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No.16427の一覧
[0] 【習作】 マブラヴ オルタネイティヴ~我は御剣なり~(現実→オリジナル主人公・チート気味)[あぁ春が一番](2012/08/13 20:03)
[1] 本作歴史年表[あぁ春が一番](2011/07/11 21:36)
[2] 戦術機設定集(簡易)[あぁ春が一番](2011/08/15 13:48)
[3] 兵装・その他の装備設定集(簡易)[あぁ春が一番](2011/08/15 13:47)
[5] プロローグ[あぁ春が一番](2010/03/08 18:31)
[6] 第01話[あぁ春が一番](2010/06/06 12:15)
[7] 第02話[あぁ春が一番](2010/06/06 12:20)
[8] 第03話[あぁ春が一番](2010/07/10 09:03)
[9] 第04話[あぁ春が一番](2010/11/05 00:07)
[10] 第05話[あぁ春が一番](2010/11/05 00:24)
[11] 第06話[あぁ春が一番](2010/11/05 00:35)
[12] 第07話[あぁ春が一番](2010/11/05 00:45)
[13] 第08話[あぁ春が一番](2010/11/06 23:42)
[14] 第09話[あぁ春が一番](2011/01/27 22:47)
[15] 第10話[あぁ春が一番](2011/04/20 00:59)
[16] 第11話[あぁ春が一番](2011/05/03 18:17)
[17] 第12話[あぁ春が一番](2010/11/07 22:29)
[18] 第13話[あぁ春が一番](2010/11/07 23:04)
[19] 第14話[あぁ春が一番](2011/05/03 18:19)
[20] 第15話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:49)
[21] 第16話[あぁ春が一番](2011/05/03 18:22)
[22] 第17話[あぁ春が一番](2011/05/03 18:23)
[23] 第18話[あぁ春が一番](2011/05/03 18:24)
[24] 第19話[あぁ春が一番](2011/05/03 18:29)
[25] 第20話[あぁ春が一番](2010/11/10 00:41)
[26] 第21話[あぁ春が一番](2010/11/11 00:05)
[27] 第22話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:50)
[28] 第23話[あぁ春が一番](2010/11/11 23:29)
[29] 第24話[あぁ春が一番](2010/12/12 15:48)
[30] 第25話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:51)
[31] 第26話[あぁ春が一番](2010/12/12 15:48)
[32] 第27話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:51)
[33] 第28話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:52)
[34] 第29話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:53)
[35] 第30話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:53)
[36] 第31話[あぁ春が一番](2011/05/15 01:42)
[37] 第32話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:54)
[38] 第33話[あぁ春が一番](2011/05/25 00:04)
[39] 第34話[あぁ春が一番](2011/05/25 00:05)
[40] 第35話[あぁ春が一番](2011/05/25 00:05)
[41] 第36話[あぁ春が一番](2011/07/11 21:25)
[42] 第37話[あぁ春が一番](2011/08/15 13:46)
[43] 第38話[あぁ春が一番](2011/10/24 00:46)
[44] 外伝 TE編・上[あぁ春が一番](2012/07/23 11:57)
[45] 外伝 TE編・中[あぁ春が一番](2012/08/13 20:03)
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[16427] 第22話
Name: あぁ春が一番◆17cd7d65 ID:bc6cc51c 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/05/15 23:50

1998年6月

横浜で機体のデータ取りと問題点の洗い出しを行なっていたロンド・ベル隊に対し、
帝国軍から山口県の瀬戸内海側に面する防府基地に移動するよう命令が下った。

テストで得られるデータをある程度取り終え、実戦に投入する事を検討し始めた時に出されたこの命令は、
色々な思惑の末に出されたものだった。

始めは、北九州地区や山口県にある最大の基地である岩国基地への移動が検討されていたが、
前者はこれからも機体の開発が続けられる事を考えると、多くの研究員を最前線になる九州に置く事に難色を示す者がいた事、
企業を通して俺が同じような理由で反対の意見を出した事で却下され、後者は在日米軍も利用する施設であるため、
情報が流出する事を恐れた政府の要望で却下される事になった。

