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No.16427の一覧
[0] 【習作】 マブラヴ オルタネイティヴ~我は御剣なり~(現実→オリジナル主人公・チート気味)[あぁ春が一番](2012/08/13 20:03)
[1] 本作歴史年表[あぁ春が一番](2011/07/11 21:36)
[2] 戦術機設定集(簡易)[あぁ春が一番](2011/08/15 13:48)
[3] 兵装・その他の装備設定集(簡易)[あぁ春が一番](2011/08/15 13:47)
[5] プロローグ[あぁ春が一番](2010/03/08 18:31)
[6] 第01話[あぁ春が一番](2010/06/06 12:15)
[7] 第02話[あぁ春が一番](2010/06/06 12:20)
[8] 第03話[あぁ春が一番](2010/07/10 09:03)
[9] 第04話[あぁ春が一番](2010/11/05 00:07)
[10] 第05話[あぁ春が一番](2010/11/05 00:24)
[11] 第06話[あぁ春が一番](2010/11/05 00:35)
[12] 第07話[あぁ春が一番](2010/11/05 00:45)
[13] 第08話[あぁ春が一番](2010/11/06 23:42)
[14] 第09話[あぁ春が一番](2011/01/27 22:47)
[15] 第10話[あぁ春が一番](2011/04/20 00:59)
[16] 第11話[あぁ春が一番](2011/05/03 18:17)
[17] 第12話[あぁ春が一番](2010/11/07 22:29)
[18] 第13話[あぁ春が一番](2010/11/07 23:04)
[19] 第14話[あぁ春が一番](2011/05/03 18:19)
[20] 第15話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:49)
[21] 第16話[あぁ春が一番](2011/05/03 18:22)
[22] 第17話[あぁ春が一番](2011/05/03 18:23)
[23] 第18話[あぁ春が一番](2011/05/03 18:24)
[24] 第19話[あぁ春が一番](2011/05/03 18:29)
[25] 第20話[あぁ春が一番](2010/11/10 00:41)
[26] 第21話[あぁ春が一番](2010/11/11 00:05)
[27] 第22話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:50)
[28] 第23話[あぁ春が一番](2010/11/11 23:29)
[29] 第24話[あぁ春が一番](2010/12/12 15:48)
[30] 第25話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:51)
[31] 第26話[あぁ春が一番](2010/12/12 15:48)
[32] 第27話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:51)
[33] 第28話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:52)
[34] 第29話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:53)
[35] 第30話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:53)
[36] 第31話[あぁ春が一番](2011/05/15 01:42)
[37] 第32話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:54)
[38] 第33話[あぁ春が一番](2011/05/25 00:04)
[39] 第34話[あぁ春が一番](2011/05/25 00:05)
[40] 第35話[あぁ春が一番](2011/05/25 00:05)
[41] 第36話[あぁ春が一番](2011/07/11 21:25)
[42] 第37話[あぁ春が一番](2011/08/15 13:46)
[43] 第38話[あぁ春が一番](2011/10/24 00:46)
[44] 外伝 TE編・上[あぁ春が一番](2012/07/23 11:57)
[45] 外伝 TE編・中[あぁ春が一番](2012/08/13 20:03)
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[16427] 第35話
Name: あぁ春が一番◆17cd7d65 ID:b29373f4 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/05/25 00:05

8月8日

香月博士との直接交渉の末、横浜ハイヴ突入作戦への参加許可を手に入れた俺は、伊隅中尉と情報の交換を終えた後、
急ぎロンド・ベル大隊が待つ川崎基地へと戻った。

結局、A-01部隊の保有する戦力についての情報を得る事はなかったが、それでもハイヴ突入に必要なデータは提供されている為、
自部隊を守りながら地上と中継地点を繋ぎ、補給線を確保するくらいなら問題はなかった。

