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No.16427の一覧
[0] 【習作】 マブラヴ オルタネイティヴ~我は御剣なり~(現実→オリジナル主人公・チート気味)[あぁ春が一番](2012/08/13 20:03)
[1] 本作歴史年表[あぁ春が一番](2011/07/11 21:36)
[2] 戦術機設定集(簡易)[あぁ春が一番](2011/08/15 13:48)
[3] 兵装・その他の装備設定集(簡易)[あぁ春が一番](2011/08/15 13:47)
[5] プロローグ[あぁ春が一番](2010/03/08 18:31)
[6] 第01話[あぁ春が一番](2010/06/06 12:15)
[7] 第02話[あぁ春が一番](2010/06/06 12:20)
[8] 第03話[あぁ春が一番](2010/07/10 09:03)
[9] 第04話[あぁ春が一番](2010/11/05 00:07)
[10] 第05話[あぁ春が一番](2010/11/05 00:24)
[11] 第06話[あぁ春が一番](2010/11/05 00:35)
[12] 第07話[あぁ春が一番](2010/11/05 00:45)
[13] 第08話[あぁ春が一番](2010/11/06 23:42)
[14] 第09話[あぁ春が一番](2011/01/27 22:47)
[15] 第10話[あぁ春が一番](2011/04/20 00:59)
[16] 第11話[あぁ春が一番](2011/05/03 18:17)
[17] 第12話[あぁ春が一番](2010/11/07 22:29)
[18] 第13話[あぁ春が一番](2010/11/07 23:04)
[19] 第14話[あぁ春が一番](2011/05/03 18:19)
[20] 第15話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:49)
[21] 第16話[あぁ春が一番](2011/05/03 18:22)
[22] 第17話[あぁ春が一番](2011/05/03 18:23)
[23] 第18話[あぁ春が一番](2011/05/03 18:24)
[24] 第19話[あぁ春が一番](2011/05/03 18:29)
[25] 第20話[あぁ春が一番](2010/11/10 00:41)
[26] 第21話[あぁ春が一番](2010/11/11 00:05)
[27] 第22話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:50)
[28] 第23話[あぁ春が一番](2010/11/11 23:29)
[29] 第24話[あぁ春が一番](2010/12/12 15:48)
[30] 第25話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:51)
[31] 第26話[あぁ春が一番](2010/12/12 15:48)
[32] 第27話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:51)
[33] 第28話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:52)
[34] 第29話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:53)
[35] 第30話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:53)
[36] 第31話[あぁ春が一番](2011/05/15 01:42)
[37] 第32話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:54)
[38] 第33話[あぁ春が一番](2011/05/25 00:04)
[39] 第34話[あぁ春が一番](2011/05/25 00:05)
[40] 第35話[あぁ春が一番](2011/05/25 00:05)
[41] 第36話[あぁ春が一番](2011/07/11 21:25)
[42] 第37話[あぁ春が一番](2011/08/15 13:46)
[43] 第38話[あぁ春が一番](2011/10/24 00:46)
[44] 外伝 TE編・上[あぁ春が一番](2012/07/23 11:57)
[45] 外伝 TE編・中[あぁ春が一番](2012/08/13 20:03)
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[16427] 第24話
Name: あぁ春が一番◆17cd7d65 ID:bc6cc51c 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/12/12 15:48


