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No.16427の一覧
[0] 【習作】 マブラヴ オルタネイティヴ~我は御剣なり~(現実→オリジナル主人公・チート気味)[あぁ春が一番](2012/08/13 20:03)
[1] 本作歴史年表[あぁ春が一番](2011/07/11 21:36)
[2] 戦術機設定集(簡易)[あぁ春が一番](2011/08/15 13:48)
[3] 兵装・その他の装備設定集(簡易)[あぁ春が一番](2011/08/15 13:47)
[5] プロローグ[あぁ春が一番](2010/03/08 18:31)
[6] 第01話[あぁ春が一番](2010/06/06 12:15)
[7] 第02話[あぁ春が一番](2010/06/06 12:20)
[8] 第03話[あぁ春が一番](2010/07/10 09:03)
[9] 第04話[あぁ春が一番](2010/11/05 00:07)
[10] 第05話[あぁ春が一番](2010/11/05 00:24)
[11] 第06話[あぁ春が一番](2010/11/05 00:35)
[12] 第07話[あぁ春が一番](2010/11/05 00:45)
[13] 第08話[あぁ春が一番](2010/11/06 23:42)
[14] 第09話[あぁ春が一番](2011/01/27 22:47)
[15] 第10話[あぁ春が一番](2011/04/20 00:59)
[16] 第11話[あぁ春が一番](2011/05/03 18:17)
[17] 第12話[あぁ春が一番](2010/11/07 22:29)
[18] 第13話[あぁ春が一番](2010/11/07 23:04)
[19] 第14話[あぁ春が一番](2011/05/03 18:19)
[20] 第15話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:49)
[21] 第16話[あぁ春が一番](2011/05/03 18:22)
[22] 第17話[あぁ春が一番](2011/05/03 18:23)
[23] 第18話[あぁ春が一番](2011/05/03 18:24)
[24] 第19話[あぁ春が一番](2011/05/03 18:29)
[25] 第20話[あぁ春が一番](2010/11/10 00:41)
[26] 第21話[あぁ春が一番](2010/11/11 00:05)
[27] 第22話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:50)
[28] 第23話[あぁ春が一番](2010/11/11 23:29)
[29] 第24話[あぁ春が一番](2010/12/12 15:48)
[30] 第25話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:51)
[31] 第26話[あぁ春が一番](2010/12/12 15:48)
[32] 第27話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:51)
[33] 第28話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:52)
[34] 第29話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:53)
[35] 第30話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:53)
[36] 第31話[あぁ春が一番](2011/05/15 01:42)
[37] 第32話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:54)
[38] 第33話[あぁ春が一番](2011/05/25 00:04)
[39] 第34話[あぁ春が一番](2011/05/25 00:05)
[40] 第35話[あぁ春が一番](2011/05/25 00:05)
[41] 第36話[あぁ春が一番](2011/07/11 21:25)
[42] 第37話[あぁ春が一番](2011/08/15 13:46)
[43] 第38話[あぁ春が一番](2011/10/24 00:46)
[44] 外伝 TE編・上[あぁ春が一番](2012/07/23 11:57)
[45] 外伝 TE編・中[あぁ春が一番](2012/08/13 20:03)
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[16427] 第33話
Name: あぁ春が一番◆17cd7d65 ID:b29373f4 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/05/25 00:04

1999年8月5日

常任理事国(米国・英国・中国・フランス・ソ連・日本帝国・オーストラリア)の代表者によって構成される軍事参謀委員会の助言に従い、
国連の安全保障理事会で出される事になった横浜ハイヴ攻略議決は、国連軍総司令部の基本戦略であるカムチャツカ-日本-台湾-フィリピンから、
アフリカ-イギリスに至る防衛線によってユーラシア大陸にBETAを封じ込めるという考えに基づき、
明星作戦(横浜ハイヴ攻略及び日本本州奪還作戦)という形で実行される事になった。

ハイヴ鹵獲品を国連管理下とすると規定し、国連統合軍指揮権の優先原則を規定するバンクーバー協定に従い、
明星作戦参加国は、国連軍へ自国の戦力を一時的に国連軍指揮下へと移す。

この明星作戦発動前には、米国と帝国の間で作戦の指揮権をめぐり激しいやり取りが行われていたが、
結局最も多くの兵力を派遣した国が指揮権を持つという原則に従い、太平洋艦隊を投入し最大の海上戦力を派遣した米国が指揮権を握る事となった。