そこで、陸上及び海上ルートの両方で九州への移動が容易である事、中国地方にBETAが侵攻してきた時に上陸地点と予想される日本海側から距離があり、
BETAの直接侵攻を受けない事から、機材を避難させる事が出来る事が評価され、防府基地への移動が決定されたのだ。

防府基地への移動が決定したロンド・ベル隊は、運用する機体の種類を減らすために吹雪改のデータ収集を他の部隊へ移管し、
移管した吹雪改と同数の不知火改の補給を受ける事となった。

そして、正式に防府基地へ移動した後は、現地で対戦術機戦のデータ収集の名の下に他の部隊との演習に明け暮れる事になる。

また、6月に入った時点で中国地方には第2種退避勧告が発令され、民間人の避難が一部で開始されるという動きも始まっていた。

この一連の流れは、俺にとって喜ばしい事の連続だった。

なぜなら、後の歴史を考えると九州でどんなに足止めしようとも、日本帝国の首都である京都を守る事は出来ないという結論を出していた俺は、
中国地方への配属と同地区の部隊強化及び、民間人の避難を望んでいたからである。

そう、この時の俺はBETAの本土進攻を京都以西で抑え込み、日本帝国の工業力と日米同盟を維持しようと考えていたのだ。

この考えは、これからの未来がわからなくなる事と、オルタネイティヴ4成功の可能性が下がるという2つのデメリットを抱えていた。

だが、使えるか分からないが一応作っていたクソゲー集が完成した事、順調に日本帝国が戦力を整えていた事、
新型戦術機の開発が予想以上に進んでいた事、光州作戦の結末が記憶にある歴史とは変わった事等、
様々な要因が重なった事で、ここが未来を大きく変える時だと覚悟を決めていたのだった。

俺はその考えに沿って、九州・中国地方から御剣財閥の関連会社を他の地域に移転させる事で、その会社に所属する社員及びその家族の避難を促し、
西日本を中心に実験部隊を配備する事で、それを口実にして西日本の戦力を充実させるように軍に対して働きかけを行なっていた。

始めは御剣財閥単独だったこの動きも、あからさまな動きに危機感を覚えた他の財閥から一部で同調する動きも出てきたため、
予想以上のスピードで準備が整えられつつあったのだ。

しかし、この時の考えがまだまだ甘いモノであった事を、俺は後に思い知らされる事になる。

ロンド・ベル隊が防府基地に移動してから一月が経ち、隊員が自分達は教導隊ではないのにと愚痴をこぼし始めていた7月7日、
まったく想定していなかった九州への超大型台風の上陸と共に、対馬へのBETA侵攻が開始されたのだった。









7月7日

この日のロンド・ベル隊は、強風下における機体の運動性の変化に関するデータを取るため、模擬戦を中止し慌しく準備を進めていた。

其処に、軍団規模のBETA群が対馬に接近しており、約二時間後に対馬への上陸が開始されるという情報が舞い込んできた。

対馬は、朝鮮半島と九州の丁度中間に位置する大きな島で、朝鮮半島から北九州地区・中国地方にBETAが侵攻してきた場合に、
真っ先に戦場になる事が予想されていたため、帝国軍もそれなりの戦力をそろえてBETAの侵攻に対する防御を固めていた場所である。

しかし、それでも衛星等でBETAの侵攻を事前に察知し、北九州地区や中国地方の基地から援軍を出す事が対馬防衛の前提となっており、
今回の様に超大型台風が九州及び中国地方全体を覆い、援軍はおろか艦艇による支援すら出来なくなる状況は、まったくの想定外であったのだ。

