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No.16427の一覧
[0] 【習作】 マブラヴ オルタネイティヴ~我は御剣なり~(現実→オリジナル主人公・チート気味)[あぁ春が一番](2012/08/13 20:03)
[1] 本作歴史年表[あぁ春が一番](2011/07/11 21:36)
[2] 戦術機設定集(簡易)[あぁ春が一番](2011/08/15 13:48)
[3] 兵装・その他の装備設定集(簡易)[あぁ春が一番](2011/08/15 13:47)
[5] プロローグ[あぁ春が一番](2010/03/08 18:31)
[6] 第01話[あぁ春が一番](2010/06/06 12:15)
[7] 第02話[あぁ春が一番](2010/06/06 12:20)
[8] 第03話[あぁ春が一番](2010/07/10 09:03)
[9] 第04話[あぁ春が一番](2010/11/05 00:07)
[10] 第05話[あぁ春が一番](2010/11/05 00:24)
[11] 第06話[あぁ春が一番](2010/11/05 00:35)
[12] 第07話[あぁ春が一番](2010/11/05 00:45)
[13] 第08話[あぁ春が一番](2010/11/06 23:42)
[14] 第09話[あぁ春が一番](2011/01/27 22:47)
[15] 第10話[あぁ春が一番](2011/04/20 00:59)
[16] 第11話[あぁ春が一番](2011/05/03 18:17)
[17] 第12話[あぁ春が一番](2010/11/07 22:29)
[18] 第13話[あぁ春が一番](2010/11/07 23:04)
[19] 第14話[あぁ春が一番](2011/05/03 18:19)
[20] 第15話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:49)
[21] 第16話[あぁ春が一番](2011/05/03 18:22)
[22] 第17話[あぁ春が一番](2011/05/03 18:23)
[23] 第18話[あぁ春が一番](2011/05/03 18:24)
[24] 第19話[あぁ春が一番](2011/05/03 18:29)
[25] 第20話[あぁ春が一番](2010/11/10 00:41)
[26] 第21話[あぁ春が一番](2010/11/11 00:05)
[27] 第22話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:50)
[28] 第23話[あぁ春が一番](2010/11/11 23:29)
[29] 第24話[あぁ春が一番](2010/12/12 15:48)
[30] 第25話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:51)
[31] 第26話[あぁ春が一番](2010/12/12 15:48)
[32] 第27話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:51)
[33] 第28話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:52)
[34] 第29話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:53)
[35] 第30話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:53)
[36] 第31話[あぁ春が一番](2011/05/15 01:42)
[37] 第32話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:54)
[38] 第33話[あぁ春が一番](2011/05/25 00:04)
[39] 第34話[あぁ春が一番](2011/05/25 00:05)
[40] 第35話[あぁ春が一番](2011/05/25 00:05)
[41] 第36話[あぁ春が一番](2011/07/11 21:25)
[42] 第37話[あぁ春が一番](2011/08/15 13:46)
[43] 第38話[あぁ春が一番](2011/10/24 00:46)
[44] 外伝 TE編・上[あぁ春が一番](2012/07/23 11:57)
[45] 外伝 TE編・中[あぁ春が一番](2012/08/13 20:03)
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[16427] 第28話
Name: あぁ春が一番◆17cd7d65 ID:bc6cc51c 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/05/15 23:52


「すみません。ブラックウィドウⅡって何ですか?」


俺と整備主任の会話を聞いて、若い隊員が疑問の声を上げた。

隊員の不用意な発言を切掛けに、怪しげにメガネを光らせた整備主任は、これから搬入されてくる戦術機について、
聞いてもいないことも説明しだす事になる。


「話し合う内容も無いようですので、搬入開始時間までの間、YF-23 ブラックウィドウⅡ について説明を致しましょう。

 YF-23 ブラックウィドウⅡとは、米国で行われていた次期主力戦術機を開発する計画、
 通称ATSF(先進戦術歩行戦闘機)計画で最終選考に残った2機種のうち、
 ノースロック社 現ノースロック・グラナン社がマクダエル・ドグラム社の協力を得て開発した試作戦術機です。

 ブラックウィドウⅡは、競合相手のロックウィード・マーディン社が開発したYF-22や、
 それ以前の米国製戦術機が遠・中距離砲戦能力を重視していた事と対照的に、
 長刀・銃剣の標準装備など、対BETA近接戦闘能力を設計段階から考慮されていたのが特徴の機体でした。