川崎基地へと戻った俺は、隊員へハイヴ突入日時が決まった事を伝えると同時に、急いで整備士達にある事を伝える事になる。

俺が整備士に依頼した事・・・、それは機体のカラーリング変更だった。

対外的には、国連軍に接収されたとする事が求められていた為、帝国軍カラーの機体では問題があったのだ。

尤も、今回は時間が無かった事もあり、出撃可能な機体の右肩装甲をUNブルーとし、大きく『UN』という文字を入れるだけとなった。

俺が数日振りに指揮を執ることになった、シミュレーターによるハイヴ攻略演習の結果に満足した俺は、
『女の匂いがする』と詰め寄ってくる香具夜さんをかわして、帝国軍技術廠の独立試験部隊の担当官と面会を行った。

担当官は、国連軍に一時的に接収された事を告げた後、明日午前6時の出撃・・・準備時間が12時間しかない事を心配して、
上層部と交渉することも提案してくれたのだが・・・・・・。

既にその時には、ロンド・ベル大隊はハイヴ突入準備の80%が終了していたのだ。

作戦準備が整っている事を不思議がる担当官に、独自に立案したハイヴ突入作戦の計画書を提出した段階から、
上から何を言われても準備を中断しなかったと俺が伝えると、

「彼方なら、そうしますか・・・・・・。」

という台詞と共にため息をつかれる事になった。

俺はその台詞をあえて無視し、国連に譲渡する事が許される物資と情報の線引きを明確にする調整作業へと、話題を切り替えた。

この打ち合わせの後、早朝ミーティングの準備を整えた俺は、自室で一人短めの睡眠をとる事になるのだった。








8月9日

「貴官らの支援を感謝する。」

A-01部隊の指揮官から、顔の表示が無い上に声もメカ的な音声に変えられた通信が入った後、
A-01部隊とロンド・ベル大隊と奇妙な合同作戦が始まった。

まず始めに地下茎構造内に進入したのは、A-01部隊の小隊が監視に付いたロンド・ベル隊第一中隊だった。

これは、ロンド・ベル大隊を露払いに使って、A-01部隊の被害を減らすという考えが煤けて見える布陣だったが、
門(ゲート)より1km以上奥へはロンド・ベル大隊が進まない事を考えると、俺は文句を言う気分にはならなかった。

ロンド・ベル隊第一中隊は、俺を先頭に地下茎構造内を傘壱型(ウェッジ・ワン)隊形で突き進んで行く。

地下茎構造内は、思っていたよりも広い空間となっていたが、クネクネと曲がった構造となっている為に、
決して視界が良好とは言えないというのが、統合仮想情報演習システム『JIVES』と共通する感想だった。

しかし、シミュレーションであるJIVESでの戦闘が、反射神経に頼らざるを得ないのに比べて、
実際の戦闘だと俺の感覚も鋭敏になるのか、視界から隠れている地下茎構造の形状と活動を停止したBETAの位置が、なんとなく分かる気がするのだ。

俺はその感覚を補助とし、弐型と不知火改・偵察装備の高性能センサーが情報を集め、
各機の余剰情報処理能力を不知火改・偵察装備が集約して解析した結果をメインに使う事で、
計画より早いペースでの進軍を成功させる事になる。

だが、地下茎構造内に点在する活動を停止したBETAに、87式突撃砲の36mm弾をプレゼントしつつ足早に部隊を進めていたところ、
監視役のA-01部隊の戦術機から通信が入る。


「ヴァルキリー2よりベル1(御剣 少佐)へ、
 作戦は順調ですが、少し部隊の進軍が早い様です。
 もっと周囲を警戒して下さい。」
 
 
どうやらA-01部隊からの参加者にとって、俺の部隊指揮は警戒不足・・・・・・、言い換えれば無謀な指揮のように見えたらしい。

俺はその事に反論する事無く、部隊に進軍停止を命じた。

そして、小型可動兵装担架システムに懸架していたパンツァーファウストを取り出し、120mm滑空砲の砲身にセットした俺は、
射撃の警告を発した後、80m先にある地下茎構造の壁めがけて、パンツァーファウストを発射した。

俺の行動に驚いたA-01部隊の隊員が、言葉を発する間も無く放たれた弾頭は、地下茎構造の壁にあった窪みにきれいに収まり、
その力を解放する。

爆発による閃光と土煙が収まった後に残ったのは、大きく口を開けた偽装横坑(スリーパー・ドリフト)だった。


「ベル1(御剣 少佐)よりベル3(佐々木 大尉)へ、
 前衛を率いてスリーパー・ドリフト内の索敵を行え。
 時間は10分間、中継基地設置終了までには戻って来い。」
 
