「というわけで、24分以内に私の下す指令をクリア出来なければ貴女は完全にあの世行きなんで頑張ってください」
上の空で歩いていたのがいけなかったのだろうか。暴走したトラックに跳ね飛ばされて気がついたら神様と名乗る神々しいお姉さんの前に私はいた。
わけがわからずパニくる私にお姉さんは告げる。
『貴女は不幸にもトラックに轢かれ見るも無残なミンチと化してしまいました。しかしこの心優しい神は貴女に特別に生き返るチャンスをあげましょう。
今から私が貴女に試練を与えます。その試練を24分以内にクリアすれば無事生き返らせてあげましょう』と。
私死んじゃったんだとか心優しい神(笑)とかなぜ24分以内とかツッコミどころ満載だ。
だが、くだらない夢だと思ってホッペを引っ張ったらめちゃくちゃ痛かった。
しかもお姉さんは『うん? 信じていませんね。別にいいんですよ、所詮一時の戯れです。後で「あの時神様の言うことを聞いて試練を受けておけば良かったー」なんてあの世で思っても知りませんからね』ってすねてるし。
……私マジで死んだのか? けどもし私が本当に死んでしまったと仮定すると、これは破格の申し出ではないのだろうか。
神様を名乗るお姉さんが試練をクリアすれば生き返らせてくれると言っているのだ。ラッキーとかそういうレベルではないだろう。
確かに、このふざけた状況はとても現実とは思えない。だが、もし現実だった場合、確かに私は後で後悔すること間違いなし。
私にはまだまだ生きてやりたいことが沢山あるし、優しい両親よりも先に死ぬとか親不孝にもほどがある。
それに例えくだらない夢だとしても私には何も害がない。せいぜい寝起きが最悪になる程度だろう。
ならば、その試練とやらを受けてみよう。というか試練って何? 霊界探偵でもやるのか? 24分で?
「わかりました、神様のお姉さん。私にその試練を受けさせてください」
「おおっ、そうですか! ならば早速試練を与えましょう! その内容とは!」
途端辺りから『ダラダラダラダラ!』と響くドラムの音。バラエティー番組か!? いつから用意してた!?
「ババーン! 『魔法少女リリカルなのはのPT事件を24分以内に解決すること』!」
…………はい?
「あ……あの神様。私の耳がおかしくなっていなければ今もの凄いこと仰られた気がするんですけど」
「今から貴女を魔法少女リリカルなのはの……そうですね、なのはちゃんが初めてレイジングハートを使った辺りの世界に飛ばします。そこで貴女は頑張ってPT事件を24分以内に解決すればいいのです。
ただそれだけ。ちなみに解決したかどうかは私が判定しますので手抜きしないように」
「話を聞けやぁ! なんですかその出鱈目な試練は!? なぜにアニメの世界に行ってアニメのストーリーに介入してその事件を解決しなきゃいけないんですか!? しかもどう考えても24分じゃ不可能だろうがぁ!?」
「安心しなさい。私も鬼ではありません、というか神だし。この試練を受けるにあたって貴女に素晴らしい能力を授けましょう」
そう言いながらお姉さんは私の頭に手をかざした。そして『はぁ!』という気合の入った掛け声と共に金粉みたいなのが手から降り注ぐ。
「これで貴女は『貴女の知る漫画、アニメ、小説、あとネット小説とか二次創作などのキャラクター達が使用する能力や道具を使うことが出来る程度の能力』を得ました」
なにそのチート能力!? つーか長げえ!? しかも何で能力名のニュアンスが東方っぽいんだよ!?
というか、その能力があればリリカルなのはの世界でPT事件を解決なんて楽勝じゃないか! まず時間を止めて、ドラえもんの『もしもボックス』で『もしも、PT事件が解決したら』とでも言えば簡単に――!
「ちなみにもしもボックスや涼宮ハルヒなどの世界改変能力は使用禁止なのであしからず。あと時間操作の能力も禁止です。ザ・ワールドや時間を操る程度の能力とか」
先手を取られた!? ええ、どうしよう……じゃあ解決って何すればいいんだ? 取りあえずジュエルシード集めて、ユーノに渡して、プレシアを倒す? 24分じゃ時間が足らなくないそれ?
それに解決って言ったってそんなの人の主観じゃないのか!? 判定はお姉さんっていってたな……どうすればいいんだよ!
「覚悟は出来ましたか? 私は出来てる。ならば試練を始めましょう」
どこから取り出したのか巨大な『移動用』と腹に書かれたハンマーを振り上げるお姉さん。おおおおおおい!? ちょっとまてぇ!? 何する気!?
