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No.16427の一覧
[0] 【習作】 マブラヴ オルタネイティヴ~我は御剣なり~(現実→オリジナル主人公・チート気味)[あぁ春が一番](2012/08/13 20:03)
[1] 本作歴史年表[あぁ春が一番](2011/07/11 21:36)
[2] 戦術機設定集(簡易)[あぁ春が一番](2011/08/15 13:48)
[3] 兵装・その他の装備設定集(簡易)[あぁ春が一番](2011/08/15 13:47)
[5] プロローグ[あぁ春が一番](2010/03/08 18:31)
[6] 第01話[あぁ春が一番](2010/06/06 12:15)
[7] 第02話[あぁ春が一番](2010/06/06 12:20)
[8] 第03話[あぁ春が一番](2010/07/10 09:03)
[9] 第04話[あぁ春が一番](2010/11/05 00:07)
[10] 第05話[あぁ春が一番](2010/11/05 00:24)
[11] 第06話[あぁ春が一番](2010/11/05 00:35)
[12] 第07話[あぁ春が一番](2010/11/05 00:45)
[13] 第08話[あぁ春が一番](2010/11/06 23:42)
[14] 第09話[あぁ春が一番](2011/01/27 22:47)
[15] 第10話[あぁ春が一番](2011/04/20 00:59)
[16] 第11話[あぁ春が一番](2011/05/03 18:17)
[17] 第12話[あぁ春が一番](2010/11/07 22:29)
[18] 第13話[あぁ春が一番](2010/11/07 23:04)
[19] 第14話[あぁ春が一番](2011/05/03 18:19)
[20] 第15話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:49)
[21] 第16話[あぁ春が一番](2011/05/03 18:22)
[22] 第17話[あぁ春が一番](2011/05/03 18:23)
[23] 第18話[あぁ春が一番](2011/05/03 18:24)
[24] 第19話[あぁ春が一番](2011/05/03 18:29)
[25] 第20話[あぁ春が一番](2010/11/10 00:41)
[26] 第21話[あぁ春が一番](2010/11/11 00:05)
[27] 第22話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:50)
[28] 第23話[あぁ春が一番](2010/11/11 23:29)
[29] 第24話[あぁ春が一番](2010/12/12 15:48)
[30] 第25話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:51)
[31] 第26話[あぁ春が一番](2010/12/12 15:48)
[32] 第27話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:51)
[33] 第28話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:52)
[34] 第29話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:53)
[35] 第30話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:53)
[36] 第31話[あぁ春が一番](2011/05/15 01:42)
[37] 第32話[あぁ春が一番](2011/05/15 23:54)
[38] 第33話[あぁ春が一番](2011/05/25 00:04)
[39] 第34話[あぁ春が一番](2011/05/25 00:05)
[40] 第35話[あぁ春が一番](2011/05/25 00:05)
[41] 第36話[あぁ春が一番](2011/07/11 21:25)
[42] 第37話[あぁ春が一番](2011/08/15 13:46)
[43] 第38話[あぁ春が一番](2011/10/24 00:46)
[44] 外伝 TE編・上[あぁ春が一番](2012/07/23 11:57)
[45] 外伝 TE編・中[あぁ春が一番](2012/08/13 20:03)
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[16427] 第14話
Name: あぁ春が一番◆17cd7d65 ID:bc6cc51c 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/05/03 18:19