 
「ベル3(佐々木 大尉)、了解。

 聞いていたなお前ら、行くぞ!」


佐々木 大尉が偽装横坑に入った事を確認した俺は、続けて後衛部隊に輸送してきた中継基地設置を命じた。

中継基地設置の間、周囲を警戒していた俺に、先ほど警告をしてくれたヴァルキリー2から通信が入る。


「ヴァルキリー2よりベル1(御剣 少佐)へ・・・、
 スリーパー・ドリフト・・・・・・、気が付かれていたのですね。
 こちらのセンサーでは異変を察知できませんでした・・・・・・。」
 
 
機械音声ながら聞こえてきた音声からは覇気が感じられない。

どうやら、ヴァルキリー2は先ほどの警告が杞憂で、確りと警戒を強いていた事を知り、落ち込んでいる様子だった。

ロンド・ベル隊が地下茎構造内の索敵範囲や偽装横坑の発見能力が高いのは、改良されたセンサーと高度な情報処理能力によって得られた結果で、
通常の不知火を駆るA-01部隊が察知できないのは当たり前、そこに落ち込む要素は無かったのだが・・・・・・。

俺は、警戒の為に無口になっていた事が、A-01部隊の技量を疑い無視していると誤解されるのは拙いと考え、
ヴァルキリー2の気持ちを和らげる事もかねて通信を入れることにした。


「ベル1(御剣 少佐)よりヴァルキリー2へ、
 こちらのセンサーはまだ外に出回っていない特別製だ。
 そちらがスリーパー・ドリフトに気が付かないのも無理はない。
 
 むしろこちらは、ノーマルの不知火で弐型や不知火改に付いてこられるそちらの技量に感心している。
 教導隊も居ない中でよくそこまで、EXAMに習熟した・・・・・・。
 
 追伸、せっかく国連軍と帝国軍が協力して作戦に当たっているんです。
 もっとフランクに行きましょう。」
 
 
「ヴァルキリー2よりベル1(御剣 少佐)へ、
 お褒め頂光栄です。
 少佐に褒められたと知れば、他の隊員も喜ぶでしょう。
 
 ・・・・・・追伸、可能な限り・・・善処します。」
 
 
ヴァルキリー2の声色に元気が戻った事を確認した俺は安堵の笑みを浮かべた。

しかし、そこに場の空気を読めない愚か者からの通信が割り込んでくる。


「隊長殿~、センサーが優れていると言っても、半分はいつもの勘でしょ?
 しかも、相手が女性と見ると直ぐに口説こうとする。
 そこに痺れる、あこが「うるさいぞ、山田!」」
 
 
俺は、山田少尉の部隊内通信を一時的に強制封鎖し、彼の言葉を封殺した。

個人的に微妙なこの時期に、この手の話題は禁句だった。

この時点での、ヴァルキリー2と言えば『マブラヴ』の知識を参考にすると、伊隅 みちる中尉である可能性が高い。

彼女のような美人に、ほいほい声をかけていたと知られれば、本気で俺の命が危なくなる。

清水の舞台から飛び降りるような覚悟で女性を口説いた場合と、何時でも気楽に手を出している場合、
結果は同じだが相手に与える心証が違う・・・・・・と思う。

この通信封鎖は、99%死亡を120%死亡としない為には、仕方ない行為だったのだ。

俺が無駄に自分の行いを正当化している間に前衛部隊が合流した事で、中継地点が機能している事を確認した俺達は、
更に奥へと歩を進める事となる。

発見した偽装横坑と偽装縦坑(スリーパー・シャフト)をパンツァーファウストで開放しつつ、
地下茎構造の入り口である門から1km程進んだ俺達を待ち受けていたのは、
いくつかの地下茎構造が集合した広い空間、今までの道程で最大の広間(ホール)だった。