まさにこの報せは、凶報と言ってもいい最悪のものだった。

唯一の救いは、数日前から台風の雲に覆われていたため衛星による偵察が不可能であったが、
事前に海中にばら撒かれていたセンサー網がBETAを感知した事で、対馬への上陸が開始される前にBETA群の接近を察知できた事である。

対馬に所属する部隊は、援軍が絶望的な状況に陥っている事を理解しながらも、残された時間を使って防衛線を構築、
圧倒的な数で押し寄せるBETA郡に対し、実に半日の間対馬を防衛する事に成功する。

この対馬での攻防は、対馬に所属する部隊が消滅するという悲惨な結果と引き換えに、帝国軍が予想していた防衛可能時間に対して、
倍以上の時間を稼いだのだった。

そして、対馬を突破したBETA群は、数時間後にはその数を師団規模に減じながらも、長崎及び佐賀県に上陸を開始した。

それに対して、対馬の敵討ちに燃える帝国軍 西部方面軍 九州地区の部隊は、
上陸した師団規模のBETA群を僅か数時間で撃破するという圧倒的戦果を収めることに成功する。

この圧倒的戦果は、海中のセンサー網と対馬の部隊によってもたらされた16時間近くの貴重な時間を使って、
今回のBETA侵攻にあわせた戦線を構築できた事で得られた結果だった。

このBETA群の侵攻の間、俺達ロンド・ベル隊は防府基地内のブリーフィングルームで待機していた。

台風の影響で九州への移動が容易ではなかった事と、中国地方北部(山陰地方)にBETA群が侵攻する可能性が0ではなかった事から、
待機命令が出されていたのだ。

九州地区の防衛成功の報を受けた俺は、対馬に所属していた人の冥福を祈りながらも、防衛が成功した事に対して安堵する事になった。

しかし、安堵したのも束の間、嫌な予感が頭に浮かぶ。

それは、未来知識とBETA戦での経験から、不知火の早期導入や吹雪の制式採用があったとはいえ、
『マブラヴ』において数日間で西日本が壊滅したBETAの侵攻が、この程度で有った筈が無いと感じていたからだった。

俺は自分の考えと勘を信じ、研究チームを一時退避させる事を決定した。

基地に残すのは、機体の整備に必要な人と機材を中心にして、データ収集に必要なものは最低限にし、
それ以外は更に後方の基地に移動させる事にしたのだった。

その後は、台風の影響が残る中で再びBETAが侵攻する事が無いようにと、半ば祈るような気持ちになりながらも、
俺はロンド・ベル隊による強風下における機体の運用データの試験を再開したのだった。






7月9日

BETAの対馬侵攻と九州での迎撃成功から二日後、貴重な機材の積荷が完了し、台風の中準備が出来た人から後方の基地へと移動が開始した時、
九州の西と山陰地方の北の海域でBETA群の接近が感知された。

海中のセンサー網から得られた情報を解析すると、接近するBETAの戦力は両方とも軍団規模以上を示しており、
その上陸予想時間は3時間後にほぼ同時に行なわれるという事が分かった。

この情報は、帝国軍に二日前のBETA侵攻以上の衝撃を与える事になった。

九州西部へのBETA侵攻に関して同地方の帝国軍は、二日前のBETA侵攻により九州北部に集中させた戦力の再分配が完了しておらず、
残り3時間では有効な戦線を構築できる状況では無かった。

そして、山陰地方へのBETA侵攻に関しては、山陰地方には九州ほど戦力が配置されていなかった事から、台風によって海上戦力が無力化された今、
戦線を維持できる可能性は極めて低くかった。

更に、沿岸部を突破された後は、九州とは異なり第2種避難勧告に止まっていた事ために、内陸部では未だに多くの民間人が居住している事から、
民間人保護を考えると戦術の自由度が大幅に制限される事が予想されていたのだ。