俺が大陸に渡ってから一年程がたったある日、本国にいる家族から手紙が届いた。

その内容は、筆不精な兄に対して冥夜が家族と自分の近況を伝えるというものだった。

相変わらず堅苦しい文章で話あったが、そこからは充実した日々を過ごしていることが伝わってきた。

また、それに添えられた家族の写真には、成長した彼女の姿が写し出されていた。

たった一年見なかっただけだが、思春期をむかえた彼女にとっては、その短い期間でも成長するには十分な時間だった。

そして、今年で中学校に入学した彼女は、これからもっと女性らしく成長していく事が容易に想像できた。

そう思うと小さい頃の冥夜の姿が頭を過ぎり、成長の嬉しさと共に少しの寂しさを感じる事になった。

俺はこの感情をどう処理していいのか悩み、しばらくの間冥夜の写真を眺めることになった。


「見ろ皆、御剣が女の写真を眺めているぞ!」


俺が写真を眺めていると、佐々木 少尉が声をかけて来た。


「違いますよ佐々木さん、妹の写真ですって!」


「何? 確かに女と言うには幼すぎるか・・・。」


俺の持っていた写真を覗き込んだ佐々木 少尉はそう呟き、十年後が楽しみだとコメントをした。


「しかし、御剣のような変態にこんな将来有望な妹がいるとは・・・。
 今から、お前の肩でも揉んでおこうか?」


「佐々木さん、その変態というのをやめてもらえませんか?
 それと、肩を揉まれた位で冥夜は紹介しませんよ!」


「十数本のレーザー照射を空中で避ける事ができるのは、お前が変態だからだ。」


「そうじゃ、突撃前衛の癖に後衛へ正確な援護射撃が出来る者に対して、
 変態以外の表現はできんじゃろう。」


佐々木 少尉の言葉に続けて、近くにいた武田 少尉も俺が変態であるという話に参加してきた。

突飛な戦術機動をとる原作主人公が変態扱いされたことがあったが、まさか俺がその立場になるとは思ってもいなかった。

確かに空中でレーザー照射を避けることや、後ろを見ずに後衛の援護ができる自分の能力に対して上手く説明できず、
勘や殺気を感じた等としか説明していないのは悪いとは思うが・・・。


「酒も飲まないし、歓楽街に誘ってもいつも断る・・・。
 男として間違ってるだろう。」


「歓楽街に行かない事には好感が持てるが、禁欲的過ぎるのも問題じゃ。
 ・・・・・・大人の女が怖いわけではないのじゃろう?」


話が戦術機の機動から日常生活に移っている気がするが、二人が俺を変態扱いする会話はまったく終わる気配がなかった。


「佐々木さんも武田さんも酷過ぎますよ。
 こんな真面目で純情な青年に対して、そろって変態だなんて・・・。」


二人の会話に戸惑っていた俺は、少し離れていたところにいた南 中尉に助けを求めることにしたのだが・・・。


「私からは何も言うことは無いよ。
 ただ・・・、戦術機の振動センサーより先にBETAの地下侵攻を察知できる者を、世間は何と呼ぶのだろうな?」


「しょ 小隊長まで俺を変態扱いなんですか・・・。」


俺の求めた助けは、予想とは真逆の敵側についてしまいったのだ。

皆からの扱いの悪さに思わず膝を着いた俺は、それを遠目から見ていた中隊の皆に笑われることになった。

俺はその事に傷ついたように振舞いながらも、異常とも思える行動を見せる俺のことを変態の一言で片付け、
受け入れてくれる中隊の皆のことがたまらなく好きになっていたのだった。











1997年、日本国内では有名な御剣財閥が欧米の一般人に広く知られるようになる出来事が起こった。

昨年から進められていた、F-4『ファントム』やF-15C『イーグル』を開発したことで有名なマクダエル・ドグラム社買収の件が、
ついに公にされたのだ。

経営危機に陥っていたマクダエル・ドグラム社の買収には、御剣重工の他に米国最大規模の航空機メーカーであり、
巨大軍需企業であるボーニング社が名乗りを上げていた。

当初の予想通り、マクダエル・ドグラム社を日本企業が買収する事に難色を示した米国政府は、ボーニング社を全面的に支援することになった。

しかし、御剣財閥側にも日本政府が味方した事やマクダエル・ドグラム社の抱える負債が、ボーニング 一社だけでは賄えないほどに
膨れ上がっていたこともあり、マクダエル・ドグラム社を二社で分割買収することで話し合いが行われることになった。

全米がこのニュースに注目する中、ついに買収されるそれぞれの部門が発表されることになった。


御剣重工

1.F-4『ファントム』部門:
既に米国での生産が終了し、米軍でも全機が退役しているため、まともな製造部門すら存在しなかった。
また、未だにF-4を生産・運用している国も多くあるが、開発から30年以上が経過しているため、
特許切れの部分が多く、大きな利益を生み出す可能性が低いと考えられている。

2.YF-23『ブラックウィドウⅡ』
F-22『ラプター』にトライヤルで破れ制式採用が見送られた機体。
マクダエル・ドグラム社は、ノースロック社(現ノースロック・グラナン社)に協力する形で、開発に携わっていた。
御剣重工への譲渡の際には、最重要機密であることからラプターを超えると言われていたステルス機能が取り外される事になった。
ステルス機能のほかにも、米国の最新技術を集めて作られた機体であったため、
開発から7年が経過した今でも第3世代機の中で最高クラスの性能を有している。
しかし、米国軍の戦術機運用思想と異なる仕様である事や、ステルス機能が外されることを受け、
米国内ではこの機体の重要度は低いと考えられていた。
また、開発元であったノースロック・グラナン社も海軍への売り込みに失敗した事もあり、
第3世代戦術機の実戦での運用データの提供を前提に、有償での買取に応じることになった。