 YF-22との間で熾烈な実機模擬戦闘試験が繰り広げられた結果、対BETA近接格闘戦能力に於いてはYF-22を遙かに上回り、
 総合性能でもYF-23が優位にたっていたと噂されていましたが、調達コストと性能維持に不可欠な整備性、
 何よりもその開発コンセプトが米軍の戦闘教義(ドクトリン)と合致しないと判断された為、
 ATSF計画は1990年にYF-22 現在のF-22A『ラプター』を次期主力第3世代戦術機とする事を決定しました。
 ブラックウィドウⅡは計画終了後、エドワーズ空軍基地に一定期間屋外係留される事になり、『世界一高価な鉄屑』などと揶揄される事になります。

 しかし!
 ブラックウィドウⅡは、調達コストと整備性といった部分に問題を抱えているものの、
 その機体性能の高さと開発コンセプトは、帝国軍の戦闘教義(ドクトリン)と完全に合致していると判断した御剣重工が、ある行動に出ます。
 
 開発終了から七年後の1997年、機体の開発に協力していたマクダエル・ドグラム社の買収を切掛けとして、
 博物館に収蔵されそうになっていたブラックウィドウⅡの取得に乗り出したのです。
 マクダエル・ドグラム社の買収に関しては、皆様のご存知の通り、ボーニング社と御剣重工が分割買収する事で決着しました。
 そして、第3世代戦術機開発に乗り遅れたノースロック・グラナン社が欲していた、第3世代戦術機の運用データを提供する事を条件に、
 YF-23 ブラックウィドウⅡはついに帝国内持ち込まれる事に成ったのです。」


整備主任はその後、御剣重工の工場に搬入された2機のブラックウィドウⅡ(試作1号機 通称:スパイダー,試作2号機 通称:グレイゴースト)が、
ステルス機能を除く為に電波吸収塗装が完全に削り取られ、装甲の一部も詳しい形状が分からないように処理された結果、
装甲の地金がむき出しとなっていた姿に涙した話や、一度完全に分解して実物と提供された図面に差が無いか調べる事に奔走した事、
8年間の歳月により時代遅れになった部分や、伝送系を最新の日本製のものに交換し調整を行った事などの苦労話をノンストップで語り続けた。

そして、その語りはYF-23 ブラックウィドウⅡ 試作2号機,通称グレイゴーストの搬入が開始されたという報告が有るまで続けられるのだった。








ロンド・ベル隊に搬入されたブラックウィドウⅡは、ATSF計画の最終段階で撮影された写真と比べて、若干装甲形状が変わっているものの、
第3世代機特有の空力特性を追求した装甲形状と、廃熱処理なども考慮するステルス対策の部品配置が生み出した特徴的な外観を多く残しており、
一目見ただけで今までに無い異質な戦術機で有る事が分かる機体だった。

装甲形状が一部変更された理由は、納品前に装甲が削られていた事も有ったが、帝国軍の仕様では戦術機にステルス性能を求めていなかった事が、
一番大きく影響していた。

ステルス性能を犠牲にする事を前提に、対BETA近接格闘戦能力とステルス性を同時に高める目的で多用されていた直線的な装甲の一部が、
近接格闘能力に影響が出ない範囲で空力特性の高い曲線を使った装甲に変更される事になる。

また、ATSF計画の仕様では、ステルス機能と並んで相手の火器管制網を麻痺させる事を目的とした対電子戦装備が組み込まれる事になっていたのだが、
国家機密であるその機能は、御剣重工がブラックウィドウⅡを買取る条件の中で外される事となっていた。

そして、その空きスペースに何を搭載するかで揉める事になったのだが、御剣電気の強い要望によりEXAMシステムver.2.5をテストする目的で、
新型の演算ユニットが搭載されていた。

ただし、今のところコンボに登録されている動作は無く、これから戦う中で登録していく必要が有る上に、登録可能なコンボも三つだけとなっていが・・・。

兎も角こうして、その中身も最新の物に置き換えられたブラックウィドウⅡは、
各国で開発中の第3世代戦術機の中でもトップクラスの性能を有する事になったのだった。

今回は、米国軍で制式採用されているF-22A『ラプター』と同じ跳躍ユニットエンジンを搭載している事から、
試作2号機である通称グレイゴーストが実戦テストに選ばれ搬入されていたのだが、グレイゴーストを見て興奮する隊員たちとは裏腹に、
ATSF計画時のグレイゴーストの写真を見た事があった俺は、素朴な疑問を口にする事になる。