帝国軍は、各地域で防衛線の構築を開始すると共に、内閣に対して民間人の避難を開始と国連軍及び在日米軍に協力を求めるよう、要請を出す事になる。

BETA上陸まで残り2時間を切った時、日本帝国政府から九州及び山陰地方に対して、民間人の完全避難を行う第5種避難勧告、
山陰地方以外の中国地方に対しては第4種避難勧告を発令、それと同時に国連軍及び在日米軍に出動要請を行なった事が、国民に対して発表されたのだった。

これらの動きは、素早い対応と評価できる動きだった。

しかし、政府がいくら素早い対応をしても、現場はその要請に応える事が出来なかった。

1996年に第2種,1998年に第4種,そして今回の第5種と段階的に避難勧告のレベルを上げていた九州地区では、避難する人数が減っていた事もあり、
台風による暴風雨の中でも比較的順調に避難が行なわれる事になったが、僅か数ヶ月の間に勧告のレベルが急激に引き上げられた中国地方では、
多くの混乱が生じていた。

中国地方では、我先にと非難を開始する人が出た事、家財道具を運び出そうとした人がいた事、車の乗り合わせをせず一人で一台の車に乗る者がいた事、
台風で寸断された道路が有った事、その他様々な要因が重なり、中国地方各地の道路で大規模な渋滞が起こったのだ。

そして、その渋滞は民間人の避難が遅々として進まないどころか、軍の車輌の移動すら遅れるという状況を生み出す事となった。

その頃、防府基地に所属していたロンド・ベル隊は、島根県西部(山口県との県境近く)を中心とした山陰地方のBETA上陸地点へ移動し、
迎撃を行なう作戦を立てていたのだが、道路の渋滞によって車輌での戦術機の輸送が不可能な状況に陥っていた。

そのため、台風による強風で跳躍による戦術機の移動が困難である事から、戦術機の走行による移動を行なっていたのだが、
時間までにBETA上陸地点に到着する事は絶望的だった。

其処で俺は、同じく時間までにBETA上陸地点に到着出来ない部隊と合流し、臨時の部隊を編成する事にした。

ロンド・ベル隊は、この地域で多くの演習を行なっていた事から、合流した部隊とも顔見知りの事が多く、問題なく溶け込む事が可能だったのだ。

臨時部隊が移動を再開し、上陸予想地点まで直線距離で残り40kmに迫った時、BETAの上陸予想時刻を迎える事になった。







山陰地方に上陸するBETA群の迎撃作戦は・・・・・・、
大きな戦果を残す事無く、迎撃作戦に参加した部隊の壊滅という結果を迎える事になる。

上陸するBETA群の迎撃は、二日前に九州北部で行なわれたように、十分な戦力を配置して完全な迎撃を行なうか、
戦力が整っていない状況でも、迎撃しきれない一部のBETAを侵攻されても問題ない地域に導く事が求められている。

しかし、今回山陰地方に上陸したBETA群に対しては、様々な理由により必要な戦力の1/3程度しかそろえる事が出来ず、
民間人の避難が間に合わなかった事とBETAを誘導する地域も存在しなかった事から、
上陸開始前に事実上の失敗が決定していたと言ってもいい状況だったのだ。

案の定、山陰地方では戦力の薄い地域が真っ先に突破され、突破したBETA郡が迎撃部隊の背後に展開した事で、迎撃部隊は半ば包囲される事になる。

そして、包囲が形成された事を切掛けに、戦線は崩壊し僅か2時間余りで迎撃部隊は壊滅する事となった。

BETA群が防衛線を突破したとの報を受けたロンド・ベル隊を含む臨時部隊は、HQの指示に従いすぐさま迎撃に有効な戦域の選定に入り、
その場所で退却する迎撃部隊の受け入れと、BETA群に対する遅滞戦闘を行なう事が決定した。