深度にして700mを示していたそこは、BETAの集合場所になっていたのか、おびただしい数の活動を停止したBETAが居たのだ。


「ヴァルキリー2よりベル1(御剣 少佐)へ、
 この数のBETAが万が一再起動した場合、今の戦力では支えられません。
 迂回路を選択する事を提案します。」
 
 
「迂回路か・・・・・・、確かにそちらの方が安全だが、
 時間がな。」
 
 
これまでの道程は、中継基地の設置に手間取った場面もあったが、思ったより進軍速度が上がった結果、
計画の102%という時間に収まっており、いたって順調だった。

しかし、第5計画派とのレースを考えると、一旦道を引き返し迂回路に進む事によるタイムロス発生は、
苦しい選択肢と言えた。

しかも、ハイヴ内では反応炉に近づけば近づくほど、BETAとの遭遇確率が高まる為、
迂回路を進めばBETAの集団に会わないと言う保証は何処にも無かった。

俺は、強行突破と迂回案の両方をすばやく検討しつつ、CPへと通信を繋げる。


「ベル1(御剣 少佐)よりマザー・ベル1(中里 中尉)へ、
 タイムスケジュールでは、10分後に補給物資を運ぶ第三中隊と1km地点で合流する計画だったはずだ。
 第三中隊の位置は分かるか。」
 
 
「マザー・ベル1(中里 中尉)よりベル1(御剣 少佐)へ、
 第三中隊及び同行する国連軍機の進軍速度は、計画通りです。
 このまま行けば、9分40秒後には合流できます。」
 
 
中里 中尉の報告を聞いた俺は、後続部隊の戦力を利用して強行突破を図る方法が最も効率の良い作戦と判断し、
部隊に待機を命じた。


「ベル1(御剣 少佐)より各機へ、
 我が隊は後続部隊と合流後、強行突破を図る。
 それまで待機だ、各自警戒を怠るな。」
 
 
第三中隊、鞍馬を中核とするこの部隊は、鞍馬の半数が補給物資の運搬のため、
主腕(メインアーム)に装備する武装以外の火力を持たない輸送装備となっていたが、それでも残りの半数には迎撃装備が採用されていた。

つまり、合計8機のGAU-8 Avenger(ガトリング砲)と30連装ロケット弾発射機を有しているこの部隊が合流すれば、
同行してきたA-01部隊とあわせると、一個大隊をはるかに上回る火力を有することになるのだ。

第三中隊と護衛のA-01部隊一個中隊が合流し、先行していた俺達への補給が終わった後、
不知火弐型 6機,不知火改 4機,不知火 14機,烈震 2機,鞍馬 8機,合計34機の戦術機部隊は、
4機の鞍馬を先頭に広間へと突入していった。

先制攻撃として放たれたロケット弾の雨は、身動きしないBETAをたやすく吹き飛ばし、GAU-8 Avengerと87式突撃砲による36mm砲弾の壁が、
BETAを押しつぶしていく事となる。

第三中隊の保有していた火力は圧倒的で、後衛に位置したA-01部隊がろくに攻撃をする間も無く、
広間(ホール)の制圧はほぼ完了してしまったのだった。

第三中隊に同行してきたA-01部隊一個中隊は、広間の制圧と中継基地の設置を確認した後、
ロンド・ベル隊が立ち入ることの出来ないハイヴの奥へと、進軍していくことになる。

A-01部隊にハイヴ制圧を託した事となった俺達は、まず始めに第一中隊から一個小隊、護衛のための人員を割き、
弾薬の枯渇した第三中隊を地上へと帰還させた。

そして、次に行った事は、第一中隊と合流した第二中隊を使っての広間(ホール)周辺と補給ラインの警戒だった。

その間、第三中隊はA-01部隊への補給物資を輸送するために、1km地点である広間(ホール)と地上を往復する事となった。

2時間に及んだハイヴ攻略戦の間、補給線と退路を確保し、次々と現れるA-01部隊に必要な補給物資を供給し続ける事に成功したロンド・ベル大隊は、
最終的に無事任務を完遂し、人的な被害を受ける事無く、貴重なハイヴ内での活動経験を得る事となった。