7月12日

岡山市に到達したBETA群は、帝国軍による必死の抵抗にもかかわらず、翌日には兵庫県内に侵入し、赤穂(あこう)市を突破する事になった。

そして14日には、広島から数えて3個目になる大規模防衛線、姫路(ひめじ)防衛線に食らいついたのだ。

姫路市に敷かれた防衛線には、瀬戸内海側で台風の影響が弱まった事を受け、今までの防衛戦には参加していなかった、
戦艦を含む打撃能力を持った艦艇が姿を現わしていた。

この新たな戦力の登場に、今まで退却を続けていた帝国軍部隊は大いに喜ぶ事になるのだが、
海上戦力の参戦よりも帝国軍部隊を喜ばした事があった。

それは、兵庫県を境にして避難する民間人の姿を見かける事が無くなった事だった。

ここに来て漸く、日本帝国はBETAに対する反撃態勢を整えつつあったのだ。

だが、山口県から始まった五日間にも及ぶ退却戦に参加していた部隊は、流石に消耗が激しかったこともあり、
姫路防衛線に参加する事を許されていなかった。

山口・広島県の基地に所属していた部隊の多くは、姫路から60kmほど東にある神戸(こうべ)まで下がり、補給を受けるよう命令が出ていたのだ。

そして、神戸まで下がった部隊の中には、損傷を受けながらも9機の戦術機を保持して退却戦を戦い抜いたロンド・ベル隊の姿もあった。

他の戦術機とは明らかに異なる外観をした、赤と白のツートンカラーの戦術機を見た人たちは、
これが光線級殺しが乗る噂の最新鋭戦術機かと、羨望のまなざしで見つめていたのだった。









神戸に到着したロンド・ベル隊と、隊に合流した部隊で構成された臨時部隊は、ロンド・ベル隊所属の整備士に機体を預けた後、
各部隊の代表者を集めて打ち合わせが行なわれた。

その中で、退却戦の間に構築された協力体制を解消し、部隊ごとに司令部に指示を仰ぎ今後の方針を決める事を確認した事で、
臨時部隊はその日の内に解散する事になった。

俺は臨時部隊の解散を受けて、基地司令の許可を得た上で生き残った臨時部隊の隊員たちを集め、
ささやかながら食事会を催す事を計画する。

ロンド・ベル隊以外の部隊は、機体の修理が終了次第、後方にて部隊の再編成が行なわれる可能性が高かった事から、
この機会を逃すと皆で集まる場は二度と無いと考えた事で、計画を実行に移すことになった。

俺は、食事会の物資を自分たちで調達する事を条件に、基地司令とPXの担当者に話をつける事に成功した。

その後、隊員の中で元気がある者たちを動員して車に乗り込み、基地の近くにあった御剣食品の倉庫に向かった。

民間人の避難が完了し、人気の無くなった御剣食品の倉庫には、未だに多くの食品群が残されていたのだ。

このように輸送が間に合わなかった食品の在庫は、このまま放置したとしてもBETA侵攻により停電となった後は、
腐敗し価値を失ってしまうものである。

そこで御剣財閥は、食品のように時間とともに価値が目減りするものを政府に寄付する事で政府に恩を売ると同時に、
民間人に対して会社を挙げてBETAと戦っているという印象を与える事を考えていた。

これらを運び出す事が出来ない以上、ゴミを作り出すよりも有意義だし、徴収される可能性がゼロでは無いため、
自主的に行なう方が民間人にも政府関係者にも受けが良いとされ、重役会議でも承認される事になった。

そして、現在は政府に寄付を打診している段階であるため、御剣食品が正式な手続きで寄付を行なう前に、
食事会の物資だけでも確保しようと俺たちは動いていたのだ。

その後、食事会を開催するのに十分な物資を調達する事に成功した俺たちを、基地に残っていた者たちは驚きの表情で迎える事になる。

予定よりも少し大規模になった食事会は、急いで計画されたもののわりに、好評を得ることになった。

食事会には、休憩の合間を縫って出席したロンド・ベル隊所属の整備士や、まったく関係の無い部隊の者も参加したため、
ちょっとした騒ぎとなったが、基地司令の許可を得ていたこともあり、駆けつけた憲兵は俺のお願いと差し入れの約束をする事で、
大人しく退散する事になる。

隊員たちは、退却戦の中で死んでいった仲間の事を語り合い、互いの労をねぎらうことで心の整理をつけて行くのだった。

しかし、俺たちには余り悠長に時間を過ごす暇は残されていなかった。

ここは、最前線から60kmしか離れていないのだ。

食事会は3時間ほどで閉会し、隊員たちは食事会の後、思い思いに休憩を取る事になった。

俺は他の隊員たちがそうして休憩している間に、自分の権限から集められる正規の情報と、
個人的な伝を使って集めた非合法の情報を見比べ、分析を開始して行く事になる。

それらの情報により、九州は宮崎・鹿児島県を残すのみとなり,四国は辛うじて上陸地点での迎撃が成功中,中国地方は完全に陥落し,
近畿地方の瀬戸内海側は兵庫県姫路市で、日本海側は京都西北部の舞鶴(まいづる)と福知山(ふくちやま)・綾部(あやべ)ラインに構築された防衛線にて、
戦闘が行なわれているという現状を知る事になった。