山間部という地形を生かして先行する突撃級の背後や側面に回り、攻撃した後ですぐさま後退する事を繰り返す事で、
この戦域の遅滞戦闘は上手く機能していた。

ただし、もう一つの目的であった退却する部隊の受け入れは、まったく果たす事が出来ていなかった。

今展開している場所は、車輌が退却ルートとするには難があったが、戦術機の退却ルートとしては最適であるため、
それなりの数が退却してくる事を期待していたのだが、その思いに反して退却してくる部隊はまったく現れなかったのだ。

その事に戸惑いを感じている隊員の声を聞きながら、俺は退却してくる部隊が無い理由について、一つの仮説を立てていた。

その仮説とは、戦術機の天敵である光線属種がこの地域に進出しており、戦術機の狩場になっているのではないか、というものだった。

要撃級に囲まれたとしても、直立すると上半身を丸々さらすほど大型である戦術機にとって、
台風の影響で運動性が低下した今の状況で光線級と戦う事は、自殺行為とも思えるほど最悪な事であった。

そして、俺の仮説の裏付けるように中衛と思われる要撃級や戦車級の群れが現れると、その中には十数体の光線級が含まれていたのだった。

光線級の出現によって、山陰に隠れようとしていた戦術機がレーザー照射で破壊され、
それに慌てて噴射跳躍で移動した戦術機が着地に失敗し転倒したところを、戦車級が襲い掛かるという負の連鎖が始まっていた。

この混乱によって、瞬く間に中隊規模の撃震部隊が撃破されてしまったのだった。

撃震が撃破された理由・・・、それは機体の性能差だけの問題では無かった。

この強風下では、重い機体である撃震の方が性能低下が少なく、むしろ不知火との性能差は縮まっていたのだが、
問題は撃震に搭乗する衛士にあったのだ。

現在帝国軍では、第3世代機である不知火,吹雪への機種転換が進められており、撃震に乗る衛士の多くが、
熟練した者か新人の二種類にはっきりと分けられていたのだ。

今回は、その新人衛士達が未熟さゆえに犠牲になってしまった、というのが混乱の始まりだった。

俺はその実情を見て、光線級を撃破する必要があると感じ、隊員に通達する事にした。


「ベル1(御剣 大尉)よりロンド・ベル各機へ、
 俺が斬り込み、今見えている光線級を全て潰す!
 A小隊(突撃前衛小隊)は俺の援護、
 他の小隊は作戦行動を維持しつつ、ベル2(武田 中尉)の護衛に当たれ。」


「「「「「了解!」」」」」


「ベル3(佐々木 中尉)よりベル1(御剣 大尉)へ、
 戦いはまだ長く続きそうだ・・・、序盤から飛ばし過ぎるなよ。」


「どうしたんですか佐々木さん、訓練で強風下でも戦える事は証明してるでしょう?」


「いや・・・、こういう時に真っ先に注意する筈の武田が何も言わないから、
 釘を刺しておこうかと思ってな。
 早く仲直りしたらどうだ・・・いくら婚約者が出来たからって、
 全ての女を避ける必要は無いだろ?」


「仲直りって・・・、別にケンカをしている訳じゃありませんよ。
 それに、避けてるというか避けられているのが現状ですから・・・。」


「そういう時は、男からなんとかするもだと思うが・・・。」


「その事は、この戦いが一段落したら考えましょう。
 
 ベル1(御剣 大尉)よりロンド・ベル各機へ、
 そろそろ行くぞ・・・・・・、3・2・1・・・ゼロ!」


俺は自らのカウントの後に、噴射跳躍で空に跳び上がった。

強風下での戦術機の噴射跳躍が難しい理由、それは風が吹く方向や強さは一定では無いため、不意に風向きが変わった時に、
姿勢制御が追いつかない可能性があり、下手をすれば即失速や転倒を招くからだった。