米国軍,帝国軍及び大東亜連合軍及び主力とする国連軍が明星作戦の為に投入した戦力は、
アジア方面では最大、対BETA大戦においてはパレオロゴス作戦に次ぐ規模となっていた。

この作戦の成否が、帝国存亡に直結すると息巻く隊員達を尻目に、明星作戦の結末を凡そながら知っていた俺は、
隊員達とは異なる思考に囚われていた。

オルタネイティヴ計画、BETAとのコミュニケーション方法を模索する国連主導のこの計画は、
莫大な予算と強力な権限が与えられる対BETA戦略の肝とも言えるものである。

細かな話は忘れてしまったが、意思疎通と情報収集を目的とした第3計画は、BETAにも意思がある事を証明するも、
ESP能力という言語を用いない意思の読み取り・伝達が出来る少女を残し、失敗。

第3計画を引き継ぐ形となった香月博士率いる第4計画は、人間に反応を示さないBETAに対して、
ESP能力を有するアンドロイドのような存在である00ユニット用いて、意思疎通と情報収集を行う為に計画を遂行中。

更に予備計画として、米国主導で第5計画も並行して進められており、その計画では人類の一部を地球圏から脱出させると同時に、
地球に残った人類はG弾を使って複数のハイヴ同時攻撃による最後の決戦に打って出るとしていた。

ちなみに、俺個人としては『マブラヴ』を知る限り、唯一BETAを駆逐する可能性のある第4計画を支持している。

そして、俺の知る『マブラヴ』で語られた歴史がまだ有効だとすれば、この作戦の肝は地上戦力の活躍というよりも、
第4計画への牽制と第5計画の優位性を誇示する為に投下が行われたとされる、G弾に有ると言っても過言ではなかった。

記憶の片隅に残る知識を総合すると、G弾とはグレイ11というBETA由来の元素を反応させることで、
ブラックホールもどきを作り出し、広範囲にダメージを与えるという広域殲滅兵器である。

・・・・・・何か間違っている気がするので、今度専門家に在った時に尋ねてみるのも良いかもしれない。

ともかく、その威力は絶大でグレイ11を使った動力機関であるML機関を暴走させて、G弾と同じ作用をさせた状況において、
佐渡島を海中に沈めてしまったという事が語られていた。

それに対して、同じ広域殲滅兵器である核兵器では、地上をなぎ払うことは可能でも、陸地を消すというような被害を出すことは難しい。

このG弾の使用によって、BETAの巣である横浜ハイヴ内での大規模戦闘が避けられた結果、
明確な描写は無かったが国連軍及び帝国軍は、横浜ハイヴ攻略に伴う戦力の損失を大きく減らす事が出来たはずである。

ただしG弾は、核兵器と比べて放射性物質を撒き散らすことが無い替わりに、被爆地域に重力異常を引き起こし、
長期に渡り植生を妨げる事も語られていたため、生物に対しても何らかの影響が出る事が予想されている。

また、明星作戦後の展開で、G弾の威力とG弾の残した傷跡に脅威を覚えた各国がG弾への批判が高まったことで、
G弾否定派や反第5計画派が増加したことは、帝国及び香月博士といった第4計画派にとって好材料とも言えた。

さらに、このG弾を切掛けに、誰にも想定出来なかった運命の歯車が回りだす可能性も・・・・・・。

ここまでの事を総合して、軍人もしくは第4計画を支援する者の立場で考えれば、明星作戦中にG弾が使われることは好ましい事の様に思える。

しかし、被爆地域に住む人間、一人の人間として考えると、自らの故郷を訳の分からない物で汚される事に、
強い嫌悪感を覚えることも事実である。

こういった複雑な感情をG弾に対して持ってしまっている事、G弾の所在や本当に使用されるのかといった情報が入手できていない事もあり、
G弾への対応は正直に言うと上手くいっていなかった。

不確かな情報で動くには、リスクが高すぎたのだ。

G弾を使用させない唯一の手段は、米国がG弾を使用することを発表し、正式な手段で使用を諦めさせる事だったが、
今のところG弾の使用に関する発表などは行われていない。

もっとも、G弾使用禁止を理由に米軍の参戦規模を縮小された場合、帝国にその不足分を補う余力は残されていないため、
たとえG弾使用の発表があったとしても、帝国は使用禁止を強いる事が出来ない立場にあったのだが・・・・・・。