俺は各戦域の戦況や物資の輸送状況から、これから取るべき行動を模索するのだった。








7月15日

神戸到着から48時間後、優先的に整備が行なわれていた不知火改の整備が終了、各部の消耗が部隊の中で一番激しかった不知火弐型は、
新型管制ユニットの特徴である管制ユニットの取り外し機構を使って、予備機と管制ユニットを交換する事で、
不知火改よりも早期に整備が終了していた。

これを受けて、ロンド・ベル隊は防衛戦二日目となった姫路へ、戦術機長距離移動用新型装備 通称『ローラーブレード』を装備し、
移動を開始する事になる。

ここで始めて投入される事になったローラーブレードとは、自走可能な動力源を持つ5個のローラーが縦に並べられたブレードと呼ばれる部分を、
靴状のユニットに取り付けた装備である。

この装備を脚部に取り付ける事で、戦術機は移動時の推進剤及び消費電力を大幅に抑える事が出来るようになったのだ。

ローラーブレードは、舗装の行き届いた都市部でしか使えない上に、市街地戦を行うほど習熟するのには時間が掛かるなど問題点も多い装備だが、
日本国内で長距離移動を行なう事だけを考えると、自動制御で運用可能な範囲であると判断され、今回投入する事となっていた。

この装備が上手く機能すれば、舗装されている道が多い欧州での戦いでも、使われる事になるだろうと予想されていた。

ロンド・ベル隊が、加古川バイパスを西進し、姫路まで残り20kmに迫った地点で緊急の連絡が入った。

なんと、先日BETA群に突破された舞鶴に続いて、福知山・綾部ラインもBETA群に突破されたと言うのだ。

これにより、日本海側のBETA群が兵庫県の北から侵攻してくる可能性がでてきた事で、軍は姫路の防衛線を破棄し、
姫路から40kmほど東にある明石(あかし)まで、防衛線を下げる事を決定する。

この時、整然と退却を開始すれば大きな被害を出すことなく、明石まで引く事が出来たのだろうが、ここで誤算が発生する。

一部の米軍部隊が帝国軍の計画より早く退却を開始し、情報の共有が遅れた帝国軍部隊が前線に取り残されるという混乱が、各地で発生したのだ。

この時早期退却を行なった米軍部隊は、姫路で始めて防衛戦に参加した対BETA戦の経験が無い部隊であった。

この事から、経験が無い部隊が過剰反応したのか、新しく着任した米軍の司令官から指示があったのかは不明だが、
目の前には戦場に混乱が起こったという現実が横たわっていた。

防衛線の各所がBETA群に突破されて行く中、ロンド・ベル隊は取り残された帝国軍部隊を救出するために、各戦域を転戦する事となった。

防衛線にロンド・ベル隊が取り付いた時、ローラーブレードの使用に慣れる事が出来た俺と余り激しい機動を行なう事がない香具夜 中尉以外は、
これを破棄し長距離移動モードから通常戦闘モードに移行する事になった。

その後、無事に明石まで退却する事ができるかわからないが、前線に取り残された戦術機20機あまりを救い出す事に成功する事になる。

そして、ロンド・ベル隊は把握する限りで取り残された最後の部隊の救出に向かって行った。


「マザー・ベル(中里 少尉)よりベル1(御剣 大尉)へ、
 救出目標の撃震部隊のマーカーが一つ消え残り4機。
 依然として、多数のBETAに囲まれており、大変危険な状況です。」


「このままじゃやばいな・・・。
 俺が突っ込む!
 ベル1(御剣 臨時大尉)よりベル2(武田 中尉)へ、
 部隊の指揮と援護をお前に任せる。
 俺は一足先に撃震部隊の救出に向かう。」