一方のA-01部隊だが、彼らが横浜ハイヴの反応炉制圧に成功したのか、ハイヴの奥で何を見たのか、
硬く口を閉ざした彼らが語る事は無く、こちらからはうかがい知る事が出来なかったのだった。








8月9日未明、国連軍司令部は建設されたハイヴの世界初となる占領を成功させた事を発表した。

そして、更に数日後、西日本のBETA占領地域を開放したことを伝えた国連軍司令部は、明星作戦の終結を宣言する事になる。

世界中の人がハイヴ攻略と人類の失地回復に沸き立つ中、その裏では一部のもの達が既に利権確保の為に動き出していた。

世界は、大きく動き出したのだ。

まず活発に動き出したのは、横浜ハイヴ攻略作戦中に当該地域の政府に承認を得ず、作戦開始前の通告すらなくG弾を使用した米国だった。

人類最大の戦力を有し、国連の安全保障理事会にて常任理事国でもある米国政府は、G弾の威力とBETAの活動停止現象を前面に出し、
G弾の使用が国連軍の指揮権を有していた米軍が采配出来る範囲のものだったとして、自らの正当性を主張していく事になる。

確かに、世界初のハイヴの完全攻略という成果はG弾によるものが多く、『G弾無しではG弾がもたらした被害以上の戦力をすりつぶさない限り、
ハイヴ攻略は成し得ない。』というのが中立的な軍関係者の意見だった。

G弾の成果の前には、日本帝国政府が主張するG弾投入経緯の倫理的問題点と、重力異常による植生異常の発生は封殺されるかのように見えた。

しかし、後にG弾の威力と効果範囲が理論値を大きく下回っていた事,BETAの活動停止現象を予見できていなかった事を、
米国が隠蔽していたという証拠が流布すると、世界の流れは大きく変化する事になる。

G弾の驚異的な威力を目撃し、自らが命の危機に直面した大東亜連合軍関係者を多く抱えるユーラシア各国ばかりではなく、
アフリカ諸国の一部でもG弾脅威論が噴出し始めたのだ。

それに対して、米国と米国を元々支持していた国々は、G弾の威力が実証されたとして、より強硬にG弾の使用を主張し始め、
G弾に対する積極的な発言を控えていたソ連は、同じく失地回復を狙う欧州連合との協調姿勢を見せていた。

人々の思想は、G弾容認派と否定派に大きく二つに分断され、安全保障理事会は日本帝国・大東亜連合(計5票,拒否権0),
米国・中国・オーストラリア・南アメリカ(計6,拒否権2),英国・フランスを含む欧州連合・ソ連(計6,拒否権3)をメインとする三つの勢力に分かれることになる。

その結果、7つの常任理事国と国際連合加盟国の中から総会で選ばれた10の非常任理事国(アジア2、アフリカ3、中南米2、西ヨーロッパ2、東ヨーロッパ1の配分)、
計17ヶ国から構成されている安全保障理事会は、意思決定の目安となる9つ以上の賛成票を容易に集める事が出来ない事態となっていたのだ。

誰もが世界の行く末を心配している中、国連軍司令部から新たな発表が行われる事となった。

その内容は、横浜ハイヴ跡地に国連軍基地の建設を決定し、米軍に即時撤退命令を下し鹵獲品の接収を禁止した、という二つのものだった。

これだけ聞けば、特に真新しい事は無い様にも思えるが、オルタネイティヴ計画を知る者にとっては、大きな衝撃をもたらす内容だった。

横浜ハイヴ跡地への国連軍基地建設と米軍への即時撤退命令は、安全保障理事会の議決を必要としない範囲で可能な国連軍司令部の力を使って、
米国が主導する第5計画を国連が退けた事を意味し、鹵獲品の接収禁止は米国がBETA由来の何かを入手した事を示していたのだ。