結果として俺が出来たG弾への対策は、突然の投下が決定された場合でも混乱が起きないように、出所不明の戦場で飛び交う噂の中の一つとして、
新型の大量破壊兵器が投入される可能性があるというものを流す程度しかなかったのだ。

そして、第4・5計画派以外にも各国の思惑が錯綜した結果・・・・・・、明星作戦は世界中のどの人間にも全容が分からない事態へと進んでいく事になるのだった。









フェイズ2まで成長していた横浜ハイヴ(H22:甲22号目標)への攻撃は、1990年代前半に確立されたハイヴ攻略のセオリー通り、
陸上戦力が接近した事に反応したBETAがハイヴから這い出てきたことを確認後、衛星軌道上からのAL弾の軌道爆撃から始まった。

ここに、明星作戦の幕が上がったのだ。

高度100kmにおいて、駆逐艦から切り離されたMRV(多弾頭再突入体)は、自機に取り付けられているロケットモーターを使って加速し、
大気による減速を緩和、マッハ20という速度で地上めがけて落下を開始した。

だが、マッハ20という速度をもってしても、レーザー属種からの攻撃を完全に逃れることは出来ない。

重光線級のレーザー照射によって、いくつかのMRVは撃墜される事になったが、MRVの外郭と内部に搭載されているAL弾は問題なく機能し、
重金属雲を発生させる。

そして、高度3~4kmに達した多くのMRVは、内部に保持していた多数のAL段を吐き出す。

細かく分かれたAL弾の多くは、光線属種によって迎撃され、地上に到達する物は少なかったが、こうして光線級に迎撃させることで、
光線級のレーザー照射を減衰させる重金属雲を形成する事がMRVの主な目的であったため、まったく問題にはならなかった。

重金属雲の発生を確認した国連軍は、国連・帝国海軍部隊に相模湾からの上陸開始を命じ、
更に続けて、ハイヴから北部の帝国軍,南部の帝国・大東亜連合・ソ連・統一中華戦線を中心とした混成部隊,
相模湾の上陸部隊に向かって進軍するBETA群の中衛に対して、帝国海軍連合艦隊と国連太平洋艦隊による太平洋側からの艦砲射撃と、
新潟沖に展開する帝国海軍からの援護攻撃を命じた。

この交差射撃によって、後続から一時的に切り離された突撃級を主力とするBETA前衛は、勢いをそのままに前線に接近する。

だが、横浜ハイヴ北側の帝国軍が展開する戦域では、戦術機部隊が待ち構える数km手前で、
進軍するBETA群の足元が突如弾け、突撃級の進軍を阻んだ。

戦術機部隊よりも先行して展開し、既に後退した工作部隊が設置していた地雷が発動した瞬間だった。

地雷といっても地表にむき出しで置かれ、BETAに踏まれる以外にも赤外線センサーにより、上部を通過するだけで爆発する仕掛けとなっており、
突撃級の柔らかい下腹部分を攻撃し、突撃速度を鈍らせる程度の威力しかない。

しかし、数体の突撃級の動きが鈍るだけでも、その後方に位置する突撃級は軌道変更を余儀なくされ、
隊列は乱れ渋滞を引き起こす事は可能だった。

戦術機部隊は地雷と自走砲による援護射撃で僅かに行き足が鈍り、隊列が乱れたことを確認した後、
センサーに映る生き残った地雷を警戒しつつ突撃級との戦闘を開始する。

戦術機部隊は被害を出しながらも、見事に突撃級の進撃を食い止め、後方部隊の後退にあわせてBETAを誘引する事に成功しつつあった。

一方で、各地で激戦が繰る広げられる中、俺達ロンド・ベル大隊は、一連の流れを主戦場から少し離れた地点で観察していた。

そこに、少尉から中尉に昇進し、中隊毎に配置された偵察装備の機体に搭乗しているCPを束ねる正式なリーダーとなった中里 中尉から通信が入る。


「マザー・ベル1(中里 中尉)より、ロンド・ベル隊各機へ、
 各戦域とも戦況は順調に推移、ロンド・ベル隊が前線に出るような状況は見受けられません。」


「こちらベル1(御剣 少佐)、了解した。

 ベル1(御剣 少佐)より、ロンド・ベル隊各機へ、
 出撃するまでまだ少し時間が有りそうだ、現状維持で待機せよ。」


俺は各隊員に気を引き締めるように通信をした後、己の機体に視線を移した。

俺が今搭乗している不知火は、制式採用機である不知火弐型タイプBを基に、様々な最新技術が試験的に投入されたテスト機、
一部の関係者からはタイプCと呼ばれている機体である。