「たしか灰色に塗装された機体だった筈だが・・・。」


「確かに、ATSF計画時も御剣重工でのテストの間も灰色が塗られていましたが、
 今回実戦テストを行うにあたり、再塗装の必要が有りましたので、
 赤と白のツートンカラーを採用する事になりました。」


「・・・、理由を聞いてもいいか?」


俺は嫌な予感を覚えながらも、そう尋ねずにはいられなかった。


「赤と白のツートンカラーは、日本の国旗を肖った試作機用の塗装だったのですが、
 ロンド・ベル隊の不知火弐型に採用してからと言うものの、
 とあるエースパイロットの搭乗機を現わす記号のように扱われる事が多くなりました。
 その話を聞いた塗装部門が、気を利かせてくれたのでしょう。」


不知火弐型の内部は機密であるものの、戦意高揚や他国を牽制する意味もあり、その外観は一般にも広く知られていた。

また、現時点で赤と白のツートンカラーの不知火弐型を駆る衛士は、確かに俺だけである。

これだけなら、赤と白のツートンカラーの試作機に乗る衛士として認識されるだけだろうが、
本土防衛戦開始から続く敗走で広がった厭戦気分を紛らわすために、各地で活躍する軍人の活躍が宣伝され始めた事で状況は変わる事になる。

軍人達の間でしか知られていなかった異名や過去の経歴が、一般人の間にも広く知られるようになった結果、
単なる部隊章が特定の個人を現わす物として認識される事になるなどの混乱を招いていたのだ。

どうやらその中の一つとして、赤と白のツートンカラーを特徴とする衛士が試作戦術機に乗って活躍しているという誤解が生まれ、
一般人の間で広まってしまったようなのだ。

もちろん、帝国軍は専用の機体色というものを認めていないし、斯衛軍でさえ色で個人を特定できる機体は、紫色の政威大将軍専用機だけである。

現場で機体の一部に部隊章や特殊なペイントを施す程度が許された限界であり、
カラーリングの変更は試作機を運用する部隊にのみ許された特例だったのだ。

対BETA戦に影響が無い範囲で自由にやらした方が、部隊の雰囲気が明るくなると考えた俺は、制式機体に乗る場合には許されない対応である事や、
遠くからでも見つけやすいカラーリングよりも、対人戦を考慮した迷彩柄の方が実用的だという言葉を飲み込んだのだった。

その後、グレイゴーストに乗り込み着座調整を行うと同時に、武装の搭載などの出撃の準備が急ピッチで進められて行く事になる。


「これが、不知火から転送された情報を、グレイゴースト用にコンバートするツールです。
 しかし・・・、これだけでは完全とはいえませんよ。」


「大丈夫だ、問題ない。
 移動中に修正すればいい話だ。
 
 それよりも、装備はローラーブレードとフロントドロップタンク(前面装甲に装備する形式の追加増槽)を併用した長距離移動用装備。
 武装は、87式突撃砲2門,試作突撃砲2門,98式支援砲1門,試作長刀1本,試作大剣1本で頼む。

 半数以上が試作品なのは不安だが・・・、実機テストを行うという名目上、仕方が無い。」


ブラックウィドウⅡは、両肩にハードポイントが4基、背中にサブのハードポイントが2基、合計6基の兵装担架を有する機体で、
主腕を含めると現時点で普及している戦術機と比べて、倍の武装を積載する事が可能な能力を有している。

俺はその機体に、専用に作られた突撃砲と長刀を搭載し、使い慣れた武装として主腕に87式突撃砲,
一基の可動兵装担架システムに98式支援砲を搭載する事を選択した。

最後の試作大剣は、弾薬の補給が出来ない事も考えた近接格闘用の切り札で、
稼動範囲が制限された背中のサブハードポイント2基を使って搭載する事となった。

出撃準備完了まで残り10分を切った時、突然強行偵察装備の吹雪が随伴する事が告げられた俺は、通信を使って外部の整備主任に呼びかけた。


「どう言う事だ!?」


「1機だけですが、吹雪の修理が間に合いました。
 武田中尉が出撃するとの事でしたので、複座の管制ユニットの搭載と強行偵察装備への換装も終えています。
 また、CPとして中里少尉も搭乗するようです。」