3.航空機部門:
米国軍から退役するか、調達数が少ない航空機及び民間向けの航空機のライセンスと製造部門を取得。
(航空機には、ヘリコプターを含む)
今後も、軍からの受注増や民間部門の活性化が見込めない事から、不採算事業と考えられていた。
また、ボーニング社自体にも既に巨大な民間部門を抱えていることも影響したようだ。


ボーニング社

1.F-15C『イーグル』及びF-15E『ストライクイーグル』部門:
二年前にF-15E『ストライクイーグル』が米軍に制式採用されたことや、現在でも最強の第二世代機と呼び声が高い機体であるため、
これからも多くの利益を出すと考えられている部門である。

2.航空機部門:
国防上の理由もあり、現在米国軍で制式採用されている全ての航空機に関するライセンスと製造部門をボーニング社が独占することになった。
(航空機には、ヘリコプターを含む)

3.ミサイル製造部門
ハープーンミサイル、トマホークミサイル等の優秀なミサイルを開発した部門であり、
国家間の戦争を想定した場合に手放す事のできない部門でもある。
また、多目的自律誘導弾システムという光線級のレーザー照射を不規則な機動で回避しながら、
目標を追尾するシステムの搭乗によって、対BETA戦でも有効であると考えられている。


公にされた内容を見た世間は、御剣財閥側の惨敗と捉え米国民の多くが胸をなでおろし、日本国民の多くが落胆することになった。

また、公にできない極秘事項である極秘プロジェクトの開発データは、ある程度の情報は開示されたが、
その心臓部である機体主機に関するデータは一切得ることができなかった。

こうして、欧米の一般人にまでその名を知られるようになった御剣財閥であるが、同時期にアジアでもその名が知られるようになっていた。

それは、前線で活躍する第3世代機の不知火・吹雪の製造元の一つが御剣重工であることや、アジア各国がオセアニア、オーストラリア各地に
臨時政府を樹立した際に行った支援企業の中に御剣商事があったことではなく、軍人や難民キャンプで広く親しまれるようになった、
美味しい合成食品を製造する御剣食品としてその名前が知られるようになったのだ。

御剣食品は、栄養が取れることを最優先した軍のレーションに近かった一般的な合成食品に対して、その味も楽しめるように
かつての宇宙ステーションでの食事に近いコンセプトで合成食品を開発し、それに成功したのだった。

その新しい合成食品群は若干製造コストが高くなったが、その味が認められ最前線や難民キャンプでお祝いの時に食べられる名物となっていったのだ。

前線での食事に飽き飽きした俺が、試作品を取り寄せ前線でばら撒いたことがここまで発展する事になるとは、始めは思ってもいなかった事だった。




マクダエル・ドグラム社の買収工作に失敗したと思われていた御剣財閥だったが、日本政府から要請された先進戦術機技術開発計画
(Advanced Tactical Surface Fighter/Technology And Research Project),通称「プロミネンス計画」に一年遅れで参加した事で、
マクダエル・ドグラム社の買収で得た部門が、意図的に行われたのではないかと専門家の間で噂されることになる。

プロミネンス計画とは、拡張工事が開始されたユーコン基地を拠点に、国連主導で世界各国が情報交換や技術協力を行う事で、
より強力な戦術機を開発するための計画である。

また、競争原理の導入によって各国の戦術機開発を促進する一方で、東西陣営を超越して協力しあう体制を世界に示すという政治的意味をも持っていた。

しかし、その話が最初に出た時日本の戦術機開発メーカーである富岳重工,光菱重工,河崎重工,御剣重工の四社は、
次期主力量産戦術機の開発に全力を注いででいることを理由に参加を見合わせる事になった。

そして、今年になってマクダエル・ドグラム社の買収が決定した直後の御剣重工が、現在採用されている機体の改修機で参加することを打診したのだった。

最初は改修機の内容に懸念を示していた日本政府だったが、国連の要請を完全に無視することもできず、御剣重工の案を採用することになった。

御剣重工の参加を聞いた各国は、世界で初めて第三世代機を量産し実戦配備した日本帝国が、どの様な機体を持ち込むのかと期待していたようだったが、
その機体の計画書を見て愕然とすることになる。

なぜなら、第2・3世代機ではなく第1世代機の改修プランだったからだ。





撃震・改修型

この機体は、フェイアチルド・リムパリック社(米)が開発した戦術歩行攻撃機A-10『サンダーボルトⅡ』を意識して開発された機体である。

サンダーボルトⅡは、重火力・重装甲という、第1世代機のコンセプトを極限まで突き詰められた機体で、その生産性の高さにより
短期間で複数部隊の運用が可能となった事はあまりにも有名である。