俺はこの決定に、積極的にG弾への発言をしないソ連・欧州連合の中にも、米国が強引に推進する第五予備計画に対するG弾脅威派が居る事を確信するに至った。

更にこの流れが、自らの計画に支障が無い事を確認した俺は、今後の身の振り方を考えることになる。

帝国軍の所属のままでは、ハイヴ攻略に参加する事自体が難しい事を痛感した俺は、国連へ移籍する時期を探り始めたのだった。








米国と国連を同一視する風潮のある帝国内において、国連軍への風当たりが日増しに強まる中、
俺は明星作戦の成果を報告するために、帝国軍技術廠を訪れていた。

俺が呼び出された独立試験部隊結果報告会は、帝国初のハイヴ内戦闘が聞けるという事もあり、
報告を聞く権限と時間がある者が根こそぎ集まったと言わんばかりに、狭い室内にひしめき合っていた。

この結果報告会で俺が行った報告内容は、下記のようになる。

1.混成大隊の火力の評価
 部隊の総合火力は、最大火力を有する鞍馬の比率をいかに高めるかが課題だった。
 近接格闘能力が低い鞍馬は、BETAに接近された時点でその能力が大きく制限されるため、
 防衛戦で遮蔽物の隠れるならまだしも、攻勢に出た場合には護衛が欠かせない。
 前線での鞍馬の護衛は、鞍馬と同数の護衛機に加え、部隊内に遊撃戦力を有する事で、飛躍的に護衛成功率が高まる事が分かった。
 したがって、現時点においては護衛機の補給を考えた場合、『通常の戦術機28機:鞍馬8機(3.5:1)』という比率が、
 最も遊撃部隊としてバランスが取れているという結果になった。
 この比率における部隊の火力は、瞬間的に通常の戦術機二個大隊を上回る事が、実践でも証明された。
 
2.遊撃戦力としての機動力評価
 混成部隊の機動力については、カタログスペック上では通常の第3世代機による戦術機部隊と同等ということだったが、
 実戦ではBETA群に飛び込んだ時、鞍馬がBETAの残骸を回避する為に、速度を落とさざるを得ない事態が度々発生した。
 これは、高速移動時の旋回能力が低いという鞍馬の特性が原因であり、機体の改造や衛士の技量では解決できない問題だった。
 そこで、鞍馬の護衛に必要な部隊を除いた機体で先行部隊を形成、鞍馬の通る道を事前に確保する事を試みた。
 その結果、障害物となる存在の多くを事前に認識できる事になった鞍馬は、最善の進攻ルートの選定に成功、
 混成部隊の機動力がデータ通りである事を証明するに至った。
 また、遊撃戦力として必要な機動力を有しているかの評価は、混成部隊の運用が実戦においても有効に機能していた事、
 航空機による輸送を除けば帝国軍内で最高クラスの機動力を有している事から、現段階の基準を満たしている事が分かる。
 
3.総合評価
 第3世代機戦術機(もしくは同等の機動力を有する機体)と鞍馬の混成部隊であれば、
 遊撃戦力として十分な火力・機動力を、大隊という戦力単位で有する事を証明した。
 ただし、この部隊を実戦で機能させるには、有機的な部隊連携が必要不可欠であり、
 大隊の中に専用の管制官を有する必要があることも分かっている。
 運用にかかるコストは、通常の部隊よりも高額になるが、それに見合う成果を残しており、
 対費用効果(コストパフォーマンス)を疑う余地はない。
 今後は、正面戦力と遊撃戦力の比率を検証し、それに見合った数の遊撃混成部隊の育成が望まれる。
 
4.その他(ハイヴ内戦闘)
 8月9日に行われた横浜ハイヴ攻略戦では、部隊が進入した門から1km地点までのBETAが活動を停止していた為、
 本格的なハイヴ内戦闘は行われなかった。
 ただし、1km地点までの道程で、ハイヴ内には帝国軍が予測した以上に、BETAが存在する事を確認することができた。
 その数のBETAが進攻を阻む為にハイヴ内各所から集まり、補給線を寸断する為に動く事を考えれば、
 現行の戦術機による横浜ハイヴ攻略で必要最低限のBETAを排除するとしても、
 2個連隊一会戦分の物資を全て有効に使う必要があったと予測される。


確定情報とそれを分析した結果のみとなった混戦大隊の報告内容は、盛り上がりに欠ける分、
誰もが納得せざるを得ない内容であり、混成大隊の評価について異論は少なかった。