つまり、常に正面から風が吹いているのであれば、第3世代機でいうと最大戦速時の風の抵抗が一割り増しになるだけで、
姿勢制御自体が難しくなる訳ではないのだ。

この風向きの変化によって、一般の衛士では噴射跳躍する事も難しくなっていた。

更に、光線級のレーザー照射の回避に欠かせないのが、常に加速度を変化させる事でレーザー級の照準を外すという事だが、
ただでさえ難しい加速度のランダム変化を、姿勢制御が難しくなる強風下で行なうのには、かなり高い技量が求められるのだ。

残念ながら、他の隊員では強風下でレーザー照射を回避出来るほど、環境と機体に適応できた衛士はいなかった。

俺の場合は、生まれ持った騎乗の才能と勘、そして無現鬼道流の修行で身に付けた心眼の能力を使って、機体の状態と風の動きを読み取る事で、
無理やり環境と機体に自分を合わせ、邪魔にしかならないはずの風を味方につけることに成功したのだ。

空に跳び上がった赤と白のツートンカラーの不知火・弐型は、風に翻弄される訳でも、無理やり押し進む訳でもなく、
まるで風に乗っているかの様に変幻自在の機動見せる事になる。

普段は姿勢制御のスラスターを作動させる必要がある動きでも、時に風の後押しを受け,時に風に逆らう事で急加速と急減速,急旋回を繰り返し、
放たれるレーザー照射を装甲に影響がでないように、距離を取って回避して行く。

こうした余裕が有るのも、ワザと光線級に迎撃させるように砲弾を放っているA小隊の援護のお陰でもあった。

俺は着実に光線級へ接近しつつも、他の戦術機にとって脅威度が高い順に、レーザー照射の切れ目を狙って98式支援砲を斉射する事で、
強風下でありながら遠距離の射撃を成功させ、光線級を撃破していった。

光線級の直上まできた俺は、急降下で地面に着地すると同時に光線級を踏み潰し、
周囲にいた要撃級の攻撃を弐型の腕部に内蔵されているカーボンブレードを使って受け流す事で、BETAの群れの中に進入を果たしたのだった。

そして、動きを止めずに動き出した俺は、機体各部に装備されているカーボンブレードを使って、移動と同時に要撃級や戦車級を切り刻みながらも、
87式突撃砲の120mm滑腔砲から散弾を放ち、光線級をまとめて撃破していった。

突入からたったの一分ほどので、十数体の光線級を撃破する事に成功した俺は、光線級殺しの異名が伊達ではない事を証明し、
部隊の士気を上げる事に成功したのだが、迫り来るBETAの大群にとっては、ほんの些細な出来事に過ぎなかったのだ。









山間部を抜け、瀬戸内海側の平野部に達するまで、BETAに対する遅滞戦闘を行なっていた俺達だったが、
平野部に達した後もBETAの勢いは止まる事がなかった。

何とか部隊を補給が可能な位置まで下げようと、退却ルートの選定を行なっていた俺達に対して、HQから非情な命令が下された。

その命令とは、民間人の避難を支援するために、周囲にいる部隊と合流後、その場に留まって防衛を行なえと言うものだった。

戦線は崩壊しろくな補給も出来ず、民間人の避難の混乱に巻き込まれ部隊の移動もままならない状況に、
軍はこの地区での戦線の構築を諦め、もっと後方の地域で防衛線を構築する事を決定したようだった。

つまり、BETAから民間人を守る・・・文字通り盾と成る事を建前に、戦線構築までの時間を稼げと言いたいのだろう。

事実上、死ぬ事が決定したこの命令に従い、臨時編成の部隊は移動を開始したのだった。


「マザー・ベル(中里 少尉)よりベル1(御剣 大尉)へ、
 お分かりとは思いますが、先ほどの命令は独立試験部隊の権限で無視できる範囲です。
 ですので・・・。」


「中里 少尉・・・、弐型と不知火改の活動限界にはまだ余裕がある。
 それに、強風下でのデータがそろってきたから、巡航速度程度でなら噴射跳躍も可能になっているはずだ。
 ギリギリまで、彼等と共に行動しよう。」


