ったらこの有様……もとい現在に至るわけだ。
藍が気苦労を滲ませた顔で「迷惑をかける。」と言ってきてそのまま夕餉(ゆうげ)の手伝いをしてくれたのが救いだが、
寝っ転がりながら茶はおろか付きだしの催促をしてくる紫を見て菜箸(さいばし)をへし折った私はけして悪くない筈だ。

「すいません憂香さん、お代わりいいですか?」
ちなみに目の前でお椀を抱えてお代わりをねだっているのは藍ご自慢の式神(紫の式の式)で猫又の橙。
そのつぶらな瞳と私の能力(つまり反則)並みの可愛さは庇護欲と何故か罪悪感を感じずにはいられない。
藍の教育と躾の行き届いているらしくよく働き素直で礼儀正しい子だ。昼間でも農民の子供達に玩具にされたりムキになっていても微笑ましさが増してなおよろしい。

お代わりの大根汁を手渡してやりながらそんなことを考えつつふと横を見ると紫が当然のように茶碗を藍に突き出していた。
紫それで五杯目ではなかったか?



「さて、憂香。私に聞きたいことがあるんじゃないかしら?」
夕餉の片づけを藍達に命じた紫は私と二人になったのを見計らうかのように問いかけてきた。
予め知っていたのか、それとも察しが良いのか、いずれにしても流石とは言いたい。
たとえ最終的にご飯八杯と大根汁六杯をたいらげ私と藍をゲンナリさせたとしても。

「とりあえず外で流通している品を取り扱っている店なり者なりいないか?
できれば塩と昆布、干し鰯などがあると助かるのだが。」
「…………詳しいことは藍に相談して、塩なら天狗達が岩塩を採取している筈……て、そうじゃなくて……」
からかうのはこの辺にしておこう。塩以外はあると助かるという程度だからな。

「後は式神なり使役する相手が必要だ。何か方法なり教えて欲しい。」
「そうねえ……。単に人足なら里の人間なり雇ってみたら?」
「いや、ここで広げた田畑の維持などを考えると式神か妖怪あたりがいいだろう。
人間では私たちと比べて短命すぎるし、妖精ではうまく使役できそうにない。その辺が妥当かと思うが。」
紫は茶を飲み干したのか、扇子を弄びつつ私の言葉を聞いていたがやがて扇子の小気味良い音をたてると、

「多分貴方では式神を使役することは難しいわ。妖怪あたりを雇うのが賢明ね。」
そう宣告された。


「ではそうするか。
紫、すまんが適当な妖怪を見繕って連れてきてくれ。真面目な働き者で変な下心がないのが理想だが詳しいことは任せる。」
それだけ言うと新しく橙が煎れ直してくれた茶をすする。

片づけを終えた藍達が戻ってきたが誰も口を聞くことなく、ただ囲炉裏の薪が爆ぜる音だけが聞こえる。


「理由は聞かないの?」
橙が眠たげに目を擦るの眺めていると、紫がようやく聞いてきた。
「難しい……詰まるところできないと分かったんだ、それ以上の興味はない。
只でさえ紫や他の妖怪でもできないことが私にはできるんだからな、別に残念でもないし高望みする気もない。」
生憎これから暫くは人里や妖怪の山に出向いたりと忙しくなることは避けられない。
そんな状況で欲しいのは即戦力であり、相応の時間がかかるであろう式神は今回は諦めるべきだろう。

紫は「そう……」とだけ返事すると自分の家に帰る事にしたのか、彼女が立ち上がるとその後ろで空間に裂け目ができる。
藍も橙をおぶってそれに倣う所を私は引き留め、漬け物と味噌を手早く包んで彼女らに手渡す。
「家に居着かれても困るから今度作り方を教える。」という私の言葉に苦笑しつつ、紫達はスキマの中に入り消えていった。


途端に家が静寂に包まれる。
彼女たちがいたときの空気の温もりが部屋に僅かに漂うのを感じ、一抹の寂しさに駆られてしまう。

紫達の飲んだ湯飲みを片づける気にもなれないまま、ふと数百年別れたっきりになっている姉のことを思い出す。
私のような例外を除いて馴れ合うことに興味を持たない姉のことだ。私が他の誰かと暮らすようになれば間違いなく離れて暮らすだろう。
まあ既に長いこと離れて暮らしている以上、再会しても自然とそういう流れになると思う。

まあ姉のことは兎も角、当面の懸案は紫がどんな妖怪を連れてくるかだ。
私が幻想郷に必要不可欠な存在として迎え入れた以上、彼女が問題のある相手を連れてはこないだろう。
問題は笑い話か日々の退屈しのぎの範囲で問題のある相手を連れてくることだがその時はその時、なるようにしかならないだろう。

そんな結論に落ち着いたところで紫達の飲んだ湯飲みを片づけ始めることにした。












※⑨でもできるういかりんのさっと一品※

煮るだけ簡単、大根汁の巻

ちょっと豪勢なお味噌汁に、豚肉を入れたら豚汁、ご飯を入れれば雑炊にもなるので汎用性が抜群の一品。
材料:大根、人参、その他適当な野菜(レンコンや玉葱、里芋などもOK)、出汁のもと、味噌、水。

①、野菜は(必要なら皮をむいて)一口大に切る。
(人参など堅い野菜は少し小さめに切るか予め電子レンジなどに軽くかけておくと良い)
②、野菜を鍋に入れ、浸るぐらいの水と出汁のもとを入れて火にかける。
(ネギなどは最後にかけたほうがいいので入れないように)
③、沸騰させないように火加減に注意しつつ、必要なら灰汁をとって味噌を溶かし込む。
④、後は野菜が柔らかくなるまで煮立たせないよう煮込むだけ。
(仕上げに細かく刻んだネギをふりかけてもOK)

ワンポイント:
スーパーでよくある出汁入りの味噌なら早めに味噌を溶かし込んで煮込むと味が浸みて美味しい。
(その時は出汁のもとは無くても構わない)
種類の違う複数の味噌を入れて味を自分好みに調節するとなお美味しい。







------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

早々に感想を頂きありがとうございます、ヤッタランです。

憂香と書いて「ういか」と呼びます。姉はうんた……ではないですからご注意を。
もっともフラワーマスターの家庭的な姿が想像できないのも事実で逆にこんなポジションのキャラがいてもいいかな………、
というのが降って沸いたネタの始まりだったりします。

因みに姉との違いとして①、長髪の三つ編み。②、傘の代わりに麦藁帽子と鍬かスコップ。なんて妄想してみたりしてます。
三つ編みはえーりんと被る?気にしない。

なお今回試験的に読みにくい固有名詞等にかっこ書きで読みなどを入れてみました。
厨二な文字は大体知ってても南瓜や蕎の読みなんてシラネーヨな奴が書いていますのでその辺お察しください。

最後のおまけは……悪ノリがすぎた。反省するはずがない。

それでは。



前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.024832010269165