つまり、不知火弐型の制式採用で、ようやく通常の機体色になると喜んでいた俺を見事に裏切り、未だにテスト機なのだからと言われ、
カラーリングは赤と白のツートンカラーである。

不知火弐型タイプCでは、俺の要求である戦闘継続時間を削らない、信頼性を可能な限り確保すると言う意見に沿った範囲で、
以下のような機構が試験されている。

反発型磁気軸受:
磁気による反発力を用いて、軸を安定極に止まらせようという考えによる軸受を各種関節に採用するという案。
戦闘継続時間を優先させた為、電力不足により電磁石のパワーが不足し、制御に使う情報処理装置のソースも確保できなかったが、
完全な磁気浮上を諦め通常の軸受を併用したうえ、制御システムを必要としない受動型低反発磁気軸受として試験が行われる事になった。
それでも、低反発とはいえ関節にかかる負荷を軸受全体に分散させ、面圧を低下させた事で、対荷重が増加し摩擦を低減することに成功。
また、追加の試験で対荷重を通常の軸受と同レベルに落とす事と引き換えに、軸受に送る潤滑油が低粘度の物に交換した事で、
摩擦力をさらに低下させると同時に、各種油圧配管や油圧ポンプのサイズダウンする事が可能となった。
結果として機体重量は、受動型低反発磁気軸受採用前より低減され、機体の反応速度は大きく上昇する事になる。
今までの実験により、戦闘機動時の消費電力は電磁石による増加と、機体重量の低下による減少が釣り合う事が分かり、
コストを度外視すれば有効なシステムであるとの結論が出されている。
現在は、もっと低コストで同様の効果を及ぼす方式、磁気を帯びたコーティングなどで代用できないか研究中である。
磁気を帯びたコーティング・・・・・・、略してMC。何か心に響くものがあるのは気のせいだろうか。

脚部スラスターモジュール:
現状の戦術機には無い、脚部スラスターを追加することで、戦術機の巡航速度及び長距離跳躍距離を大幅に伸ばそうという野心的な案である。
不知火弐型タイプCには現時点で、人間で言うふくらはぎの部分にドロップ方式のスラスターモジュールが取り付けられている。
戦術機下半身を完全に覆う飛行用ユニットを取り付けると言う案もあったが、戦術機が戦闘機になる必要は無い、
移動するだけなら輸送機に載せれば良いと言う案が出たため、現状のプランに落ち着いたという経緯がある。

肩部機関砲:
小型可動兵装担架システムに搭載されて運用することが多い、対戦車級用装備である小型ショットガンの問題点であった、
主兵装から武装を交換する手間があると言う問題点を解決する為のオプションパーツ。
首と肩パーツ中間にある襟のような部分に取り付けられたその装備は、肩部ガンポッドとも呼ばれ、
その運用思想により装弾数は多くないが、戦車級に取り付かれ味方機を救出するのには十分な量が搭載されている。
また、ショットシェルの使用をメインとしているが、それ以外の砲弾も使用可能である。

超音波振動ナイフ:
別名高周波ナイフと言われるこの装備は、振動剣(試作大剣)と平行して作られていたもので、
主兵装で無いことから開発が遅れていたが、耐久性が不足しているという振動剣の問題点が解決するまでの間、
超音波振動を利用した武器のデータ収集のために試験運用が行われている兵装である。
振動発生装置の搭載により、ナイフとしては大型化してしまったという問題点が指摘されているが、
現時点では耐久性と実用性を考えた場合、収納スペースで通常のナイフ2本というサイズに収めるのが技術的限界とされている。