「隊長・・・・・・。」


「中里 少尉、活動限界点の見極めは君に任せるよ。
 俺だと本当に限界まで粘ってしまいそうだからな・・・。

 ベル1(御剣 大尉)よりロンド・ベル各機へ、
 厳しい状況だが、大陸での戦いとそれほど状況は変わらない。
 なら・・・・・・、問題は無い。
 限界まで戦った後で退却を開始する。
 分かったか!?」


「「「「「了解!」」」」」


ロンド・ベル隊が合流していた臨時部隊は、周囲の部隊と合流し4個中隊と戦車中隊を有するまでに戦力を膨らませていた。

しかし、その戦力で果敢に防衛を行なうも、数万のBETAの群れに対してはあまりにも無力で、蟻に群がられた食料のように、
どんどんその戦力を削られていった。

ロンド・ベル隊は臨時部隊の主力として戦闘を行なっていたが、退却可能な限界点をむかえた時、防衛を続ける味方を置き去りにして、
退却を開始する事になった。

実戦の運用データを持ち帰るという最優先命令に従い退却を開始したロンド・ベル隊に対し、理解を示す者もいたが一部の者からは、怨嗟の声が届けられた。

俺はその声を聞いた時、それに対し隊員に無線封鎖を指示し、全ての責任は隊長である自分にあると隊員に念を押した。

その一方で、自らはその罪を心に刻み付けるように、その怨嗟の声を最後まで聞き続けたのだった。









退却開始後、ロンド・ベル隊は退却ルートに配置されていた補給コンテナから補給を受けるたびに、
可能な限りその場に留まって遅滞戦闘を繰り返しながら、一路岩国基地を目指していた。

岩国基地を目指す理由、それは戦線の崩壊を受けて防府基地から移動していたロンド・ベル隊の整備チームが、
岩国基地に移動したという報告を得ていた事と、山口県における最大の戦力が集中する基地に合流しようとしていたのだ。

岩国基地まで残り10kmのところで、前方に防衛線が築かれ多数の機影が存在している事を、視界に捉える事ができた。


「こちら、アメリカ太平洋軍 岩国基地所属のエドワード大尉だ。
 日米安全保障条約に従い、貴官らを援護する。
 基地へ急げ!」


「こちら、帝国軍 第13独立戦術機甲試験中隊 御剣 大尉。
 貴官らの援護に感謝する。」


俺は前方の防衛線から届けられた通信に対して、国際共通語である英語で返事を返した。

その後、ロンド・ベル隊、立ち並ぶ米国軍カラーのF-15C『イーグル』を飛び越え、岩国基地を目指すのだった。





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コメント

皆様、数日間に及ぶネット断ちの末、何とか更新する事ができました。
しかし、結局二週間以内と言う予告を破る事になってしまいました。
申し訳ありません。
そして、予告した更新日を守れない私に、いつもご感想・ご意見を下さる皆様に感謝したいと思います。
ありがとうございます。

最近仕事が急に忙しくなったり、定時に帰れる週があったりと、
この作品を書く時間が安定して確保でき無いために、
予定が狂ってしまいました。

毎回謝るのもあれなので、達成可能な更新頻度を目標に立てて、
それを超える更新があればラッキーというスタンスが、良いのかもしれません。
目標(仮):一月で2話の更新とかなら可能だろうか・・・。
趣味や仕事の事を考えて、目標設定をしておきたいと思います。

今回は、いよいよBETAの本土侵攻が開始されました。
原作で、九州が一月も戦えた理由と、中国地方が数日間で抜かれてしまった理由が、
しっかりと書けたら良いと考えています。