俺が整備主任と問答をしていると、それを見計らったタイミングで、吹雪・強行偵察装備から通信が入る。


「戦闘データの収集を口実にするつもりなら、随伴機(チェイサー)が必要じゃろう?
 お主だけ行っても、疑われるのが落ちじゃ。

 それに、こちらでデータの処理をすれば、グレイゴーストへの負担も減る筈じゃ。」


「私も、御手伝いします。
 隊長は、戦う事だけに集中してください。」


「・・・・・・、分かった。
 二人の力を、俺に貸してくれ。」


長距離移動用の装備を施した2機の戦術機は、大阪城近くに急遽用意された基地から、勢いよく飛び出して行った。








琵琶湖運河(大阪湾-琵琶湖ライン)に掛かった大型橋梁の一つである近畿自動車道を使って、対岸に渡ったグレイゴーストと吹雪・強行偵察装備の2機は、
近畿自動車道と交差した山陽新幹線の線路に進入し、一路京都を目指していた。

BETAの侵攻により機能が停止している山陽新幹線は、何にも邪魔される事がない最高の移動ルートだったのだ。

そして、2機はスーパークルーズ能力(空気抵抗を低く抑え、跳躍ユニットの特性を調整した結果、アフターバーナー無しの高速移動を可能とした能力)
を有するグレイゴーストが、上体を水平に保つというローラーブレードを使用した高速移動時に使われる独特の体勢を取り、
その後ろにはぴったりと吹雪・強行偵察装備が張り付くという奇妙な隊列を形成していた。

この隊列は、先頭以外の機体の空気抵抗を低減する事で推進剤を節約し、時折先頭の機体が入れ替わる事で、
結果的に部隊全体の推進剤を節約するという隊列である。

しかし、この隊列は一歩間違うと部隊全体を巻き込んだ大事故を引き起こす恐れがあることから、
よっぽど信頼できる者同士でないと出来ないものだった。


「なかなか、いい機体だ・・・。
 コストと整備性を除けば、地上戦で求められる性能を全て満たしている。」


移動中の俺は、動かす中で感じていた不知火弐型とグレイゴーストの違いを調整する傍らで、少し強引だが重装備の機体を大出力にものを言わせて、
軽快に動かすという米国仕様の機体特性に、素直な感動を覚えていた。

現在帝国軍で制式採用されている機体では、これほどの重装備を行った上で運用する事には無理があった。

重武装をした上で機動力・運動性を失わないという事実は、YF-23 ブラックウィドウⅡ及びF-22A ラプターが、対BETA戦においても高い性能を有しており、
米国軍が求めた仕様が今後の戦術機開発のトレンドにもなる可能性を示していたのだ。

50kmほどあった距離を僅か20分ほどの時間で走破した2機は、京都内に突入後移動を停止し、情報収集に務めることになった。


「どうしたのじゃ、信綱。
 京都に入った後は、真っ先に斯衛軍と合流するものと思っておったのじゃが?」


京都内に突入後、停止する事を命じた俺に、香具夜さんはキョトンとした表情で疑問を口にしたのだった。


「俺たちは所詮、招かれざる客。
 突然合流したところで、場を混乱させるだけだ。

 今は情報収集を優先し、援護が必要な時と場所を見極める。」


戦況を見極めてから参戦するという俺の考えは、的確な判断であるとあると同時に、救援のつもりで駆けつけておいて、
助ける必要が無いのに助けに来たでは格好が付かないという、僅かな羞恥心からだした答えだった。
 

「どうやら、ちゃんと冷静さが残っておった様じゃな。
 突撃するようなら無理やり止めるつもりだったのじゃが・・・。

 情報収集なら、こちらの偵察装備の方が優れておる。
 優希、戦況はどうなっておる?」


「もう少し御時間を下さい・・・。

 でました。
 殿を務めている斯衛軍のうち、中央に展開している第16斯衛大隊がやや突出していますが、
 何とか持ちこたえているようです。
 それよりも、数が多い筈の左翼に展開する瑞鶴編成部隊の後退が気になります。」
 

中里 少尉の報告通り、吹雪・強行偵察装備より転送されてきた情報を見ると、左翼に展開する瑞鶴編成部隊の後退が早すぎて、
他の部隊との足並みが揃っていない様に見受けられた。