俺は、この機体が作られることになった経緯と、機体に嬉々として群がっていた研究員達の事を思い出して、
人知れず何度目かに分からないため息を漏らしたのだった。








地上での戦闘開始から30分ほど経過した時、世紀の大作戦に参加できないことに焦れたのか、若い隊員から通信が入る。


「隊長。
 友軍が戦っている時に、このまま待機していて良いのでしょうか?」


俺は、逸る気持ちを抑えきれないでいる隊員を諭そうとして口を開こうとするが、
それよりも先に普段部隊の雰囲気を和ますことの多い佐々木さんが口を開いた。


「士気や補給といった概念の無いBETA相手で遊撃部隊が活躍する時は、戦況が苦しいときだと教えただろ?
 俺達が投入されないのならそれはそれで良い事だ。」


大きな責任を負うようになった事で、何か心境の変化があったのだろう。

佐々木さんは、大尉に昇進した時からふざけるだけでなく、こうして落ち着いた発言をする事が多くなっていた。

俺は佐々木さんの言葉によって、若い隊員が若干落ち着きを取り戻した事を確認した後、
他の隊員がどのように待機しているか確認する為に、各隊員の画像を呼び出した。

呼び出した画像の中では、多くの戦闘を経験した古参の兵は余裕そうに各員なじみの行動をとることで、
気持ちを落ち着けているようだった。

他の隊員焦りが伝染していない事を確認した俺は、静かに口を開いた。


「安心しろ、俺もこのまま遊兵となるつもりは無い。

 ・・・・・・そろそろ戦況が動くぞ。」


戦場に漂う雰囲気から違和感を覚えた俺がそう発言した直後、間髪いれずに通信が入る。


「マザー・ベル1(中里 中尉)より、ロンド・ベル隊各機へ、
 左翼側のBETA数が急激に上昇、おそらく地下進攻によるものだと思われます。
 このまま行けば、左翼に多くのBETA群が取り付くことになりそうです。」


この通信により、空気が一気に引き締まるのを感じた俺は、CPより送られてきた戦況を確認すると同時に、
今後採るべき行動をすばやく導き出した。


「ベル1(御剣 少佐)より、ロンド・ベル隊各機へ、
 これよりロンド・ベル大隊は、右翼側へ展開を開始する。」


「「「「了解!!」」」」


左翼が危ないと言う情報を受け、間逆の戦域へ行こうとする俺の命令に、
隊員は一切戸惑うことなく肯定の返事を返し、部隊を命令通り移動開始させていた。

俺は、その素早い動きに満足しつつ、補足の説明を隊員達に入れた。


「左翼への戦力抽出は、混乱無く行われている。
 つまり、我々が今から参戦してもあまり効果が無いということだ。
 
 それより、戦力の抽出と援護砲撃の低下で厚みの減った右翼が気になる。
 ・・・・・・根拠は無い、いつもの勘だ。」


「そのいつもの勘にどれほど救われたことか。
 お前は予知能力でも持ってるんじゃないか?」


「佐々木さん、そんな上等な力が俺に有る訳無いでしょう?

 俺に有るのは高い危機察知能力・・・・・・、危機に直面しないと何も感じられない程度の力、
 だから必要以上と言われても、力を求めて来たんです・・・よ!」


俺の言葉に合わせるように、右翼側でもBETAの増援が発生する。

しかし、その時点でロンド・ベル大隊は、後退する右翼前線部隊を入れ替わるように、最前線へ躍り出ようとしていたのだった。

斯衛軍部隊と抽出に成功した戦力の援護を受けた左翼、遊撃戦力よる穴埋めが間に合った右翼共に、BETA群前衛の迎撃に成功、
戦術機部隊が火力のメインである後方部隊へのBETA群浸透を阻止できた事で、戦況はその後順調に推移することになる。

ここで特筆すべきは、帝国軍戦術機部隊の奮闘であった。

帝国軍戦術機部隊が他と異なる部分を挙げるとすると、士気の高さ・機体性能差・EXAMシステムによる高い操作性
・98式管制ユニットによる生存性向上と言った物があるが、この戦果を説明するのにはそれだけでは不十分だった。