また、いくら主人公がチートとは言え、ご都合主義が過ぎれば興ざめし、
足りなければ鬱になるので、これからの舵取りが大変になりそうです。

よく更新が遅れる駄目な作者ですが、この作品を忘れずにいていただけたら、
幸いです。



返信

皆様、いつも様々なご意見を下さり、ありがとうございます。
今回もいくつかを選択しての控えめな返信にさせていただきます。
選択から漏れてしまった皆様には、大変申し訳ない事をしていると思いますが、
全てのご意見・ご感想に目を通していますので、その点はご理解いただけたら幸いです。


主人公の能力活用で機体にセンサー付けて出来るだけ損耗の少ない動きをさせ他の機体に反映・・・。
このご意見を見て、マブラヴとは違うアニメの設定を思い出してしまいました。
ちょっとこねた程度に仕込めば、機体の消耗を低下させる事が出来るのではないかと、
検討中です。


人間の軟骨に当たる部品を作れればいいが・・・。
動物としては、そういった部分を備える事が正しいと思いますが、
あくまでも機械である戦術機で柔らかい素材を間接に用いると、
再生しないため逆に消耗が激しくなるのではないかと考えています。
また、軟骨は機械においては油(潤滑剤)にあたるのではないかとも思っています。
しかし、何らかの方法で関節部の保護は必要ですので、よく考えたいと思います。


ナイフシースはもうカーボンブレードが多くなってきたのでBETA戦ではあまり困らないと思います・・・。
確かに武御雷では、廃止されているようです。
不知火に残っているのは、古くからの流れという事で、今後の新型機で検討してみたいと思います。


ムアコックレヒテ機関を用いてスサノオではなく、御剣の技術とオルタ計画の技術、さらに主人公のチートでグランゾン・・・。
かなり前に書いた事を再び感想板で見ることになろうとは・・・・・・。
でも、以前書いたようにグランゾンは無理ですよ・・・多分。
個人的に言うと、一騎当千は楽しいが、万夫不当とかだと飽きてしまうと考えています。


エヴァのコード・ビーストみたいなのを考えました・・・。
パニクって死ぬより敵を出来るだけ殺して死ぬほうがいい、との事ですが。
催眠等を行なったお陰で、味方を攻撃したら目も当てられないことに成ります。
それより、強制脱出→回収・機体は爆破→再起を図るといった方が、現実的だと思います。
そういった場合の処置は、原作に則った形で行きたいと考えています。
ところで、エヴァのコード・ビーストとは新劇場版・破で出て来る設定でしょうか?
残念ながらエヴァはTV版しか見たことが無いので・・・・・・。


フェニックスミサイルなどみたいに面制圧するフルオートのグレネードランチャーを作ってみては・・・。
フェニックスミサイルがどのように使われていたかが分かる資料が手元に無いため、
多くのコメントは出来ませんが、92式多目的自律誘導弾システムよりも、
面制圧能力が高い火器を戦術機に持たせたいという事でしたら、私も欲しいと考えていました。
少しだけこの作品で書いた設定で代用できると考えていましたが、もう少し検討してみたいと思います。


試作99式電磁投射砲の様な戦術機が扱うサイズだと技術的にかなり厳しいのなら巡洋艦以上の戦艦に載せる規模なら・・・・・
電磁投射砲は男のロマンですので、必ず登場させたいと考えていましたが、まさか戦火に搭載するとは・・・・・・。
たしかに現実でも、実験で船にレールガンを搭載して試射をしたという話が有りますので、
問題ない気がしますが・・・・・・、どこで活躍させるかが問題ですね。

XAMWS-24試作新概念突撃砲・・・・・
皆様、かなりお気に入りの武器のようですね。
現実でも銃剣が使われている以上、有効な兵器だという事は間違いありません。
ただし、外見から見ただけでも87式突撃砲と比べると機構や給弾方式が異なっている事が想像できます。
その点を踏まえて、本格的に検討に入りたいと思います。


皆様のご意見で、検討中のものがどんどん貯まっていっています。
どの程度採用できて、上手く話しを作れるかはわかりませんが、思いつくままに感想板に書き込んでいただけると幸いです。


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