「なお貴女が目を覚ました瞬間にスタートです。寝ぼけている暇はありませんよ? 時間は貴女のポケットにストップウオッチを入れておくのでそれで確認してください。では、行ってらっしゃいませ!」
『ゴギャッ!』とトラックに轢かれた時よりも酷い音と共に、私は意識を手放した。
■■■ 試練、スタート。
「そして、不屈の心は……」
「そして、不屈の心は……」
「「この胸に!」」
「「この手に魔法を! レイジングハート、セットアップ!」」
ふと気づくと、そんな声が聞こえた。声の聞こえる方向を除いてみれば、バリアジャケットに身を包む少女とフェレットの姿と怪物一匹。
うわーい、マジでリリカルなのはだー…………って唖然としてる暇なんてねえ!? 考えうる最速の解決方法で、この事件解決しなきゃならないんだから! 確かポッケにストップウオッチがあるっていってたな……うわ!? もう3分たってる!? ぼけっとし過ぎた!
早く解決解決解決解決――、とりあえずあの化け物を潰す!
「スターライトブレイカー! スターライトブレイカー! スターライトブレイカー! スターライトブレイカー! スターライトブレイカー!」
グォレンダァ! と私の指先から五発の桃色のごん太ビームが発射され怪物を消し飛ばした。すげええええええ!? これが『貴女の知る漫画、アニメ、小説、あとネット小説とか二次創作などのキャラクター達が使用する能力や道具を使うことが出来る程度の能力』か! 長いんだよ畜生!
「きゃああああ!? な、なんなの!?」
「ままま、魔導師!?」
2人が何か言ってるけど説明してる暇がない! 無視だ無視! ってジュエルシードまでどっかいっちゃったじゃん!? しまったああああ!?
――そうだ! ドラえもんの道具に凄く便利なのがある! 頭にそれを思い浮かべながらポケットまさぐる。出て来い、『取り寄せバッグ』! ドラえもんの道具の中でもかなりの知名度だろう、なにせ名前を呼んで、バッグの中に手を入れれば呼んだものが出てくるという夢のバッグだし!
「ジュエルシードⅠ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ、Ⅴ……めんどくさい! ジュエルシード全部!」
そう叫びながら取り寄せバッグを逆さにし揺すりまくる。ボロボロと出てくるわ出てくるわジュエルシードの大群。うおっ!? なんか活性化してるっぽいぞ!? なんで!? 共鳴でもしてるのか!?
ええい! ならば全部封印してやる!
「ジュエルシード一斉封印! おりああああぁ!」
封印のやり方がよくわからないから叫びながら気合を入れてみる。おお! 出来た! 共鳴収まった! 私すげええええ!
よっしゃあああああ! 次だ!
「ユーノくん!」
「はっ、はい! って、なぜ僕の名前を!?」
「そんなことはどうでもいい! これ、ジュエルシード全部あるから、管理局の迎えが来るまでちゃんと見張っててね!」
ジュエルシードを全部呆然としてるユーノとなのはに押し付け、私は同じくポケットからどこでもドアを取り出す。
「フェイトの所へ!」
扉を開きながらストップウォッチを確認。げえっ!? もう9分も立ってる! 残り15分しかないじゃん!?
急げ急げ急げえええええ!
■■■ 9分経過
どこでもドアの先はどこかの部屋だった。おそらくフェイト達のマンションだろう。
というかフェイトとアルフが目の前にいるし!
「っ! 誰だい!?」
「敵っ!?」
私に気づき敵意をむき出しにして警戒する2人。しかし遅い! くらえ、『ニコポ』!
満面の笑みを浮かべる私。とたん顔を赤くするフェイトとアルフ。よし、惚れた!
駄目押しの『ナデポ』でフェイトの頭を撫でながら私は呟く。
「フェイト、アルフ、行き成り貴女達の家に上がりこんでごめんね。それとまた行き成りだけど私貴女達に幸せになって欲しいの。すっごく。
幸せなんて人それぞれだし、定義なんてないけど……とにかく幸せになって欲しい。何よりも私の為に」
「貴女の……為に?」
「そう、例えば貴女には同じ魔法少女達と一緒に学校に通ったりして……取りあえずこの街に高町なのはって子がいるんだけど、その子と友達になったりすればたぶん幸せになれると思う!」
新手の宗教の勧誘みたいなことをいいながらフェイトを抱きしめる。ユデダコみたいに顔を真っ赤にするフェイト。
「フェイト、忘れないでね。貴女が幸せになれば私も幸せなの」
そう、PT事件の解決の為に。魔法少女リリカルなのはは、なのはとフェイトの物語である。故になのはとフェイトが幸せになってこそ『解決』だろう。
本編はある意味バッドエンドみたいなものだった気がするけど。
とにかく、これでフェイトは幸せになりたいと思うはず! なのはのこともさり気なく言ったし、フェイトはこれで良し! 無理やり惚れさせるとかかなり人間の屑っぽいけど、こっちも生きるか死ぬかの瀬戸際なのでどうか許して!