したがって、この場の話の中心は、自然とハイヴ内戦闘へと移っていく事になる。

俺の試算した2個連隊一会戦分の物資とは、あくまで有効に使えた場合の話で、実際の戦闘と補給物資の運搬を考えれば、
横浜ハイヴの場合でも戦力が充足した戦術機甲部隊4個連隊が、ハイヴ内に突入しなければ攻略は難しかったと思われる。

パレオロゴス作戦(ヴォールクデータ)で、ソ連軍第43戦術機甲師団がミンクスハイヴ(H05:パレオロゴス作戦時,フェイズ3)に投入され、
最大到達深度511mmまでしか進めなかった事を考えると、4個連隊という戦力は戦術機の進化を含めたとしても、多すぎると言うほどではない。

しかし、この戦術機甲部隊4個連隊という戦力は、明星作戦に参加した帝国陸・海軍の戦術機総数の二割にも及び、
ハイヴ攻略にはBETAの陽動作戦が不可欠である事を考えれば、今後のハイヴ攻略でこの戦力を抽出する事は難しかった。

そこで、ロンド・ベル大隊がもたらしたこれらの情報を検討していく中で、報告会の参加者が注目したのが、
鞍馬・輸送装備の輸送能力とGAU-8 Avengerの火力だった。

ハイヴ内の輸送は、米国が使っている無人の多足歩行輸送機の輸送成功率と量を考えると、
戦術機に頼らざるを得ないというのが、帝国の考えである。

その考えで言うと、鞍馬・輸送装備が運べる物資積載量は魅力的だったのだ。

ただし、人命を考えれば、この選択は決してコストが安いとは言えなかったが・・・・・・。

また、ハイヴ内で鞍馬・迎撃装備やガトリングシールドを有した機体の火力は魅力的だが、
偽装縦坑・横坑からの奇襲を受けた場合は、その脆さを露呈する事が用意に想像できた。

やはり、これらの機体には護衛が必要なのだ。

この場で話し合われているどの着目点も、決して画期的と言えるほどの効果は無く、いずれの意見も現行の作戦の延長上にあるだけで、
発展性の無い意見だった。

極論を言えば、ハイヴ攻略の戦力を帝国が用意できるのか、その出血に耐え何個のハイヴが攻略できるか、という視点が抜けているのだ。

俺は、議論が白熱している事をいい事に、室内の喧騒とは離れて、自らの思考に落ちて行く事になる。

ハイヴ攻略に使う戦力が人類に無い以上、少ない戦力での攻略法を考えなければならない。

その為には、物資輸送の手間とそれの護衛に回す戦力を考えると、ハイヴ突入部隊への補給回数は可能な限り少なくする事が求められ、
補給線の維持を考えれば、作戦時間も短いほうが有利だと言う事が分かる。

つまり、ハイヴに突入する戦術機は、ハイヴ内での平均移動速度(アベレージスピード)を上げる必要がある、と言うのが俺の結論だった。

平均移動速度向上には、巡航速度向上はもちろんの事、複雑なハイヴ地下茎構造内を高速移動する為に、運動性を高める必要があり、
センサーの精度と情報処理能力を上げ、地下茎構造の早期把握と偽装縦坑・横坑・BETAの発見する事も重要となる。

やはり、現行のどの戦術機もハイヴ攻略に適しているとは言えないのだ。

自分の構想を再度検討し終わり周囲を見回すと、室内は次第に落ち着きを取り戻し始めていた。

その後、報告会は順調に進み、途中で非友好的な視線を隠そうとしない連中が、俺に対して国連軍へ協力した事を野次り、
自分の計画に基づき準備していたものが国連軍に使われる事になるとは考えもしなかったと、俺が苦笑混じりに話す場面があった以外、
特に波乱も無く閉会となったのだった。








独立試験部隊結果報告会の数日後、ロンド・ベル大隊に対して解散命令が下る。

この解散命令は、第13独立機甲試験大隊の目的であった、混成部隊による大隊規模の高機動遊撃戦力の有効性が実証された事で、
その役目を終えたとされた為の措置とされた。