そして、俺はそれらの瑞鶴の動きから、左翼部隊が初陣の割合が高いか、訓練校から繰上げ卒業して投入された新人が編入されている可能性を思いついた。

戦況を確認した以上、ここで待機する意味もなくなったと判断した俺は、素早く行動を開始する事を決めた。


「・・・左翼の瑞鶴隊を救援後、左翼と中央の連携が確保されるまでの間、瑞鶴隊と連携して戦線を維持する。
 
 ベル1(御剣 大尉)よりマザー・ベル(中里 少尉)へ、斯衛軍及び帝国軍への通達を頼む。
 必要ならグレイゴーストの情報を出しても良い、友軍誤射(フレンドリーファイヤ)だけは避けるようにさせてくれ。

 ベル2(武田 中尉)は、データ転送可能距離を維持しつつ、後方からの援護に徹してもらう。
 それ以外は自由にしていい、瑞鶴隊に紛れて戦うのも一つの手だ。」


「「了解(じゃ)!」」


ローラーブレードを起動し、斯衛軍左翼部隊へ向かった俺の目の前に、レーダーでは分からなかった瑞鶴隊の現状が見えてきた。

ベテラン衛士が搭乗していると思われる機体が奮戦しているものの、一部の機体が孤立し救援を求めているなど、隊列が乱れ混乱も生じていた。

軽く跳躍すると同時に、フロントドロップタンクをパージした俺は、87式突撃砲の攻撃が有効に機能するギリギリの距離から瑞鶴隊への援護を開始した。

突然の援護に戸惑いを見せる機体もあったが、俺はそれを無視し一気に戦線の最前列へと向かった。

最前列へと到達した俺は、BETAに長刀で挑み悪戦苦闘する小隊長機と思われる黄色の瑞鶴を発見し、その瑞鶴の背後に迫った要撃級を、
120mm滑空砲で攻撃した。


「―フォックス2―
 
 こちらは、ロンド・ベル隊隊長 御剣大尉だ。
 そこの瑞鶴隊、援護する。
 もし補給が必要なら、一旦後方に下がれ!」


「御剣大尉!?
 どうしてこんな所に?」


「その声は・・・、篁さんか!?
 俺が居る理由を気にするより、部隊の現状を把握する方が先だぞ!」


混乱している様子を見せる対BETA戦の初陣であろう篁さんに対して、俺はあえて高圧的な態度を取る。


「はっ!
 
 ・・・小破1機,予備弾倉は十分です。
 このまま戦闘を継続します。」


篁さんは、一瞬悔しそうな表情を見せた後、隊長機に表示される隊内の戦術機の状態を素早く報告してきた。

俺は、思考が停止していない事に安堵した後、BETAへの牽制を行いながらも言葉を続ける。


「・・・それで良い。

 早速だが君の質問に答えることにしよう。」


そう言って、俺は周辺の瑞鶴だけに伝わるように範囲を絞った通信を入れる。


「こちらは、帝国軍 技術廠 第13独立機甲試験中隊の御剣 大尉だ。
 試作機の実戦データ収集のため、御邪魔させていただく。
 斯衛にも言い分は有るだろうが、独立部隊の裁量権内の活動である。
 抗議は、戦闘終了後に受け付ける予定だ。
 以上、通信終わり。」


俺はそう言って通信を終えた後、篁さんたちの部隊に通信を入れる。


「と言う事だ。
 俺がここにいる理由が分かってもらえたかな?」


「はぁ・・・。」


「何、気のない返事をしてるんですが隊長は。
 あの御剣大尉と同じ戦場に立てるなんて、名誉な事ですよ。」


「名誉かどうかは知らんが、可能な限り君達を守る事は約束しよう。

 そういえば、篁さんは突撃砲を失っているようだが?」


「お言葉ですが、長刀さえ有れば何とかして見せます。
 それと、コールサインはホワイトファング1(篁 少尉)です。」


俺の心配する言葉に対して、篁少尉は気丈に振舞って見せていた。

しかし、僅かに震える唇からは、未だに緊張が取れず、余計な力が入っている事が伝わってきたのだった。


「君らの動きはまだ堅いようだ。
 ホワイトファング1(篁 少尉)には俺の突撃砲を渡そう。
 しばらくは射撃戦に徹して、BETAの生の動きを観察するんだ。」


「しかし、それでは大尉の武装が。」


「この試作機が持っている予備弾倉は、87式突撃砲とは型が異なっている。
 したがって、87式突撃砲は弾切れになれば捨てるしかない武装だ。
 予備弾倉が残っているなら君の方が有効に使えるだろう?