欧州のNATO軍へ供給された当初は、運動性と機動性の低さに不満を持つ衛士が大勢いたが、密集近接戦での生存性の高さと
F-4一個小隊を上回る単機火力は都市防衛戦にあたる東西ドイツ軍から高く評価される事になった。

そして、その運用戦術が各戦線に浸透した後は、開発から三十年たった今でも大砲鳥(カノーネンフォーゲル)、
戦単級駆逐機(タンクキラー)などの俗称を与えられる程の絶大な信頼を獲得している優秀な機体である。

撃震・改修型は、サンダーボルトⅡを上回る火力と機動力を搭載することを計画されていたが、
早い段階から二足歩行ではそれを実現することが難しいと考えられていた。

そのため撃震・改修型は、前部ユニットになる撃震の臀部に、新しく作られた動体ユニットと撃震の下半身がセットになった
後部ユニットが取り付けられ、二足歩行から四足歩行へと形態を変化させていた。

その外観は、ギリシャ神話にでてくる上半身が人で下半身が馬の姿をしたケンタウロスを彷彿とさせるものとなっていたのだ。

撃震・改修型の開発に二年以上の年月がかかったのは、この四足歩行モーションの作成に時間がかかったためだった。

四速歩行の採用で、サンダーボルトⅡよりも運動性が低下する事になったが、
予定通りサンダーボルトⅡを上回る積載能力と直線の機動力を獲得することに成功していた。

またその仕様や、四足歩行の制御の難しさから管制ユニットは複座のみを採用することになった。

撃震・改修型は、その砲撃能力を利用して拠点防衛や戦車部隊に随伴し護衛と戦術機への援護を行うための支援装備と、
その機動力を利用して戦術機部隊に随伴し援護を行う迎撃装備が考えられていた。

いずれの仕様にも共通する装備は、
サンダーボルトⅡにも搭載されているガトリング砲(GAU-8)二門,
可動兵装担架システムとフリーになっているメインアームに装備される、通常の戦術機の装備,
撃震と共通のナイフシースに搭載されている65式接近戦闘短刀,
前面装甲に施されたクレイモアのように散弾をばら撒く事ができる追加装甲,
である。

GAU-8単体の重量は681kgであるが、給弾システムや砲弾を満載したドラムマガジンなどを含めた全備重量は片側で2,830kgにも達していた。

しかし、GAU-8は初弾発射まで0.5秒のタイムラグがあるものの、最高発射速度で毎分3,900発という圧倒的速度で、
ドラムマガジンに搭載された6750発もの36mm機関砲弾を発射する事ができるという、圧倒的な火力を有していたのだ。

そして近接武器には、65式接近戦闘短刀と追加装甲で対応するとされていたが、基本的にはBETAに接近される前に退却する事が求められていた。

支援装備

馬の背中にあたる部分に、海軍の日本帝国海軍最大の戦艦 紀伊級にも搭載されている、
OTT62口径76㎜単装砲の搭載される予定の仕様である。
OTT62口径76㎜単装砲は、全体の総重量が7500kgに及ぶが、12kgもの砲弾を毎分85発(100発/分まで向上可能)発射する能力を有しており、
最大射程が16,300m(ただし、突撃級の正面装甲を貫通することのできる有効射程は、5,000mほどである。)もあり、80発もの砲弾が搭載されている。
そして、砲塔を旋回させることで、全方位に向けて射撃することが可能であった。
その砲撃性能を毎分あたりで換算すると、OTT62口径76㎜単装砲で90式戦車(120mm滑空砲)の3.5台分の投射量を有している。
また、保有できる弾薬の量や展開能力を考えた総合能力は、一個小隊で戦車部隊二個中隊に匹敵する戦力となると考えられていた。

迎撃装備

馬の背中にあたる部分にGAU-8の予備弾倉と30連装ロケット弾発射機が搭載される予定の仕様である。
これにより予備弾倉分まで全て使用すると、GAU-8は一度の戦闘で砲身の寿命をむかえるまで砲撃が可能となると計算されている。
また、30連装ロケット弾発射機(総重量:3.2t,弾薬:75式130mmロケット榴弾)は、多連装ロケットシステムMLRSの配備により
一度退役した兵器であった。
多目的自律誘導弾システムを有していない30連装ロケット弾発射機だが、光線級の影響を受けにくい水平発射方式での採用となった。



撃震・改修型の最大の特徴である四足歩行への改修は、本来強力になった火力の反動を二足歩行では支えられないと判断されたため
導入されたものであるが、それにより従来の第一世代とは異なった性能を示す戦術機となった。