俺は香具夜 中尉の返事を聞く間も惜しんで、通信を終えると同時に2基の跳躍ユニットと肩に装備された2基の大型スラスターを全開にして、
不知火弐型を一気に跳躍させた。

赤と白のツートンカラーの不知火弐型は、容易に最大戦速の時速460km/hから最高速度に近い760km/hまで加速していく。

光線級の存在がこの戦域では確認されていないとは言え、運動性が低下する最高速度を出すという事は、
光線級のレーザー照射を回避するための機動が難しくなる事を意味し、ある意味自殺行為とも言える行動であった。

しかし、俺は自身の危機察知能力と戦術機の操縦技術,対G耐性にモノを言わせ、躊躇無く機体を最高速度まで持っていくのだった。

撃震部隊に接近した俺は跳躍ユニットを停止させ、機体制御を行いエアーブレーキで減速すると同時に、
右腕の98式支援砲と左腕の87式突撃砲を使って、撃震部隊に群がるBETAの中で危険度の高そうな個体に対して狙撃を行った。

撃震部隊は、突然の援護に一瞬戸惑っているような動きを見せたが、ベテランの衛士が多いのだろう、
直ぐに態勢を立て直し、援護を受けやすくするためにBETAから距離を取る動きを取り出したのだった。

不知火弐型は、着地と同時にローラーブレードによる走行を開始し、道路を滑るような動きでBETA群と撃震部隊の間に機体を割り込ませ、
近くにいた要撃級を支援砲と入れ替えて右腕に装備した74式接近戦闘長刀で斬りつけて停止した。

俺は、接近するBETAへ攻撃を行ないながら、撃震部隊と交信を開始したのだった。


「こちらは、第13独立機甲試験中隊 中隊長の御剣大尉です。
 この戦域にいるのは、あなた方の部隊だけになりました。
 援護を行ないますので、直ぐに退却の準備に入ってください。」


「やはり、その機体色は・・・。
 こちらは、第686戦術機甲中隊 中隊長の高畑大尉。
 貴官の援護、感謝する。
 噂に聞くロンド・ベルの光線級殺しとお会いできて光栄だ。
 
 しかし、貴官の要請を受ける事はできない。
 撃震の機動力では退却する前に、包囲されるのが落ちだ・・・。
 それなら、少しでもこの場に留まり、友軍が退却する時間を稼ぐ!」


「何を言っているんですか、その役目は本来なら第3世代機が勤める役割です。
 ロンド・ベル隊と合流次第、皆さんには退却していただきます。」


「・・・正直に言えば、私以外の機体は跳躍ユニットが破損しているのだ。
 彼らを見捨てて逃げる事は、私には出来無い。

 それに・・・、本土に侵攻されてからのBETA戦は電撃戦になっている。
 その中で、撃震ができる事はあまりにも少ない。
 撃震を救出するよりも、不知火・吹雪を温存する事を優先すべきだ。」