帝国軍戦術機部隊が他国と決定的に違う点、それは様々な改良点が複合された事で生み出された、
新たな戦術機機動にあるのではないかと俺は感じていた。

この明星作戦こそが、独立機甲試験部隊や富士教導隊が考え出し、各部隊に伝えられた三次元機動という新たな戦術の芽が、開花した時だったのだ。

BETA群を横浜ハイヴの南北に誘引した事でハイヴ周辺から引き剥がす事に成功した。

更に、地上に展開していた光線級の多くが排除出来たことで、作戦は最終局面である軌道降下部隊によるハイヴ突入作戦に移ろうとしていた。

米国がG弾を使うならそろそろ通告があるはずだと考えていた俺は、部隊の弾薬が心もとなくなっていた事を受け、
部隊を後退させ本日2度目になる補給を行っていた。

しかし、俺が考えていたG弾使用に対する予測は、直ぐに間違いだと言うことに気づかされる事になる。

予定よりも遅れていたが、軌道降下部隊の再突入が開始され、ハイヴ地下茎構造への部隊突入が成功したという報が入ってきたのだ。

俺は補給を終えた部隊を率いて、再び前線へ復帰すると同時に、この戦闘の推移を注意深く見つめていた。

軍が想定するハイヴ内のBETA個体数が、甘い予測の基で作られている事を痛感している俺は、軌道降下部隊の戦力,今の戦術機の性能,
ハイヴ内戦闘の戦術では、ハイヴ攻略は非常に困難だと考えていたのだ。

案の定俺の予測は当たり、突入部隊は大きな犠牲を払いながら、横浜ハイヴの規模が地表構造物から推測されたフェイズ2規模が誤りで、
想定を大きく上回っていた事を地上部隊に伝えただけで、肝心のハイヴ攻略に失敗する事となる。

ハイヴ突入部隊が破れた事で、軍上層部はハイヴ突入部隊を再度編成し挑むか、再起を図って撤退するかの判断を迫られた。

どちらを選択するかは分からないが、このままだらだら戦闘を続けるのは得策ではなかった。

なぜなら、ハイヴ攻略戦の基本戦略が、人類がBETAを上回っている数少ない点である瞬間的な火力を使って有利な状況を作り出し、
ハイヴ中枢を精鋭部隊で強襲するというものだからだ。

結局、早朝から始められたこの戦いは、次第に戦線を後退させていき、BETA群が追撃を打ち切った昼過ぎの時点で、一時中断を余儀なくされる事になる。

皮肉にも各部隊は、作戦開始前の位置までBETAに押し戻される事となった。

各国軍は、部隊の再編を急ぎ今後の方策を練ることになるのだった。







歴戦の勇士が揃っているとは言え、基地に戻ったロンド・ベル大隊の雰囲気は、決して良いものではなかった。

乾坤一擲の思いで出撃したにも係わらず、その目的を果たせなかったのだ、気落ちするのも無理は無い。

しかし、俺は明日もまだ戦いは続く、休んでいる暇は無いと言って、率先して再出撃の準備を進め、
最低限の休憩を挟んだだけで、気落ちする暇を与えないほど隊員たちを働かせた。

そして、翌日の8月6日 午前5時 一会戦分の物資が残っている事が確認できたとして、夜明けと共に横浜ハイヴ攻略作戦は再開された。

俺は、一抹の不安を覚えつつも、皆にそれを気が付かせないように、出撃を命じる。

BETAの総数が減っているためか、前日よりもハイヴに接近する必要があったが、AL弾の軌道爆撃が無く援護砲撃の密度が落ちているという状況ながらも、
BETAの誘引は遅滞無く進んでいく。

その後、横浜ハイヴ西部から帝国軍精鋭部隊が急進、先日の機動爆撃で空けられた地下茎構造の入り口である門(ゲート)の確保に成功する。

帝国軍部隊が押さえた門は、横浜ハイヴから2km付近の3箇所、そこから精鋭部隊突入し、
後続に補給コンテナを抱えた鞍馬・輸送装備が続く事で補給線を確保、ハイヴ最奥部にある反応炉を目指すというのが、
今回の作戦だった。

この時ロンド・ベル大隊は、横浜ハイヴから最も離れた門からハイヴへ突入する部隊の護衛として随行しており、
護衛任務の終了後には門の確保を任されていた。

更に、この帝国軍の動きに会わせる様に国連軍部隊も動いており、帝国軍と同様に門を確保するところまで成功していた。

この時の人類側には勢いがあったのだ。

しかし、第一陣が突入して10分後の午前8時 国連軍司令部から奇妙な命令が飛び込んでくる。

それは、横浜ハイヴ攻略作戦を中止し、0800までにハイヴを基点として半径10kmの範囲外へ退却しろ、という内容だった。

作戦が順調に進んでいる中での突然の命令に、現場は戸惑い大きな混乱が生じる。

特に、士気が旺盛だった帝国軍部隊はそれが顕著だった。

俺は、この突然の退却命令がG弾を使うという米国の宣言に因るものだと確信し、
ハイヴ突入部隊を含む周辺の部隊に俺の名前を使って退却開始を要請した。

始めは混乱していた部隊も、光州作戦でBETAの地下進攻を見破った俺のネームバリューと、新型爆弾の噂があった事が効いたのか、
直ぐに冷静さを取り戻し退却に賛同の意を示す事になる。