その利点とされたのは、四基の跳躍ユニットが生み出す第3世代機に迫る機動力と、四速歩行による主脚歩行時の振動低減であった。

この機動力により、燃料タンク(推進剤)が増設され、OTT62口径76㎜単装砲や予備弾倉とロケット弾発射機の変わりに、
大型のコンテナを搭載する事で、前線の戦術機部隊へ確実に武器・弾薬を届けるという任務も可能であると考えられるようにもなっていた。

また、主脚歩行時の振動低減により必要な衛士適正が低くおさえられたため、衛士適正ではじかれて戦車兵になった者や、
年齢で予備役に入ったものも搭乗できると考えられていた。

そして、四足歩行の欠点とされたのが、旋回性能及び運動性の低さと整備性・輸送等の運用面での問題であった。

旋回性能及び運動性の低下に対して、対戦術機戦ではいい的になるだけだと評価を受けることになったが、その点はサンダーボルトⅡも同様であり、
むしろ第三世代機に負けない前進速度と反応速度により、正しい運用方法を行えばサンダーボルトⅡよりも使い易いとも考えられた。

また、二足歩行の戦術機を想定した整備用ハンガーや輸送装置が使用できない点は、前部ユニットとなる撃震のメインアームで、
前部ユニットと後部ユニットを分離・接続できる事から、整備時には従来の戦術機と同じ整備用ハンガーを使用できるとされた。

ただし、輸送装置に関しての御剣重工の回答は、輸送トラックに足を折りたたむ馬の座り方で積載することが可能としたが、
輸送機や空母での輸送は難しいと回答するに留まった。

さらに、一機あたりの整備コストの増加が考えられたが、四足歩行により一本あたりの負荷が低減したことや、多少整備が悪くても
運用が可能である事もあり、整備方法を確立すれば効率的な整備が可能であると判断されることになった。

そして、撃震・改修型生産コストは、現段階で撃震の1.5機分とされたが、F-4『ファントム』のライセンス料金がかからなくなることや、
輸出による量産効果も考えられたため、最終的には撃震1.2機分のコストで生産が可能であると考えられていた。

更に、構造上GAU-8を搭載する肩部装甲と管制ユニット及び後部ユニットを接続する臀部装甲を交換するだけで、既に生産されている撃震や
ファントムを前部ユニットとして使用できるため、既存機の改修であれば生産コストは撃震1台分以下の価格と計算されている。

様々な問題を抱えている撃震・改修型だが、その殆どを撃震のパーツの流用や既存兵器を採用していることから早期導入が可能である点や、
圧倒的な火力の割には生産コストが抑えられる点は評価され、今後の改良が期待される事になった。








ソ連領ブラゴエスチェンスクハイヴ(19)建設開始が確認された今年に入り、朝鮮半島へのBETA侵攻の圧力が一気に増す事になった。

しかし、BETA侵攻による相次ぐ撤退にも関らず俺が所属するロンド・ベル隊は、
一人もかけることなく長春(旧満州の新京)防衛戦まで戦い抜くことができていた。

そして、いつしか『極東最強の中隊』『奇跡の中隊』と呼ばれるまでになっていた。

この呼ばれ方は、ロンド・ベル隊全員の誇りでもあったが、それと同時にそれに見合う戦果が求められるようになって行くのだった。

この事は何時しか慢心を生み、独立部隊にあった自由を拘束する戒めとなっていたのかも知れないと、後になってから気付かされることになるのだった。



長春防衛戦に参加していたロンド・ベル隊が、HQの要請により帝国軍主力を迂回するような動きを見せいていたBETA群に対処していた時、
ロンド・ベル隊の後方に位置していた戦車部隊が、地下から出現したBETAの奇襲を受けるという出来事が発生した。


「ベル7(武田 少尉)よりベル1(本郷 大尉)へ、
 HQより後方に出現したBETAへの対処要請が来た・・・。
 迂回部隊を牽制しつつ、戦車部隊を救援せよという無茶な要請じゃが?」


ここに来て各国軍の消耗は激しさを増しており、この戦域には戦車大隊を救援に動ける部隊が、ロンド・ベル隊以外に存在しなかったのだ。

HQからその要請を受けたロンド・ベル隊は、急遽部隊を半分に分けて対処する破目になるのだった。


「ベル1(本郷 大尉)、了解。
 ・・・ベル1(本郷 大尉)よりロンド・ベル各機へ、部隊を二手に分けて対処する。

 ベル12(御剣 少尉)、貴様がベル7から11を率い戦車大隊の支援に向かえ。」


「ベル12(御剣 少尉)よりベル1(本郷 大尉)へ、
 先任を差し置いて俺が分隊長を務めるのは、問題があると思いますが?」


「ふん、普通の衛士ならそうなのだろうが・・・、
 個人的な技量もそうだが、前衛の癖に後衛の支援をするほど視野が広いうえ、支援の要請も的確だ。
 何より、誰も文句を言わないという点でお前が分隊長に最も相応しいと思っているのだが・・・?」