「しかし・・・、それでも俺は出来る限り、多くの人を助けたい。
 そのために…、こんな状況を切り抜ける為に、俺は強くなると誓ったんだ。

 (本郷 大尉たちや山口からの退却戦の時とは状況が違う!
 まだ、全員が生きて帰る可能性があるはずだ…。」



俺の言葉を聞いた高畑大尉は、一瞬考える素振りを見せるも、直ぐに表情を引き締めると拒絶の言葉を口に出した。


「安心しろ、伊達に貴官より歳を取っているわけではない。
 貴官が退却する時間程度なら、今の撃震だろうと稼いでみせる。」


俺は高畑大尉の言葉を聞き、こういった気骨のある人物を死なせるべきでは無いと思い、如何にかして助ける方法がないかと思考を巡らせた。

そして、一つの結論に達したところで、接近するロンド・ベル隊へ指示を出した。


「ベル1よりロンドベル各機へ、
 ロンド・ベル隊は、この地で留まっている撃震部隊の援護を行なう。」


「「「「了解!」」」」


ワザと通信をつなげていた高畑大尉にも俺の指示が聞こえており、予想通り高畑大尉から抗議の声が届けられる。


「どういうつもりだ、御剣大尉!」


「生き残る自信があるからに決まっているでしょう。
 もちろん、我々が退却する時は皆さんも一緒です。」


「撃震の機動力と今の損傷状態では、退却は無理だと言ったはずだ!!
 英雄と持てはやされて、何でも出来る様になったとでも思ったか!?」


「自惚れているつもりはありませんよ…。
 我に秘策あり、です。
 奇跡が起こらないなら、自分で場を整えて状況を変えるだけです。」


「・・・・・・、其処まで言うのならやって見せろ。
 まったく…、これが若さと言うものなのか。」


「高畑 大尉、こちらの指示にしたがって頂ければ、
 あなたの部下も含めて全員無事に帰還させて見せますよ。」


「分かった、我々の命を貴官らに預ける。

 マイク1より686中隊各機へ、ロンド・ベル隊の支援の下、退却を開始する事にした。
 686中隊各機はこれより、ロンド・ベル隊の指示に従え。
 分かったか!」


「「「了解しました!」」」


この通信の後、ロンド・ベル隊各機は4機の撃震を囲むように展開した。

俺は高畑大尉らの安全を確保した上で、バッテリー残量が多く残っている撃震に乗っていた高畑大尉に、
機体を仰向けに寝かせ、残りの撃震に乗っていた3人の衛士を搭乗させるように指示を出した。

そして、4人が乗り込んだ撃震を必要最低限の機能だけを起動するセーフモードで起動させると、
撃震の四肢と頭部を長刀で斬りつけ、管制ユニットが搭載された胴体部分だけが残るまでに解体していった。

これは、機体の構造を完全に把握している知識を持っている事と、長刀で戦術機を解体する腕がないと出来ない行為だったが、
幼い頃より剣術と戦術機に慣れ親しんでいた俺にとっては、造作も無い事だった。

俺は後衛の不知火改2機に、撃震の胴体部を運ぶように指示を出した。

2機の不知火改が撃震の胴体部を素早く持ち上げると、残りの不知火改は撃震の胴体部を運ぶ機体と武田中尉の機体を囲むようにして陣形を整え、
退却を開始する。

そして、退却を開始した直後、中里少尉に指示を出していた仕掛けが起動した。

3機の撃震に搭載されていたS11が一斉に爆発し、ロンド・ベル隊を追撃しようとしたBETAを吹き飛ばしたのだ。

一度加速した第3世代機の戦術機を追えるほどの機動力を持った個体は、BETAには存在しない。

俺は戦力が低下したロンド・ベル隊の殿を務め、安全圏に脱出した後からは香具夜 中尉が駆る不知火改・強行偵察装備と連携して、
撃震の胴体部をローラーブレード装備の機体を使って運ぶ事で、無事にロンド・ベル隊を明石まで帰還させる事に成功したのだった。








姫路防衛線の崩壊から数時間後、日本海側のBETAに背後を突かれる心配の無い場所である明石で、帝国軍と在日米軍の連合軍は、
現時点で可能な限り集めた火力を持ってBETA群を迎え撃った。

明石で行なわれる事になった防衛戦は、今までの防衛線で行われた戦闘と同様に激しいものになって行く。

その頃、明石に到着したロンド・ベル隊は、撃震の管制ユニットにすし詰めにされていた高畑大尉たちを現地の部隊に預け、
機体の補給を行った後、直ぐに明石の防衛戦に参加することになった。

降り注ぐ砲弾の雨に対抗するように、BETA群は光線属種によるレーザー照射を開始し、砲弾を迎撃していく。

軍もBETAの行動を予測しており、攻撃を行なわず後方に待機していた艦船からAL(アンチレーザー)弾が発射されると同時に、
先ほどまで通常の対地砲弾で砲撃を行なっていた艦船は、急ぎAL弾への切り替えを開始した。