 それと、こちらのコールサインはベル1(御剣 大尉)、後ろの吹雪がベル2(武田 中尉)だ。」


俺はそう言って、87式突撃砲2門を黄色の瑞鶴に押し付けた。

黄色の瑞鶴が87式突撃砲を受け取ったのを確認した俺は、XCIWS-2B/ 試作近接戦闘長刀 という74式接近戦闘長刀の反りを極端に浅くし、
先端を尖らせ直刀に近い形状となった試作長刀を展開し、BETAの群れへと切り込んで行く。

そして、1km程はなれた後方からは、俺と瑞鶴部隊を援護するように、吹雪・強行偵察装備から98式支援砲による射撃が開始された。


「切れ味と強度はこちらの方が良い筈なんだがな・・・、いつもの長刀と勝手が違うか!?」


実戦で始めて試作長刀を振るった俺は、その特性を把握仕切れておらず、カタログ値と比べて低すぎる切れ味しか引き出す事ができなかった。

そもそも刃物と言う物は、ただ押し当てただけで切れるというものではない。

刃を対象に直角に当てて、押すか引くかしない限り、その真の切れ味を発揮しないものなのだ。

そして、刀の反りはただ振るうだけでも引く動作が出来るようにする処理で、その結果刃が直線になっている剣よりも、
刀は斬撃の切れ味が鋭くなるなるとも考えられている。

日本刀の歴史の中にも反りを浅くして作られた刀が有り、その刀が突きを主体に作刀された事や、反りの浅い刀用の斬り方を知っていた俺は、
数回切りかかった段階で通常の斬撃モーションに見切りを付け、試作長刀用の動きを探る事にしたのだった。


「訓練校を出たばかりとは言え、少尉の肩書きはただの飾りか?
 この程度の戦場なら、訓練で習った常識がまだ通用する範囲だぞ!」


俺はそう言って、可動式担架システムに搭載されたXAMWS-24/試作新概念突撃砲で、篁少尉が率いる部隊の援護を行う。

本当は、弾倉形状が異なっている事で、コンテナ等の現地調達で補給を受ける事ができないこの武装は、最後まで取っておきたかったのだが、
見方を援護するためには仕方の無い行為だったのだ。


「ベル1(御剣 大尉)よりホワイトファング小隊各機へ、
 指揮系統は違うが、ここは君達の力を俺に力を貸してくれ。

 ・・・援護方法はホワイトファング1(篁 少尉)に任せた。」


「「「「大尉!?」」」」


ホワイトファング小隊の返事を聞く前に、俺は再び近接格闘戦を再会した。

近接格闘戦を再開してから、数体のBETAを切り伏せた俺は、74式接近戦闘長刀と試作長刀の間にあった差を修正し、
ついに試作長刀にあわせた斬り方を身に付ける事になる。

そして、試作長刀用のモーションが固まった所で、試作長刀を左手,ナイフシースから取り出したマチェットタイプの大型近接戦短刀を右手に装備した、
二刀流スタイルの超接近戦闘へ戦い方は移行していく。

近接格闘を行なうという事は、機体がBETAに包囲される危険性が高くなる事を意味している。

包囲の危機を心眼の力と勘で素早く察知出来る俺は、包囲される前にすかさず後方のホワイトファング小隊が援護できる位置まで下がり、
仕切り直しを行って攻撃を仕掛けるという行為を繰り返すのだった。