「ここで問答をしても始まりません、これもいい経験です。
 ベル12(御剣 少尉)、分隊長を務めて見せろ。
 無理なようなら、ベル7(武田 少尉)が任を引き継げばいいのです。」


俺は、中隊長と小隊長の二人に促される形で、臨時に編成された分隊の隊長に任命される形になった。

この任命は、同じ機種で隊をまとめた方が効率のよい運用ができるという判断から、少尉だけの不知火部隊を編成したために行われたものだった。

俺はその任を受けた後、すぐさま反転した不知火6機を率いて、戦車大隊の救援へ向かうことになった。

この時俺は初めて、ロンド・ベル隊で隊員を率いる立場に付くことになったのだ。

その事について、中隊長が行ったように先任たちから否定するような言葉はなく、逆にやっと隊長職につくようになったかと言われるほど、
分隊内での評価はいいようだった。

俺が率いるロンド・ベル分隊が戦車部隊の救援に駆けつけたとき、既に戦車部隊の1/3が撃破されている状況だった。

それに対応するため、光線級が出現していなかったこともあり、突撃前衛の二機を低空飛行させることでBETAを引き付け、
小型種を掃討するために作られた小型の鋼球をばら撒く手榴弾等用いて、残りの四機が戦車に取り付いているBETAを掃討する作戦を取る事になる。

俺は空中からBETAのみを素早く狙撃することで、効率よくBETAを撃破していったが、結局戦車部隊が安全圏に退避した時には、
その戦力を半数以下に減らす事になっていた。

もっと効率のいい戦い方がなかったかと考えつつも、ロンド・ベル本隊との合流を指示しようとした時、
再び地下からBETAの増援が出現することになった。

しかも、その出現位置はロンド・ベル本隊と分隊の中間に位置しており、これにより本隊と分断され合流が困難になることが予想された。

そして俺たちが、BETAの増援を突破して本隊に合流する動きを見せいていたとき、更なる不幸がロンド・ベル隊を襲う。

何と防衛線の主力部隊が崩壊したために、ロンド・ベル本隊へ多数の光線級を含む大量のBETA群が襲い掛かることになったのだった。



「クソッ、光線級さえいなければ直ぐ合流できる距離だというのに・・・。」


佐々木 少尉が洩らしたこの言葉通り、本隊との距離は最大戦速で1分半ほどの距離しか離れていなかった。

しかし、光線級の存在が跳躍することを許さず、匍匐飛行をしようにも本隊との間には未だに増援がやまないBETA群が邪魔をしており、
合流は遅々として進んでいなかった。

光線級を撃破しようにも、光線級は本隊を挟んだ向こう側に存在しており、砲撃がとどく距離ではなかった。

また、戦線が崩壊しつつある今になっては、多数の部隊から寄せられる支援砲撃の要請により、
こちらへ支援砲撃が開始される可能性は極めて低くなっていた。

しかも、最後の手段である単独での突入も50以上の光線級により阻まれ、今の俺が突入できるほど生易しい状況ではなかったのだった。

更にもし突入に成功したとしても、それまでの時間に最優先護衛目標であるベル7(武田 少尉)を抱える分隊の方が、壊滅させられる可能性も有った為、
BETA群の中を亀の歩みの様に進んでいくしか方法が残されていなかった。

分隊が本隊まで残り5000mに迫った時、非情な勧告が俺に通達すられることになった。


「ベル7(武田 少尉)よりベル12(御剣 少尉)へ、
 HQより全軍に対して長春より退却するようにと命令が発せられたようじゃ・・・。」


「武田さん、どう言うことです?
 ロンド・ベル以外にも、前線で戦っている部隊がまだ沢山あるんですよ。
 それなのにHQは何を考えているんだ!」


俺の怒りの声と同様に、他の隊員も怒りをあらわにした。

しかし、それに対して武田 少尉は冷静に答えを返した。


「主力部隊が退却を開始した今となっては、どう叫ぼうが現実は変わらん、
 それよりも、生き残ることを考えたらどうじゃ、お主は分隊長なのじゃろう?」


その言葉を受けた後も、本隊と合流して退却する方法を考えていた俺に、中隊長からの通信が入って来た。

どうやらそれは、武田 少尉が不知火・強行偵察装備を使って無理やりつなげた通信のようであった。


「ベル1(本郷 大尉)よりベル12(御剣 少尉)へ、
 本隊との合流は不要だ、即時退却に移れ!」


「中隊長!?
 俺たち分隊が合流しないと、今の本隊では確実にやられてしまいますよ。」


本隊の隊員が乗っている不知火・斯衛軍仕様試験型は、その性能と引き換えに稼働時間の低下をもたらしており、
BETAに半ば包囲されている現状を考えると、不知火が護衛することで最短ルートを退却する以外に推進剤が持つ可能性が低いと考えられていたのだ。