程なくして、AL弾がレーザー照射で迎撃された事で発生した重金属雲が、レーザーの威力を減衰させた事で再びBETA群に砲弾が降り注ぐ事になる。

しかし、数多くの砲弾を叩き込むも、BETAの数の暴力の前には勢いを弱める事しか出来なかった。

BETA群は、その物量にものを言わせて戦車や自走砲といった陸上戦力に急接近してくる。

このBETA群の接近によって、戦車や自走砲は一時的な後退を開始し、それと入れ替わるように戦術機部隊が前面に展開した。

このように戦術機部隊が陸上戦力を守るために展開した場合、機動力と火力を使って機動防御を行なうのが、通常の防衛戦での戦い方である。

だが、ここで活躍する事になったのは、不知火・吹雪などの第3世代機ではなく、
従来よりも圧倒的に火力を重視した機動防御を行なう新型第1世代機の鞍馬だったのだ。

鞍馬は、事前の十分な砲撃によりあまり得意ではない突撃級の多くが傷を負っていたことで、その火力を十分に発揮する事が出来、
多くの日本人が姫路やここでの戦いで、欧州でジネラルエレクトロニクス社製36㎜ガトリングモーターキャノンを有するサンダーボルトⅡが、
戦単級駆逐機(タンクキラー)と呼ばれているかを漸く実感する事になったのだ。

そして、鞍馬と争うように戦果を挙げたのが、空母から発進し防衛線に展開した、在日米軍の海兵隊に所属するF-14『トムキャット』だった。

トムキャットの兵装であるAIM-54『フェニックス』は、長距離誘導大型クラスターミサイル とも言われ、
母機から発射後、レーダー管制官による電波誘導と内蔵センサーによる地形参照,GPSによる位置確認を使って目標に接近し、
目標上空で子弾を展開する事で広範囲を攻撃するという物である。

トムキャットは、フェニックスを使う事で比較的安全な距離から攻撃が可能であり、一機のF-14で最大6発のフェニックスが搭載可能で、
一個中隊分に当たる最大72発のフェニックスを同時発射する事により、光線属種を含む旅団規模(3000~5000体)のBETA群に、
打撃を与える事が可能とされていたのだ。

しかし、このフェニックスという兵器は、米国軍が提示する情報には書かれていない問題点も存在した。

それは、低空から目標に接近するというフェニックスの特徴により、光線属種のBETAにも迎撃され難いとされているが、
BETAは光線属種を守る行動を取る場合が多く、光線属種に打撃を与えられる確率はそれほど高いものではなかったのだ。

また、クラスター爆弾は必ずといっていいほど不発弾が付きまとう兵器で、この不発弾の処理が必要である事から、
一度使用した戦域は綿密な調査を行う必要が有り、戦後に悪影響を与えるという問題も抱えていた。

だが、これらのデメリットを差し引いたとしても、小型種には大変有効な兵器であるという事は確かであり、
戦場で味方となった場合は、素直に頼もしいと思える兵器だったのだ。

このように、撃震・吹雪・イーグルなどの戦術機が、大きな戦果を挙げた鞍馬とトムキャットの陰に隠れる形となったのは、
近接格闘戦の能力が低い鞍馬とトムキャットを補助するために、BETAが接近すると被害が出ることを覚悟で積極的に打って出るなど、
自分たちの戦果よりも全体を重視した戦闘行動を行なっていたためだった。

そして、BETAの撃破数こそ鞍馬やトムキャットに叶わないものの、大きな戦果を挙げた部隊があった。

それは、BETA群を防衛線から引き離すための後方撹乱及び、足を止める支援砲撃部隊の天敵となる光線級を排除するために、
奇襲的突破を行なう事になったロンド・ベル隊を含む不知火を駆る精鋭部隊だったのだ。