少しでも弾薬を節約するために、普段にも増して近接格闘を行う必要に迫られた俺を、ホワイトファング小隊は持てる力を全て使って援護してる事になる。

そして、例え俺がBETAから守る楯と成っていたとしても、彼女等は無事死の八分を越えを果たす事となった。








「マザー・ベル(中里 少尉)よりベル1(御剣 大尉)へ、
 帝国軍の援護を受け、斯衛軍左翼持ち直しました。

 斯衛軍中央部隊、光線属種の攻勢により損害を受けている様ですが、
 戦線の維持には成功しています。」


第16斯衛大隊も展開している斯衛軍の中央部隊は、左翼が一時崩れた事と光線属種が周辺に多く展開していたこともあり、
左翼に次いで損害がでているようだった。

ホワイトファング小隊が他の斯衛軍部隊に合流したのを確認した俺は、再び行動を開始する。


「この規模の光線属種なら普段とやる事は変わらない。
 俺が切り込んで数を減らすぞ。」


「何を言っておるのじゃ。
 無理をするほど、劣勢ではないぞ。」


「将来を考えると、精鋭部隊はいくらあっても足りないぐらいだ。
 被害は少しでも少ないほうが良い。」


「じゃが・・・。
 信綱、話は終わってないぞ!」


俺は香具夜さんの制止を振り切って、BETA群へ突入を開始していた。

後になって思えば、この時の俺はグレイゴーストの性能に入れ込み、自信過剰になっていたのかも知れない。

いつものように、短距離噴射跳躍を繰り返して光線級に近づき、光線級を蹴散らした後の俺を待っていたのは、
京都外周に新たに出現した重光線級の群れが、一斉に俺に照準を合わせたという警告と、
戦域内の1/3のBETAが俺を包囲するように動き出したという報告だった。

危険を察知した俺は、素早く短距離噴射跳躍を行い、BETA群からの離脱を図るが、すぐさま重光線級の照射により地面に落とされ、
地上で待っている高密度のBETA群を相手にせざる終えなくなった結果、戦場で孤立し移動する事すらままならなくなってしまったのだった。

この現状を把握した俺は、思わずこう呟く事になる。


「これは・・・、詰んだか?」


俺は呟きと同時に、自分の名を呼ぶ複数の声が聞こえた気がしたのだった。




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コメント

皆様こんばんは、仕事以外の社内コミュニケーションの企画という雑務を押し付けられ、
更に時間がなくなってしまった、あぁ春が一番です。
いくらコミュニケーションが大事だと言われても、土日にまで頭を悩ます事になるのは、
反則だと感じる今日この頃ですが、皆様はいかがお過ごしでしょうか・・・?
更新が遅すぎるせいで、忘れ去られていない事を祈っています。

今回は、漸く京都での戦いを・・・途中まで書く事ができました。
ブラックウィドウⅡの雄姿は、上手く表現できているでしょうか?
また、ブラックウィドウⅡの和名を考えると言っておきながら、結局思いつかず、原作のままの名前を使用する事になりました。
分かりやすいのが一番だという事にして、ご勘弁頂きたいと思っています。

ピンチに陥った所での話を区切る展開は、読み手の時には悶える事が多かったのですが、
書き手に回ってはじめて作者の気持ちが分かった気がします。
文章量と時間的にここで区切るしかないのです・・・。orn

疲れた頭で、主人公を追い込んでみましたが、どうやって攻略するかは考えていません。
強すぎず弱すぎず、いい塩梅の展開が思い付けばよいのですが・・・。


返信

皆様、いつも様々なご意見を下さり、ありがとうございます。
皆様のご意見ご感想の中から、広く知ってもらいたい事や、意見を聞きたい事を抜粋して、
ここに返信させていただきます。
選択から漏れてしまった皆様には、大変申し訳ない事をしていると思いますが、
全てのご意見・ご感想に目を通していますので、その点はご理解いただけたら幸いです。


>F-4J『烈震』 吹雪の扱いやすい第三世代機って売りが大きく薄れてしまったような……
2.5世代機である烈震の登場で、確かに吹雪の存在価値は一時的ではありますが薄まっています。
しかし、何処まで頑張ったとしても烈震が第1世代機の改造機である以上、
長期的な運用を考えた場合には、問題点が出てくるものと思われます。
ただし、ベテラン衛士への対応やコスト・調達スピードを考えると、まだまだどうなるかは分かりません。
なにか、いいアイデアが湧けばよいのですが・・・。

>YF-23 ブラックウィドウⅡの装甲形状について、
帝国軍の運用思想が異なっている事と電波吸収塗装が無い状態ですので、ステルス性を犠牲にしても問題無いと私も考えました。
ただ、個人的にはステルス性を追求した結果として、あのビジュアルに成っているとも考えられましたので、
完全に取り払うという選択は採りませんでした。
また、対電子戦装備の空きスペースには、新たな演算ユニットを突っ込みました。
この結果、おそらく対戦術機戦では大幅な戦力ダウンとなりましたが、対BETA戦ではかなり強化されていると思います。
これが今のところの、帝国軍仕様ブラックウィドウⅡの現状です。
原作の弐型制式採用の背景から見て、こんなものだろうと考えているのですが、どうでしょうか?
ご意見をいただけると幸いです。


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