「御剣 少尉・・・、そろそろ不知火も撤退の限界点に達するようじゃ。
 試験型の稼働時間を考えるともう既に・・・。」


俺は自分の推進剤残量を基準に考えていたが、思った以上に分隊の不知火も推進剤を消耗していたのだった。

 しかし・・・、だからと言って・・・・・・、


「俺は・・・、俺はこんな状況をひっくり返すために強くなると誓ったんだ。」


頭では退却するべきと判断していたが、感情がそれを許容できずその思いが思わず口から漏れることになった。


「御剣 少尉・・・、判断を誤るなよ。
 最優先目標を思い出せ、それにここで貴様らも死ねば、誰が民を守るのだ・・・。
 誰が、この中隊の事を語り継ぐのだ。
 自らの死が、無駄では無いと思えるからこそ、こんな状況でも笑って戦えるのだ!」


中隊長の搾り出すような声と共に、先任たちの笑い声が耳に入って来た。


「うぉぉぉーーーーー。」


雄たけびと共に、目の前にいた数体の要撃級を切り刻んだ俺は、ついに決断を下した。


「ベル12(御剣 少尉)よりベル7からベル11までのロンド・ベル 分隊に告げる、
 これより我々は退却を開始する。」


俺は、そう言って分隊の皆に命令を出した後、先任たちとの最後の言葉を交わすことになった。


「中隊長・・・、先任の皆さん、
 今までありがとうございました。
 俺も・・・何時かそちら側へ逝くので・・・、その時まで・・・・。」


「あぁ・・・、今まで貴様らと戦えたことを誇りに思う。
 御剣・・・、ロンド・ベルは貴様に任せた。
 先に地獄に逝って待っているが、あまり早く来るなよ・・・
 では、その時まで・・・」


「「「「さらば!」」」」

 
この通信を最後に俺たちは退却を開始し、中隊長以下6名は最後の力を振り絞りBETAへ特攻をかけることになった。

俺たちはベル7(武田 少尉)を中心に円壱型(サークル・ワン)を組み、推進剤の余裕のあった俺がその殿を勤める事になった。

中隊長達がどのように戦ったかははっきりと分からないが、不知火・強行偵察装備には6つのS11による爆発が観測されていた。








長春から退却した後のロンド・ベル隊は、一気に平壌(ピョンヤン)近郊まで後退し、そこで補給とつかの間の休憩を取ることになった。

俺は、生き残った隊員達からの了解を取った上で、分隊長としての最後の役目を果たす為に、
帝国軍に報告書を提出し人員と物資の補給を要請を行う事になったのだが、
その要請は結局少しばかりの物資の補給以外は、全て断られる事になる。

そして、人員の補給変わりに渡されたのが、野戦任官による臨時中尉の肩書きと、あまり聞かない臨時中尉での中隊長就任命令だった。

この一連の出来事からは、帝国軍も消耗が激しく対応ができない事、解体し吸収すれば企業と面倒が起きる可能性がある事、
補給は軍から出したくない事といった様々な理由から、生き残りに部隊運用を一任し、要請を無視したいという意思が働いているようにも取れた。

あくまでも可能性の範囲だが、あえて先任ではなく斯衛軍からの出向組みである俺を臨時中尉とした事も、
帝国軍との関係性を薄めようとする手段の一つ、とも考えられたのだ。