こうした戦術機の運用と、各種戦力による支援砲撃を駆使する事で、BETA群の侵攻を頓挫させる事に成功したのだった。








その後、瀬戸内海側の防衛線は、一日平均1km程度後退するも、頑強に防衛を続けて行く事になる。

そうした中で、山口からの退却戦でロンド・ベル隊に同行していた戦術機部隊の扱いについて、ロンド・ベル隊に連絡が入ってきた。

これらの生き残り部隊を集めて再編される事は予想出来ていたのだが、その再編先が帝国軍技術廠の独立機甲試験部隊となった事は、
まさに寝耳に水の出来事だった。

しかも、再編した部隊を山口からの退却戦の時と同様に、ロンド・ベル隊と協力体制を組む事で、大隊規模の臨時部隊を編成すると言うのだ。

帝国軍技術廠とは、御剣財閥の関係や俺個人からアイデアや資材を融通している事から、懇意にしている事は事実であるが、
このように俺の近くに戦力が集まるようなあからさまな出来事に、御剣の関係者が裏取引でも行なったのではないのかと、
疑わずにはいなれなかった。

その事について軽く調べてみたのだが、どうやら帝国軍は独立機甲試験部隊の取り決めを利用して、
戦術機を企業側の負担で用意させ衛士を帝国軍が提供する事で、早急に戦力を回復させたいという思惑と、
ロンド・ベル隊を中心とした臨時部隊が、異なる世代の戦術機を同時に運用していたのに、
従来よりも効率的な部隊運営を行う事ができたという報告の真偽を確かめたいという意見により、
今回の様な人事が決定したという事が分かった。

その証拠に、今回編成される2つの部隊のうちの一つは、不知火と吹雪の混成部隊となり、
もう一つの部隊は、F-4JX『撃震改(仮)』により編成される事になる。

また、部隊協力の中心となると名指しされた俺に対して、臨時部隊をまとめる為に戦時昇進を行なうという話も有ったが、
尉官と佐官の間には大きな壁がある事を理由に、臨時少佐への昇進の話が立ち消えたという情報を得る事になる。

俺はこれらの出来事に何者かの意思が反映されているような感じを覚えたが、とりあえず自らの関係者が黒と分かる情報を得られなかった事から、
忙しさに流されてそれ以上の追及をやめる事にしたのだった。







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コメント

皆様、こんばんはです。
私の拙い文章を毎回のように読んで下さっている皆さま、ありがとうございます。

ギリギリですが、なんとか新話を投稿する事ができました。
しかし、月に二回の更新・・・意外と大変でした。
来月は仕事が忙しくなりそうなので、月に二回の更新は難しいかもしれません。
ここは有休を使って・・・・・・何とかできないかな~、と計画中です。

今回は、岡山から兵庫にかけての事を中心に書きました。
その中で、F-14『トムキャット』・・・というかAIM-54『フェニックス』の事も書けましたし、
ローラーブレードという新装備を書く事ができました。
また、弐型の活躍する場面も書けたので、話の流れには満足しているのですが、
考えていた事を上手く書けたかと言われると・・・、何時も頭を抱えています。

次回は、神戸辺りの防衛戦か京都の防衛戦に突入する予定です。
皆様を満足させる事が出来るかはわかりませんが、出来る限り頑張っていますので、
何か気が付いた事がございましたら、ご指摘頂ければ幸いです。

PS 来週は用事が立て込んでいますので更新は無理そうです。再来週の更新は・・・五分五分と言った所でしょうか。
  気長にお待ちいただけると助かります。


返信

皆様、いつも様々なご意見を下さり、ありがとうございます。
今回もいくつかを選択しての控えめな返信にさせていただきます。
選択から漏れてしまった皆様には、大変申し訳ない事をしていると思いますが、
全てのご意見・ご感想に目を通していますので、その点はご理解いただけたら幸いです。


鞍馬とガトリングシールドのせいで格闘用と射撃用の2タイプの開発が起こりそう・・・。
射撃用と申しますか、火力重視の戦術機として、私は鞍馬というオリジナル戦術機を設定しました。
そして、格闘用の戦術機ですが・・・未だに登場はしていません。
これは、格闘戦を行なうにはかなりの習熟が必要で、そういったベテランの数が多くなかった事で、
採用が見送られている事にしています。
今後は、EXAMシステムや新型管制ユニットの影響でベテランの数が増えることが予想されているので、
格闘重視の戦術機もしくは格闘用装備が出てくることになると思います。