俺達ロンド・ベル大隊は、先行してハイヴ突入を行った部隊を待つと言うハイヴ突入部隊と別れ、
門の直ぐ傍まで迫っていた鞍馬・輸送装備部隊と合流後、輸送部隊を援護しつつ後退を開始した。

安全圏までの8kmという道程は、何の障害が無ければ、1分もかからず踏破できる距離である。

しかし、背後や側面からBETAが迫り、援護する部隊も少ない状況では、無限とも思える距離だったのだ。

俺は半径10km圏外へ部隊を退避させた時点で、高畑 大尉に10km圏の境目ぎりぎりで援護砲撃を行うように命令し、
一個中隊を腕に自信がある者から選び、再び10km圏内への突入を行い逃げ遅れた部隊の救出へ向かった。

ロンド・ベル隊の他にも、多くの部隊が最後の最後まで救出活動を続けたが、ハイヴ突入に係わっていた多くの部隊を10km圏内に残して、
指定時刻の8時15分を迎える事になるのだった。








指定時刻を超過した事を示すブザーが鳴り響く中、横浜ハイヴ上空で起きた奇妙な光景が視界の隅に入ってくる。

再突入殻が僅かな時間差をつけて2個という、あまりにも少ない数で落ちてきたのだ。

そしてその直後、光線属種が慌てた様に地中から出現し、重金属雲が広がる中で必死に再突入殻へ照射を行おうとする。

数本のレーザー照射が重金属雲を突き抜ける事に成功するも、再突入殻前方に展開した不可視の幕によって弾かれてしまう事となる。

俺は、その光景と頭の中に残っていた画像が結びついた瞬間、声を張り上げた。


「総員、対ショック防御!」


そう叫んだ直後、空に黒い太陽とも思える漆黒の玉が二個出来上がり、視界の前方に広がった。


「・・・・・・・・・。」


「何だあれは・・・、モニュメントが・・・・・・、無くなっている。」


強風と土埃が収まった事であらわになった光景を見た隊員がつぶやいたその言葉は、
二つのG弾によって引き起こされた出来事を端的に表していた。

俺は米国が帝国の承認無しにG弾を使うことを読めなかった己の無能に、心の中で悲鳴を上げながらも、
すばやく命令を出していた。


「ベル1(御剣 少佐)より、ロンド・ベル隊各機へ。
 自機の状態を確認、CPは戦況を報告しろ。」
 
 
俺の命令によって、思考停止に追い込まれていた部隊は、行動を再開する。

歓声と悲鳴が入り混じった通信が飛び交う中、CPが集めた情報からは驚くべき結果が示されていた。

半径5km圏内で活動していた全てのものは、G弾の爆発に巻き込まれ壊滅的被害を受けていたのだ。

特にハイヴとの距離が近かった2つの門から突入を予定していた帝国軍部隊は、戦況を有利に進めていた事が災いし、
ハイヴ周辺に多くの部隊を展開させていた為に逃げ遅れた部隊が多かった。

ただし、想定していたほどG弾の影響範囲が広がらなかった事で、最前線に展開していた戦術機部隊以外は、
急激な後退により隊列が乱れた程度で、大きな被害を受けている訳ではなかった。