また、企業側としても横浜ハイヴ攻略戦の様な大規模戦闘を、帝国軍が1年以上行わない可能性が高い事を知ると、
中隊規模で運用したほうが機動的に動けると考え、大隊の解散に賛成していた。

今後、高機動遊撃部隊の運用方法の確立は、教導隊に引き継がれる事となっていた。

しかし、ここで俺も想定していなかった事が起こる。

国連軍と帝国軍の双方が、元第13独立機甲試験大隊の隊員に対して、強力な引き抜き工作を開始したのだ。

独立試験部隊は活躍しすぎた上に、所属する衛士が帝国軍とは言え、機体・物資・整備士 等を提供しているのが企業側、
と言うのがこの様な争奪戦となった原因だった。

国連軍の香月博士ら第4計画派にとって独立試験部隊は、直接帝国軍から人材を引き抜くよりも、楽に有用な戦力を整えられる存在に見え、
帝国軍内の国連軍を疎ましく思っているグループと、目下の脅威が取り除かれ、戦力が枯渇状態にある中で、
完全に自由に動かせる訳ではない部隊を疎ましく思う派閥から見ると、独立試験部隊は不要な存在だったのだ。

いつの間にか、帝国軍内での独立試験部隊容認派は、少数勢力となっていたのだ。

この流れを見た俺は、今後独立試験部隊一つの規模が、中隊以上に拡大される事はなくなると考え、
混乱する隊員たちを説得して、完全に解体される前に自分から動き出す事を提案した。

これは、相手が配属先を決める前に自ら異動する事で、ある程度まとまったグループを維持する事が目的だった。

その後の話し合いの結果、元第13独立機甲試験大隊の隊員達は、4つのグループに分かれる事になる。

その内訳は、
旧第一・二中隊混成中隊:帝国軍技術廠所属の独立試験中隊として、今後も新型機の開発及び実践証明を続けるグループ。
旧第三中隊       :教導隊へ異動し、大隊規模の高機動遊撃戦力の研究を進めるグループ。
二個小隊        :帝国軍の各部隊に小隊長もしくは中隊長として赴任する者達。
一個小隊        :国連軍へ移籍するグループ。
と言うものとなった。

この時の俺は、帝国軍内で最低限やるべき事が終わっていないと考えていたため、国連軍行きを選択することは無かった。

そして、懸念事項だった国連軍への移籍組みは、一度共同作戦を行ったと言っても、隊員達の心は国連軍へとは向かっておらず、
予想以上に少ない参加者となっていた。

しかし、国連軍行きを希望した4名の衛士と整備士達は、香月博士が帝国政府へ打診し許可を得た、
国連軍所属の不知火を不知火改に改修する作業に先行する形で、4機の不知火改を持って行くという重要な任務を負っていたのだ。

この不知火改への改修とあわせて、A-01部隊の不知火運用データが入手できれば、帝国としても悪い条件ではなかった。

完全に散り散りになる事なく大隊を解散させた俺は、国連と帝国の間にある溝の深さを実感しつつ、
独立試験中隊の運営と新兵器開発に注力していく事になるのだった。






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コメント

皆様こんばんは、あぁ春が一番です。
GWの力の残滓と新たな資料を入手した事で上がったテンションを利用して書き進めていましたが、
どうやら今週はここまでのようです。
この勢いが何処まで続くのか、私にも分かりませんが、少しがんばって見たいと思います。

今回、ハイヴ内戦闘はサラッと流す予定だったのですが、原作キャラらしき人物の参戦を思いついたせいで、
横浜ハイヴ攻略とその評価までしか進みませんでした。
すみません。orz
また、原作において横浜ハイヴ内部で何が行われたのかは、想像する事しか出来ませんが、
第4計画派の実働部隊が第5計画派と横浜ハイヴ攻略競争を演じれたこの世界の流れは、
第4計画派にとってそれほど悪くない結果だと思います。

次回は、今度こそ新型戦術機の開発状況と今後の方針を決めるところまで、進めたいと思います。
感想板で書き込み下さった方、今しばらくお待ちください。



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