俺はそっちがそのつもりなら、こっちも好き勝手やらせてもらおうと考え、御剣財閥の力やコネを使って様々な補給物資の手配を行っていく。

しかし、補給物資はどうにかなりそうだったが、人員の補充はそう簡単にはいかなかった。

一瞬、御剣所属のテストパイロットを引き抜く事も考えたが、それでは兵器開発が遅れてしまうと思い、考え直したのだ。

また、補充人員は誰でも言いというものでもなかった、ある程度の腕が無いとただの足手まといになってしまうからだ。

俺が特別に与えられたテントの中で、夜になっても書類の作成に励んでいると、外に気配を感じた。


「その気配は武田 少尉だろう。
 今はお菓子を持っていませんよ?」


俺の言葉を受けて、武田 少尉がテントの中に入ってきた。

お菓子云々の俺の発言に、幾分気分を害した様子を見せた武田 少尉だったが、その感情を抑え込んだ様子を見せた後、俺に話しかけてきた。


「また、今日も寝ないつもりじゃろう?」


「分からない、全然眠くならないんだ・・・。」


「嘘をつくでない、そんなに目の下に隈を作って眠くないじゃと?」


「ふぅ~、しっかりと化粧はしたはずなのにばれたか・・・。」


俺のそのコメントに対して、武田 少尉は化粧で女の眼を欺こうと考えるとは片腹痛いと返し、俺を無理やりベッドの方まで引っ張っていくのだった。

俺はベッドの端に腰掛けた後、正直な思いを武田さんに話すことにした。


「・・・・・・正直に言うと、寝ていると嫌な夢を見る・・・・・・。

 俺がもっと上手くやれば、どうにかなったんじゃないかって・・・。

 どうしようもないと分かっていても、考えずにはいられない。
 こういう時は、酒に溺れられない自分が損をしている様に思える。」


そう言って、自嘲的な笑みを浮かべた俺の頭を、武田さんが優しく抱きしめてくれた。


「お主はよくやっている・・・、
 お主以上の部隊長など早々いるものではない。
 今はゆっくり眠る事じゃ・・・、ワシがついておるから悪夢もどこかへ逃げ去るじゃろう。」


武田さんに抱きしめられていると、どういうわけか心が安らいでいくのを感じた。

これが、女性の魅力というやつなのだろうか?

この暖かさを感じるために、男は女性を求めずにはいられないのかも知れない・・・。


「女の人に抱きしめられるのは、いつ以来だ・・・ろ・・・・・。」


俺は次第に意識を混濁させていき、武田さんにも胸が有ったんだと馬鹿なことを考えている間に、
ついに眠気に負け意識を手放す事になったのだった。




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コメント

皆様、いつも御世話になっております。
今回設定が登場した撃震・改修型ですが、投稿する当日になって整備性に問題があると気が付いてしまいました。
戦術機に随伴できる支援砲撃が必要と考えたことや、人型兵器と同様に男のロマンである多脚型兵器を
登場させたかったことから、そのまま投稿することにしました。

そして、初期段階では本土決戦まで殆どが生き残る予定だったロンド・ベル隊員ですが、
強くなりすぎた主人公を一度挫折させるために、半数がお亡くなりになりました。

挫折に人の死亡は必要ではない事や、もっとエピソードを挟むべきとも考えたのですが、
今回は他の部隊ではよく起こる悲劇が、ついにやってきたという話になってしまいました。

人の生死を考える難しさを痛感した話となりましたが、今後もよく考えて展開を決めて行きたいと思います。



返事

なんてこった・・・・、一月近く悩まされた移動速度について原作でしっかり表記されているとは・・・、
まったく気が付きませんでした。
書き込み、ありがとうございます。

原作を確認してみたところ、どの場合の速度か分からない場合もありましたが、
戦術機の速度は以下のようにまとめました。

主機出力の低い訓練用の吹雪及び撃震
主脚走行速度が70~90km/h,
短距離跳躍で瞬間的に150km/h程,
中距離跳躍で160~190km/h程,
最大戦速では216~218km/hでの長距離跳躍。
(ラプターの推進剤を心配していることから、吹雪は最高速度を出していないと思われます)

不知火の主脚走行速度は吹雪と同程度
短距離跳躍で瞬間的に238km/h程,
中距離離跳で260~281km/h程,
匍匐飛行292~330~360km/h,
最大戦速では463~468km/h,
不知火壱型丙の最高速度が746km/h。

ここまで移動速度がばらばらだと、巡航速度を決めるのが無駄なような気がしてきましたが、一応決めておきたいと思います。
ハイヴ内での移動が主脚走行70%なので、陸上での巡航時の割合を適当に決めると、
第一世代機 主脚走行50%,短距離跳躍50%, 40+ 70=110km/h位
第二世代機 主脚走行45%,短距離跳躍55%, 36+110=146km/h位
第三世代機 主脚走行40%,短距離跳躍60%, 32+132=164km/h位
としました。

結果は以下のようになりました。
第一世代機 最高速度460→400km/h前後(巡航速度95→110km/h前後)
第二世代機 最高速度600km/h前後(巡航速度140→150km/h前後)
第三世代機 最高速度700km/h以上(巡航速度170km/h前後)
これを見ると、適当に考えていた時の値は、私が納得できる範囲に収まっていたようです。
これからは、この設定を基に話を続けて行きたいと思います。
皆様のご協力ありがとうございました。



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