というか同性さえ惚れさすニコポとナデポすげえっ……!
おっし、次! ラスト、プレシアとアリシアだ!
フェイトを離しどこでもドアに手を掛けようとすると、フェイトが叫んだ。
「まっ、まって! なんで私なんかの幸せ願うの!? 貴女は、貴女はいったい……!」
「ふふふ、私が誰かって? 貴女が本当に幸せになれたとき、教えてあげる!」
自分で言っててなんだが、わけわかんねええええええ! キモっ!
■■■ 15分経過
どこでもドアで時の庭園に入り込んだ私。おおっ! 運良くアリシアのカプセルの前だ!
「ギャラクティカマグナム!」
個人的に大好きなリングにかけろの剣崎のフィニッシュブローでカプセルを叩き割りアリシアを引きずりだす!
「ザオリク! ザオラル! レイズ! アレイズ! リカーム! サマリカーム! 世界樹の葉! フェニックスの尾! 起きろ! 起きろ! 起きてえええええ!」
私の知る戦闘不能の回復呪文やアイテムを使いまくる! 世界樹の葉とかフェニックスの尾は使い方がわからないから口に無理やり突っ込んでみたりした。
アリシアの胸に耳を当てる。とても小さいが微かに心音が聞こえる! うっしゃああああ! 生き返ったぞー!
「いやあああああああぁ!? 私のアリシアに何をしているの!?」
おお、紫ババ、いやプレシア! お前がこの事件の要なんだ! するっとまるっとごりっと解決してやる!
「バインド全種類!」
もうなんか呪文を唱えるのが面倒くさくなったので省略。在りとあらゆるバインドがプレシアをグルグル巻きにした。
「くっ、放しなさい! 何が目的なの!? アリシアだけは――アリシアだけは!」
「そのアリシアを思う気持ちをフェイトになんで分けてやれなかったんだー!」
そんなハンター×ハンターの主人公の名言を改変しながらプレシアの口にエクスポーションやエーテルターボを無理やり流し込む!
この時プレシアは体をかなり悪くしていたはずだ。だったら健康にしてやる! ベホマ! ベホマ! ケアルガああああ!
「ごぼごぼっ!? ごほっ! ごばっ!?」
やべえ、見た目かなり拷問っぽい……。熟女の上に乗っかりながら水攻めする少女。とてもじゃないがよいこには見せられないね!
飲ませ終ると私はプレシアの胸倉を掴みながら脅す。
「私の目的なんてどうでもいい。貴女はアリシアは生き返ったという事実だけを良く聞きなさい。アリシアが生き返ったんだからもうアルハザードなんて求めなくてもいい、OK?
貴女はこのままアリシアとフェイトと共に平和に暮らしなさい。『こんなはずじゃなかった世界』をやり直しなさい。
新しく住居を構えるなら今フェイト達がいる海鳴とかがいいと思う。結構いいとこよ?
貴女は本来優しい母親ってことは知ってるの。アリシアとフェイトを幸せにしてあげて、それが貴女は出来るはずよ」
痛い……セリフが痛すぎる……くそっ、でもこれでいいだろう! 解決完了!
もうプレシアはジュエルシードを求める必要が無くなったから管理局に追われることもない!
ぶっちゃけ本編よりいい結果かもしれない! って、時間時間! ストップウォッチのボタンを押して時間を止める。
22分14秒……おおおおおっ、あっぶね! ギリギリ! やれば出来るもんだな24分以内でリリカルなのは一期終了とか!
とそんなことを思った途端、いきなり目の前が真っ暗になった。
■■■ 22分14秒 試練終了
「コングラッチュレーションッ…!」
目に光が戻ると、目の前にはそんなことを言いながら拍手をする神様のお姉さん。こ、コングラッチュレーション!?
ということは、やった! 私はやったんだ! 見事に試練をクリアした!
生き返ることが出来るんだぁ!
思わずプラトーンのポーズで喜びを体で表す。おそらく今の私の顔はやり遂げたって表情でいっぱいだろう。
「素晴らしい! 24分以内という厳しい条件の中、貴女は見事に事件を解決してみせました。私は感動で胸が一杯です……」
ぐすっ、と目元を濡らすお姉さん。そっ、そこまで感動してくれるなんて……!
ありがとう神様! 私生き返ったら毎日貴女を拝むことにします!
「第一回の試練、クリア本当におめでとう!」
…………だいいっかい? おい、おいおいおいおいおいまさかまさかまさかあああああああ!?
「では続きまして第二回の試練! 『Fate/stay nightの聖杯戦争を24分以内に解決すること』!」
「ふざけんなあああああああああああ!?」
『24/とぅえんてぃふぉー』24分以内に解決できなければ死亡
つづく?