F-14の運用は日本では無理そうだけど、フェニックス用ハードポイントは何かに利用できそう・・。
何かに・・・ですか、どうしましょう。
新型戦術機には肩部にスラスターを取り付けているので、その部分に装備をつけるのは難しいかもしれません。
しかし、古いタイプの戦術機になら・・・。
フェニックス自体を運用するには、専用の火器管制システムがいる様なので、
帝国軍で採用する事はひとまず見送っています。

突撃砲に手を加えて、地面におくと自動射撃を行ってくれるという機構があれば・・・。
つまり、戦術機が持ち運び出来る砲台があれば、戦術機は設置する事に集中する事で、
楽に戦える様になるというご意見だと理解しました。
確かに、機関砲などを固定して、射手は遠距離から操作するといった兵器は現実にあるようです。
しかし、大量のBETAを相手にした時、位置を固定してしまうとBETAの死体に阻まれて、
有効に機能しない気がしてきました。
そこで、BETAの死体すら吹き飛ばす兵器なら・・・とか考えてみました。
この作品は、一応人型ロボット兵器ものなので、リアルを重視するとともに、燃えも重視しております。
この2つの按配を考えて、採用の有無,採用する場面や頻度などを決めたいと思います。

他国による戦術機の4脚化・・・。
ある国は旧式化した戦術機の更新に忙しいようなので、旧型戦術機を四脚化によるアップデートを、
有効な手段と捉えるかもしれません。
もう一つの国は、新型をどんどん開発するほど資金が潤沢だったのですが、
最近は別のところにお金を使っているようなので・・・。
意外と採用先は多いのかもしれません。
説得力のある設定が思い浮かべば、という注釈は付きますが前向きに検討したいと思います。

磁気浮遊型ベアリング・・・。
以前にも皆様から同様のご意見がありまして、現在磁気軸受の勉強をしています。
しかし、現実はいい部分だけではないようです。
勉強した部分も取り入れながら、作品を面白く出来たら良いと考えています。

光コンピュータ・・・。
簡単に調べてみた限りですと、計算処理は早いようですが、メモリなどの周辺装置の開発がまだ進んでいないようです。
理論的にはかなり高性能な物のようですが・・・、香月博士から得られるモノを考えると・・・。
いざという時の取引に使えるかもしれません。
しかし、私自身が光コンピュータの事をよく理解できていませんので、どのように扱うかは未定です。

メモリの容量・転送速度の上昇も視野に入れた改良が本来必要だと思います・・・。
確かにメモリなどの周辺パーツの事をすっかり失念していました。
私もメモリ不足に喘いでいると言うのに、どうして今まで気が付かなかったのでしょう。
時間があるときに、修正もしくは補足説明を行いたいと思います。

F-14を重装機にして後方支援に特化させたらどうでしょうか・・・。
元々、射撃を重視する米国群向けの戦術機である事と高コストのため、帝国軍で採用する事は考えていませんでした。
米国の開発に口を出すという設定は難しいので、米国が独自で考えたプランの一つとして採用できる可能性があります。
しかし、F-14は米軍では退役していく存在ですので、どのように扱うかは未定です。

戦艦などに装備されているロケット砲弾・・・。
設定だけで戦闘にはあまり出ていませんが、鞍馬に30連装ロケット弾発射機と言う物がついています。
これだけですと余り活躍する機会が無い事に気が付いてしまいました。
複数の方よりご意見がありましたので、30連装ロケット弾発射機以外の物も考えてみたいと思います。

跳躍ユニットの補助と姿勢制御の向上を兼ねて脚部にスラスターはおけませんか・・・。
ガン○ム好きとしては、是非とも採用したいプランではありますが、
歩行による衝撃が激しい脚部にスラスターをつけるのは・・・・・・。
ここはリアルよりロマンを取った方が面白いかもしれません。
真剣に検討してみたいと思います。

皆様、多数のご意見ありがとうございます。
最近忙しくて、ご意見について考え設定を練りこむ時間が余り取れていませんが、
メモは残していますので、時間を見つけて検討して行きたいと考えています。


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