各部隊は、G弾の影響が無いことを確認しつつ、再度前線へと展開を急ぐことになる。

そして、前線に出た各部隊を待ち受けていたのは、視界に映る全てのBETAが活動を停止しているという奇妙な光景だった。

なんと、G弾の爆発圏外にいた横浜ハイヴ周辺のBETAが活動を停止したと言うのだ。

その報を受けた国連軍は、新たなBETAの出現と地上にいるBETAの再起動を警戒しつつ地上のBETAを排除した後、
被害を受けた部隊の救助を行う事を決定する。

この時、情報を分析する限りでは、地上にいた米国軍はG弾による影響を受けている様子は無かった。

数時間に及ぶ救助活動が一段楽した時点で、各国軍へ国連軍から本日のハイヴ突入作戦が中止する事が通達される。

憶測だが、G弾の影響が分からない事や、突然の広域殲滅兵器の使用で、上層部で揉め事が起こっているのだろう。

国連軍の通達に従い基地に戻った俺達は、機体を整備士達に預けた後、隊内での打ち合わせをする事になった。

そこで俺達は、更に不可解な情報を聞く事になる。

G弾の使用直後から、それに呼応するように西日本を制圧していた残存BETA群が一斉に大陸に向け撤退を開始、
戦術機甲部隊による追撃戦、艦砲射撃などによって敗走するBETA群に大損害を与えつつあり、歴史的な大勝利となる事が予想されるというのだ。

俺は、隊員達の疲労を理由に打ち合わせを手短に終わらせると、急ぎ自室へ戻った。

この時、香具夜さんから意味有り気な視線が送られていたような気がしたが、今の俺には構っている余裕は残されていなかった。

部屋に入った直後、俺は自分の中にある苛立ちを発散させる為に、虚空に向けて右手を突き出した。


「たしかに、今回の場合はG弾を使った方が、被害を少なく出来るのかも知れない。
 ・・・・・・だからと言って、いきなり友軍と思っていた奴に背後から撃たれて、
 納得出来る人間がどれくらい居ると思っているんだ。」


苛立ちが幾分和らいだ後に、俺を襲ってきたのは大きな戸惑いと不安だった。

G弾二発の使用は、『マブラヴ』の世界でも起こった事なのか?
横浜ハイヴ攻略戦での被害は多いのか?それとも少ないのか?
G弾の人体への影響は、どの程度なら問題ないのか?
安全性を担保出来ないG弾の爆心地で、隊員を活動させる事は正しい判断なのか?

様々な考えが頭に浮かんでは消えて行く。


「全てが終わった訳じゃない。
 まだやり様はあるはずだ・・・。」


俺は、湧き出てくる不安を押しつぶす様に声を吐き出したのだった。








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コメント

皆様こんばんは、あぁ春が一番です。
隙を見て他のジャンルのSSや小説を読んで、自分の文章力の無さを痛感する日々を送っています。
ただ、文章力の無さを嘆いていても仕方ないので、これからもこの作品を書き続けることで、
力をつけていきたいと考えています。
まだまだ未熟者ですが、確りとした文章が書けるようになるその日まで、御付き合いしていただければ幸いです。

今回は、横浜ハイヴ攻略開始から米軍のG弾使用、横浜ハイヴ攻略作戦2日目までを書きました。
明星作戦の経緯について色々調べてみたのですが、謎が深まるばかりです。
※後日、感想板への書き込みで、明星作戦の概要が分かりました。
8月5日にハイヴ地下茎構造への突入に成功するも、反応炉への到達に失敗。
          ↓
作戦の継続か撤退かを検討中に、米国政府よりG弾使用の通告が来る。
          ↓
日本政府は、その通告に対してG弾使用の中止を求める。
          ↓
8月6日早朝、米国政府より最後通告が出され、G弾2発を軌道上から投下。
          ↓
地表構造物の全てと、地下茎構造の一部を破壊し、生存していたBETAは謎の活動停止を行う。
というのが原作の概略らしいです。

横浜ハイヴ攻略は、艦砲射撃から始まったと書いている所も有れば、
軌道爆撃から始まるのがパレオロゴス作戦以降の攻略手順のセオリーと書いている所も有りました。
また、G弾を事前通告無しに使用した事も大きな謎です。
発射数分前に通知するとかごまかす手はあったでしょうに・・・・・・。
もしかして、政府レベルで直前に通告した為に、前線まで通達が間に合わなかったのかも知れませんし、
第4計画に真っ向から逆らう力が無かっただけかも知れませんが・・・。


次回は、ハイヴ攻略完了とその後を書く予定です。
更新は来月になると思います。
GW中の更新を目指して頑張っていきますので、気が付いた事をご指摘頂ければ幸いです。

また、感想へのご返信は、後日改めてさせていただきます。

P.S. あ~、ヘタレさんの生存フラグを立てるのを忘れました。
   死亡を確定させた訳ではないので、どうとでも出来るのですが・・・・・・。

   改定で、ヘタレさんの死亡フラグを立ててしまいました・・・どうしよう。


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